アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ!   作:113(いちいちさん)

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第9話 銀の福音

臨海合宿二日目

 

 アイリス達は訓練場である海岸沿いの岩場に集まっていた。

 

「よし、専用機持ちは全員集まったな」

「ちょっと待ってください、箒は専用機を持って無いでしょう」

 

 メンバーの中に専用機を持たない箒がいる事を鈴が指摘する。

 

「そ、それは・・・」

「私から説明しよう、実はだな・・・」

「やっほー!」

 

 千冬先生が説明を始めようとした直後、何故か束が崖を滑り降りてきて千冬先生に向かいダイブした。

 

「ちーちゃーん!!」

 

 千冬は飛び掛かって来た束を片手で受け止めた。

 

「やあやあ会いたかったよちーちゃん!さあハグハグしよう愛を確かめ・・・」

「五月蠅いぞ束」

 

 束は散々千冬にすり寄った挙句、箒へのセクハラ発言により木刀で殴り飛ばされた。

 

「おい束、自己紹介ぐらいしろ」

「ええーめんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ!ハロー!終り~」

 

 皆が超の付く有名人の登場に驚いていると束が空を指さした。

 

「さあ!大空をご覧あれ!」

 

 すると空から菱形の物体が降って来た。

 

「じゃじゃーん!これが箒ちゃん専用機こと紅椿(あかつばき)!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製だよ!」

 

 謎の物体が消失しその中から赤色のISが現れた。

 

「何たって紅椿は天才束さんが作った第4世代型ISなんだよ~!」

「第4世代!?」

「各国で、やっと第3世代機が普及し始めた段階ですわよ!?」

「我が国でもまだ研究段階だが・・・」

「なのにもう・・・!?」

「そこがほれ、天才束さんだから。さあ箒ちゃん、今から初期化と最適化を始めようか!」

 

 束の言葉で箒はISに乗り、システムのセッティングが始まった。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、あとは最新データに更新するだけだね!」

「やはり速い、カタギリ主任以上だ」

 

 束が高速でセットアップする姿を見てアイリスが感嘆の声を上げる。

 

「はい初期化終り!超早いね流石私!そんじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ!箒ちゃんのイメージ通りに動く筈だよ?」

「ええ、それでは試してみます」

 

 そう言うと箒は高速で飛び出した。

 

「何これ早い!」

「これが第4世代の加速・・・という事?」

「速い、カスタム・フラッグの飛行形態でさえ追い付くのがやっとという所か」

 

 紅椿の速度と加速力に驚く一同。箒は動きを確かめるように自在に飛び回る。

 

「じゃあ、刀使ってみてよ!右のが雨月(あまづき)で左のが空裂(からわれ)ね!」

 

 箒が雨月を振ると、数発のビームが撃ち出され雲を切り裂く。

 

「良いね良いね!次はこれ撃ち落としてみてね!」

 

 束は何処からともなくミサイルランチャーを出現させ紅椿へ向けて発射する。

 箒は空裂を振りかざすと斬撃がそのままエネルギー波となりミサイルを全て撃墜する。

 

「すげぇ・・・」

「うんうん良いね!うふふふふ!」

 

 紅椿の圧倒的な性能に皆が驚愕する中、千冬だけが彼女を険しい表情で見つめていた。

 

「た、大変です!織斑先生!」

 

 するとそこに血相を変えた山田先生が走って来た。

 

「これを!」

 

 山田先生は千冬先生に携帯端末を手渡す。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし・・・テスト稼働は中止だ!お前たちにやって貰いたいことがある」

 

 

 

 

臨海学校宿泊施設 教員室

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代のIS、”シルバリオ・ゴスペル”通称「福音」が制御下を離れて暴走、監視空域から離脱したと連絡があった。情報によれば無人のISという事だ」

「無人?」

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過する事が分かった。時間にして五十分後、学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処する事になった」

「ミス・ブシドー、一つ質問を」

「何だ、エーカー」

「この事態にオーバーフラッグスは対応していないのですか?」

 

 アイリスは今回の事態にオーバーフラッグスが動いていない事に疑問を持った。

 

