アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
IS学園司令室
一夏とオータムが戦闘を開始した直後。
「ロッカールームに未確認のIS反応です!」
「山田先生、敵の増援に警戒、一般生徒には避難命令を。制圧用オートマトンと教員部隊へ出撃命令」
「了解しました!」
千冬先生の命令により山田先生が指示を出す。するとその直後、突然モニターにノイズが走る。
「先生!レーダー並びに通信途絶、オートマトンも停止しました!」
「ジャミングか、対ECMシステムは?」
「作動しています!」
「それでもこれか・・・まさか例のISか?」
IS学園データルーム前通路
IS学園の核とも言えるデータルームへ続く通路、電波妨害により機能停止した警備用オートマトンを背景に二機のISが睨み合っていた。
「まさかな、よもや君に出会えようとは・・・乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じられずにはいられない」
「どうして・・・何でアンタが此処に居るのよ!!」
アイリスの前には嘗てISWAD本部を襲撃したネーナ・トリニティの姿があった。
IS学園校舎外 南側
「司令部聞こえるか!此方パトリシア、応答してくれ!・・・駄目だ通じねぇ。其方はどうですか?」
「此方も繋がらん」
現在ラウラとパトリシアは偶然校舎外に居た所に山田先生からの放送を受け、ISを展開し待機していた。
二人は放送の直後から謎の電波障害を受け、司令室との通信が出来なくなっていた。
「ISのレーダーやセンサーまで無力化するとかどんだけ強力なジャミングなんでしょうね?」
「ああ、幸いIS同士の近距離での通信なら可能のようだ」
「それだけが救い・・・ん?何だ」
パトリシアは此方に接近してくる謎のISに気付いた。パトリシアは直にデータベースから機体を識別するが、該当する機体は見つからなかった。
「アンノウンだぁ?どうしてこんな時に・・・」
「パトリシア」
「分かっています。私が先行するので少佐は援護をお願いします」
そう言うとパトリシアは戦闘モードになりラウラの射線に入らないよう相手に近付いて行く。
『おいおい何処のどいつだぁ?アメリカか?中国か?まぁ、何処だろうと人様の領土に土足で踏み込んだんだ、ただで済む訳ねぇよなァ?』
パトリシアはISのスピーカーで喋りながら近付く。普通に聞けば相手を挑発している様な言葉だが、実際は戦闘後に相手側から抗議された際に言い返せるよう尤もな理由を口に出してそれをISに記録させているのである。
パトリシアはISを目視できる距離まで近付くと停止した。謎のISは蝶の様な見た目をした青いISだった。
『貴様、オレが誰だか分かってんのか?EUのパトリシア・コーラサワーだ!分かったんなら大人しく所属と目的を言え!』
パトリシアは相手へ警告する。すると相手も停止したかと思うと突然六機のビットを展開して来た。
「何だ!?」
突然の攻撃に反応するパトリシア。前方からの攻撃を急上昇で躱しながら左からの攻撃をディフェンスロッドで弾き、右側のビットをリニアライフルで二機撃ち落とすも後ろからの攻撃を食らってしまう。
「おわあッ!?」
「パトリシア!?貴様よくも!!」
パトリシアが攻撃を受けた為ラウラもレールカノンによる砲撃を行う。しかし、それ等は三機のビットによるビームシールドにより防がれる。
「何だと!?」
敵ISは更に六機のビットを展開するとラウラに対して攻撃を開始した。
IS学園校舎外 北側
「繋がりませんわね」
「そうね」
セシリア、鈴、箒、シャルロットの四人はISを展開し、出動してきた教員部隊と合流しアリーナ上空で待機していた。
「なに、あれ・・・」
「あれは・・・」
するとシャルロットと箒は北側より接近するISらしき機影に気付き、全員が其方を向いた。
「まさか・・・」
「何て数だ・・・」
そこには何と五十機以上のISらしき機体が空を覆っていた。
IS学園司令室
「どうだ?」
「駄目です。通信繋がりません」
司令室では山田先生達教員が復旧作業を急いでいた。其処に一人の教員が飛び込んで来た。
「伝令!!Sフィールドにてボーデヴィッヒ、コーラサワー両名が所属不明のISと交戦中!またNフィールドよりISらしき機体が多数接近中!」
「何だと!?」
IS学園校舎外 北側
「何だ此奴らは!?」
「分からん!!兎に角撃ちまくれ!!」
「Nフィールドより敵が接近中!かなりの数だ!!」
《かなりじゃ分からん!!》
現在、箒達含む防衛部隊は謎の敵と交戦を開始していた。
敵は腕が大きい上半身だけのISの様な機体で、エネルギーシールドを展開した状態で箒達に突撃してくる。
「此奴ら自体はそこまで脅威じゃないが数が多すぎる!」
ISモドキ自体は攻撃を与え続けると直に爆発四散するが、何しろ数が多すぎる。
その時、一人の教員がISモドキに捕り付かれる。
「こんなISの出来損ない如きに・・・何!?」
ドカアァァン!!!
