アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
IS学園 グラウンド
アイリス達はISの実技授業の為、ISスーツを着てグラウンドに集合している。
生徒の殆どが学校指定のISスーツを身に着けている中、代表候補生など一部のメンバーは専用のISスーツを着用している。
アイリスもその一人であり、ラッシュガード型で白地に黒いラインが入っており、左胸にISWADのシンボルマークである剣を思わせるマーク、背中にフラッグの頭部を模ったオーバーフラッグスの部隊章が描かれたISスーツを身に着けている。
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、試しに飛んでみろ」
「えっ!?」
「分かりましたわ」
飛行の手本として一夏とセシリアの名が呼ばれた。この二人は前の決闘で飛行している姿をクラスメイトが見ているという事で選ばれたのだろう。
千冬先生の言葉にセシリアはすぐさまISを展開するが、一夏は展開に戸惑っている様だ。
「あ、あれ?」
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで
「・・・集中・・・来い、白式!」
セシリアに遅れて一夏もISの展開を完了した。
「よし、飛べ!」
「はい!」
「ようし・・・うおっ!?」
合図でセシリアは高速で飛行して行くが、一夏は大きく振ら付きながら飛行を開始した。
「(ふむ、やはりオルコットに比べて練度の低さが窺えるな)」
アイリスは振ら付きながら飛行する一夏を見て、決闘の際よくあそこまで動けたなと改めて思った。
「織斑、オルコット、急降下と完全停止をやって見せろ」
思考している間に千冬先生から急降下と完全停止の指示が出た。
セシリアは流石代表候補生という事もあり危なげ無く着陸した。しかし、一夏の方は全く減速する事無く地面に向かって猛スピードで突っ込んできた。
「おうわああっ!!」
「ッ!?」
ズドオォォン!!!
そしてそのまま地面に激突して土煙を上げた。
「一夏!?」
「織斑君!?」
その光景に箒と山田先生が声を上げた。しかし。
「全く、何をやっている少年」
「えっ、あれ?」
煙が晴れた先には、ISを展開し白式を支えるアイリスの姿があった。
黒を中心に所々白が入った直線的なボディ、白式やブルー・ティアーズよりもかなり細いスラッとした脚部と腕部、戦闘機を彷彿させる背部と腰部の翼の付いたスラスター、黄色のバイザーと後ろに伸びたブレードアンテナ、左利きの為右腕に装備されたディフェンスロッド、翼にマーキングされたオーバーフラッグスの部隊章。
これこそが彼女のIS”カスタム・フラッグ”である。
「何あの機体?」
「って言うか何時ISを展開したの?」
「展開したのに気付かないほど速いなんて・・・」
「馬鹿者、グラウンドに穴を空けるつもりか」
「すみません!」
皆がアイリスの展開速度に驚いている中、千冬先生は一夏に対して注意する。
「ちょうど良い。エーカー、手本を見せてやれ」
「ハッ!分かりました」
そう言うとアイリスは飛び立った。
「あれが、アイリスさんのIS・・・」
「アメリカのアイリス社が開発した第3世代IS”アメリカンフラッグ”、第2世代機だった”アメリカンリアルド”の後継機だよ。今から一年半前、当時世界中で第3世代機がまだ実験段階だった中での正式採用、それもワンオフ機じゃなくて量産機っていう事で大騒ぎになったんだ」
「基本色は水色。汎用性と省エネを重視した機体で、エネルギー消費を抑えるため機体の徹底的な軽量化が採られてるの。それにISの防御は基本的にシールドバリアーに頼りきりだけど其処も省エネ化するためにディフェンスロッドを装備することで防御時のエネルギー消費を抑えてるの」
「武装は基本的に主武装の20㎜ハイブリッド・リニアライフル、副武装のソニックブレイド&プラズマソード、左腹部の7.62㎜機銃、脚部ミサイルユニットの四つだけ。高火力なワンオフ機と比べてシンプルだけど、戦う場所・操縦者を選ばない量産機としては理想的なんだ。武装にも省エネ化が施されていて、ソニックブレイドはプラズマソードと切り替えて使う事でエネルギー消費を抑えられるし、特に凄いのはハイブリッド・リニアライフルでね、セミ・フルの切り替えは従来のリニアライフルと変わりないんだけど、実弾の上にビームをコーティングすることで威力を上げつつエネルギー消費を抑えられる様になっているんだ。しかも、ビームもしくは実弾単体でも撃てるからエネルギーが少ない時は実弾、弾切れの時はビームって感じで切り替えて使うことが出来るんだよ」
「此処まで徹底した省エネ化がされているのは単一仕様能力を使用する為なんだ。単一仕様能力はかなりのエネルギーを消費する事が多いから燃費が悪くなることは避けられないんだ。だけどフラッグはこの大幅な省エネ化のお陰で今までの実験機なんかとは比べ物にならないほど稼働時間が伸びてるんだよ」
「だけど、世界初の量産型第3世代機ってことで色々と量産に手間取って、今だに完全な機体変更は出来ていないんだって」
「その所為でフラッグはまだたった15機しか生産されていなくて、エースパイロット達に優先的に配備されてるんだ。だからフラッグに乗れる操縦者は敬意を込めて「フラッグファイター」って呼ばれてるんだよ」
「へえー、よく分かんないけど凄いんだな」
クラスメイト達の説明に全てを理解できないまでもとりあえず凄さは伝わったのでそう返しつつも、高速で空を自在に飛び回るアイリスの姿に一夏の眼は釘付けにされる。
「すっげー・・・」
「でもアイリスさんのは色が違うよ?」
「それによく見たら形も少し違うみたい」
「セシリアさんは代表候補生なんでしょ?何か知らない?」
「いえ、わたくしも初めて見ますわ。事前に調べたアイリスさんのデータにはあのような機体の事は何も書かれていませんでしたわ」
