アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ!   作:113(いちいちさん)

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第10話 雪羅

臨海学校宿泊施設

 

「与えられたミッションを失敗した上、少年の命を危険に晒してしまった。隊長失格だな、私は・・・」

「アイリスさんの所為ではありませんわ」

「そうだよ、まさか封鎖されている筈の海域に船がいるなんて誰も予想できないよ」

「それに、半分はアイツの自業自得でもあるんだから」

 

 アイリス達は一夏の救出後、作戦を中断し施設へと戻って来ていた。

 一夏はISの絶対防御のお陰で一命は取り留めたが、今だ昏睡状態にある。

 

「だが、問題なのは箒の方だ」

「ええ、あれは新兵とかがよく成るやつですよ」

 

 箒は一夏の撃墜原因が自分にあると責任を感じ、重度の鬱状態となっていた。

 

「・・・全く、ファースト幼馴染が聞いて呆れるわ!」

「何処へ行きますの鈴さん?」

「ちょっと喝を入れてくるだけ!」

 

 そう言って鈴は歩き出す。

 

 

臨海学校宿泊施設 教員室 PM10:30

 

「皆揃ったな」

 

 一夏を除くアイリス達全員は再び作戦室へ集まっていた。

 

「知っての通り、福音は現在ここから30キロ先の海上で停止状態にある。理由は不明だが、何時また動き出すか分からない状況で援軍を待っている暇は無い。よって今から此処にいる全員には福音に対して奇襲攻撃を仕掛けてもらう」

「攻撃!?一夏さんも居ないのに!?」

「前回の作戦では福音に追い付ける者が他に居なかった為三人で行ったが、相手が動いていないのなら話は別だ。確かに白式が使えないのは痛いが、現在の戦力で十分対処する事は可能だ。それに現役軍人が三人も居てくれるんだ、皆も彼女達の実力は疑ってはいないだろ?」

 

 そう言って千冬先生はアイリス、ラウラ、パトリシアの三人へ顔を向ける。

 

「ハッ!今度こそ作戦を遂行して見せます!」

「教官のご期待に応えて見せます!」

「EUのエースの実力を見せてやろうじゃねぇか!」

「やる気十分の様だな。白式が使えない今、作戦遂行の要となるのは紅椿だ・・・篠ノ之」

 

 千冬先生は箒を見る。箒は右頬を赤くした顔で真っ直ぐ見つめ返す。

 

「やります、今度は油断しません!」

「うむ、良い眼だ。それでは一時間後に作戦を開始する。全員準備しろ!」

 

 

海岸沿い PM11:30 

 

 全員はISを展開し待機していた。

 

「作戦開始時間だ、全員準備は良いな?・・・作戦開始!」

 

 アイリスの合図で全員飛行を開始した。

 

 

 

 

現在位置から30キロ先の海上

 

 停止状態にあった福音にブルー・ティアーズとシュヴァルツェア・レーゲンによる長距離砲撃が命中する。爆煙の中から再起動した福音が飛び出した。

 

「続けて砲撃を行う!」

「了解しましたわ!」

 

 ラウラとセシリアは再度砲撃を開始する。福音は攻撃を回避しつつ二人へ迫る。

 

「此処は通さない!」

「少佐の所へは行かせねぇよ!」

 

 そこにシャルロットとパトリシアが立ち塞がる。福音は二人に向けて攻撃を開始した。

 

「おっと!そんな攻撃当たるかってんだ!」

「今度はこっちの番だよ!」

 

 二人は攻撃を回避すると銃撃を開始した。福音は攻撃を回避しつつも徐々に海面へ誘導される。

 

「行くぞ凰!」

「何時でもオッケーよ!」

 

 そこに海面ギリギリを飛行する甲龍を抱えたフラッグが迫る。二機は直前で二手に分かれそれぞれリニアライフルと龍咆を撃ちながら接近する。

 福音はそれを何とか回避するも変形したフラッグからのプラズマソードを右腕に受ける。そして逆側から来た龍咆の青龍刀を左腕で受ける。

 