「現在オーバーフラッグスは同時刻に発生した軍用オートマトン暴走事故の対応に追われており作戦には参加できないらしい」

「分かりました、有難うございます」

「教員は学園の訓練機を使用して空域、及び海域の封鎖を行う。よって本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

「はい!?」

 

 千冬先生の言葉に一夏は驚きの声を上げる。

 

「つまり暴走したISを我々が止めるという事だ」

「マジ!?」

「大丈夫だって。何たって無敵のコーラサワー様が付いてるんだからな!」

 

 ラウラの言葉に大げさに驚く一夏に対して、パトリシアはサムズアップをして見せる。

 

「それでは作戦会議を始める」

 

 メンバーはISの機体性能等を観て作戦を話し合う。

 

「この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは、一回が限界だ」

「一回きりのチャンス、という事はやはり、()()()()()()()()()()()()()()で当たるしかありませんね」

「うんうん・・・て、えっ!?」

「アンタの零落白夜で落とすのよ!」

「それしかありませんわね。ただ問題は・・・」

「どうやって一夏をそこまで運ぶか・・・エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから移動をどうするか」

「目標に追い付ける速度が出せるISでなければいけないな・・・」

「ちょっと待て!俺が行くのか!?」

「「「「当然!」」」」

「ユニゾンで言うな!」

「織斑、これは訓練ではない。実戦だ」

「ッ!!」

 

 千冬先生の言葉で一夏の顔は真剣なものとなる。

 

「もし覚悟が無いなら、無理強いはしない」

 

 その言葉に、一夏は拳を強く握りしめる。

 

「・・・やります。俺が、やって見せます!!」

「よく言った少年!」

 

 一夏の決意を込めた言葉にアイリスは頷く。

 

「よし、それでは現在専用機持ちの中で最高速度が出せる機体は・・・」

「ちょっと待ったー!」

 

 すると突然、天井の一部が開きそこから束が現れた。

 

「その作戦はちょっと待ったなんだよー!」

「(前にも見た光景だな・・・)」

 

 アイリスは飛び降りてくる束を見ながら前にも同じような事があった事を思い出す。

 

「ちーちゃんちーちゃん!もっと良い作戦が私の頭の中にナウプリンティング~!」

「出ていけ!」

「此処は断然紅椿の出番なんだよ~!」

「何?」

「紅椿のスピードは現行機の何と3倍以上!赤だけに、なんてねー!まあつまり、この中で一番早いのは箒ちゃんなんだから、いっ君を運ぶ役は箒ちゃんで決定って事で!」

「お待ちください、篠ノ之博士」

 

 束の案に待ったを掛けたのはアイリスだった。

 

「少年を運ぶ役目はこのアイリス・エーカーにお任せ頂けませんか?」

「えーでもそれじゃあいっ君と箒ちゃんが二人きりでキャッキャウフフじゃなくて、フラッグ程度じゃ追い付けないでしょ?」

「私のカスタム・フラッグの飛行形態なら追い付く事は可能です。紅椿が白式を載せて運んだとしても、敵機から攻撃を受けた場合片方が囮になる為に必ず分離する必要があります。その間白式に攻撃と移動両方を行わせるのは非効率です。ですので、私が白式を常に運び続け、紅椿が囮となり敵機の足を止める方が確実です。それに、そもそもこの件は我が国の問題です」

「んー確かにそうかもねー」

「よし、その案を採用しよう」

「ちょっとちーちゃーん!?」

 

 千冬先生はアイリスの提案を採用した。それに対し束は、何か計画と違うという様な不満そうな顔をした。

 

「少年、私が君の翼と成ろう」

「は、はい!お願いします!」

 

 アイリスは少年の方を向きそう言った。

 

「よし、本作戦は、織斑、篠ノ之、エーカーの三名による目標の追跡、及び撃墜を目的とする。エーカーは隊長として、現場では独自の判断で二人への指示を行え。作戦開始は三十分後、各員直ちに準備にかかれ!」

 

 こうして福音討伐作戦は開始された。

 

 

 

 

海岸沿い AM11:30

 

