「ズズズ。じゃあ、その呼吸は生れつきってことか?」
「生まれて此の方…私はこれが普通だと思っていた」
月下に舞う
「ほうほう、なら今回が初めての遭遇って訳か」
なんともはやと遺伝の神秘に慄きつつ次に話の大本たる鬼の存在を知っていたかと縁壱氏に尋ねるも自分もあの様な鬼がいるなど今日の今まで知らなかったと答える。十年ここに住んで初邂逅との事。長年この家に住み流行病で家族を亡くしたといううたさんも知らないらしいから少なくともここ四十年はこの地に現れなかったとみて間違いない。もし来てれば能力と特性からして一般人ならほぼ確実に皆殺しだろうし。なら思いのほか数は少ないのか?とも思えるが鬼の首魁っぽいきぶつ何ちゃらって輩がいて人を鬼に変えられる以上また遭遇する可能性は充分に有り得る。ああいうのはゴキブリと同じで徹底的に殲滅でもしない限りしぶとく生き残って増殖すると相場は決まってるからな。なのでそこら辺どうするのか?と問えば縁壱氏は若干目を細め子供が生まれる今は此処を離れられないと答えた。
「そうか。まあ今まで現れなかったんだ逆に人里に移る方が危ないかもな」
「それは…」
「あの鬼が身に纏ってた血生臭さと言動からして人をそれなりに食ってた筈だ。なら鬼にとっては適度に人が住む人里の方が捕食するには都合がよく遭遇する確率が高いんじゃないか?こんな山奥で少人数だからこそ今まで無事だったのかもしれんぞ?」
「…確かに。だが一度遭遇した以上は二度目が無いとは…」
「だろうな。その可能性は否めない。でだ、その心配を極力減らすのに最適な道具があるって言ったら…どうする?」
「っ!?」
今後の事を思い悩む縁壱氏に現状をある程度打開する方法(モノ)があると告げると若干俯いていた顔を上げ本当か?って目を向けてくる。なので早々に現物を見せる事にした。
「これだ」
一言そう言って後ろ手に取り出したモノそれは…スカウター。言わずと知れたDB世界でサイヤ人強襲編から登場し始めた戦闘力測定機器で生命体を感知して探索や対象への距離方角お知らせ機能及び通信機というマルチな性能を誇るそれまで曖昧だった気を数値に置き換えて見る事が可能な強さの指針となった画期的アイテムだ。これによって当時のDBファンに戦闘力の差ってものが明確に伝わり提示されるその数字に希望と絶望感を味あわせたもんだぜ。特にラディッツの「戦闘力たったの5か…ゴミめ」や悟空の力を測ったギニュー特戦隊の「せ、戦闘力18万!?」とかフリーザの「私の戦闘力は53万です」なんかが有名だな。ナメック星バトル終盤で悟空&フリーザの億超えには一気に桁上がり過ぎだろと後に知り笑った記憶がある。その後は余りにもパワーインフレが酷くて数値が使われなくなった結果ほぼ出番がなくなったんだがな。計測上限を超えると爆発するって欠点も初期の旧式ならあったが俺の持つこれはそんな心配もなく万が一破損しても問題ない仕様に
「…それが?」
「ああ、スカウターという代物だ」
俺の手にあるスカウターを見て小首を傾げる縁壱氏。その姿形に困惑しているようだ。
「んで、これをこう耳に着ける」
そんな縁壱氏の反応をよそに早速とばかりに左耳にカパっと被せセット。すると即座に密着機構が作動しスカウターは固定された。固定原理としては諸説あり原作者吸盤説が有名だが現実に俺が居たDB世界のはその通説どうり耳の根元周りの部分が耳に合わせ変形膨張し吸盤状にピタッと密着するという方式になってる。
スカウターを装備した俺の顔を見てますます小首を傾げる縁壱氏。さもあらん、片眼鏡状の代物なんぞ戦国時代の人間には何の用途に使うのかすら想像もつかん筈だ。なんせ表示部分のガラス(に見える物質)は紀元前からあっても製品なんてレベルの物は宣教師ザビエルが日本に持ち込んでようやく認知され始めたってくらいでそれも富裕層にのみ。一般には皆無でそれ以前の今は目に装着する物は傷隠しの眼帯がせいぜいで視力を矯正する眼鏡など概念すらないだろう。