「「うおおおおおお!!」」

 

 福音は高速で上昇する事で両側からの攻撃をいなす。しかし、真上には何時の間にか接近していた紅椿が二刀の刀を振り上げていた。

 

「はあああああああッ!!」

 

 箒はそのまま刀を振り下ろし見事福音の翼を両方とも切断した。福音はそのまま海面に落下し水飛沫を上げた。

 

「やったぜ!オレ達の勝利だ!」

「油断しないでパトリシア!」

 

 喜ぶパトリシアをシャルロットが制す。

 その時、海面から巨大な水柱が上がり、その中心には稲妻を走らせながらエネルギーの翼を生やす福音がいた。

 

「二次移行!?」

「まさか、このタイミングで!?」

 

 福音は頭上にエネルギーを溜め始め、次の瞬間、巨大なビームを紅椿へと向けて発射した。

 

「グアッ!」

「箒!?」

 

 紅椿はシールドでガードするも衝撃で吹き飛ばされる。

 福音はまたもエネルギーを溜め始める。

 

「やらせるか!!」

 

 アイリス、鈴、シャルロット、パトリシアは四方向からそれぞれ攻撃を与える。すると福音は先程の様な攻撃では無く360度全方向へ向けてビームをばら撒いた。

 

「何!?」

「嘘でしょ!?」

 

 四人はそれぞれ躱すか防御するが少なくないダメージを負った。

 

「援護する!」

「了解!」

 

 ラウラとセシリアも援護射撃を開始する。

 福音は攻撃を回避しつつエネルギーを溜め始める。

 

「!!オレの少佐に・・・」

 

 それを見てパトリシアはラウラと福音の間に移動する。

 

「手を出すなァ!!」

 

 福音はそのままビームを発射する。パトリシアはディフェンスロッドを高速回転させることでプラズマフィールドを発生させるも防ぎきれないと判断し機体全体でビームを受ける。

 

「パトリシアァ!!」

 

 パトリシアの活躍によりラウラはビームの直撃を免れるも、イナクトはそのまま海へ落下した。

 すると、福音は攻撃を止め突如高速で移動を開始した。

 

「何処へ向かう気だ?」

「この方角は・・・まさか!?」

 

 

臨海学校宿泊施設 教員室

 

「織斑先生!目標が移動を開始!」

「予測ルートは?」

「それが・・・此方へ向かっています!

「・・・全教員へ戦闘準備をさせろ」

 

 

 

「行かせるか!」

 

 アイリスは飛行形態に変形し福音を追い始める。しかし、カスタム・フラッグの力を持ってしても追いかけるのがやっとである。

 

「クッ・・・!!」

 

その時、フラッグの横を紅椿が高速で抜き去って行った。

 

「行かせはせん!!」

 

 紅椿は福音に追い付くと刀を振る。箒は福音を切り裂くも、両方の刀を掴まれる。

 箒はその体勢のまま福音を止めるべく逆噴射を始める。すると福音はエネルギーを溜め始める。

 

《篠ノ之!武器を捨てて離脱しろ!》

「ッ!!・・・うああああああッ!!」

 

 アイリスが警告するも、箒は放さずに逆噴射を続ける。

 

「私は篠ノ之柳韻(しのののりゅういん)の娘、篠ノ之箒だ!!」

 

 紅椿の働きにより福音の足を止める事に成功するも、箒はビームの光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 一夏は青空が映る湖に立っていた。

 ふと見上げると、目の前に白髪の少女が立っていた。

 

「(何故だろう、懐かしい・・・)」

『呼んでる・・・行かなきゃ』

「えっ?」

 

 空を見上げると、ある光景が浮かび上がる。

 人型に戻り攻撃を続けるアイリス、シールドを展開し鈴を守るシャルロット、狙撃手でありながらビットを展開し直接戦闘を開始するセシリア、味方機に当てる事無く的確に砲撃を行うラウラ。

 

「これは・・・」

 

