アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
IS学園 1年1組教室
「これより、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めてもらう」
朝のHRで千冬先生がそう言った。
「クラス代表者とは、対抗戦だけでなく生徒会の会議や委員会の出席など、まあクラス長と考えてもらっていい。自薦他薦は問わない、誰かいないか?」
「はい!織斑君を推薦します!」
「え!?」
「私もそれが良いと思います」
「お、俺!?」
唯一の男子として持ち上げられる一夏。アイリスとしても一夏がISで戦う機会が増える事でデータ収取が楽になる為、是非彼に選ばれて欲しいと考えた。
「他にはいないのか?いないなら無投票当選だぞ?」
「ちょっと待った!俺はそんなのやらな・・・」
「納得がいきませんわ!!」
このまま流れで決まりそうになっていた時、セシリアが待ったを掛けた。
「そのような選出は認められません!同じ代表候補生であるアイリスさんなら兎も角、男がクラス代表なんて良い恥晒しですわ!このセシリア・オルコットにその様な屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!大体、文化としても後進的な国で暮らさないといけないこと自体、わたくしにとっては耐えがたい苦痛で・・・」
言いたい放題である。
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ、世界一不味い料理で何年覇者だよ」
あんまりな言い分に流石の一夏も言い返さずにはいられなかった。
「な!?美味しい料理は沢山ありますわ!貴方、わたくしの祖国を侮辱しますの!」
「(先に侮辱したのは其方だろうに・・・)」
セシリアの言葉にアイリスは心の中で突っ込んだ。
「決闘ですわ!!」
「ああ良いぜ、四の五の言うより分かりやすい」
「わざと負けたりしたらわたくしの小間使い、いえ奴隷にしますわよ!」
「ハンデはどのくらい付ける?」
「は?あら、早速お願いかしら?」
「いや、俺がどのくらいハンデ付けたらいいのかなーっと」
その言葉を聞いた瞬間、教室は笑いに包まれた。
「織斑君それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、ISが出来る前の話だよ!」
「むしろ男と女が戦争したら三日持たないって言われてるよ?」
「うっ(しまった・・・そうだった・・・)」
「いや、そうとも限らない」
アイリスの言葉に、視線が彼女に集中する。
「どういう事?アイリスさん」
「そうだよ、ISを使える女の方が男より強いじゃん」
「ISを使える事だけが勝敗を別つ絶対条件では無いという男を私は知っている」
「誰なの?」
「私の父だ」
その言葉に教室は再び笑いに包まれた。
「お父さんって!何々、未だにお父さんに怒られるのが怖いの?」
「うちのお父さんなんて、毎日お母さんに怒られて凹んでるのに!」
「私の父は
「またまた~噓でしょ?」
「戦闘機なんて前時代的な物にISが負ける訳無いでしょ」
「いや、私知ってる!」
皆がアイリスの言葉を否定する中、一人のクラスメイトがそう言った。
「ニュースで見たよ!一年前、たった一機でISに戦いを挑んだGセイバーのパイロット、グラハム・エーカー!」
「グラハム・エーカー?」
「えっ、あれって作り話じゃ?」
「事実だ」
千冬先生の言葉に、全員が驚いた。
「世界で唯一ISを撃墜した男。グラハム・エーカー少佐はアイリスの父だ」
その言葉に再びアイリスに視線が向けられる。
「そう言う訳だ。それでは勝負は次の月曜、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ準備をしておくように・・・織斑!」
