灰谷兄弟がガチ喧嘩する話   作:TAMZET

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動画が終わって、竜胆は長い間沈黙していた。
忘れた時を取り戻すように、呼吸だけを繰り返していた。


灰谷竜胆の談③

 …………兄貴、何一人でカッコつけてんだよ。

 俺の事なんか放っておいて…………逃げてくれりゃよかったのによ…………

 何でこれまで喧嘩してたような………………バカな弟を守ってんだよ………………

 

(長い沈黙があった)

 

 ……悪い、黙っちまって。

 

(そう言ってまた、竜胆は黙った。右掌で顔を覆い隠すように隠す竜胆。その目には、うっすらと涙が浮かんでいた)

 

 ………………やっと分かったわ、あの日兄貴が笑ってた理由。

 兄貴はずっと本音を隠してたんだな。言いたかった事言えて、スッキリしたんだな。

 いつもは飄々としてんのに、変な所で熱いんだからよ、あの人は…………

 

 あの日の喧嘩の理由な、簡単な事だったんだ。渋谷の街を歩いてる時な、兄貴が俺に言ったんだよ。

 お前の事はいつまでも俺が守ってやるって。

 それで俺がキレちまった。

 

 守るって何だよ、俺の立ち位置はアンタの後ろじゃねぇ。アンタの隣だろって。

 

 俺は兄貴の隣で戦いたかったんだよ。兄貴の腰巾着じゃなくて、相棒としてよ。

 本当はずっと、相棒以上に認められてたのによ……疑っちまったんだ…………

 

 本当、聞けてよかった……………………

 

(竜胆は顔を上げた。その表情はどこか疲れているようで、どこか晴れ晴れとしていた)

 

 何やってんだろうな、俺は。

 なぁ、アンタ聞いてくれよ。

 俺達の大将を二度も殺って、兄貴を痛めつけた東卍の下に降ってよ。

 挙げ句の果て梵天の幹部なんかに鞍替えして……今じゃ三途の命令で動く奴隷人形だ。

 

 ずっと誰かの下で汚ねぇ事ばっかしてよ。

 馬鹿みてぇだよな……くそッ! 

 

(竜胆はソファの角に拳を振り下ろした。歯を食いしばり、悔しさに耐えていた)

 

 俺と兄貴はずっと一緒だ…………もし俺が梵天を抜けるなら、その時は兄貴とだ。

 死ぬ時も生きる時も、兄貴とはずっと一緒だ。

 

(そう言って、竜胆はしばらく黙った。その沈黙の後、彼は私に笑顔を向けてきた。憑物が落ちたような、柔和な笑みだった)

 

 にしてもお前、勇気あんだな。

 いや、単純に褒めてんだよ。

 すげぇよ、ホント。女にしとくの勿体無ぇくらいだぜ。だって、普通取材だっつって、半グレ(オレら)の所まで押しかけてこないだろ。

 そんな事したのは、後にも先にも花垣武道の奴くらいだぜ。まぁソイツは男だけどよ。昨日も縄張りに来てたよ、マイキー君を助けるんだってな。

 

 なんか似てんだよなぁ。

 お前と花垣。

 俺はあんまアイツの事好きじゃねぇけどよ。嫌いにもなれねぇんだ。

 

 つか、なんか、俺、お前の事気に入ったわ。

 また来いよ、そん時ゃ色々教えてやる。マイキーの居場所とか、対抗組織のヤベェネタとか、色々仕入れとくから。

 

 そういうの調べに来たんだろ? 

 

(竜胆は一枚の写真を差し出した。そこには私と依頼主・羽宮一虎が路地裏で話している様子が映し出されていた)

 

 花垣と違って、コイツは腕が立つ。この写真はまだ誰にも見せてねぇ。お前の事も俺の事も、まだバレやしねぇ。

 ほら、とっとと言って報告してやれ。

 

(竜胆に勧められるまま、私は出口へと向かった。戸を開ける寸前、竜胆に呼び止められた)

 

 あぁ、最後に……ちょっと耳貸せよ。

 ほら、変な悪戯なんてしねぇから。

 

 

 

(竜胆が私の耳に唇を寄せてくる。息遣いが聞こえる距離だ。彼の頬も仄かに紅くなっていた)

 

 

 

 兄貴の言葉、届けてくれて。

 ありがとな。

 




これでお話は終わりです。
本当なら一万字の短編として投稿するつもりだったのですが、自分だったら一万字の話は読みたくないなぁと思い直し、短編にしました。

不明な点等あればご質問頂けますと幸いです。
宜しければご感想、ご評価の程よろしくお願いします。
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