 作戦開始時間、浜辺にはISを展開した三人が待機していた。

 

「作戦開始時間だ。二人共、準備は良いか?」

「はい!」

「何時でも行ける」

 

 アイリスはカスタム・ウイングを収納した白式を背中からフラッグで掴むと、飛行を開始する。

 

「篠ノ之は先行してくれ」

「分かった!」

「それでは行くぞ、少年」

「はい!」

 

 フラッグが飛行形態に変形すると、紅椿を先頭に高速で飛行する。

 

「暫時衛星リンク確立、情報照合完了。目標の現在位置を確認」

 

 先頭を飛行する紅椿から通信が入る。

 

「よし、今から目標へ接近する。篠ノ之は後方から援護を頼む」

「了解」

「行くぞ少年!」

 

 フラッグを先頭とし一気に加速する。暫くすると目標である福音が見えてきた。

 

「あれがシルバリオ・ゴスペル」

「加速する、目標との接触は十秒後だ」

「了解!」

 

 フラッグは高速で福音に接近し、白式は零落白夜を発動し剣を構える。福音は接近に気付くと速度を上げ逃走を図る。

 

「うおおおおおお!!」

 

 フラッグが福音に限界まで近づいたタイミングで白式が剣を振るう。しかし、相手はそれをギリギリのタイミングで躱した。

 

「躱した!?」

「来るぞ!」

 

 福音は背中の翼から大量のビームを撃ち出す。フラッグはそれを躱しつつ接近を試みる。

 

「篠ノ之、援護を頼む!」

「了解!」

 

 紅椿はフラッグとは逆から福音に接近する。それに対して福音は狙いを紅椿へと移し攻撃を始める。

 

「もう一度行くぞ少年!」

「はい!」

 

 攻撃が止んだ隙に二人は急速に接近する。相手は此方の接近に気付きまたも直前で回避された。

 紅椿は展開装甲をエネルギーソードに切り替えて遠隔操作する事により福音を攻撃し、バランスが崩れた所を後ろから刀で拘束する。

 

「一夏、アイリス、今だ!」

「おう!・・・なッ!?」

 

 動きを封じられた福音に向かって行く二人、しかし。

 

「放してくれ!」

「なッ!?何をする少年!!」

 

 直前で一夏は白式のカスタム・ウイングを展開しフラッグの腕から抜け出すと海面に向かい一直線に飛び出した。

 

「なッ!?一夏!?グッ!」

 

 突然の行動に驚いた隙に福音は紅椿の拘束を逃れる。

 

「どうしたというのだ少年!・・・ん?あれは!?」

 

 アイリスが海面をズームすると、そこには何と漁船が航行していた。一夏はその手前に停止すると福音からの流れ弾を全て撃ち落とす。

 

「ふぅ・・・」

「何をしている!折角のチャンスに!」

「船がいるんだ!会場は先生たちが封鎖した筈なのに!」

「船?」

「密漁船みたいだ!」

 

 箒も海面をスキャンすると国籍不明の漁船を発見した。

 

「クッ!この非常時に・・・」

『奴らは犯罪者だ!構うな!』

『見殺しにはできない!』

「IS操縦者と言えど、軍人では無く民間人・・・非情には成り切れんか!」

 

 アイリスは一夏の所まで移動すると人型形態に戻りディフェンスロッドで攻撃を防ぐ。

 

「少年!ここは私に任せて攻撃に参加しろ!!」

「でも!」

「これは命令だ!!貴様が作戦の要であるという事を忘れたか!!」

「早くしろ一夏!!」

「あっ!?」

 

 箒が一夏に気を取られて福音から注意を逸らした瞬間、大量のビームが紅椿へ向けて発射される。それに気づいた一夏は瞬間加速で紅椿に近付く。

 

「篠ノ之!!」

「なッ!?」

「間に合ってくれ!!」

 

 一夏は箒を突き飛ばすも攻撃が直撃し爆発が起こる。白式は煙を上げながら海へ落下した。

 

「一夏ァ!!」

「クッ!!」

 

 アイリスは直に一夏を救出すべくフラッグで海に飛び込んだ。

 

 

 

 

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