「さて、話の続きだが俺の身の上話は概ね語った通りだ。何か質問はあるか?」
「そうですね…なら何故ここに?」
質問の幅が広いな。それだけで幾通りかの問いになるぞ。質疑的にはこの世界もしくは自分達の家にとも取れるが…たぶん俺の目的を聞いてんだろうな。なら簡単だ。
「ふむ、それは…」
「それは?」
「わからん」
「わからないのですか?」
困惑してるな。本当に俺がわからんって言ってるのが嘘じゃないと判るからなんだろうが。というかこのやり取り二度目だな。炭治郎ともやったわ。父でテイク2だな。略して父テツ。どっかの野球父みてぇだわwはははっ!
「ああ、気付いたらこの世界に居てな、夢現に微睡む俺を呼ぶ炭治郎の声に起こされたんだ。それで会話のすえ俺が居た世界じゃないと判明してこれからどうしようかと思っていたら炭治郎が家に招いてくれたんで此処に居るって感じだな。ああ、それと特にこれといった目的は今の所ないぞ」
「なるほど…」
「なに、難しく考える必要はない。単純に言えば炭治郎曰くただの迷子だそうだ」
俺の自傷とも取れる境遇の在りようを聞き呆気に取られる炭十郎氏。だがそれも一瞬で苦笑混じりの表情に変わった。
「炭治郎が…ふ、ふふふ。そ、それは我が子ながらなんとも絶妙な事を…。ああ、すみませんゴーマさんにとっては笑い事ではないのですよね」
「いや、構わんさ。既に帰る場所もないし行く場所も目的もない。なら迷子ってのは強ち間違いじゃないしな」
「もうあの子ったら。すみません」
旦那の隣で聞いていた葵枝さんも息子の発言に苦笑いを浮かべながらすまなさそうに謝ってきた。まあ、帰ってきて初っ端に俺が迷子って炭治郎が紹介がてら言ってたからな。今更だろうよ。
苦笑い合いが終わり心情的に皆落ち着いたので会話が再開するが炭十郎の様子が少し変化する。先程までの和やかな態度から若干居住まいを正し真剣な顔をしたのだ。
これは何かあると察し俺も心持ち背筋を伸ばし姿勢を整える。予想では今後の事を話すんだろうと思っていたのだが…違った。開口一番、炭十郎の紡いだ言葉それは……、
「我が家には代々受け継がれてきた口伝があります」
何故か口伝だった。
はい?口伝?なんで今それを?と思うが一旦その疑問を飲み込み続きを待つ。
「何故いま口伝などと不思議にお思いでしょうが、これには訳があるのです」
至極真面目な顔で語る炭十郎氏の様子に戸惑うも続きを促すべく視線を向ける。それを了承と受け取った炭十郎はその訳とやらを語り出した。
「その口伝と言うのが『いつの日かゴーマという尾を持つ御仁が現れる。その方に代々受け継いだ耳飾りを手渡せ』…というものなのです」
その内容を聞き俺は耳を疑う。名前だけなら人違いで済むが尾を持つとある以上は俺以外に該当はしないからだ。まさか俺以外のサイヤ人なんていないだろうし。…いないよな?