「それでこれが何の役に立つかと言うと…索敵が出来るんだなこれが」
「索敵…なら」
「そう、鬼の居る場所や距離方角が結構な精度で判る。それと一定距離に近付いたら警告もしてくれるぞ」
「それは凄い」
機能を聞いた縁壱氏の反応は劇的で顔は相変わらず表情筋が仕事放棄してんの?って感じだが言葉と雰囲気から心底感心しているのが察せられる。なのでダメ押しとばかりに更なる機能を開示した。
「さらに通信機能も付いてる」
「つうしん…きのう…?」
だが言葉の意味が解らないらしく小首傾げがまたまたカンバックしちまったぜ残念。ま、しょうがないか今の時代は連絡手段が徒歩や馬や狼煙に飼い慣らした鳥を使っての伝書など限られてるし通信って単語そのものが近代に有線式の電話や無線機器が発達して広まったものだ。知らなくて当然だわな。
「遠く離れた者と連絡が取れる手段でな、具体的には相手の声が聞こえて逆に自分の声を届ける事も出来る」
「そんな事が…」
「という事で、ほいよ」
時代を400年先取りするあまりの機能に何とも言えない顔(目が微妙に細まる)をする縁壱氏に向けもう一個別のスカウターを後ろ手で腰から取り出し眼前へと差し出す。
「これは…それと同じもの」
「おう、言葉より実際に試す方が実感できるだろ?百聞は一見にしかずってな。さあ着けてみてくれ」
俺の催促に少々躊躇う素振りをする縁壱氏だったが差し出された物を受け取らないという選択肢は取れずおずおずと受け取り己の左耳へと意を決し被せた。
「!?」
すると自動密着機構により耳元を固定される感覚に一瞬ビクッとなる。
「ああすまん。言い忘れてたがこれ勝手にくっつくんだわ。もう既に固定されて落ちる心配ないんで手を離していいぞ」
スカウターの本体部分を手に持って支えたまま固まる縁壱氏に軽く謝り手を離すよう促す。俺にそう言われて縁壱氏はおそるおそる手を離しピタッとくっ付いて離れない事を知り安堵したのか息を一つ吐く。
「よし、後は使用方法だな。横にボタン…と言っても解らんか、横の部分を触ったら奥に押し込めるのが三つ程あるだろ?そうそれ。手始めに一番手前のを一回押してみてくれ」
「これ…か?」
手探りでボタンを探り当てた縁壱氏は俺の指示通りに押し込む。するとスカウターの機能の一つである通信機能が起動するピピッという音が鳴る。その際、眉が一瞬ピクッと震えたが特に何も言わなかった。そういうものだと割り切ったらしい。それを見て顔面の表情筋は相変わらず動かないが目元の微かな挙動でもけっこう感情を読み取れるようになってきたなーと変に自分に感心しつつ話を進める俺だった。
「よし、これで通信が出来るようになったな。じゃあ早速だが試してみようか。近くだと判り辛いだろうし俺が一旦外に出て話すから声が聞こえたらもう一度同じ所を押し込んでくれ。そうすれば相互に話せる様になるんでな」
そう言うなり俺はすくっと立ち上がり家の入り口に近付くや案外簡単に縁壱氏が歪みを正しハメ直した戸を開け敷居を跨ぎ後ろ手で閉めつつ外へと出る。そして鬼が逝った辺りまでスタスタと歩き、それから振り返るなりスカウターの通信機能をオンにし縁壱氏へと通信を繋ぐ。
「あ〜テステステス。こちらゴーマ聞こえますかどうぞ?」
「…まるですぐ隣に居るかのようだ。本当に…よく聞こえる」
おし、感度は良好のようだ。もう周りの風もほぼ無く声がよく通る様に
「よしよし、問題ないようでなにより。 ああ、ちなみにだが、これ距離の制限ないからな。たとえお互い千里離れていようと聞こえるし日ノ本の何処に居ても今みたいに話せるぞ」
