「おいしいー!」
「んー!」
「おにくー!」
俺と炭治郎による大小腹鳴り事件から30分後。現在、俺は竈門一家の食卓にお邪魔し晩御飯を堪能させてもらっている。まあ食卓と言っても卓は無く囲炉裏を中心として車座に座る板張りの只の床なのだが。古民家特有の昔ながらの囲炉裏を皆で囲む様はまるで大河ドラマの一幕のような趣で情緒があっていいなぁと内心思う。薄暗いのがちとあれだが立地的に電気等のインフラ整備など望むべくもないのでしょうがない。ちなみに猪は手早く俺が解体し炭治郎の母親である葵枝さんが調理を担当。基本シンプルに肉厚なステーキとして焼き醤油ベースの味付けは肉の旨味を充分に引き立て美味そうな事この上なく子供達は焼けた側から競うよう食べまくりすこぶる好評だ。
一方で俺はそれを尻目にタケノコ汁を啜り白米と漬物を一人黙々と食ってたりする。なぜなら今の俺にとってはタケノコ汁の方が遥かに優先度が上なのだ。捌いた肉は大量にあるんで子供達が落ち着いてからでいいし、それでもし無くなったとしても一向に構わない。食おうと思えば肉はいつでも狩って食えるからな。なのでタケノコに味が染み歯応え抜群でうん!美味しっ!
「お茶をどうぞ」
「お、すまない。いただこう」
肉肉肉野菜肉肉肉な怒涛の食事が終わり葵枝さんから手渡された湯呑みを軽く礼を言って受け取り啜る。ふぅ…食後のお茶は落ち着くねぇ、自分のルーツが根っからの日本人だと心底実感するわぁ…などとお茶を飲みつつまったりリラックスする俺。至福である。
子供達の喧騒と肉の焼ける音であれだけ騒がしかった居間は打って変わって静かなもの。しかしその静けさは静寂とまでは言い難く部屋の隅にて炭治郎を筆頭に床に仰向けに寝転がる子供達の笑いを誘う姿があった。
「お、おなかが〜」
「くるしいの〜」
「もうはいらないよ〜」
という訳で紡ぐ言葉から解る通り子供組は皆腹をパンパンに膨らませ呻いているぜ。はっはっは。まるでアザラシの子供が陸で仰向けに寝っ転がっているかのようだ。オットセイのと表現しないのは情けである。オウオウオウ。
一応顔合わせと挨拶は食事前にすでに済ませてある。聞く所によると竈門家は先祖代々この山で炭焼きを生業としている家系らしく家族構成は長男である炭治郎と長女である禰豆子ちゃんに次男の竹雄くんの二男一女に父親の炭十郎氏とその妻の葵枝さんの合わせて計五人家族。これぞ古き良き日本の家族って感じで高身長強面な俺を見ても皆一切怖がらず受け入れてくれた暖かい人達だ。
サイヤ人の証たる尻尾の存在はすでに炭治郎にバレているので隠さずそのまま晒したまんまだったんだがそれを見ても驚きはしたが忌避はされなかった。挨拶がわりに尻尾を目の前で左右に振ったらむしろ嬌声を上げ群がられたぞ。おい炭治郎、お前さんちょっと前にめっちゃモフってたろ。なに妹弟を差し置いて真っ先に近寄りモフってんの?兄ちゃんずるい〜って二人共言ってんぞ?兄の矜持はどうした。あ、根元はやめ、やめろ!鍛えたから力が抜けたりはせんが根元付近はくすぐったいんだよ!い、嫌ァァめろぉ〜〜っ!!? ふぅ…なんとか尊厳は守り通したぜ。その過程で炭治郎の両頰が薄っすら桜色になったがな。久し振りだぞ尻尾でパンパンしばいたのは。これをやるのは基本的に舐めプして格下を親父にもぶたれた事ないのに!ってする時くらいなんだぞ?まったく……なんてのがあったが概ね問題はない。
「ゴーマさん主人が」
おっと炭十郎氏に呼ばれてるな。どうやら食後のまったりタイムはここまでらしい。俺はいまだ呻き続ける竈門兄妹弟に視線を向けこれなら邪魔は入らんか当分起き上がる事すら無理だろうと苦笑しよっこらせと腰を上げ立ち上がった。
「ギ、ギ、ギ」
