アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
日本 IS学園 1年1組教室
「これは・・・想像以上にキツイ・・・」
この学園で唯一の男子生徒である織斑一夏は教室中から自身に向けられるプレッシャーに顔色を悪くしながらそう呟いた。
「(ふむ、彼があのミス・ブシドーの弟・・・)」
そしてその様子を横目で窺うアイリス。
「(日本男児はハーレムを強く所望するとカタギリから聞いていたが、あの様子を見るに彼は例外の様だな)」
彼女は日本を訪問するにあたって自身の親友であり日本オタクであるレベッカから日本についての知識を教わっていたが、彼女の教えは何処かずれていた。
「皆さん入学おめでとう!私は副担任の
シーン・・・
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
「ハッ!よろしくお願いします」
「はっ・・・あ、ありがとう!」
教卓に立った副担任の山田先生が挨拶をするが、アイリス以外の生徒の視線は一夏に釘付けになっており、アイリス以外誰も反応しなかった。
「あっ、今日から皆さんはこのIS学園の生徒です。この学園は全寮制、学校でも放課後も一緒です。仲良く助け合って楽しい三年間にしましょうね!
それでは自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
生徒の自己紹介が始まった。番号は五十音順なのでアイリスの番は直に訪れた。
「(日本では自己紹介が大切だと聞いた。あとキャラ付けなる物も)」
アイリスはレベッカから聞いた事を思い出しつつ立ち上がった。
「アメリカの代表候補生、アイリス・エーカー中尉だ。これから三年間共に勉学に励む者同士、よろしく頼む」
彼女の自己紹介に一夏のみに向けられていた視線が向けられる。
ひそひそ
「アメリカの代表候補生?」
「中尉ってことは軍人?」
「エーカーってあのグラハム・エーカーと何か関係が?」
「小っちゃくてかわいい」
ひそひそ
「(彼女が噂の代表候補生・・・油断できませんわね)」
「(なんだ?彼奴ってそんなに凄い奴なのか?)」
「皆さん静かにしてください!それでは次の人」
彼女の名前を聞いて教室が少し騒がしくなったが、そのまま自己紹介が続けられた。そして遂に一夏の番が来た。
「えー、えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします・・・ッ!」
(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)(◇_◇)キラーン!
「ウッ・・・(いかん、ここで黙ったままだと暗い奴のレッテルを貼られてしまう!!)」
「・・・以上です!!」キリッ
ズコーッ!!!
「えっ?」
一夏の言葉にクラス全員がずっこけた。
「(成程、これがジャパニーズズッコケか)」
「あれぇ!?駄目でした?・・・グアッ!」
アイリスがどうでもいい事を考えていると、突然一夏の頭を殴られた。
「痛ったぁ・・・ゲッ!千冬姉ぇ!グアッ!」
「学校では織斑先生だ」
二度も打った。
「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物にするのが仕事だ」
「「「「きゃあああああああ!!!」」」」
彼女が自己紹介すると、教室が歓声に飲まれた。
「千冬様!本物の千冬様よ!!」
「私、御姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「この気持ち・・・まさしく愛だ!!」
「毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ・・・私のクラスにだけ集中させてるのか?」
その言葉にクラスはさらにヒートアップしていった。
「千冬姉ぇが俺の担任?」
「で、挨拶も満足にできんのか?お前は」
「いやぁ・・・千冬姉ぇ俺は」
「織斑先生と呼べ」
「はいぃ・・・織斑先生ぇ・・・」
「静かに!諸君らにはこれからISの基礎知識を半年で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半年で体に沁み込ませろ。良いか?良いなら返事をしろ、良くなくても返事をしろ」
「「「「はい!」」」」
「(これが織斑千冬…!正にブシドーだな…!)」
HR後の休み時間、世界で唯一の男性操縦者である一夏の姿を一目見ようと教室の前には人だかりが出来ていた。しかし、そんな事には目もくれずアイリスはある話をする為に千冬先生の元に向かった。
「ミス・ブシドー、会えて光栄です!」
「その呼び方はやめろ、米軍内で何故かその呼び名が流行っているらしいが、そもそもそのミスブシドーとは何だ」
「父によると、日本では貴女の様な女性をそう呼ぶと教わりました!」
「・・・何年前のアメリカ人だ」
「父はあなたのファンでして、会った時に伝えてほしい事があると言っていました」
「何だ?」
「「君の存在に心奪われた。是非
「ッ!」
「白騎士のパイロットは不明とされていますが、父はモンド・グロッソの戦いを見て貴女だと確信したらしいです」
「・・・」
「その様子だと事実のようですね。大丈夫です、この事は私と父しか知りませんし、言いふらすつもりもありません。
一時限後の休み時間、授業の内容がほとんど分からず、更にISの参考書を間違えて捨ててしまった事を千冬先生に怒られた上、一週間以内に全て覚えろと脅された一夏は凹んでいた。そこに金髪縦ロールのお嬢様な見た目のクラスメイトが話しかけてきた。
「ちょっとよろしくて?」
「んぁ?」
「まあ!?なんですのそのお返事!わたくしに話し掛けられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
「悪いな、俺君が誰だか知らないし」
「わたくしを知らない!?セシリア・オルコットを!?イギリスの代表候補生にして入試首席のこのわたくしを!」
「あ、質問良いか?」
「ふん、下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」
「・・・・・・代表候補生って何?」
ズコーッ!!!