実際は国どころか惑星間通信もできる代物だがな。いやはやほんとDB世界技術パねぇスわ。
「………」
縁壱氏はそれを聞きもはや声も出ないくらい驚いているようでスカウターからは囲炉裏の火がパチパチっと爆ぜる音と息遣いだけが聞こえてくる。
「さて、次はお待ちかねの索敵機能…より正確には探知機能だな。それを試そうか。そんじゃ真ん中のを押してくれ」
「…わかった」
驚きは継続しているようだがそれを推して指示に従う縁壱氏。了承の言葉の後にピッピッピッというテンポの速い探知開始音が鳴り始める。そしてものの数秒も経たずピコン!という音を発し止まった。
「よし、探知終了だ。左目を覆う透ける板に矢印が見えるだろ?それに従ってその方向を向いてくれ。探知対象の方角を向けば矢印から丸に変わるから解り易いはずだ」
「矢印…右か。……?うた?」
俺の指示に従い矢印の方向である右側を向いたんだろう。その矢印が示す先がうたさんだと知り困惑する声が聞こえる。その反応は予定通りなので俺は続けて指示を出す。
「言ってなかったが基本こいつは生き物を探知する仕様でな?今の探知距離は一里ほどに設定してある。んで先に俺が調べてみたんだが今現在探知範囲である周囲一里以内に鬼は居ないんだわ。なんで今そいつは一番近くの生き物を示すようになってる。一応やろうと思えば小動物の類いとか比較的大きい猪や鹿なんかも探知できるが普段それ必要ないだろ?だから通常は人ぐらいの生き物を探索対象としてんだわ。そうなるとスカウターを使った本人以外その条件に該当するのがうたさんなんで結果こうなった…ってな訳だ」
「…なるほど」
俺の説明を聞き納得の言葉を紡ぐ縁壱氏。だがその直後に怪訝な声を上げる。
「?…本人以外なら貴方も対象では?」
「おっと気付いたか。確かに俺もその対象になるぞ」
「なら何故?」
しれっと返す俺の返答に疑問を深くしたんだろう間髪入れずどうして俺が探知されなかったのかを問う縁壱氏。そのもっともな問いに俺はこう答えるのだった。
「なに簡単な理由だ。俺が今現在一里以上離れた場所にいるからってだけの話さ」
地表より遥か上空…成層圏をも越えた場所から地球を見下ろしそう告げる俺。眼下には我が魂の故国たる日本列島、それがすっぽり手の平に収まるくらいの位置にいるんだなこれが。通信を繋いでる最中に移動してたんだわ。スカウターに表示されるのを見るに高度にしておよそ38000kmちょいってとこか。現代で通信衛星なんかが打ち上げられる静止軌道上の位置だな。現代と違い電気による明光は皆無なので暗いが月明かりで輪郭はくっきりしてるし目を凝らせば日本各地に篝火程度はチラホラと見えてけっこう風情がある。とは言えさすがにGo○gle Earthで見る様な光景は無いがな。まあ、これはこれで趣きがあっていいんだけどよ。
「ッ!?」
息を呑む音のあと直ぐさま木材同士が擦れる音と共に風音が聞こえてきた。
「…本当に居ない。なら今どこに」
その音と言動から察するに即座に外へと出て俺の姿があるかどうかを確認したらしい。素早いな。相変わらず常人離れした所業だ。ま、今更かね。
さて何故こんな空の果てにわざわざこのタイミングで来たのかと言うと……ぶっちゃけ鬼をコロコロするためだったりする。いや〜ゴキ一匹見かけたら百匹はいるって言うじゃん?ならこの時代で殲滅したら未来が楽かな〜って思った次第です。つまり目的は駆除って事。最悪分母を減らせば被害も減るって寸法よ。んでやるなら見通しの良い所からがいいって理由から空に上がったんだわ。あと別の理由として地上で魔人ブウのように拡散打ち上げ式でやると悪目立ちするからってのもある。その点、空からやる分には夜だし流れ星って認識で済むって算段な訳。ああそうだ、やる前に縁壱氏にもこの光景を見せるか。その方がリアリティあるだろ。いや逆にファンタジーに感じるか? ま、そこら辺は本人の感性しだいかね。そんな事を思いつつ俺はスカウターのカメラ機能(追加コンテンツ)を起動して縁壱氏のスカウターへと映像をリンクさせた。
