アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
IS学園格納庫
アイリス、レベッカ、簪、本音の四人は格納庫にある一機のISの前に集まっていた。
「完成したか」
「ああ、遂に完成したよ」
アイリスの問いにレベッカが答えるのと同時にISの周りに映し出されていた「作業中」と書かれたブルースクリーンが消え、ISの全貌が明らかになる。
そのISは全身が黒く塗られた鎧武者の様な出で立ちだった。
「”マスラオ”、簪の専用機だ」
「カッコいいね~!」
「フラッグの面影が垣間見える。見事な造形だが、以前模擬戦をした
「はい!見た目にはかなりこだわりました!」
マスラオの外見は手足や胴体部がフラッグに近い形状をしており、まるで兜を被ったフラッグの様であり日本の量産型ISである打鉄の後継機であった打鉄弐式とは大きく異なる外見をしていた。
「二人で話し合っている内にやりたいことが増えて行ってね、お陰で整備・開発科で利用できる予算限度額を大きく上回ってしまったよ」
「ですがレヴィがアイリス社に話を通してくれて、マスラオの開発・戦闘データを共有する代わりに開発費用とフラッグの開発データを頂くことが出来ました」
元々は整備・開発科の予算で機体の改造をしていたのだが、外見や新装備等をこだわり過ぎた結果、予算限度額を大幅に過ぎてしまったのである。そこでレベッカは簪と話し合った末、アイリス社のコネを使い何とか開発費を手に入れたのである。
因みに簪はレベッカの事を親しみを込めてレヴィと愛称で呼んでいる。
「良かったのか?君の専用機のデータを渡しても」
「はい、此処までしてもらったんですからこれくらい安いものです。それに、アイリス社の協力が無ければマスラオは完成しませんでした」
「ある意味この機体は初の日米共同開発のISと言えるね。この機体のデータは現在研究開発中の第4世代機にも反映される予定だよ、完成した暁には日本でのライセンス生産も検討されているよ」
「カタギリ主任が開発中の第4世代機か・・・楽しみだな」
「そうそう、君と模擬戦を行うにあたって隠し玉を用意しといたから」
「隠し玉?」
「はい、私が考案したシステムをレヴィと協力して機体に実装したんです」
「前から言っていた新装備の事か、それは楽しみだ」
「それで、その・・・」
「どうした?」
簪は何処か言いずらそうに言葉を詰まらせる。
「・・・師匠!今度のタッグマッチで私とパートナーになってくれませんか!」
タッグマッチトーナメント当日
『どうも皆さん!今日は専用機持ちのタッグトーナメントでーす!』
アイリス達は現在、アリーナで行われる開会式に参加していた。生徒会長である楯無による説明が始まる。
『出場選手の皆さんは、日々の訓練の成果を存分に発揮し、全力で挑んでください!専用機を持たない生徒の皆さんにとっては、試合内容はとても勉強になると思います!しっかりと見ていてください!それでは、実りのある時間に成る様期待を込めて、開会の挨拶とさせて頂きます!』
挨拶が終わり、各自試合の為の準備に取り掛かる。アイリス&簪チームは一回戦目で一夏&箒チームとの試合となった。
IS学園アリーナ 観客席
「どうも~レベッカちゃん!隣良いかな?」
「おや、更識会長。良いですよ」
観客席に座るレベッカの隣に楯無が座る。
「妹の事、任せて悪かったわね」
「いえいえ、お陰様で楽しく過ごさせて貰っています」
「本当は一夏君にお願いしようと思ってたんだけど・・・貴女達に任せて正解だったわ」
「そう言って貰えると有難いです」
「あ!出てきたよ!」
「何?あの機体?」
「始めて見る機体だね?」
二人が会話をしていると、準備を済ませた四人がISを纏いピットから現れた。しかし、簪のISを始めて見た生徒達から困惑の声が上がる。
「あの機体は・・・フラッグじゃない?」
「打鉄にも似ているが・・・」
一夏と箒は機体を見てそう呟いた。そこには兜に設けられたV字型のバイザーで顔を半分隠した簪の姿があった。
「さっきは任せて正解だったって言ったけど・・・正直間違いだった気がして来たわ」
「誤解している様ですが、デザインを考えたのは簪ですよ?偶々見ていた時代劇に影響されたとか言ってました」
「純情メガネっ子だった簪ちゃんがこうなるなんてね・・・」
楯無は妹の豹変ぷりに少しだけ引いていた。
