超光速の軌跡 ~タキオンとモルモットの3年間~   作:Valid Bear

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前回・・・まさかの8人


38話 モルモットと前哨戦~弥生賞・前編~

「8人立て?弥生賞が?」

 

 弥生賞まで1週間を切ったある日。

 TVから流れてきた出走数は私の予想を遥かに下回っていた。

 

 

 

38話 モルモットと前哨戦~弥生賞・前編~


 

 どんなに少なくても12人とかだと思っていたのだが……。

 

『毎年ジュニア級チャンピオンが出るレースは少人数になりがちですが、今年は特に顕著ですね。アグネスタキオンは、ホープフルステークスをレコードタイムでの圧勝。それも札幌ジュニアステークスの覇者ジャングルポケットと、2連続レコードのクロフネを抑えて無敗のGⅠ制覇ですから。私もトライアルでは当たりたくないですよ』

 

 なるほど。

 確かに優先出走券を競いあう相手としては怖いかもしれない。

 結局当たるのは変わらないが、トライアルで完璧に仕上げて本番仕上がらないようでは本末転倒だし。

 とはいえまさか8人とは……。

 

「タキオンの目的次第じゃちょっとマズいかな……」

 

 コースの再確認なのか、他のウマ娘の走りの観察なのか。

 もし後者だった場合、やる気が少し不安である。

 出走数に関しては何か出来る事がある筈も無いし。

 まぁ優先出走権が無くとも皐月賞は出られるだろうが、授賞式の時に弥生賞出るって言っちゃったし。

 ……もしダメそうなら沖野先輩辺りに併走でも頼もうかな。

 

 

 

 

 

「本当に8人じゃん」

 

 それは出走表が届いても変わらなかった。

 枠の有利不利が少ないのは好材料だが、うーん……。

 

「どうしたんだい?トレーナー君。何か悩んでいるようだが」

「ん?お、ちょうど良いところに。弥生賞のメンバーが思いの外少ないけど平気かなーって」

「平気?」

「目的が観察だったらやる気無くすんじゃないかと」

「……君はいったい私を何だと思っているんだい?確かに少し残念ではあるがね」

 

 平気だったらしい。

 

「まぁまぁ。今度先輩に頼んでマサルちゃん呼んでもらうから」

「ふぅン?それは魅力的だねぇ?」

 

 ちなみに『マサルちゃん』とは東条先輩が担当していたウマ娘である。

 タキオン曰く、中々特殊な走り方をする子で、今は地方でトレーナーをしているのだとか。

 だが、東条先輩の担当を断ったタキオンとしては少し頼みにくいらしい。

 

「なるほど……。これは負ける訳にはいかないな」

 

 タキオンのやる気が上がった。

 ……え、大丈夫かなこれ。

 やる気上がりすぎな気が……。

 

「無茶は厳禁だからね?」

「……それは勿論分かっているとも」

 

 うわ絶対分かってないやつだこの返事。

 

 

 

 

 

『本日のメインレースは、クラシックへと続くGⅡ、弥生賞!いよいよ本バ場入場です!』

『雨は止みましたが、結局バ場状態は不良のままでしたね。道悪の得手不得手によっては大番狂わせもあるかもしれませんよ?』

『さて、1番人気は勿論このウマ娘。ジュニア級チャンピオン、アグネスタキオン!ホープフルステークスではクロフネとジャングルポケットの追撃を振り切ってのレコード勝利。2着バのジャングルポケットは先月の共同通信杯を制しており、ここは負けていられません』

『トモの張りも見事ですし、気合いも十分といった感じですね』

 

 ……うん。

 解説の人は良い目をしている。

 だが担当トレーナーとしては、ちょっと気合いが入りすぎな気がする。

 無敗で弥生賞を制すも、その後長期の休養を余儀なくされたウマ娘もいる事だし。

 ここで脚に負担をかけた結果、クラシック戦線に参加できなくなる、等という事態になっては目も当てられないのだが。

 ……あとは相手次第か。

 こう言っては何だが、今回のメンバーはホープフルステークスのように強いウマ娘が山ほど居る訳ではない。

 強いて挙げるなら……、ボーンキングとマンハッタンカフェぐらいだろう。

 特にボーンキングは、弥生賞に向けて完璧に仕上げてきたように見える。

 この2人なら、いずれはタキオンのライバルになりうるかもしれない。

 そう。

 いずれは、である。

 このレースにおいてはまだタキオンに分があると思われる。

 マンハッタンカフェはまだ線が細いし、体格的にももう少し距離が欲しい所だろう。

 夏合宿でやってたのも基本的に長距離を見据えた練習だったし。

 ボーンキングの方も恐らく長距離寄りだ。

 素質で言えば2人もタキオンに迫る物があるが、要するに『この距離はどちらの舞台か』という話である。

 いかに道悪が得意でも、良バ場よりも速く走れるウマ娘はそうそういるものではない。

 そしてタキオンは割とどこでも芝の良バ場と遜色なく走れる。

 雪の日に旧校舎から本校舎へ続く道を全力疾走してくるのを見た時は目を疑った。

 流石に怒ったが。

 閑話休題。

 タキオンがそこまでペースダウンしない以上、見た目以上に走れる子が居ない限りは問題ない筈である。

 タキオンもそれに気付いていれば良いのだが……。

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