「遥か空の彼方だな。距離は……地表から約九千里ってとこか。その証拠と言ってはなんだが今そっちにも俺が見ているモノを見れるようにした。見えるか?」
「…青い球?」
そのまんまだな。確かに今は雲も比較的少ないし夜の部分の陰影も含め全体を見渡せばそんな風に見えるか。
「ああ、その青い球の中にある大地の上で人は日々生きて暮らしているのさ。綺麗なもんだろ?これが日ノ本を含めた世界ってやつだ。ちなみに名称は大地の地に丸い球の球と書いて地球な」
「この中で…これが世界…地球……」
戸惑う声を上げる縁壱氏。間接的にだが目に見える地球に自分達が住んでいると言われても俄かには信じられないのだろうな。なにせ見た目が青い球だし。逆に即信じられる方がどうかしてるだろう。一応補足はしておくか。
「太陽も月も丸いだろ?なら自分達の住む大地が丸くても不思議じゃない…そう思わないか?」
「……大地は丸いのか」
「正確には手毬の様な球状になってるな」
「?それだと上以外は立っていられないのでは?」
丸いとは思っても球状とは思わず円形の平べったい大地があるといった感じだと思っていたらしい。重力という概念を知らないんだ当然そう思うよなぁ。
「普通はな。だがそうならない理由がある。大まかに説明すると地面に物が落ちるだろ?これって重力って言うんだが」
「じゅうりょく…」
「物とかの重さに力と書いて重力って意味な。で、この重力ってもんは大地の下、正確には地球の中心から全方位に森羅万象あらゆるモノを引っ張ってんだわ。これって夜空に浮かぶ他の星や太陽そして月も全て同じだぞ?だから大地の何処に居ようと落ちないし立っていられるって訳だ」
「………」
あ、こりゃ理解の範疇を超えたようだな沈黙しちまった。うーんどうすんべ…。ま、いっか。信じようが信じまいが特に問題はないだろ。
「ま、理解するのは難しいだろうけど今はそういうもんだと思ってくれ。詳しく聞きたいってんなら後で改めて説明するからよ」
「…承知した」
よし、理解は追いつかないが飲み込んでくれたようだ助かるねぇ。本気で納得させるなら今居る場所に連れてくるのが一番手っ取り早いと思うが…そこは後で要望があればにしようか。さてと、気の膜で全身を覆っているとはいえ五感がある実体化中は少々肌寒く感じるしとっとと駆除を終わらせるとしますかね。
「ピピピピピピピピピッ…ピコンッ!」
スカウターのモードを広域探索に切り替えスキャン。あの髪鬼から採取した肉片の検査結果と登録した気のパターンから世界中を精査する。すると驚いた事に鬼の分布が日本国内にのみ限定されていると判明。若干計測数の多い京の都を中心に東西南北満遍なく生息しているようだ。一部地域ちょっと多い様に思える所もあるが誤差の範囲か。鬼という名の括りから予想はしていたが日本固有種ってことらしい。世界規模で駆除しなきゃならんかなぁと思っていたので労力的には助かるな。類似する生態や陽光が致命的な事を加味して最悪ジョジョ世界の吸血鬼や柱の男一族的なのも存在してるかも?って可能性がワンチャンあったんで居なくて一安心だぜ。一応自前の気の感知でも探ってみたがスカウターの探索結果と差異はない。なら間違いないだろう。なお仮死や冬眠とかで戦闘力1以下になってる状態は考えないものとする。
