「うた、うたどうした。こんなに震えて」
「うん、縁壱ごめんごめんねぇ…ヒック」
「うた!?」
うーむ、うたさんが旦那である縁壱氏に抱き付いてからこのやり取りが延々と続いてるぞ。どうしたと問う縁壱氏に強く抱き付き涙ながらに謝るうたさん……まさに堂々巡りである。
そんな状況を傍観を決め込んで眺めていたら縁壱氏が此方を不意に見てきて視線が合う。その目には訳がわからない説明が欲しいという思いが如実に表れている。俺が原因かと訝しんでもいるが、それよりもうたさんの対処に手一杯でこの際俺でもいいからこの状況を何とかしてくれ!と願ってる模様。俺としてはあんな体験をしたばかりのうたさんを旦那から引き剥がすなんて事はしたくないので放置。今は思う存分甘えればいいのだ。まあ、なぜ謝っているのかは概ね察せるがな。おそらくアレに襲われた際に旦那を残し子供共々の生を諦めかけた事を謝ってるんだろう。その罪悪感を夫の胸の中で発散中という訳だ。こういうのは収まるまで待つしかない。でなきゃしこりが残るからな。しゃあなし。理由が解らず右往左往する縁壱氏には同情するが夫なんだ甘んじて受け止めやがれこのイケメンが!と言っておく。…夫婦とは言えなんで俺はリア充ばかりに巡り会うんだろうな…彼女欲し。俺…この世界で素敵な女性と出会ってリア充するんだ………あ″?貴様にはそのチンチクリン幼女がお似合いだぁ?!セイバーを嫁にしようとしてるテメェに言われたかねぇよっ!それにこの子は将来ボンキュッボンのナイスバディになるんだよ!未来すら見通すって触れ込みの癖にその目腐ってんじゃねえのか?あ″!?この半永久胸薄系娘スキーのボッチ極まったAUO野郎ガアァァァァァァァァッ!!!…………ふぅふぅふぅ…ふぅぅ………あうち、つい嫌な奴とのやりとりを思い出しちまったぜ。あ…目の前のリア充夫婦が俺を見て驚いてる?…ま・さ・か
「……もしかして声に出てたか?」
コクコク頷く二人。どっからとかは聞かない。俺は……独りだ。どっかのボルテクス界でコトワリでも成就させちゃおっかな…。お、おムスビがい、いいんだな。キヨCーボンバイエ!キヨCーボンバイエっ!そして世界は米に包まれた……完! あ、塩けチョイ増し海苔は焼きパリめでお願しゃース。
俺の内心の葛藤 (アバドーン)などつゆ知らず、ようやく落ち着いたらしいうたさんが旦那の胸元から離れ佇んでいる。こちらを伺うその目に同情とか私にもできたんです貴方にも必ず…ってそら暖かい感情が宿ってる気がするのは気のせい?……同情するなら縁をくれ!旦那の事じゃねーよ!とセルフ突っ込みは屁のツッパリにもならんですかねぇ…。
「ゴーマさん?」
は!?しまった。つい思考の海に埋没するクセが…。転生してもここらへんって変わらないのな。DB世界とFate世界は戦いが勃発しまくってたから日常系…とはあんなのが居る以上言い切れないがパワーインフレが比較的なさそうなせいで思考に耽り過ぎる悪癖が出やすくなってるようだ。緩んでんなぁ…。
「ああ、すまんすまん。ちょっと昔を思い出してな。さて、どうやら落ち着いたようだ。なら話の続きをしないか?旦那さんも事情を聞きたいだろうし」
「はい、もう大丈夫です」
涙の跡を拭いつつしっかりとした返事をするうたさん。その横では俺達のやり取りを聞いてあからさまに縁壱氏がホッとしてるぜ。女の涙はきついよな。それが嫁のなら尚更に。なお俺の独り言は両人共なかったものとしてくれるらしい…情けが血涙しそうなほど骨髄に染み渡るぜ。ともあれアレの事もある縁壱氏を交え会話を再開するとしよう。
◇
立ち話をする気はないので家内に場を移し座る。焼き増しのようにまたまたお持て成しをしようとするうたさんを制し冷めて緩くなっていた湯呑みの白湯を新たに人数ぶん注ぐと一服。二口、三口と口を付け半分ほど飲んだところで頃合いとばかりに会話を始めた。
「改めて自己紹介するが俺の名はゴーマ。苗字はサイヤだが武家でも公家でも何でもないので気軽にゴーマと呼んでくれ。よろしくな」
