「おはよう」
珍しく私は勇気を出して言ってみた
「...」
やはり誰も挨拶を返してくれなかった。
別にうちは毎朝朝ご飯を調理してくれるし家庭崩壊を起こしているわけではなかった。
しかし、夫婦の関係が冷え切ってしまっているのだろうか。夫婦間の会話は数えるほどしか行われないし夫婦喧嘩もしょっちゅうだった。
だからだろうか、私は無口だった。
「...」
「...」
いつも通りの無言の朝食が始まる。そう、いつも通り。
私は、そう胸に言い聞かせていたのかもしれない。
ガチャ
いつもの通学路をいく。高校2年間いつも通っていた道だ。
「キーンコーンカーンコーン」
いつもの踏切だ。
私はいつもの日常が続くと思っていた。この時までは
「プァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
警笛が鳴りやまなかった。
「グシャ」
嫌な音がした。
初めて人が死んだのを見たのはこの時だった。
「嘘...だろ」
私は現場を見て思わず声を出してしまっていた。
轢死体からは血がどんどん流れていく
「ピーポーピーポー」
救急隊員が遺体を運んでいく。
素人目にもわかる。この人は助からないと。
それでも救急車は病院を目指して一目散へと患者を運んで行った。
お昼になって学校のチャイムが鳴っても全くお腹がすかなかった。
そりゃ朝あんなものを見たのだ。
「どうした?考え事か?」
「あぁ、友介か。」
唯一の友人でもあるオカルト好きの友介だ。
「今朝、人が亡くなるのを見てしまってな」
「それは、災難だったな」
いつもだったらここでオカルトトークを炸裂するであろう友介もさすがにこの返しは想定外だったのだろうか。それだけ言って黙り込んでしまった。
「なんか、面白い話ないのか」
普段はオカルト話なんてそこまで聞きたくなかったであろう。でもこの日は違った、どんな話でもよかった。とりあえず人と話したかったのだ。
「えっと、半年ぐらい前からある都市伝説なんだけどね。あることをすると女神様を呼び出すことができるって言う噂があってね。」
こんなに消極的な彼を見たことがなかった。
「あることって?」
「いろんな説があるんだよね...。結構有名な話だから様々なサイトにあるんだけどサイトによって書かれていることが違うんだよね。ただ、有名なのだと、赤い絵の具でこのサイトのような魔方陣を描いたりだとか、赤い絵の具で降臨って書いたお札を部屋中に張ったりだとか、その両方をしたりだとか。」
友介はあいまいなことが嫌いだった。だから渋ったのだろう。
「ただいま」
やはり返事はなかった。
朝のことがあり、あまり現実味を帯びていなかった私は急に現実に引き戻された感じがした。
その後しばらくの間自室で読書をしていたが、やはり何か落ち着かなかった。
その時ふと昼の話を思い出した。普段は絶対そういう事をするたちではないしましてや今回はあの友介すら信じ切れていない話だ。でも、それでもやってみたいと思えるほど私は何か落ち着かなかった。
そこで私は自室のクローゼットから絵の具を引っ張り出し例の儀式を行ってみることにした。
とりあえず私はお札を部屋中に張ってみることにした。
「シーン」
何も起こるわけがなかった。
分かっていた、分かっていたんだ。それに多分ほかの方法を試してもきっと女神様なんて降臨しない。それもわかっている。しかし、何かやらずにはいられなかった。
そこで私はついでに赤い絵の具で魔方陣を描いた紙を床に置いてみることにした。
「シュゥゥゥゥゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
何やらけたたましい音とともに魔方陣から光が放たれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
思わず声を出してしまった。
そう、そこに今さっきまで存在しなかった少女がたっていたのだ。
その少女は全身にあざがあり、所謂神様のような見た目ではなかった。
でも私は確信した、この人こそ私が召喚した女神様なんだと。