「十年ほど前、病床の父から耳飾りを受け継いだとき共に伝えられた口伝なのですが…まさか私の代で履行する事になろうとは夢にも思いませんでした。家に古くから伝わる口伝とはいえ尾を持つなんて方が実際に現れる訳がないと内心思っていましたので。てっきり私は名を代々襲名する一族との約束事かなにかで尾は符丁だと思っていたのですよ」
驚く俺を余所に炭十郎氏はそう言ってはにかむ様に微笑む。
まあ普通そう思うよな。逆に本気でそんな奴が現れるって信じる方がどうかしてるわ。
「実際に尾を持ちゴーマという名の貴方と対面して本当にびっくりしました。あの先祖の口伝が現実に?まさかそんな馬鹿なと当初自身の目を疑ったくらいなのです」
ああ、最初出会ったときの驚きは二重の意味だった訳か。なるほどね…。
「これをお持ちください」
言葉と共に両手を此方に向け前に出す炭十郎氏。その手の平には一対のカルタとも花札の様にも見える耳飾りが乗せられている。
「これがその口伝とやらの耳飾りか…」
厚紙っぽい和紙か何かで作られたそれは炭十郎氏と顔を合わせた当初から耳に着けていた代物で男で耳飾りとは珍しいなとは思っていた。サイズは目測で縦4㎝横2㎝厚さ2㎜くらいで表面に赤い太陽が天空から大地に光の筋を幾本も照らす様な絵柄が描かれており上部の真ん中付近に付け紐があってその先を耳に付ける仕様となっている。
「どうぞ、手に取ってみて下さい。口伝でも手渡すようにとなっていますので」
しげしげと眺める俺に炭十郎氏はさあさあと言わんばかりに耳飾りの乗った右手を囲炉裏越しに突き出してくる。その目は好奇心が如実に現れ表情も何かを期待するような感じだ。今までの落ち着いた雰囲気から一変、子供染みたその様子に炭治郎を幻視し親子だねぇと思い物怖じの無さは遺伝だなと確信する。尻尾があればブンブンと撓っている事だろう。葵枝さんもこんな夫が珍しいらしく驚いてるし。
「あなた、少し落ち着いてください。ゴーマさんが驚いていますよ」
グイグイくる炭十郎氏の勢いに若干引き気味な俺の様子を察して葵枝さんが夫を止めるべく声を掛け制止してくれた。
「ああ、すまない。つい長年の口伝が果たされると思うと勢てしまった。いや面目ない」
さすがに妻にそう言われると止まらざるを得ない炭十郎はバツが悪そうな顔を浮かべ謝罪を口にしつつ前傾姿勢になっていた態勢を元に戻す。しかしその手は前に突き出したままだ。引っ込める気はないらしい。
期待も露わに待つ炭十郎氏の姿に収拾をつけるには受け取るしかないと悟り何だかなぁという気持ちで俺は耳飾りへと手を伸ばす。そして手が耳飾りに触れた次の瞬間!………特に何事もなく受け取るのだった。
「……何もおきませんね」
口伝通りにしたというのに至極あっさりと終了した受け渡しに落胆の色を隠せない炭十郎。その声は期待から一転テンションだだ下がりなのがなんとも言えない感じである。
「あー……期待に添えなくてすまんな」
さすがに無言で通すのは良心が咎めるので軽く謝っておく。まあ不可思議な口伝だがそうそう何かが起こるなんて事ある筈がない……!?
「!?ッておい!時間差かよッ!?」
何も起きずちょっと安堵していた俺。だが次の瞬間、視界が光で塞がれたと同時にかつて何度か経験した感覚を感じ今から何が起こるのかを瞬時に理解する。溢れ出す光は俺自身から出ているのだ。それが意味するところは…。
「おお!これが口伝の?!」
風雲急を告げる事態に焦る俺を余所にして炭十郎氏の喜色に満ちた声が木霊するのを聞き嬉しそうで何よりだなアンタ!こっちの身にもなれよ!?と内心毒吐きつつ一瞬の浮遊感のすえその場から俺の姿は掻き消えるのだった。耳飾りが落ちて奏でるカタッカタッという微かな音を残して……。
◆
「グギャガァァァァァァァァァッ!?!?」
最初に感じた感覚は匂いだった。野生の獣じみたアンモニア臭く酷く血生臭さい匂いで、その発生源たる存在が真正面から急接近して来るのを気で察知し反射的に殴ったら濁声の悲鳴を上げて吹っ飛んでいき壁か何かにぶつかる音が聞こえたのでひとまず安堵する。瞼は眩しいのを咄嗟に防ぐため閉じていたが拳の感触からクリーンヒットしたと確信できたので当分は起き上がれないだろう。
閉じていた瞼を開く。瞬時に周りを見渡すと板張りの日本家屋の中のようだ。間取り的に竈門家に酷似しているが別の家と判断。前方を警戒しつつ視線を背後に向ける。するとそこには腹を大きくした一人の女性が壁を背にもたれ掛かる様にして座り此方を見上げている姿が…。
「あ、あなたは誰ですか?」
随分と怯えた様子だが気丈にも震える声で何者かと聞いてくる女性に対し俺は遠い昔に観た旅人の背を思い出しながらこう答えを返すのであった。
「通りすがりのサイヤ人だ。覚えておけ」
なんてな♪
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はい、いきなりの展開ですね。はたして何が起きたのか?何故そうなったのか?いったいこの女性は何者なのか?それは次回にアタック来道!
ばればれ〜〜(๑>♨︎<๑)و ̑̑
はい、ストックはここまでです。次はまだ執筆中です。気長にお待ち願いまする。しーゆー(*・ω・)ノو ̑̑