今後の方針を決め紅茶タイムをゆったり満喫すること暫し。ほどなく散歩から帰ってきた縁壱夫妻にも分身の紹介をした所たいそう驚かれた。外見上見るからに雑な造形のSKGAMと違い分御霊とも言える分身は姿形すべて自身と寸分違わず瓜二つなので声の違いも相まって初め兄弟か双子と思われ普通に挨拶されたぞ。事情を説明したら直ぐに納得してくれたが…あっさり信じ過ぎるので何故?と問えば嘘をつく意味があるのか?と逆に問い返された。そりゃ…無いなと納得。出会ってからこれまでの事を思えばそうだよなって俺も思うわ。非常識が日常な人生になった影響かね?慣れってのは己を客観視でもしない限り自覚が難しいもんだと改めて実感したぜ。
「オハヨウゴザイマスゴーマサマ。キショウヨテイジコクデス。エンチョウイタシマスカ?」
まあそんな感じに珠世の人造人間コンバート&分身サプライズから一夜明けて翌日。夜もしっかり就寝し心地良い朝を迎え起床を促すハウスキーパーアンドロイドの声掛けにより目覚めた俺はベッドに横になったまま一度大きく息を吸い込み両腕を頭上へと突き上げ『ん〜〜』と声を上げながら全身に力を込めて背筋を伸ばし『ハァ〜〜』と息を吐き出しつつ力を抜いて心地好い脱力感の余韻と共に起床する。
基本的に睡眠を必要としない身ではあるが俺に寝ないという選択肢は存在しない。曲がりなりにも神の領域に踏み込んでいるとはいえ精神性はあくまでも人準拠なので習慣がら寝ないと落ち着かないのだ。完全な神にでも成れば違うのかもしれんけど…界王様は普通に寝てるしそうでもないのかねぇ。上位神の破壊神ビルスなんて数十年数百年単位だしな。逆になんでそんなに寝れんだよと疑問に思うぞ。単に種族特性?もしくは神に成ったせいで寝る尺度が増えたとか?俺は前と変わらんし違うか?どうだろ?うーむ…。考え出すとキリないか。答えは遥か次元の彼方だし。あ、ちなみにアンドロイドの口調が片言なのは仕様だぞ。それらしいのが好きなんだよ。ま、趣味の範疇って事で。
「朝か…おはよう。延長は…まあいらんな。それより今朝の献立はなんだ?」
「サンドウィッチカクシュニサラダノモリアワセ。コーンスープデゴザイマス」
睡眠は十分に取れたようだが起き抜けで意識が少しぼんやりする。そのせいか神の睡眠事情なんて割とどうでもいい考察をしちまったぞ。なのでもう少し寝ててもいいかな〜とは思うが二度寝する程でもないかと思い直し延長はしないでおく。それよりも、いの一番に朝食の献立を聞くのはサイヤ人になった特色と言えるんかね?食いしん坊と言うなかれ。サーヴァントとなり飲食を必ずしも必要としない身体になったとは言え食欲という欲求には何人たりとも抗えんのだよ。特にサイヤ人という人種はな。ん?DB世界のエンゲル係数?…とんと記憶にありませんねぇ。聞くだけ野暮ってもんです。自営業だがしっかりと収入はあったし自活もしてたので誰に後ろ指差される事もない。嫁の実家の資産を食い潰す無職系バトルジャンキーとは違うのだよジャンキーとは!HA!HA!HA!HA!HA!!! 畑?自産自消は職業とは認めません!まあ富豪嫁のヒモよりかは遥かにましだがなッ!少しは働けよニート元王子!初代ヒロイン系嫁に養ってもらえて羨まけしからんぞコンチクショオォォォーーーッ!!