「私は継国縁壱。元は武家の家に連なる者だが故あって出奔しているので縁壱と」
会話の初めは互いの名乗り合いから。佇まいから予想はしていたが、やはり武家の出だったか。出奔は…まあ事情は誰しも多かれ少なかれあるんで気にしない。それを言ったら俺なんて転生サイヤ人で前サーヴァント現サーヴァント(?)という属性てんこ盛りだからな。
「わかった。早速だがとりあえず一通り説明しよう。疑問もあると思うがひとまず聞いてくれ」
俺は起きた出来事を時系列順に順序よく話し始めた。俺がとある事情でこの家に訪れその直後なんか変なもんに襲われたのを反射的に迎撃。それは俺を襲ったものじゃなくうたさんを襲おうとしていた輩で外に殴り飛ばしたら挨拶もそこそこにまた再度襲ってきたので頭を鷲掴みに外へ連れ出し会話の邪魔になるからと空へ放り投げ今現在この家の空の上にて拘束中という内容を掻い摘んで語る。嘘や誇張は一切せずありのままに。なにせこの縁壱氏たぶん竈門家の先祖にあたるはず。耳飾りがその根拠。なら炭治郎や炭十郎氏と同様の能力を持っていてもおかしくない。素直に全部話すのが吉という訳だ。ちなみに返り討ちにした話の件でうたさんが俺の予想していた通り生を諦めかけた云々を口にし縁壱氏に謝ってまた抱き付いたでござる。チッ。
「とまあこんな感じだ。何か質問はあるか?」
ちょっとしたハプニング(私怨)もあったが、ひとまず話し終え縁壱氏に疑問は?と話を振る。
「あなたは……人か?」
すると開口一番人間かと問われた。その問いの答えは決まっているが…あえて質問を質問で返してみる。
「ふむ、人に見えないか?」
「いや姿そのものは人に見える。だが気配が今まで感じた事のないものだ。それに話を聞く限り人の所業とは思えない事を平然としている」
なるほどね。見た目より気配に違和感を感じたか。やはり普通じゃないなコイツ。俺の方が仙人か何かかと問いたいぞ。というか気の高さもそうだが間近で観察すると呼吸音もおかしいな。意識せず無意識にしてるようだが吸気量と排気量が尋常じゃないほど多い。これはまるで…波紋の呼吸?いやちょっと違うか?うーん…後でそこら辺も聞く必要がありそうだ。
「俺としては所業云々は出来るからとしか言えん。そして人か人でないと言ったら人だな。ただし種族違いのだが」
そう言いつつ俺は腰に巻いていた尻尾を解き縁壱氏の目の前でゆらゆら揺らし誇示した。
「それは…尻尾?」
切れ長の目をこれでもかと見開き驚き凝視する縁壱氏。その隣のうたさんも口元に手を当て驚愕している。
「夜空に星があるのはもちろん知ってるな?実は星はその殆どが天に輝く太陽と同じでな、その側には極少数だがこの大地と同じく世界があり様々な生き物が生息し生きている」
俺は手の甲で板張りの床を軽くコンコン鳴らして強調する。
「別の世界…」
「そうだ。で、俺はそんな別の世界に生まれた人種で種族名サイヤ人のゴーマという訳なんだが…信じるか?」
「…わからない。嘘を付いてる様には見えないし貴方はうたと子供の命の恩人と聞いた。信じたいとは思う。…だが荒唐無稽過ぎてさすがに鵜呑みにはできない」
「まあそうだろう。俺も自分が同じ事を言われたら家族だろうが即座に信じるとは言えん」
ふむ、嘘は言ってないのにこの反応って事は…どうやら縁壱氏には竈門親子と同じ能力は備わっていないらしいな。まあ今さら嘘を言う気もないが。逆に証明が面倒とか思ってしまうのが何とも言えん気分だ。ああ、なんか竈門親子に既視感を感じると思ったらカリン様に似てるのか。あの仙猫様はマジで直に心読んできたからな。まあそれを承知で会ったんだが。だって仙豆欲しいし。あれが有るのと無いのじゃ生存率的に雲泥の差があったしなDB世界。まあ悪い世界じゃないんだ。ただインフレが酷いだけで…。うん、辛い記憶は思い出さないに限る。なんて苦労したDB世界のエピソードをそれでもちょっと思い返しブルーになる俺。だがもう過ぎ去った過去だ。落ち込んでもしょうがないので気を取り直し会話を続ける。