「はいっ!」
「気張って行けよ?」
「は、はい!」
一時限目の授業
「織斑、お前のISだが準備まで時間が掛かるぞ」
「へ?」
「予備の機体が無い。だから、学園で
「専用機?一年のこの時期に?」
「つまりそれって、政府からの支援が出るってこと?」
千冬先生の言葉でクラスが騒がしくなる。
「専用機が有るって、そんなに凄い事なのか?」
「それを聞いて安心しましたわ!」
「なッ!?」
先程まで自分の席に着席していた筈のセシリアが突然一夏の前に現れた。
「クラス代表の決定戦、わたくしと貴方では勝負は見えていますけど?流石にわたくしが専用機、貴方は訓練機ではフェアではありませんものね」
「お前も専用機ってのを持ってるのか?」
「ご存じないの?よろしいですわ、庶民の貴方に教えて差し上げましょう。このわたくしセシリア・オルコットはイギリス代表候補生、つまり現時点で既に専用機を持っていますの。世界にISは僅か467機、その中でも専用機を持つ者は全人類70億の中でもエリート中のエリートなのですわ!」
「467機?たった?」
「ISの中心に使われているコアって技術は一切開示されてないの。現在、世界中にあるISは467機。その全てのコアは篠ノ之束博士が作成した物なのよ?」
「(それって
一夏は幼馴染である
「ISのコアって完全なブラックボックスなんだって。篠ノ之博士以外は誰もコアを作れないんだから」
「でも博士は、コアを一定数以上作ることを拒絶しているの」
「国家、企業、組織機関では割り振られたコアを使用して研究、開発訓練を行うしかない状況なんだよ」
「(ISのコア・・・教授が生きておられたら、解明できていたかもしれないな・・・)」
アイリスは世界で最もISの真実に近付いた人物、レイフ・エイフマン教授の事を思い浮かべる。彼は一年前、とある事件により死亡している。
「本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なのでデータ収集を目的として専用機が与えられる。理解できたか?」
「な、何となく」
昼休み
「あの、アイリスさん」
アイリスが食堂に向かおうとしていると一夏に話し掛けられた。
「何だ?」
「ISの事、教えてくれませんか?あんなこと言った後で格好悪いですが、このままじゃセシリアに何もできずに負けそうなんです」
何の話かと思えば、ISについての教授のお願いだった、しかも何故か敬語で。傍から見れば小柄で幼い顔をしたどう見ても年下にしか見えないアイリスに対して、年上にしか見えない一夏が頭を下げているという不思議な光景が広がっている。
一夏的には、初対面という事とは別に、アイリスからは年上と言うか武人的なオーラが感じられたのでつい腰が低くなってしまうのだ。
「別に構わないが、機体が無い今の状況では基本的な事しか教えられないが?」
「それだけでも大丈夫です!どうかお願いします!」
「ま、待った一夏!!」
そこに待ったを掛けたのは幼馴染である箒だった。
「そ、それくらいなら私が教えてやる!」
「えっ?いやでも、やっぱりここは代表候補生でISの専門家のアイリスさんに教わった方が・・・」
「機体が無いのに何を教わるんだ!基礎知識なら私でも十分教えられる!」
「いやでも」
「それに!アイリスさんは代表候補生で色々と忙しいだろ!」
「えっ?そうなのか?確かに代表候補生って響きからして大変そうだけど・・・」
「そうだろう!・・・それに、このままじゃ一夏と二人きりの時間が減ってしまう・・・」
「ん?何か言ったか?」
「い、言ってない!」
「(ふむ。成程、これが噂に聞くツンデレ幼馴染と鈍感系主人公か。カタギリに教えてもらったライトノベルとやらによく出てくる人種だったな)」
二人の会話を何所かズレた考えで聞いているアイリス。大体レベッカの所為である。