またもやクラス全員がずっこけた。
「あ?」
「信じられませんわ!日本の男性というのは皆これ程知識に乏しいものなのかしら!?常識ですわよ常識!」
「で、代表候補生って?」
「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートの事ですわ!単語から想像したら分かるでしょう?」
「そう言われればそうだ」
「そう、エリートなのですわ!本来ならわたくしの様な選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡!幸運なのよ!その現実をもう少し理解して頂ける?」
「そうか、それが二人もいるってことは相当ラッキーなんだな」
一夏はそう言ってアイリスの方を見た。アイリスは二人の会話に興味無しで教科書の準備をしていた。
「ちょっと!今はわたくしが話しているんですのよ!大体、何も知らないくせによくこの学園には入れましたわね?唯一男でISを操縦できると聞いていましたけど、期待外れですわね」
「俺に何かを期待されても困るんだが・・・」
「まあでも、わたくしは優秀ですから貴方のような人間にも優しくしてあげますわよ?分からないことがあれば泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ?何せわたくし、
「あれ?俺も倒したぞ教官」
「はあ!?」
「ほう?」
その言葉を聞いて今まで話に興味がなかったアイリスも一夏に視線を向けた。
「倒したって言うか・・・いきなり突っ込んできたのを躱したら、壁にぶつかって動かなくなったんだけど」
「(教官の自滅とはいえ、ISの素人が教官の攻撃を躱すとはな・・・)」
「わ、わたくしだけと聞きましたが・・・」
「女子ではって落ちじゃないのか?」
「貴方!貴方も教官を倒したって言うの!?」
「えっとぉ、落ち着けよ!なあ」
「これが落ち着いていられ・・・」
「私も倒したぞ」
セシリアに迫られる一夏を見兼ねてアイリスが言葉を発した。
「何ですって、貴女も?」
「あれ?でもさっきセシリアだけだと聞いたって言ってなかったか?」
「ああ、
「入試?」
「私には色々と事情があってな。特別に推薦枠として入学した。その際に一応模擬戦を受けたので私も倒している」
「まさか・・・推薦枠など今まで聞いた事がありませんわ!」
「当たり前だ、今回が初の試みだからな」
「それはどういう・・・」
そこで休憩時間を終えるチャイムが鳴った。
「ッ!・・・話の続きはまた改めて、よろしいですわね!」
「ああ」
「・・・(あれ、いつの間にか俺の事忘れられてね?)」
放課後 学生寮
「カタギリ、帰ったぞ」
「おや?お帰りアイリス」
寮の自室に帰ったアイリスはノートPCを操作しているレベッカに声を掛けた。彼女は画面から目を逸らす事無く口を開いた。
「どうだった?噂の織斑一夏君は」
「どうもしない、何処にでもいる普通の少年だったよ。一見はな」
「ほう?」
「それで、整備・開発科の授業はどうだった?」
「全く退屈な授業だったよ。今更基礎知識を習ったところで得られるものは何も無い」
「おいおい、まだ初日だぞ?」
「元々、誰かさんとは違ってIS適正が低い僕の役割は一夏君のテータ解析と君のフラッグの整備だからね。ここでの授業はただのおまけさ」
彼女、レベッカ・カタギリは父である米軍のIS開発主任ビリー・カタギリの天才的な頭脳を受け継ぎ、既に飛び級で大学を首席卒業している。更に、もう十年若ければISのコアを解明していたとまで言われ、父の師でもあったレイフ・エイフマン教授から直々に教えを請いている。
その為、このIS学園での授業は彼女にとって最早常識でありそもそも入学する必要自体無いのだ。
「まあ、軍の命令には従わないとね。それに、君のフラッグは父さんが直々にチューンした機体だ。僕にしか整備できない」
「フッ、あてにしてるぞ。親友」
IS学園 職員室
「ハァ・・・」
織斑千冬は自身が担任であるアイリス・エーカーと、整備・開発科一年一組のレベッカ・カタギリの資料を手に溜息を吐いた。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「この二人、やはり?」
「ああ、間違いなく米軍からの差し金だろう。狙いはやはり一夏についてか」
「どうします?やはりここは早めに拘束した方が・・・」
「いや、証拠もないのに拘束することはできない。それに、連中が一夏に危害を加える事は無いだろう。彼奴らはそういう事を嫌っている、あくまで一夏と専用機についてのデータ収集止まりだろう」
「たしかに、そうですね」
千冬はそう言いつつ資料に目を落とす。
「レベッカ・カタギリ。米軍のIS開発主任ビリー・カタギリの一人娘、大学を首席で卒業後米軍IS機動部隊”ISWAD”の技術顧問に就任。ISの開発にも携わっている天才だがIS適正はC」