「おう、今日はオーソドックスにサンドウィッチ中心の軽食か。美味そうだ。珠世は?」
「スデニキショウサレリビングニオラレマス」
「わかった。なら顔を洗ったらすぐに朝食にしよう。珠世にもそう声を掛けておいてくれ」
「ショウチイタシマシタ」
過ぎ去りし在りし
この時代に来て約三ヵ月…か。思えばけっこう長居したなと思う。Fate世界でサーヴァントとなり例のスキルが発動した過去二回は両方とも滞在期間が一日と短かったからてっきりタイムリミットは24時間固定だと決めつけていたんだが今回その時間を過ぎても戻らずその前提は誤りだと判明。なら別途戻る条件があるんだろうと幾つか予測していたんだが…今日という日を迎えて漸くその前提条件が明確になった訳だ。
そもそも答えはスキルそのものにあったんだ。正確にはスキル
スキルの詳細を全て把握できていれば考察する必要などないのだが生憎と脳内ステータスに表示されるフレーバーテキスト以外にスキルに関する情報は無いので仕方ない。何事も相応に知れる事などほぼ皆無。世の中は往々にしてそんなもんだ。そう達観する傍ら過去に経験したとある出来事が一瞬脳裏をよぎる。そのせいか新しく注がれた二杯目の紅茶を啜るさい普段ならアクセントとして楽しみ味わう筈の極僅かな渋味が妙に気になり俺は少しだけ眉を
◇
「そうですか。残念です」
忘却した筈の記憶が脳を軽く
_4時間後_
感覚的にあと数分ちょっとでタイムリミットとなる。残された時間を目一杯使い現状で出来得る限りの事をやれたとは思う。細工は流々に仕上げは御覧じろってな感じで万全とまではいかないがフォローも仕込んであるし後は珠世たち次第だろう。元の時代に戻ればその結果も判明する筈だ。…不謹慎だが今から楽しみで仕方ない。ある意味ドッキリを仕掛けて後に第三者視点でもって結果をババン!と視聴する様なもんだし上手くハマってくれるといいな〜などと事の結末にワクテカする俺なのでありましたとさ。性格悪い?ほっとけ。かの盗賊イジメ…もとい盗賊キラーかつドラゴンも恐れて跨ぎ通ると称された自称天才美少女魔導士も言ってただろ?悪党に人権はない!って。正確には盗賊に…だったか。まあ広義的には同じようなもんだ。差違だな差違。ともあれ、やる以上は徹底的な対処を。ただし遊び心も忘れない。それが今生における俺の信条でありスタンスなのである。そんぐらい気楽にやらんと蛆の如く湧いて出るクソ共の相手なんぞしてられっかっての。
「じゃあな。上手く事が運べば多分もう二度と会う事はないと思うが…皆末永く達者でな」
嫌な輩にまつわる思考を放棄し湿っぽいのは性に合わんと努めて軽い口調で皆に別れの言葉を告げる俺。すると丁度タイミング良く時間がきたのだろう全身から幾つもの淡い光の粒子のようなものが舞い散るようにして立ち昇り虚空へと溶けるように消えていくのが視界に映る。それに伴い急激な速度で存在そのものが希薄になり薄れていく身体。だが俺は一切それらに構わず惜しむ様に珠世達を見つめ「…時間だ。じゃあな」と一言告げた。すると次の瞬間には視界が暗転しまるで深い眠りに落ちる様な感覚と共に意識を喪失した俺は長らく滞在した戦国の世に別れを告げ元の時代へと帰還の途につくのであった……。
◆
「行かれたか…」
「ええ、行かれましたね」
先程までゴーマが
「結局少しも恩を返せなんだ…」
「それは…私も同様です」
縁壱は家族の命と以後の安寧を。珠世は復讐の方策と諸々の手助けを。双方ゴーマより
「ならせめて受けた恩を子々孫々へと語り継がねばなるまい。符丁となるらしい、この耳飾りと共に…」
「そう…ですね。なら私からも伝えましょう。いつどのようにかは確約できませんが」
「…そうか貴女は。ご厚意いたみいる。ならば御頼み申す」
珠世の意外な申し出に一瞬の逡巡をする縁壱。しかし、これから先を案じ頼む事とした。なにしろ彼女が存命する限り万が一にも口伝が途絶える心配はなくなる。人の世の理から外れ悠久を生きるという彼女なら…それが可能なのだから。
「いえ、お気になさらず。これは私…いえ私達にとって必要な事ですから」
縁壱の頼むという言葉に対し珠世は双方にとって重要だから気にする必要はないと言葉を返す。実際に口伝が失伝した結果、未来よりゴーマが来ない事態になるなど悪夢以外のなにものでもなく相互補完の為と言われれば是非もない。
「それでも…。いや、これ以上は詮なき事か」
たとえ身体が鬼でなくなろうと犯した罪は変わらないと己を
「それにしても…色々と変わった方であった。我が子を連れ空を散歩など見かけた当初は目を疑ったもの。特にあやす為と称し空高く放り投げた…あの時ほど己の肝が冷えた覚えはない」