「小林ィ!!」
何と教員に捕り付いたISモドキが自爆したのである。爆発が直撃した機体は煙を上げそのまま地上へと落下した。
「まさか特攻!?」
「此奴らの目的はそれか!?」
これによりISモドキの不可解な行動の意味にようやく気付いた面々であった。
IS学園男子更衣室
「た、楯無さん!?よくも!!」
『・・・お前、手応えが無いだと?』
「フフフ・・・ハハハハハ!」
バシャリ
貫かれた筈の楯無が笑い出すと突然体が崩れ始め液体となった。
『此奴は・・・水か!?』
「すり替えておいたのよ!」
『グアッ!?』
オータムの背後からISを纏った楯無が現れランスで突き飛ばす。オータムはそのまま壁に激突し土煙を上げる。
「OKじゃあ、もう一度自己紹介させてもらうわ。私は更識楯無、そしてIS”ミステリアス・レイディ”よ!」
楯無のISは機体色が水色で一対の翼の根元から水が羽の様に広がっている。
煙が晴れると同時に楯無に向けてビームが放たれる。それをランスの周りに集まった水がバリアーとなり全て防ぐ。
『今直ぐ殺してやる!!』
「ウフ、何と言う小物発言かしら」
オータムはなおも攻撃を続けるが一向にバリアーを貫けないでいた。
『その水、
「そうよ?この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンによって制御されてるのよ」
『チッ!』
オータムはアームからブレードを展開し切りかかる。しかし突然水がロープのように機体に巻き付いてくる。
「しかも脳波コントロールできる!」
オータムはそのまま先程と同じように壁に叩き付けられた。
「しかも手足を使わずに戦えるこの私に勝てると思ってるの?」
『ガキが・・・舐めやがって!!』
オータムは力ずくで水の拘束から逃れようとする。しかし、水が一瞬赤く光ったかと思うと爆発した。
『ガアッ!?』
「ナノマシンを瞬時に発熱させることで起こした水蒸気爆発よ。効いたかしら?」
『まだ・・・まだだ!!』
「あらしぶとい、と言ってもこの程度じゃスミルノフ中尉には遠く及ばないわね?あの時は本当に驚いたわ・・・まさかこの私が物理で追い詰められるなんて思わなかったもの・・・」
楯無はオータムの事など眼中に無いかのように遠い眼をする。よく見たら少し足が震えていた。
「・・・嫌なこと思い出しちゃったじゃない。そんな貴女には、特別に生徒会長である私の最強の技で止めを刺してあげるわ!」
そう言うと楯無は脚部にマウントしてある剣の柄を握り引き抜く。しかし、其処に刃は無くその代わりに水が集まり刃を形作って行く。
「とくと見るがいいわ!!これが私の最強必殺技”ソードビッカー”!!」
そう言うと彼女は相手に向かって
「投げるんかい!?」
『そんなもの!!』
一夏は剣を投げた事にツッコみ、オータムは剣を躱す。しかし躱された剣は向きを変え相手を追い始めた。
「忘れたのかしら?その水はコントロールできるって事を」
『クッ!なら!!』
避けられないと分かると機体にエネルギーシールドを展開し迎え撃つ。しかし、剣はあっさりとシールドを貫き彼女の胸に突き刺さる。
『ガアッ!?』
「絶対防御が有るから死にはしないでしょうけど、痛いでしょ?」
『グッ・・・だがこの位・・・!?』
なおも動こうとするオータムのバイザーに突如エラーの文字が浮かび上がる。
「私の単一仕様能力”ソードビッカー”は相手を貫いた後、ナノマシンが機体内部へと入り込み
オータムの機体は貫かれた胸部装甲を中心にひび割れて行き、至る所のバーツがボロボロに損傷して行く。
「流石にISのコアは破壊不可能だけど、これじゃあもう戦えないわね?」
『グッ・・・まだだ!!』
するとオータムは損傷していないシステムを使い機体本体と蜘蛛の様な下半身を切り離す。
「あら?それ取れるの?」
切り離された機体はそのまま一夏の方へ向かって行く。
「来るのか!・・・ん?」
一夏が剣を構えると機体からタイマーのような音が聞こえてくる。
「まさか!?」
一夏がその正体に気付いた直後、機体が大爆発した。
IS学園アリーナ
突如アリーナの壁を破壊し二機のISが飛び出してきた。