「さて、縁壱氏、視界の真ん中に在る縦に細長い大地が見えるか?夜なんで少し暗く見づらいが…それが日ノ本だ。天辺の菱形のが最北の蝦夷で南下して北陸、関東、関西、四国、九州って感じになる。どうよ面白い形だろ?空から見るとまるで生き物のように見えてよ」
「これが日ノ本…」
造形的にタツノオトシゴと例えるのが一番伝え易いんだが住んでいる場所が内陸なので流石に知らんかと思い見たまんまを何も脚色せず北から順に各地方の名を告げた。ふと思ったが日本の全容を見たのは縁壱氏が史上初になるのだろうか?だがそれを言ったらこの世界を外から眺めた初の人類ってことにもなるけど直視じゃなくスカウター越しなのでノーカン?ま、別に歴史に刻まれる事もなく知る者もいないんだしいいか、些事だな些事。
「そうだ。で、俺のスカウターで探索したところ鬼は日ノ本だけに存在してるって結果が出た。そっちにも見えるだろ?対象を示す丸が日ノ本だけにしかないのが」
「…確かに」
「なので今から駆除をしようと思う」
「駆除…鬼を?」
「ああ、憂いは早めに片付けるのが吉ってな。そうすりゃ安心できるだろ? 心底安堵するには根こそぎ駆除できるのが一番いいんだが… ま、そこら辺は結果しだいだな」
俺はそう言い放つと眼下の日本列島を見据え同時に両手の平を胸の前で向かい合うよう翳した。そして両掌の間に気玉を生成し更に体内から導いた気を注ぎ膨張させる事なく収束させる。増大し密度を高めていく気の塊。それが探知した全ての鬼を滅するに足ると思えるまでに達すると鬼の数に合わせ拳一つ分ほどの大きさで順次射出。自身を中心として半径周囲10kmに満遍なくばら撒き待機させた。何故わざわざ待機させこれほど広範囲に拡散させたのかと言うと鳳仙花のように現在地からそのまま鶴瓶式に撃つと地上からは不自然に見えると判断しての措置だ。じゃなきゃ空から撃つ意味ねぇしな。技の元ネタは人造人間編でピッコロが対17号戦で使った魔空包囲弾から。もちろん鬼への特効である波紋(属性:陽光)は既に気玉を生成した段階で性質変換済みだぜ。実のところ波紋の性質変換に呼吸法は必ずしも必要なかったりするんだよな。理由は簡単、ジョジョ世界のは呼吸ありきりだがDB世界だと気のコントロールが全てを網羅するからだ。言うなれば呼吸法は気の覚醒掌握に至る為の手段の一つでしかない。覚者とは斯く在るって事なのな。…習得後に気付いた時は凹んだもんだぜ。属性付与に回復や破壊などなど気は万能それに尽きるって感じ? ま、副次効果で寿命が若干伸びたから無駄じゃなかったけどさ。とまれ気弾が目標に着弾した瞬間半径2mくらいに膨張して範囲内の全てを消し去る仕様なので周辺環境に影響は無かったりする。あっても多少地面が削れる程度だ。これならいくら肉体を再生できようと問答無用で死ぬし弱点の頸を着弾位置にするんでズレたり体格とかで範囲内からはみ出ても精々が身体の末端だろうから当たりさえすれば討ち漏らす心配もほぼない。全身単細胞スライムのような生態でもない限り確殺だろう。射出した数は計523発。内508発分は雑魚用。計測した結果ほとんどの鬼は強さ的に髪鬼と同程度かそれ以下の気しか持たないので髪鬼を葬った時と同等の威力にしてある。それより強い気を持つ残り15体中14体はそれらより倍程度の威力に。そして最後に一体だけ他の奴等と比べ段違いの気を持つ上に全ての鬼に共通して混じる気そのものの持ち主…多分こいつがきぶつ何チャラっていう鬼の首魁だろうな。なのでこいつには念入りに威力10倍のを用意した。なんとなく奴はDi○並みに生き汚い気がするんで念には念をってな。なんの痛痒もなく他者を捨て駒の様に扱う輩には念入りに対処するに限る。という事でこれにて準備完了だ。
「おし、準備は整った。縁壱氏、早速だが駆除を開始するぞ。直上の夜空に今から星が降りそそぐ。一瞬だ見逃すなよ?」