歩くたび自重で足下の床が少し鈍い音を立て鳴る。踏み抜かないよな?とちょっと心配しつつ俺は炭十郎氏が座る囲炉裏の対面に案内され促されるまま敷いてある丸い茣蓙の上に腰を下ろし座った。灰床の上でチロチロと炭を燃やす火が双方の顔を照らし静かに燃えていて何だかタイムスリップでもしたかのように感じ感慨深い。…うん実際してたな時代的に。転生前の俺が知る世界と同じ歴史を辿ってるようだしさ。ただ…普通とは言い切れないんだよなぁ。なんせ俺が現界したんだ。絶対なんかあるだろこの世界。今までのパターンからして平穏に過ごせるとは到底思えん。それを踏まえどこまで話すかと言うより話せるか分からんが…対話の時間といこうか。
◇
妻である葵枝が定位置である隣に座り寄り添うと炭十郎は先んじて自分からと口を開いた。
「さて、まずは改めてご挨拶を。私の名は竈門炭十郎。炭焼きを生業としております。気軽に炭十郎とお呼び下さい」
「丁寧な挨拶いたみいる。俺の名はゴーマ。ただのゴーマだ。苗字は無い。だが無いというのも不便なため便宜上はサイヤと名乗る事にしている。堅苦しいのは苦手でな多少無遠慮な言葉遣いをすると思うが気にしないでくれると助かる。こちらも気軽にゴーマと呼んでくれ」
開国前ならいざ知らず今の時代普通なら誰でも持つ筈の苗字が無いと言う言葉を聞き怪訝な顔をする炭十郎。
「言葉遣いは別に構いませんが苗字を便宜上ですか?理由を伺っても?」
「なに簡単な理由でな。文化的に種族全体で元から苗字を持たないってだけだ」
「種族?」
「ああ、サイヤ人ってのが種族名でな。名乗る苗字として解りやすいだろ?で、この尻尾を見てわかる通り俺は…人じゃない。正確には人の括りではあるが尻尾を持つ別種の人間だ。この星…って言っても理解しずらいだろうから詳細は後で話すんで今は外国より遥かに遠い場所出身と思ってくれ。が、一方で元は日本人でもある」
「元…ですか」
「ああ、ときに輪廻転生って言葉を知ってるか?」
いきなりの話題転換に訝しむも問われた以上はと視線を朧に記憶を探る仕草をする炭十郎。
「それは…確か死んだ者は後にまた人として生まれ変わるという考えですね。所蔵する書物の一つで読んだ覚えがあります」
「本を複数所持しているのか。山奥に住んでいるのに博識だな。ああ馬鹿にした訳じゃない。気に障ったのならすまん」
「いえ、構いません。実際こんな山奥に住む者が持っているとは普通思わないでしょう。生来身体が弱く伏せがちであった私を案じて生前の父が知識だけでもと与えてくれたものなのです。気にしていませんのでお気になさらず」
「そうか、いい親父さんだな」
掛けられた言葉により自身の父を想ってか微笑する炭十郎。
「ええ、とても。それで?」
「俄かには信じられん話だろうが俺は…その輪廻転生ってやつを実際にしたんだ」
「…なるほど。それで元日本人だと」
こんな与太話にしか聞こえない事を聞いたにしては間髪入れず納得する様子を見せる炭十郎の言葉に俺は驚く。子供ならともかく大人がこうも簡単に信じられるものかと。
「信じるのか?言った本人が言うのもなんだが荒唐無稽にも程があると思うが」
「ええ、貴方は嘘を一言たりとも言ってない。そういう匂いがしますので」
デジャヴだな。子が出来るなら親も…と懸念していたがマジで同じ能力持ってんのか。
「ほう?匂いで。…なるほど炭治郎と同じだな」
「家系なのでしょう。私の家は代々そういう特異な者が稀に生まれるのです。親子二代続けては珍しいのですが」
「嘘が判るか…それって辛くないか?」
人は嘘をつく。良きにつけ悪しきにつけ態度言葉で本音と建前を使い分ける生き物だ。それが判別出来るのはメリットだが人間不信にも繋がるだろうに。