「アンタが・・・アンタ達さえ居なければ!!姉ぇ姉達は!!」
「まるで自分が被害者の様な口ぶりだな?だが、先に武力介入してきたのは君達の方だという事を忘れるな!!私の空を汚し、同胞や恩師を奪い、友人を悲しませ、剰え親友の顔に傷跡を残したのは君達だ!!」
アイリスはかつて無い程激怒していた。一年前、多くの物を奪ったISが目の前に居て黙っていられる程アイリスは大人では無かった。
アイリスはネーナからの攻撃を躱すと的確に攻撃を当てていた。
「レーダーもセンサーも無力化してるのに・・・どうしてそんなに戦えるのよ!!」
「君はISの操縦を全てコンピューター任せにしているのか?」
アイリスはレーダーや自動照準システムを使わずマニュアル操作で戦っていた。その状態で優勢である事が、彼女の技量の高さが窺える。
その時、アリーナの床が突然爆発した。
「何だ!?」
「何よ!?・・・あれは!?」
すると爆発で空いた穴からISモドキに抱えられたボロボロのオータムが現れた。彼女は二人に目もくれずに何処かへと飛び去った。
「何よ彼奴、あれだけ偉そうなこと言っておきながらやられてるじゃない!」
オータムの敗走により状況が不利だと気付くとネーナも撤退を開始しようとする。
「逃がすか!」
「ガガ!私を守りなさい!」
ネーナがそう言うと、ガガと呼ばれた三機のISモドキがアイリスへ向かって突撃してくる。
「私の邪魔をするな!!」
アイリスはプラズマソードで三機を切り裂く。切り裂かれたガガはそのまま空中で爆散した。
煙が晴れると其処にはネーナの姿は無かった。
「逃げられたか・・・」
IS学園校舎外 北側
「全くしつこいですわ!」
セシリアはビットを展開してガガを撃ち落として行く。
「これじゃ限がありませんわ・・・あら?」
するとセシリアはとある事に気付いた。攻撃をガードしたガガが暫くするとシールドが解け失速したかと思うと独りでに爆発した。よく見れば撃ち落とされるガガの中にはシールドが切れた後、攻撃を受ける前に既に爆発している機体が多くあった。
「皆さん!どうやらこのISモドキは長時間の戦闘が出来ないようですわ!」
「つまり無理に撃ち落とそうとしなくても、逃げ回っていれば勝手に自滅してくれるってことね!」
「でも燃料切れでも自爆するなんて、どれだけ迷惑な敵なんだ」
彼女達が敵の弱点に気付いた時、今まで邪魔していた妨害電波が急に無くなった。
それによりオフラインになっていた防衛システムが再稼働し、学園中に設置されていた対空ミサイルやバルカン砲、重武装の制圧用オートマトンがガガを次々に撃ち落として行く。
「ようやく終われるようですね」
「ああ、長かった」
これによりNフィールドでの戦闘は終了した。
IS学園校舎外 南側
ラウラとパトリシアの二人は敵ISのオールレンジ攻撃に苦しめられていた。
「クッソー!これじゃあジリ貧だぜ!」
「クッ!」
「・・・中々に粘るな」
二人が押されている事は事実だが、敵ISのパイロットは逆に今も撃墜されずに戦う二人を見て称賛する。
「・・・ん?オータムとネーナが撤退したか・・・潮時だな」
敵ISのパイロットはオータムとネーナが撤退した事に気付くと、二人をビットで牽制しつつ撤退を開始した。
「敵が逃げて行く?」
「クッ・・・」
ラウラとパトリシアは消耗している状態での深追いは危険と判断し、撤退する敵ISを黙って見ている事しか出来なかった。
IS学園男子更衣室
ロッカールームは爆発により見るも無残な状態になっていた。
部屋の端に水でできたドーム状のバリヤーが張られていた。その中には身を守る態勢の一夏と楯無が居た。
「大丈夫一夏君?」
「はい・・・あの女は?」
「どうやら逃げられたみたいね。爆発の威力がどれ程か分からなかったから、攻撃に使っていたナノマシンも全部呼び戻しちゃった所為で仕留めきれなかったみたい」
「すみません・・・俺を庇った所為で・・・」
「良いのよ、生徒を守るのも生徒会長の務めだもの」
そう言って彼女は一夏に向けてウインクをする。
これによりIS学園襲撃は、施設への被害や負傷者は出たものの、一人も死者を出す事無く終結する事に成功したのであった。