 一夏が少女の方を向くと、其処には誰も居なかった。

 

『力を欲しますか?』

 

 その声に振り向くと、其処には一機のISが佇んでいた。周りはいつの間にか夕暮れに変わっていた。

 

『力を、欲しますか?』

「・・・ああ」

『何の為に?』

「友達を・・・いや、仲間を守る為に」

『仲間を?・・・』

「ああ、何て言うか、この世界(IS)って結構戦う必要があるだろ?道理の無い暴力って結構多いからさ、そう言うのからできるだけ多く仲間を助けたいと思う。この世界で一緒に戦う仲間を」

『そう・・・』

『だったら、行かなきゃね』

「えっ!?」

 

 気が付くと隣には先程の少女が立っていた。

 

『ほら、手』

「あ、ああ」

 

 一夏は言われるがまま彼女の手に自分の手を重ねる。

 

 

 

 

「・・・此処は」

 

 一夏は病室で目を覚ました。

 

 

臨海学校宿泊施設 教員室

 

「フラッグのエネルギー残量、20%を切りました!」

「オルコットはエーカーの援護へまわれ」

《千冬姉ぇ!》

「一夏君!大丈夫なの!」

《はい!心配をお掛けしました》

「・・・織斑、行けるのか」

《はい、俺はもう大丈夫です》

「・・・分かった。では行ってこい!」

《はい!白式改め雪羅(せつら)、織斑一夏、出ます!》

 

 一夏は白式の第二形態”雪羅”を纏い飛び立った。

 

 

 

 

「箒!」

「一、夏?・・・一夏!?」

 

 海岸の岩場に墜落した箒の前に一夏が降り立つ。箒は一夏の声で目を覚ますと直に体を起こした。

 

「身体は!?・・・傷は!?」

「大丈夫だ、戦える」

「良かった・・・本当に・・・」

「おいおい、泣くなよ?」

「な、泣いてなど・・・」

「あ、そうだ。今日は七月七日だろ?誕生日おめでとう」

「えっ?」

「彼奴を倒したら皆で祝おうぜ?プレゼントも買ってあるしな」

 

 そう言って一夏は立ち上がる。

 

「それじゃあ、行ってくる!」

 

 一夏はそのまま福音へ向けて飛び立った。

 

「一夏・・・(私は共に戦いたい、あの背中を守りたい!)」

 

 箒がそう強く願った、その時。紅椿が突然輝きだした。

 

「これは!?」

 

 残り少なかったシールドエネルギーが全回復し、モニターには単一仕様能力絢爛舞踏(けんらんぶとう)解放の文字が浮かび上がった。

 

 

《ごめん皆!遅れた!》

「「一夏!?」」

「一夏さん!?」

「待ちかねたぞ少年!!」

 

 一夏の登場に皆の士気が上がる。

 一夏はそのまま福音へ突撃する。福音はそれを躱し一夏へ攻撃を仕掛ける。

 

「任せて!」

 

 シャルロットが一夏の前に立ちシールドで防御する。

 

「乱れ撃ちですわ!!」

「行くわよ!!」

「撃て!!」

 

 セシリア、鈴、アイリスは福音へ向けて一斉射撃を開始する。福音は全てを躱し切れず被弾するも立て直す。

 

「捉えた!!」

 

 ラウラの砲撃が福音に命中する。すると福音はお返しとばかりにビームを発射する。

 そこにボロボロのイナクトが割り込みディフェンスロッドでラウラへの直撃コースを全て弾き飛ばす。

 

「パトリシア・コーラサワー!只今戻りました!」

「ッ!!・・・遅刻だぞ少尉!!」

 

 福音と雪羅は激しい空中戦を繰り広げていた。

 

「逃がさねぇ!!」

 

 福音を追う一夏。しかし、零落白夜を発動する雪羅のシールドエネルギーはみるみる減って行く。幾ら二次移行したと言えど、零落白夜の欠点が解消された訳では無い。

 雪羅のエネルギーが残り僅かとなる。

 

「クッ・・・」

《少年!!》

「!?」

 