「折角の妹さんの晴れ舞台なんですから、しっかり見ていてあげてください」
「言われなくても分かっているわ?」
そう言うと二人は観戦に集中する。
IS学園アリーナ
カスタム・フラッグとマスラオが横に並ぶ。
「師匠、白式の相手は私に任せて貰えませんか?」
「フッ、無論だ。少年の相手は任せた」
「はい!」
試合開始の合図と同時に二人は飛び出した。
「来るぞ一夏!」
「おう!」
接近する二機に箒と一夏は向かい打つべく動き出す。簪は左右で刃の長さが違うビームナギナタを回転させつつ一夏に接近する。対してアイリスはリニアライフルを撃ちつつ箒に近付いて行く。
「はああッ!!」
「フッ!!」
一夏は二つの刃による連続攻撃を巧みに躱しつつ反撃を試みる。そして両者一歩も譲らずに鍔迫り合いとなる。
「・・・フフッ」
「何!?」
簪は不敵に笑うと頭部に装備されたリニアマシンガンを撃つ。至近距離から放たれた攻撃に一夏は避けることが出来ずに被弾してしまう。
「一夏!?」
「君の相手はこのアイリス・エーカーが引き受けた!!」
一夏の援護に向かおうとする箒をアイリスが遮る。機体性能としては第4世代機である紅椿の方が圧倒的に上であるが、技量で上回るアイリスに苦戦を強いられる。
「クッ、流石だなアイリス」
「フッ、其方こそ、以前とは比べ物にならない程強くなった」
これにより両者共にパートナーと分断される事となった。
「白式・・・流石に見掛け倒しでは無いみたいですね?」
「何?」
不意打ちによりダメージを与えられた一夏であったが、距離を取ると銃弾を全て刀で弾く。それを見た簪は攻撃を止め、一夏へと話しかけた。
「織斑一夏さん、実を言うと以前の私は貴方を恨んでいました」
「恨む?どうして?」
「私の本来の機体であった打鉄弐式は、貴方の白式と同じ開発元でした。貴方の登場により、白式開発に人員を回され打鉄弐式は未完成のまま開発を中断されました」
「それは・・・すみません」
簪の話を聞いた一夏は試合途中であったが、とりあえず頭を下げて謝った。
「でも、今はもう気にしていません。寧ろ貴方には感謝しています」
「えっ?」
「貴方のお陰で、私はレヴィや師匠と知り合えて、打鉄弐式以上の機体を開発する事が出来て、毎日を楽しく過ごせています」
「それは、どういたしまして?」
すると簪は口元に笑みを浮かべる。彼女は薙刀の柄を両手で持つと、柄が中心で別れて二本のビームサーベルとなる。
「だから、貴方に見せてあげます!盟友と作りし、我がマスラオの奥義を!!」
その言葉と共に、突如マスラオが赤く染まる。すると次の瞬間、視界から消えた。
「ッ!?」
一夏はISのセンサーと直感を頼りに左側へ刀を構えると、高速で接近してきたマスラオの斬撃を防ぐ。
防がれたと見るや直に白式から離れると、またもや高速で斬撃を放つ。一夏も必死で防御するが徐々にエネルギーを減らされて行く。
「”
レベッカは隣に居る楯無に装備の説明をする。
「簡単に言ってるけど、機体と操縦者に尋常じゃ無い負担が掛かるわよね?大丈夫なの?」
「勿論操縦者の安全は保障されていますよ。尤も、ISの補助があるとは言え操縦者にはかなりの瞬発力と動体視力が求められます。それに、加速している限りエネルギーは減り続けますし、操縦者保護に半分近いエネルギーを使っているので現時点での稼働可能時間は一分程しかありません。また、見て分かるように機体は常時放熱され続けている為、解除後には機体がオーバーヒートしてしまい性能が大幅に低下してしまいます」
「つまりこの一分を逃げ切れば勝ちって事ね?」
「そうなりますね。まだまだ問題はありますが、今後は戦闘データを基に改良して行く予定です」
「一夏!?」
「何処を見ている!!」
突如高速で動き出した簪に追い詰められる一夏を見て、箒が援護に向かおうとするがアイリスに阻まれる。
「あれには流石に私も苦労したよ。さあ、どうする少年?」
一夏は簪の攻撃によりその場から動けないで居た。
「グッ!?」
「耐えますね・・・でも!!」
限界稼働時間が十秒を切った時、簪の猛攻により一夏がバランスを崩す。
「隙ありイィ!!」
「しまった!?」
簪のビームサーベルが一夏を完全に捉えた、その時。
ドカアアァァァン!!!
「「!?」」
以前と同じように、突然何かがアリーナの遮断シールドを突き破り地面に衝突した。