「おはよう! お兄」
妹はいつも通りだった。
「おはよう」
『昨日のことは全部夢だったんだ。』
そう自分に言い聞かせた。
「身元確認の結果、昨日四街道市の踏切で遺体で発見された女性は近所に住んでいた平坂朋美さんと推定されており...」
食堂からテレビの音が聞こえる。
『やっぱりほんとだったんだ、昨日の出来事もひかりも...』
「早く下りてきなさい!朝ご飯できてるわよ」
母親の声が聞こえる。
いつの間にか私は廊下で立っていたようだ。
その日の帰り道のことだった。
私は久しぶりに友介と帰っていた。
「ねえねえ、せっかくだし寄り道しない?」
ひかりが言った
「おいおい、今日は二人じゃないんだぞ?」
またいつものわがままが発動した。そう思っていた。
「おーねーがーいー」
「はぁ、じゃああそこのダイエーにでも行くか」
俺は指をさした。あそこのダイエーが八日町周辺の学生の憩いの場であった。
「ごめん、自分は遠慮しようかな」
珍しく友介が断った。
「なら回り道していかない?」
ひかりはむっとしながらそう提案した
私はひかりの思考が分からなかった。なぜそこまでして友介を寄り道させたいのか。
「...分かった。」
友介は仕方なさそうに応じた。
「ぷわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
長いクラクションの音が響いた
次の瞬間
「どぉぉぉぉぉぉぉん」
何かがぶつかる音がした。
音のする方向に行ってみるとトラックが道端のお地蔵様と衝突していた。
私はすぐに理解した。ひかりの不自然な行動は友介がトラックと衝突するのを避けるためなんだと。
そして友介の居ない日常を想像して鳥肌が立った。
良かった、助かった。
この言葉が頭の中を渦巻いていた。
「なぜ、友介を助けたんだ?」
私は妹に訪ねた。
「なぜって...そりゃ助けれる命だったし」
妹は戸惑いながら答えた。
「ならなぜ...なぜ...踏切事故のおばあさんは助けれなかったんだ。予知能力があれば...おばあさんの殺害を防ぐこともできたんじゃないのか...?」
「あのねぇ、私は慈善事業で人を...」
妹ははっとした。妹はやっと私が聞きたいことを理解したようだった。
「分かった。特別にこの仕組みを教えてあげよう」
口調が変わった。
「この世界には均衡というのが存在している。この均衡というのは様々なものに存在していて、その一つが生と死なんだ。常に生と死の関係というのは釣り合っていなきゃいけないのだ。この均衡が大きく崩れると世界は全く違うものに収束する。つまりだ、何が言いたいのかというと救える命と救えない命が存在するのだ。」
「そして...」
ひかりはさらに何か言い加えようとしたがやめた。