話題を変える為か普段寡黙な縁壱にしては珍しく口数が多く過去に起きたその光景を思い出しているのだろう眉間に皺を寄せている。それだけ本人にとって衝撃の出来事だったという事なのだろう。
それはつい一週間前の出来事。子守の最中に何を思ったのかゴーマが突如として赤子である壱護を樹木よりも高く空に放り投げるという暴挙を敢行したのだ。幸いと言ってはなんだが既に首は十分座っていたし落ちて来た所を難なくゴーマが受け止めたので大事には至らなかったのだが…それを見た母親のうたが「なにしとるんですかーーーっ!!!」と怒声を上げつつゴーマに詰め寄り
「ああ、あれは…確かに。いろいろな意味で破天荒な方でしたね」
子守の度に赤子を抱えて空を飛び周るのは常であったし空に放り投げる瞬間の光景を珠世も間近で見ていたので同意とばかりに頷く。
百歩譲って抱えて飛ぶのはいい。自身も経験したが安全性は保証されているし。だが子守であやす為とはいえ樹上より高い位置まで放り投げ落下してくるのを受け止めるなど如何なものか。
当人曰く経験上これが一番あやすのに適しているからと実行したそうなのだが流石に常軌を逸しているし親としてみれば堪ったものではない。やはり常人とは感性が…と言うより尺度が違うと判明する一幕であった。
…まあ、出鱈目さ加減で言えば目の前の縁壱という男も大概だと珠世は思うのであるが。なにせあの邂逅の日、なんでも襲ってきた髪鬼という鬼を剣一本で叩きのめしたと言うのだから。しかも傷ひとつ負わず一方的に。なので一度その本気を見て見たいとゴーマが望み恩人が望むならと縁壱がこれを承諾し珠世もその場に立ち会ったのだが鬼の視力を持ってしても殆ど視認する事が出来なかったのである。
開始の合図を頼まれた珠世が始めと告げた次の瞬間には忽然と縁壱は姿を消し六間ほど離れたゴーマの眼前へと現れる。珠世から見てそれはまるで瞬間移動でもしてるんじゃないかと錯覚する程のもの。かろうじて剣を振っているとわかるのは開始から一歩もその場を動かずにいるゴーマと硬質な金属同士がぶつかり合うような『キン!キン!』という甲高い音が連続で鳴り響くと同時に無数の火花が飛び散るからでハッキリ言って只の人間に出来る動きではない。それどころか明らかに人を逸脱し更には鬼さえも超えている。上位の鬼…それこそ鬼舞辻無惨すらも。在野にこれ程の者が居たのかと珠世は絶句した。それ故に人造人間体を創る素体の大元にと望んだのだけれど。この選択は後にとある波紋を呼ぶのだが今は割愛する。
ちなみにこの立ち会い中ゴーマは防御に徹し攻撃を一切しなかった。一見して眼前に右手の人差し指を一本立てて棒立ちしていただけ。だが身体の周囲三尺圏内に火花が絶え間なく瞬く事から全て迎撃しているのだろうと推察できる…指一本で。これは開始直前にゴーマが「俺はこの指で防ぐから好きな様に打ち込んでくれて構わない」と宣言。続けて「怪我の心配等は無用。なにせ俺の身体は鋼どころか金剛石よりも遥かに硬いからな。心配なら試しに一度この指に軽く当ててみるといい」と縁壱に促し躊躇いながら言われた通り差し出されたゴーマの人差し指に縁壱が軽く斬りつけると『キン!』という甲高い金属音が鳴るのみで傷ひとつ着かなかったので間違いない。珠世達は知る由もないが、このやり取りはDB世界の名シーンのひとつである未来青年トランクスの剣を悟空が人差し指一本で悉く弾くシチェーションと同一であり思いがけず再現できる機会を得てゴーマさんは平静を装ってはいたが内心では始終ニヤニヤしていたぞ。俺って今めっちゃ悟空ムーブしてる!と。まあ、そんな訳で攻撃を一切しなかったのである。
人類の常識どころか鬼の常識すらも鼻で笑う勢いで超速の攻防を続けた二人だったが以外にも模擬戦は1分と経たず終了を余儀なくされる事となった。肉体的な問題ではない。ゴーマは当然として人間…まあ恐らく人間?である縁壱も息一つ切らしていないのだが振るっていた剣の方が限界を迎え『キンッ!!』と一際甲高い音を立て中程から刀身が折れてしまったのである。金剛石より硬いと豪語するゴーマの指と交差し火花が飛び散るたび刃が欠け物理的に損耗していく事を考えればDB世界産のそこそこの代物とはいえ宝具でもない以上致し方ない結末と言えよう。
そんな訳で人外じみた…と言うか身体能力的にもろ人外判定間違いなしである縁壱を見て思う所がないでもない珠世だったが隣に佇む真の人外より分類上は人である分まだ理解できる…かも?と思考を放棄するのであった。
「ん?どうした珠世?なんか辛そうだぞ?昼だし腹でも減ったんか?」
己に向けられる視線に気付いた