「星?」
駆除する筈なのに何故に星が?と、まるで意味がわからないといった風な縁壱氏。
「なに、駆除の方法が星が降ったような感じに見えんのさ。手前評価だが結構いい見ものだと思うぞ? 」
「なるほど…承知した」
そこはかとなく漂う諦観の気配。順調にスルースキルの練度が高まってんなぁ。雁夜の奴を思い出すぞ。あいつも途中からこんな感じに理解はするが納得はできねぇ…って呟いてたし。それを桜ちゃんが「そうなの?」って純粋に聞くのがデフォだったのが懐かしいぜ。…元気にしてっかな。後の事を考え方々に貸しを盛大に作っておいたから憂いは無いが…。ま、大丈夫か。メインの後ろ盾に魔術師として再起不能に陥ったのを治療してやったロードエメロイを立ててあるし魔術師界隈の抑止力には十分。物理的な障害は雁夜がどうとでも対処するだろ。なにせ奴には文字通り死ぬほど鍛錬させたからな。修行中頻繁に「死ぬ!死ぬ!死んじまう!本当に死ぬぅぅぅッ!」なんて言ってたが哲学する柔術家さん曰く『人間そう言ってる内はまだまだ大丈夫さ死なない死なない』を薫陶に鍛えたらなんだかんだで耐え抜いたしなあいつ。終盤は死んだ魚の様な目をしてたが強くしてくれって自分で懇願してきたんだ本望だったろ。そのおかげで最終的には気も覚醒し強さは並のサーバントを遥かに超えたんだしさ。あのレベルであれば例え真祖クラスが相手でも十分に渡り合えるだろうし我ながらいい育成したよな!終生感謝してもバチは当たらんだろうようんうん。ふざけんなァァ!とかいう悲哀混じりの抗議の声なんて記憶にございません。はっはっワロス。それより過保護過ぎて将来彼氏ができるかの方が心配だぜ。なんせ遠坂に対する妄執云々を徹底的に矯正したら残った生き甲斐が桜ちゃんに集約しちまったんだよなぁ…。むろんロリコンじゃなく父性的なやつな。そこら辺の拘りって血かね?間桐の。その最たる例があの成れの果て蟲爺だし。なもんでどっかの正義の味方志望赤髪イケメン彼氏なんざ連れてきた日にゃあいつ絶対「交際したいだと?俺を倒せるくらいじゃないと認めん!」とか言って絡むだろうな。その光景がありありと目に浮かぶわ…。っと、いけねぇいけねぇ。ついまた思考が逸れちまったな。懐かしむのはまた後日。今は盛大にブッパなす刻ってなもんだぜッ!!
「Attention Please!It's show time!ってな!我ながら厨二っぽいが技名ブッパは魂に刻まれた様式美ってなもんでやめられない止まらない自重する気もないないない恥は掻き捨て世は開き直りもん勝ちよっと!さあ!景気良くいっちょド派手にいこうか!コール!シューティングスターッ!遍く群星よ!滅矢となりて疾く降りそそげッ!フォールディング!メテオォォォザァッッパアァァァァーーーーーーッ!!!」
◆
文亀二年十月晩秋。この日の深夜、突如として夜空を凄まじい数の流星が瞬く間に大地に向け降りそそいだと記録にある。当時としては夜分遅くの出来事で偶然起きて月見など夜空を仰ぎ見ていた者達が後に書き残した文献にちらほら散見されており、その事から異例の流星群として人々の話題になったそうな。ただ不可思議な事に落着したと思わしき各地の跡地には隕石の類は一切発見されず2m余りの擂鉢状クレーターだけが大地に残されていたとある。それと一部眉唾な記載も残っており、その内容は『化け物に襲われたが流星が降ってきて助かった』や『流星が背後に落ち振り返ると人の手足があってその後すぐさま塵となって消えた』などと書かれているが真偽の程は定かではない。
V・X・Tさん誤字報告ありがとうございました。サーバント(誤)でサーヴァント(正)で勘違いしてました。サンキューです。