「(ここは助け船を出してやるか)確かに、機体が無い状況では基礎知識くらいしか教えてやれないだろう。それなら、初対面の私よりも幼馴染の彼女から教わった方が気が楽じゃないかな?」
「アイリスさんまで・・・うーん、確かにそうなのかな?」
「では少年、頑張ってくれたまえ」
「あ、ちょっと!アイリスさん!」
「そう言う訳だから、今日から放課後私がみっちり鍛えてやるからな!」
「ええっ!?」
一週間後 IS学園 第3アリーナ
「あれがイギリスの第3世代IS”ブルー・ティアーズ”か」
アイリスは観客席からステージ上に浮かぶセシリアの蒼いISを見て呟いた。
「(しかし何だな、絶対防壁が有るからとは言えISスーツは何故ああも露出が激しいのか・・・)」
ISを効率的に運用するための専用装備としてISスーツという物があるのだが、何故かその殆どは俗に言うスクール水着のようなデザインなのだ。
ISは特殊なバリアーで守られている為装甲による防御を必要としない。その為フラッグやイナクトの様な全身装甲に近いISはあまり多くない。
「(だからと言ってやはりアレはどうなのだ?私自身は既に慣れているから今更羞恥心を感じる事は無いが、父は「柔肌を晒すとは・・・破廉恥だぞIS!!」と言っていたな。カタギリによると日本には肌を晒すほど強くなる文化があるらしいが)」
アイリスがどうでもいい事を考えていると、ようやく銀色のISに乗った一夏が現れた。
「あのIS、まさか・・・まあいい。刮目させて貰おう、少年」
遂にセシリアと一夏の試合が始まった。
開始直後、セシリアからのビーム攻撃に一夏は直撃してしまった。その後も何とか回避を試みるも被弾を繰り返し徐々にエネルギーを削られていく。一夏はブレードを取り出しセシリアに接近しようとするも激しい銃撃に中々近付けないでいた。
「このブルー・ティアーズを前にして初見でこうまで耐えたのは貴方が初めてですわね。褒めて差し上げますわ!」
セシリアが余裕顔でそう言った。
「でも、そろそろフィナーレと参りましょう!」
そう言うとブルー・ティアーズの翼と思われた四つのパーツが突如本体から離れビームを撃ちながら一夏に迫る。
「
縦横無尽に飛び回る無線ビットを見たアイリスが僅かに顔を顰めてそう言った。
ビットによるオールレンジ攻撃により追い詰められる一夏、しかし。
「一か八か!!」
ビームをブレードで弾くと一気に加速して行った。
「何と!?」
一夏はそのまま攻撃を躱しつつセシリアに近付いた。そしてそのままビットの一つを叩き落したのである。
「分かったぜ!この兵器は毎回お前が命令を送らないと動かない!しかもその時、お前はそれ以外の攻撃が出来ない」
「(BT兵器の弱点をこの短時間で理解するとは・・・しかし)」
アイリスは一夏の洞察力の高さに素直に感心した。しかし、それ故に慢心により生まれた隙をアイリスは見逃さなかった。
一夏は残りのビットを全て切り落としあと一歩の距離までセシリアに近付いた。しかし。
「掛かりましたわ」
「しまった!?」
一夏は隠されていたもう二つのビットから発射されたミサイルに直撃してしまった。
その様子に誰もが一夏の敗北を悟った。しかし、アイリスだけは違った。
「いや、違う」
煙が晴れると、そこには先程までの鈍い銀色ではなく全身が眩い白に染まり、全身の形を変えたISが居た。
「やはり、先程まで
そう、一夏は先程までパイロットのデータが反映されていない初期設定の状態で戦っていたのだ。
彼は今までとは段違いのスピードでセシリアに近付くとプラズマブレードを振り上げた。しかし・・・
『試合終了。勝者、セシリア・オルコット』
「えっ!?」
「ハッ!」
あと一歩のところでエネルギー切れにより一夏の負けとなった。
放課後 IS学園 学生寮
「成程、粗削りではあるけど初期設定の機体でここまで動けるとはね」