ゴーマ曰く旅に連れ添うなら子供の方が便利な場合も多々あるし成れるようにしたとの事。大人の姿へも瞬時に戻れるそうなので薬材や器材の入手のため町や集落など人の住む場所に紛れ込む必要がある以上確かに利点ではある。なにせ大人の姿だと体格が良過ぎて威圧感がある上に目立つので珠世としても否はない。とは言え劇的な変化で違和感を拭えきれないのだが…そこら辺は追々慣れていくしかないだろう。
それと変更点がもう一つ。声だけじゃなくて容姿も少し変わっていたりする。そっくり過ぎてゴーマ自身と区別する為にも変える事にしたらしい。なんでも変えた声の主と同じ姿らしく同郷の者なんだとか。雰囲気的にはゴーマより目付きや表情が柔らかく穏やかな印象を受ける顔立ちをしており人格思考もその人物を元にしたとの事で明るく朗らかな性格をしている。それは今も如実に実感しているのだが…珠世としては少し複雑な気分ではあった。
「…いえ、少し考え事をしていただけです」
「そうなんか?」
「ええ、でも確かにもう昼ですしちょっとお腹が空きましたね。
『グゥゥキュルルゥ〜』
「あら?」
「たははははは。すまねぇな。オラの腹が返事しちまったみてぇだ」
「ふふ、そうですね」
屈託のない笑顔で交わされる言葉のやり取り。それに対し少し胸の奥がズキリと痛むような感覚を覚え思わず胸元の襟に左手をかけギュッと握る珠世。心配された…からではない。在し日の記憶が…その痛みを引き起こしているのだ。
己を見上げ我が子が笑顔で笑う。そして傍に立つ夫がその頭を優しく撫でまわし慈しむように微笑んでいる。楽しげで…もう二度と取り戻す事の叶わないその情景が…心を
「珠世!?なんか右手から血ぃ出てんぞ!でぇじょうぶか!?」
ゴクウの声にハッと我に返る。即座に指摘された右手に視線を落とし見ると血が指の隙間からポタリポタリと滴り落ちて積雪に覆われた地面を点々と赤く染めていた。
無意識の内に手を力一杯握りしめていたらしい。左手は胸元の襟を握っていたため何ともないが右手は…。強張る右手の力を緩め開くと手に食い込んでいた爪が皮膚を深く抉っており露わになった傷口から鮮血が溢れ手の平を真っ赤に染めている。だがそれも数秒と経たず出血が止まり傷口が瞬く間に塞がっていくのには
これは鬼…というより無惨対策の一環で怪我や四肢欠損などからの行動不能を阻止し尚且つ鬼にされない為に付与された能力であった。身体の大半を消失しても生き残る無惨に対し薬を使用しての弱体化を経て陽光で完全に滅殺する計画だが前提条件として逃亡を阻止するべく逃げ場のないある
「…ちょっと力加減を間違えて爪で皮膚を傷付けてしまったみたいですね。まだこの身体に慣れていないせいでしょうか」
咄嗟に言い訳じみた所感を述べる珠世。自身の再生力に驚いたというのもあるが…何故かそう口にしてしまっていた。
「そっか、そりゃ仕方ねぇな。慣れねぇ内はそんなもんだ。オラの知るオリジナルも身体を替えられちまったとき上手くいかなかったんだしょうがねぇさ。とは言え修行もしなきゃなんねえんだ
「ええ、そうですね。(おりじなる?私と同じ様に身体を交換した人なのかしら?少し親近感が湧きますね)なるべく早く慣れるので、その後はよろしくお願いしますね?ゴクウ先生」
「ああ!任せとけ!あと先生はいらねぇぞ。それ言われるとなんかむず
「わかりました。改めてよろしくお願いしますねゴクウ」
「おう!よろしくな!珠世!」
ニカっと笑い元気よく了承の返事を返すゴクウ。その屈託のない笑顔と明朗快活さに珠世はフッと毒気を抜かれたような気分になり内心苦笑する。別に
時は廻る。万物万人に関わらず等しく平等に。流るる水が如く刻一刻と過ぎ去りそして……、
「無惨。お前は此処で死ぬのです。いえ!死ね!死になさいッ!!」
「珠世!?貴様ァァァァァッ!?!」
「珠世!!」
「クッ!そんな姿になってまで死を
「もうそれしかねぇんか。…わかった」
「ありがとうゴクウ」
「ッ!?珠世お前まさかッ!? は、放せッ!嫌だ!やめろおおおおおおォォォォォォーーーーーーーッッ!!」
「いいさ、だがまた…な」
「ええ、また」
「グアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
一人の女の飽くなき執念が千年に渡る身勝手極まりない独り善がりの妄執に終焉を告げる刃を突き立てるのであった……。
最後の件は一部抜粋的なものですので脳内補完でもして楽しんでくれれば幸いです♪
あとゴクウにしたのは声だけだとあれですしゴーマの姿がないので想像し辛いからです。悟空なら脳裏に表情や仕草がありありと思い浮かべられますしね。