「でだ、信じる信じないはこの際置いといて肝心なのは俺が此処に現れたって事だ。来たと言ってもいい。過程は説明が難しいんで省くが簡単に言うとその耳飾りに導かれたって感じでな」
「この耳飾りが?」
「ああ、多分だが今ここに俺がいるのは口伝と合わせて未来にあんたら夫婦がこの耳飾りを残したからこそだと俺は思ってる」
母の形見である耳飾りに手を当て縁壱はもしやと思った。世の中不可思議な事もあると知っているが故に。自分自身も普通の者には見えないものが見えるのだ。ならこの目の前の男の言っている事も本当に有り得るんじゃないか…と。ふと男が言った言葉に違和感を覚える。先程このゴーマという男は口伝と未来に耳飾りを残したから自分は此処に居ると言った。ならこの男がどこから来たのかは…。
「貴方は…未来から来たとでも?」
「理解が早いな。まあ信じられん話だろうが今から400年後の竈門って家族にその耳飾りと口伝…確か『いつの日かゴーマという尾を持つ御仁が現れる。その方に代々受け継いだ耳飾りを手渡せ』って内容が代々残ってて、それでその耳飾りを触ったら…」
「…ここに現れたと」
「そうだ」
俄かには信じられない話だ。それでも縁壱には嘘を言ってるようには見えなかった。なによりこのゴーマという男が現れたお陰で助かったとうた本人が言っている。なら自分が今すべき事は…。
今俺はそれはそれは見事な土下座をされている。見惚れるような正座から両手を床に八の字につき背をピンっと水平に深く頭を下げるやつだ。
「今更ですがうたと我が子をお助けいただき感謝いたします」
「ありがとうございます」
突然の土下座にちょっと唖然とする俺。縁壱氏に少し遅れてうたさんも感謝と共に土下座しようとしたのでそれは慌てて止めさせた。妊婦にそんな事させて破水でもしたら流石にやばいからだ。まあその代わり首肯で感謝されたが。その後、何も言わなかったらずっと土下座が続きそうな雰囲気だったので俺はわかったその感謝受け取ろう。なので顔を上げてくれと言ってやめてもらったんだぜ。はぁ…何度されてもこれだけは慣れんな。日本人気質が魂レベルで染み付いてるから逆にそこまでしなくても…って思っちまう。客観的に見たら家族の命救ってもらったんだからって解るんだけどもな。これがもし悟空なら「おう、そっか助かってよかったな。お礼?なら飯食わしてくれ。オラ腹減っちまった」なんて言ってあっけらかんとした顔で済ますだろうしベジータなら「ふん、くだらん。たまたまそこに気に食わん雑魚がいたからぶっ飛ばしただけだ。貴様らのためじゃない。勘違いするな!」ってツンデレ風に言うんだろうな。あいつ家庭持ちになってマジ丸くなったからな。実際に実物を見てビックリしたのを今だに覚えてる。
ちなみにだが見たのは建物の物陰からだったりするんだなこれが。何故かと言うと俺は本編ともいえるストーリーにとある一点を除き全く関与していないからだ。考えてもみてくれ、DB世界に産まれた!なら悟空達と一緒に摩訶不思議アドベンチャーな冒険しようぜ!って普通すると思うか?下手すりゃ自分というイレギュラーのせいで世界が破滅するかもしれないんだぞ?いくらサイヤ人になっても心は元パンピーの一般人。そんなリスク背負ってまで関わろうとは俺は思えなかったのさ。
まあ一部の人物には接触せざるを得なかったが。カリン様もその一人だ。あとブリーフ博士も。俺も生まれ変わってから身近に宇宙技術に触れ合う機会があったんで科学をそれなりに修めたんだが…さすがにポイポイカプセルとか重力技術とか強くなる為の必須テクノロジーを独自再現なぞ出来る訳もないので宇宙技術関連と引き替えにこっそり習ったんだ。いや〜やっぱ凄えよなポイポイカプセルの理論なんてマジ脱帽クラスの発明で天才ってこういう人の事を言うんだと実感しちまった。
