「どうしたの?」
母親の声だ
私の頭は真っ白になった、親になんて説明しよう...自分ですら理解できていないのに...ましてやうちのような家庭でどう説明すれば...
「ガチャ」
母親が入ってきた。
もう終わりだと思った。
「おや、妹ちゃんじゃない。もうちょい静かにね。」
母親は当たり前のように神様を受け入れていた。
「ガチャ」
扉が閉まった。
「...これが神様の力。これで私の存在を君と関わりがある人すべてに認識してもらえる。」
神様は続けて言った。
「ところで、何かかなえてほしいことはないか? なんでもいい。貴方の願いを一つかなえてやろう。」
「ない、私は...今のままで大丈夫だ。」
もちろん私は今の生活に満足しているわけではなかった。しかし、何をしてほしいのか、何に満足していないのか、思いつくことができなかった。
「...そうか」
神様は少し悲しげにそう言った。
「...」
「...」
「そっ、そうだ!そういえばさ、名前とかってあるの?」
さすがの私もこの気まずい雰囲気に耐えかねて、聞いてみた。
「私には名前がない。なのでそなたに名前を付けてもらおうと思う。」
神様ははっとした後にまた何かを読むかのように言った。
「じゃあ、ひかりっていう名前はどうだろう?かわいくていいと思うんだけど。」
「良き名だ。その名を名乗ることにしよう。」
少女はとてもうれしそうに言った。
私は少女の態度にイラついたが、ここはじっと我慢することにした。
「...」
「...」
その後は互いに無言のまま夜になった。
「...おやすみ」
その一言だけ放って、少女は自分の部屋へと向かった。
少女を見送った後私ははっとした。そういえば、彼女の部屋などあっただろうか?
そう思って部屋を出てみると、隣に新たに部屋が誕生しており、妹の部屋と書かれた札がドアに掛けてあった。これも神様とやらの力なのだろうか。
「おはよう」
淡い期待を抱きつつ私はそう言った。
「おはよう。遅かったじゃないの」
母親が言った。
「おはよう」
続けて妹と父親も言った。
「どうしたのさ、突っ立って。早くおいで朝食できてるわよ。」
母親が言った。どうやら私は呆然としていたらしい。
食卓には白ご飯とほうれん草のお浸し、卵焼きが並んでいた。
「おいしい、おいしい」
そう言いながら私はご飯をかきこんだ。
ガチャ
いつもの通学路をいく。
「お兄待って、今行く」
妹の声が聞こえた。
そっか...一人じゃないんだ。
そう思いながら家を出ていった。