「時には。一族が長年この様な山奥で暮らしている理由の一つでもありますね。ですが悪い事ばかりでも無いのですよ。この鼻が効くおかげで私は愛する妻と出会い結ばれたのですから」
「もう、あなた。人様に恥ずかしいこと言わないで下さい」
話が始まって以来夫の隣で一切口を挟まず聞きに徹していた葵枝は唐突な夫の惚気に顔を真っ赤に染め恥じらう。だが炭十郎の言葉はこれだけでは終わらなかった。
「恥ずかしくなどないさ。お前を娶ってから私はずっと幸せだ。出来るなら…いつまでも一緒にいたい…」
「あなた…」
時が止まる。二人の周りに広がる愛と言う名のザ・ワールド。何人たりとも干渉する事あたわじってか?ハハハハハ…こんのリア充共め!唐突に惚気るだけでは飽き足らず囁き愛までブッ込んでくるとは爆発しろッ!と思った俺は…独り身の哀しさよ。だが一瞬二人に悲しげな表情が垣間見えたな。多分だがあれは……。いや今は対話が先か後にしとこう。
「ゴホン、あ〜たいへん野暮ではあるが話を続けてもいいか?夫婦の憩いは後に願いたいんだが」
俺の忌憚ない言葉に竈門夫婦は二人して恥ずかしげに顔をそらす。いや炭十郎氏、おまえさん恥ずかしい事など無いって言ってたろ恥ずかしがってんじゃねえよ。と、心の中で突っ込んだ俺であったとさ。
今回、俺は全て包み隠さず正直に話す腹づもりでいる。ぶっちゃけ面倒くさいってのが一番の理由だが炭治郎と同様に匂いで判別される以上嘘や誤魔化しに意味はない。それに能力はこの際いいとして他に見逃せない要素があるのだ。実は竈門家において炭治郎並みに特異な存在がいてそれが…炭十郎氏って訳で初顔合わせ当初驚いたもんだ。なんせ感じ取れる気が戦闘力換算で推定10程もあったからな。これは幼少期初期の悟空に匹敵する数値だ。つまり常人じゃない。これがこの世界が普通じゃないって根拠の一つなんだよなぁ。罷り間違ってこの国の一般成人男性が生来身体が弱いと言う炭十郎氏以上の戦闘力を持つのなら日本は今頃全く違う歴史を辿っていた筈だ。想像してみたら解る。開国を迫るため来航した黒船に対し鉄砲大砲なにするものぞと怒涛の如く海上を駆け群がる武士の軍勢……うん!無理ゲーにも程があるなッ!
「お恥ずかしいところを」
俺が来航黒船地獄絵図の巻を想像してねぇわ〜と戦慄していると持ち直した炭十郎氏が若干バツが悪そうに謝ってきた。その横で葵枝さんはもうあなたのせいですよプンプンって感じになっとります。でも内心嬉しはーと♡状態であるとみた。うーんやはり爆ぜろこの野郎と思ってシマウマ。怨怨怨。
「なに、夫婦仲良き事は子沢山って言うしな。ごちそうさん」
「ははははは、まいりましたね」
俺がちょびっと皮肉交じりに揶揄すると降参とばかりに苦笑して肩を竦める炭十郎氏。やはりどう見ても本人が言う通り痩身痩躯で病弱そうなのに感じる気はラディッツに「ふん、戦闘力たったの5か。ゴミめ」って言われた鉄砲持ちのオッサンの倍近いぜ。見た目詐欺だな詐欺。おそらく俺が今日狩ってきた猪ぐらいなら軽々と狩れるし大型の熊でも平然と降せるだろう。父親がこうなんだ。炭治郎の事も含めこの家族には何かがある…と言うより何かが起こるのかもしれない。それがこの世界の物語なのか…見極める必要がある。前の二つの世界は既知の観測世界だったが今の所この世界に覚えは無い以上予測でしかないが気に留めておこう。
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お宅訪問実施中。夫婦喧嘩は犬も食わない。なら夫婦円満は独身胃もたれって事で。
あ、原作読み込み甘いので年代年齢などガバです。間違いはおいおい直すので執筆優先してますすんません