そしてもう一つの資料に目を向ける。
「アイリス・エーカー。米空軍のエース、グラハム・エーカーの一人娘。ISに高い適性がありそれを見込まれ僅か12歳でISWADに入隊。その後数々の戦果を挙げ、現在フラッグのみで編成された”第8独立戦術飛行隊”通称「オーバーフラッグス」の隊長を務める。IS適正はS」
「本当に凄いですよねこの二人」
「ああ、二人共近年稀に見る天才、内一人は世界でも僅か数人しかいないSランクという事で特別推薦枠として入学を許可したが・・・そもそもこの二人はIS学園に入学する必要すら無いエリートだ。そんな二人を態々入学させる理由はやはり一夏だろうな」
そう言いつつ、彼女はアイリスからの言葉を思い浮かべる。
「是非また戦ってみたい、か・・・」
約10年前 太平洋
煙を上げながら撤退する艦隊の上空を数機の戦闘機が飛行している。
「弾道ミサイル2341発を全て迎撃し、各国の艦隊を
アメリカ空軍最新鋭VTOL戦闘機”F-91 Gセイバー”を操縦するエースパイロット、グラハム・エーカーはそう呟いた。
《どうしますか?隊長》
「撤退だ、我々の敵う相手ではない。ハワード、臨時で指揮を任せる。」
《隊長はどうするんですか?》
「私は今から単独で白騎士に向かう」
《まさか・・・無茶です!!》
「熟知している。白騎士との戦闘で死者は出ていない、彼女の目的は恐らくアレの性能を世界に知らしめることだけだ」
《しかし・・・いえ、分かりました。どうかご無事で》
「感謝する!」
僚機の撤退を確認したグラハムは最高速で白騎士に向かった。
《ちーちゃん!また敵だよ!》
「ああ、分かっている。米軍のGセイバーか、しかしこのスピードは・・・」
《スペックの二倍以上のスピードで迫って来てるよ!》
白騎士の操縦者である織斑千冬とISの開発者であり今回の事件を引き起こした張本人の
「荷電粒子砲での撃墜ではパイロットが死亡する危険性がある、プラズマブレードで撃墜する」
《えーいいじゃん別に。どうせパイロットがちーちゃんだってことは絶対にバレないんだから》
「五月蠅い!この計画に参加する代わりに絶対に死者を出さないと約束しただろ!」
《ちぇっ、分かりましたよー》
そう言って千冬はグラハムへ向けて飛び出した。
「む、接近警報、やはり近付いて来たか!」
「(このスピードなら回避できない、一気に主翼を切断させてもらう!)」
そう言って千冬はすれ違いざまにプラズマブレードを振った。しかし。
「何ッ!?」
「読んでいたさ!」
寸での所で機体を僅かに傾ける事で攻撃を回避したグラハムは通常ではありえない速度で旋回し、逆に白騎士を追い始めた。
「馬鹿な!?旋回時のGで死ぬぞ!!」
「貰った!!」
白騎士をロックオンした機体からミサイルが二発発射される。しかしそれらを全てブレードで撃破するともう一度グラハムに向かって行った。
「初めましてだな、白騎士!」
「何者だ?」
「グラハム・エーカー、君の存在に心奪われた男だ!!」
※通信はつながっておらず、完全に独り言です。
「仕方ない、砲撃を避けた瞬間を狙う!」
千冬は砲撃を避ける位置を計算し、その瞬間に撃墜する為に動いた。
「さあ、避けてみろ!」
千冬は万が一直撃しないようギリギリ当たらない位置に粒子砲を発射した。しかし、それに対してグラハムはまさかの方法を実行した。
「なッ!?」
グラハムはGセイバーを垂直離着陸モードに切り替えることで空中でまさかの急ブレーキをかけたのだ。
「人呼んで、グラハムスペシャル!!」
グラハムはそのまま白騎士に向けてミサイルと20㎜バルカン砲を撃ち出した。白騎士はミサイルを全て撃ち落とすもバルカン砲を数発受けてしまった。
「クッ、私が被弾するとは…!」
《ねえちーちゃん、もう殺っちゃおうヨ!》
二機はその後も激しい空中戦を繰り広げたが、先に根を上げたのはグラハムであった。
「ウッ!?・・・クッ、この程度のGに体が耐えられんとは・・・」
過度なGによる身体への負担で吐血したグラハムがそう言った。身体だけでは無く、急速な旋回や急停止などで機体にも多大な負荷が掛かりいつ墜落してもおかしくない状況だった。
その為、グラハムは撤退することを決めた。
「何だったんだ、彼奴は・・・」
遠ざかって行く機体を見つめながら、千冬はそう呟いた。
IS学園 職員室
「グラハム・エーカー、血は争えないという訳か・・・」
千冬は誰に言うでも無く呟いた。
F-91 Gセイバー
米軍の最新鋭VTOL戦闘機。設計はレイフ・エイフマン教授
ISの登場がなければ世界最強の戦闘機の名を欲しいままにしていた傑作機。現在もISの総数が非常に少ない為全ての米空軍基地に配備されている。
なお、高速飛行中の垂直離着陸モードへの移行は本来想定されていない。
見た目はユニオンフラッグの飛行形態を100%戦闘機にしたような形。名前の由来はガンダムF91とGセイバーから。