 そこへ飛行形態となったフラッグが高速で接近して来る。

 

「勝利への水先案内人は、このアイリス・エーカーが引き受けた!!」

 

 福音はフラッグへ向けて攻撃を始めるが、アイリスは被弾もお構い無しに全速力で突撃する。

 

「抱き締めたいな、福音!!」

 

 フラッグは直前で人型に戻り福音を抱き抱えたまま海へ飛び込んだ。

 

「アイリスさん!!」

「一夏!これを受け取れ!」

 

 そこへ箒が現れる。一夏は言われるがまま紅椿と手を交わすと、瞬く間にシールドエネルギーが回復する。エネルギーを回復し、それを相手に分け与える。これこそが紅椿の単一仕様能力”絢爛舞踏”である。

 

「行け!一夏!!」

「おう!!」

 

 海面から水飛沫を上げて福音が現れる。そこに朝日をバックに一夏が迫る。

 

「今度は逃がさねぇ!!」

 

 雪羅の雪片弐型が福音の胸に突き刺さる。二機はそのままの勢いで海面を滑り浜辺へ激突する。

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 福音は一夏へ手を伸ばそうとするも、エネルギーがゼロになり機能を停止した。

 一夏は立ち上がり福音から刀を抜く。その横に箒が降り立つ。

 

「終わったな・・・」

「ああ、やっとな」

 

 

 

 

臨海学校宿泊施設

 

 施設の前にアイリス達は集まっていた。皆それぞれ大小の怪我を負っているが、その表情は明るい。

 

「作戦完了!皆、良く頑張ってくれた。数々のアクシデントが発生する中、よくぞ任務を遂行してくれた!」

 

 千冬先生の激励の言葉に皆笑顔を浮かべる。

 

「今日はゆっくり休んで早く怪我を治すように!」

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

臨海学校宿泊施設 病室

 

《隊長!お怪我を・・・!》

「これくらいどうという事も無い。私が居ない間、良く頑張ってくれた」

《いえ、肝心な時に隊長の力に成れず、申し訳ありません》

 

 アイリスはオーバーフラッグスのハンナと連絡を取っていた。

 

「そう言うな。所で今回の件、其方で解った事は?」

《はい、どうやらISとオートマトンは同じ人物からハッキングを受けていたみたいなんです》

「犯人は特定したのか?」

《いえ、何重にもダミーが張り巡らされていて特定は困難の様です。しかしこの状況・・・》

「ああ、似ているな・・・白騎士事件に」

 

 

 

 

夜 海岸沿い

 

 浜辺の崖の上に束は座っていた。

 

「あーあ、白式には驚くなぁ、まさか()()()()()()()()まで可能だなんて。まるで・・・」

「まるで、白騎士の様だな」

 

 彼女の背後には千冬が立っていた。

 

「コア№001、お前が心血を注いだ一番目の機体にな」

「やあ、ちーちゃん」

「例えばの話がしたい。とある天才が、一人の男子を高校受験の日にISがある場所に誘導できるとする。そこにあったISをその時だけ動く様にしておく。すると、男が使えない筈のISが動いた様に見える」

「うーん、それだとその時しか動かないよねぇ?・・・ウフフッ!実の所、白式がどうして動くのか、私にも分からないんだよねぇ?教授なら何か分かったかなぁ」

「・・・まあいい、今度は別の話だ。とある天才が、大事な妹を晴れ舞台でデビューさせたいと考える。そこで用意するのは、専用機と、何処かのISの暴走事件だ。暴走事件に際して妹の乗る新型の高性能機を作戦に加える。妹は華々しくデビューと言う訳だ」

「凄い天才が居たものだね~」

「ああ、凄い天才が居たものだ・・・嘗て、十二か国の軍事コンピューターをハッキングした天才がな?」

「・・・ねぇちーちゃん、今の世界は楽しい?」

「そこそこにな」

「・・・そうなんだ」

 

 気が付くと束の姿は何処にも無かった。

 

 

 

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