一夏の試合映像を確認しながらレベッカはそう言った。あの試合の後、アイリスは自己訓練の参考資料として試合映像を譲り受けていた。(千冬はアイリスの狙いに気付いていたが物的証拠が無い他、参考資料として試合映像を生徒が入手することは普通に許可されている事なので記録映像を渡した。アイリスもその事を知っていたので盗撮などは行わずに堂々と映像を譲り受けた)
「彼自身の事もだけど、このISは少し特殊だね」
「特殊?」
「ああ、このISは
「単一仕様能力を?」
「ああ、白式には織斑千冬の専用機であった”
「成程、正に姉弟機と言う訳か」
「知っての通り単一仕様能力は
「開発は日本の倉持技研だったな」
「その筈だけど、あそこがそんな技術を持っていたなんて報告は無かった筈なんだけどね」
「今まで隠していたのか。それとも・・・」
「第三者による物か」
そこまで考えて二人は話を変える事にした。
「所で一夏君の事はどう思う?」
「たった一週間でISの素人があそこまで動けるようになるとは考えられん。普通の人間ならな」
「彼はもしかすると君と同じで天性の才能があるのかもしれないね」
「そうかもしれんな・・・ところでカタギリ」
「何だい?」
「気になっていたんだが、ここ最近機嫌が良さそうだな。それに、帰りが遅い時もある」
実はIS学園に入学してから何時も退屈そうだったレベッカが、ここ最近機嫌が良いのだ。また、何時もはアイリスよりも早く帰ってきてPCを操作していたレベッカが偶に帰るのが遅い時があるのだ。
「ああ、言って無かったかな?実は最近同士が出来てね」
「同士?」
「ああ、
「IS開発?」
「ああ、彼女の専用機らしいんだけど、詳しい話は僕も知らない。自分の力で完成させたいらしいけど、一人の力じゃあ出来る事も限られてるから僕も色々手伝ってるんだ」
「ほう?カタギリが直々に手を加えるというなら良い機体に仕上がるだろうな」
「それは少し違うよ、完成させるのはあくまでも彼女だ。僕はただ彼女の背を押してやるだけだよ」
「そうか・・・所で、立ち聞きは良くないな?」
アイリスがそう言うと、天井から微かに物音がした。
「フフフ・・・」
「何だい!?」
突然聞こえてきた笑い声にレベッカが驚いて椅子から立ち上がると、天井の一部が開きそこから「蜘蛛」と書かれた扇子を持った銀髪の少女が降って来た。
「誰だい君は!?」
「地獄からの使者・・・ではないけれど。初めましてフラッグファイターさん?」
レベッカの問いによく分からない回答をした後、その少女はアイリスに話しかけた。
「貴女は、かの”荒熊の娘”ソーマ・スミルノフ中尉を降し、見事ロシア代表操縦者の座を手にした現IS学園生徒会長
「あら?ご存じ頂けていたとは光栄ですわ、アイリス・エーカー中尉?所で、よく気付いたわね。私も本気で気配を消していたつもりなんだけど?」
彼女は「見事!!」と書かれた扇子で口元を隠しながらそう言った。
「ただの乙女座の勘ですよ」
「乙女座?女の勘じゃなくて?」
「彼女、いつもそんな感じなんですよ」
アイリスの言葉に呆れた顔をした楯無に対して、苦笑いを浮かべたレベッカはそう答える。
「それで、何の御用でしょうか?」
「私はただ、未来の生徒会長がどんな人物か見に来ただけよ?」
「そうですか。私には、どちらかと言うとカタギリの方を気にしているように見えますが?」
「どういう事だい?アイリス」
「まさか?別に、米軍が織斑一夏の事だけじゃなく
「はて?何を仰っているのかよく分かりませんが?」
「気にしないで、ただの独り言だから」
そう言って部屋を出ようとする楯無。
「あっそうだ!」
扉を開けた彼女は振り向くと、レベッカの事をじっと見つめた。
「・・・妹の事、どうかよろしくね」
先程からの威圧的な声では無く、何処か気まずさと安心感が混ざった様な声でそう言うと部屋から出て行った。
「アイリス、彼女は・・・」
「さぁな。何にせよ、彼女のお眼鏡に適ったようだな、カタギリ」
「え?あ、ああ・・・?」