そもそも俺の立ち位置自体が最初から悪かったって事が関与しなかった最大の理由なんだよ。なんと俺は悟空が飛ばされっ仔になる一年先輩だったのだ。その事実をアタックボールの中で目覚め出自や世界観から己の境遇を悟り何処に向かっとんじゃいと航路データを見て愕然としたね。なにせ行き先が地球だったんだもん。それを知った俺が何を想像したか分かる?これ下手すりゃ悟空が地球に来なくなるんじゃねぇの?!やべえこのまま悟空が来なかったら俺が悟空の立ち位置じゃんよ!?ってさ。もう一度言うが俺は心は生粋のパンピー。悟空の代わりなんぞ無理ぃぃぃ!なので一計を案じ地球に着いて悟空が産まれたはずの11ヶ月後にスカウターで惑星ベジータに向け一芝居打ったんだわ。具体的にはスカウター越しに「グ、ぐわ〜〜!俺じゃ敵わない奴に会っちまった!?お助け〜〜!…タスケ…シ…ヌ……ブッ」って感じにやったんだ。これで悟空が飛ばしっ仔になるフラグが立つと信じて…。原作で描写されなかったが万が一にも持ち主の生存をスカウターが記録送信してる可能性を考慮し確実に死んだと思わせるため戦闘力をコントロールしてゼロにする修行マジ必死こいて頑張ったぞ俺は。まあ後に機能的に無いと判明し取り越し苦労だったんだがな。んで通信後はスカウターをぶっ壊したのさ。その後は悟空が来るのをマジ神様仏様に祈りつつ修行してたんだわ。で、その結果、悟空は無事に俺の後釜に地球に送られ原作が始まったんだなこれが。重圧から解放された俺はそれ以後は遠目で原作の推移を達観しつつ修行の日々+普通の生活を送ったって訳。
ただ一つだけ俺は例外的に原作に介入し改変した事があったりする。それは孫悟飯老の生存だ。この一点だけはどうしても看過出来なかった。たとえ原作乖離の可能性があったとしても…。本当の孫の様に慈しみ育てた養い子に踏み潰されて死ぬのを見て見ぬフリは流石に出来なかったんだよ。サイヤ人強襲編でラディッツより聞いたサイヤ人の大猿化の特性から自身が養父を殺した残酷な真実を知るなんて悲し過ぎるしさ。まあブルマが来る一年前に老衰で亡くなったから原作に支障はなかったんで安堵したが。人の死に安堵するなぞ不謹慎極まりないではある。だが理由が理由なので勘弁してもらいたい。
ただその皺寄せかバタフライエフェクトかは知らんがイレギュラーが起こってしまうのには参ったよなぁ…。何が起きたって?簡単な話だ。劇場版の輩が襲ってきただけさ。ファキュー!特に最悪だったのがフリーザの兄のクウラの野郎だ。アイツ悟空がまだ地球に帰ってきてない時期に来て居ないと知るや否や地球を宇宙の塵にしようとしやがった!さすがに見過ごせんかったんで俺が対処するしかなくてマジ大変だったぞ。メタルクウラなんてゴメンだったからキッチリ消滅させた筈なのに後日出てきやがったしよぉ…。どうなってんだよ?歴史の修正力か何かかと本気で疑っちまったぞ。瞬間移動なかったらどうなってた事やら。習得してなかったら対処しきれんかったぞマジで。
その後は悟空達が関与出来ない状況のみ俺が随時対処してスーパー編を経由し天寿をまっとうしたんだ。GT編じゃなくて良かったぞ。あれ最終的に悟空居なくなるからな。流石にその場合は全力で阻止するつもりだったしビルス様現れた時は心底安堵したぜ。その頃には劇場版も品切れで憂もなく気楽だったしよ。序でに俺もゴッドになる機会を逃すのはもったいないと地球に来訪した生き残りのサイヤ人を装いゴッド降臨の現場に立ち会ったんだ。その後の事は特に特筆する事もなく生涯を終えてFate世界にサーヴァントとして喚ばれ三度目の今に至る。そんな遠いようでそれほど昔でもないDB世界からの生い立ちから始まった第二の人生の事をふと懐かしく思い出しながら俺はちょっとだけ物思いに耽るのだった。
はい、現在も自転車操業執筆する作者です。一応平均5000文字みたいなので次話掲載します。拙くても勘弁してね?ではまた次の投稿で。
PS・評価ポイント入れてくれた人ありがとう。初めてだったので嬉しかったです。8と結構高くて少し書いてて良かったって思いました。グラシアス!しーゆー( ´ ▽ ` )ノシ