数か月前 アメリカ合衆国 ISWAD本部
格納庫内、アイリスとレベッカ、そして開発主任であるビリー・カタギリの三人は一機のフラッグの前で話をしていた。
「バックパックと各部関節の強化、機体表面の対ビームコーティング、武装はアイリス社が試作した新型の30㎜ハイブリッド・リニアライフルを取り寄せたよ」
「壮観です!カタギリ主任」
「エイフマン教授の自宅からフラッグに関する強化プランのデータが見つかってね。それを僕が引き継ぎ実現させたんだ」
「”オーバーフラッグ・カスタム”じゃあ長すぎるから名前は”カスタム・フラッグ”だね」
「今後、全てのフラッグに同様のカスタムを施す予定だよ。このカスタマイズによって第一形態の機体も第二形態並みの性能にアップされる、正に
「おお・・・これが中尉のフラッグですか!」
ビリーが機体の説明をしていると、格納庫の入り口から眼鏡を掛けた茶髪でショートカットの少女と、赤髪をドレッドヘアーにした褐色肌の少女の二人が入って来た。
「ハンナ・メイスン准尉、ダリア・ダッジ曹長、アイリス・エーカー中尉の要請により参上しました」
「来たな。二人には話した通り、私は数か月後IS学園に入学する。私がいない間、オーバーフラッグスを頼むぞ」
「ハッ!誇りあるフラッグファイターとして、必ずや守る事を約束します!」
「その忠義に感謝する!」
放課後 IS学園内食堂
「織斑君、クラス代表決定おめでとー!」パンパンパンッ
現在食堂では「織斑一夏クラス代表就任パーティー‼」なる催しが行われていた。
「何で俺がクラス代表なんだよ」
「それはわたくしが辞退したからですわ。まあ、勝負は貴方の負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然の事。何せわたくしが相手だったのですから」
「ぬぅ・・・」
「それでまあ、大人げなく怒った事を反省しまして、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたの!」
「いやーセシリア分かってるねぇ!」
「そうだよねー、折角男子がいるんだから持ち上げないとねー!」
「人気者だな一夏・・・ふんっ!」
「何でそんなに機嫌が悪いんだよ・・・」
勝負で負けた一夏であったが、セシリアが辞退した事によりクラス代表に決定した。新聞部による撮影などで盛り上がる中、アイリスは少し離れた位置で静かに飲み物を飲んでいた。
其処へ飲み物を手にしたレベッカが近付いて来た。
「おや、良いのかい?こんな所に居て」
「こういう騒がしい場は趣味に合わん」
「だろうね」
彼女はそのままアイリスの隣に座った。
「見てみなよ彼を、全く絵に描いたようなハーレム系主人公だね」
「彼は今の状況を煩わしく思っている様だがな」
「ハハッ、そうだね。それにあのイギリス代表候補生・・・セシリア君と言ったか、あれは完全にホの字だね」
「ホの字?」
「惚れてるって事さ。それよりもどうだった?フラッグの調子は」
「良好だ。やはり空は良い」
「君は昔からそればっかりだね。僕が言うのも何だけど、そろそろ彼氏の一人や二人見つけたらどうだい?あそこの一夏君とか」
「断固辞退する。私は既にISという存在に心奪われている」
「そうだったね。尤も、僕もISに魅入られた一人なんだけれども」
次の日 1年1組教室
「もう直ぐクラス対抗戦だね!」
「そうだ、二組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」
「ああ、何とかっていう転校生に変わったんだってね」
「転校生?今の時期に?」
「うん、中国から来た子だって」
「ふん、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら?」
「どっちかと言うとアイリスさんの方なんじゃないか?それにしてもどんな奴なんだろ、強いのかな?」
「むうっ・・・」
クラスでは目前に迫るクラス対抗戦と、二組の転校生の事で持ち切りだった。
「今の所専用機を持ってるのって一組と四組だけだから余裕だよ!」
「その情報古いよ!」
教室の入り口から突然聞こえた声にクラスの全員が振り返った。其処には制服の肩回りを改造したツインテールの少女が立っていた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから!」
「
「そうよ!中国代表候補生
「鈴・・・何格好つけてるんだ!すっげー似合わないぞ!」
「な、なんてこと言うのよアンタは!?アウッ!」
一夏と鈴が話していると後ろから来た千冬先生に鈴の頭が叩かれた。
「痛ったぁ、何すんの!?ふぁっ!?」
「もうSHRの時間だぞ」
「ち、千冬さん!?」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ邪魔だ」
「す、すみません・・・また後で来るからね!逃げないでよ一夏!」
そう言って鈴は二組の教室へ帰って行った。
「彼奴が代表候補生・・・」
「(ふむ、あれが中国の代表候補生か)」
昼休み IS学園内食堂
アイリスは食事をしながら一夏たちのテーブルを見た。一夏と親しげに話す鈴、話を聞く限り彼女も一夏の幼馴染らしい。そして其処に混ざる箒とセシリア。
「成程、アレが俗に言う修羅場という奴か」
「おりむー大変だねー」
「・・・と言うかなぜ君がいるんだ」
三人の不穏なやり取りを見てそう呟くアイリスと、何故か一緒のテーブルに座っているクラスメイトの
彼女とはクラスが同じな割に殆ど交流が無かったが、レベッカに連れられて簪と顔合わせをした際、偶然彼女も一緒にいた為最近はそこそこ交流が増えた。
「ねえねえ、何か三人があいりんのこと見てるよー」
「ん?」
アイリスが顔を向けると何故かあの三人がこちらを睨んでおり、暫くするとまた話が始まった。どうやら誰が一夏の特訓をするかという話になった時、一夏がつい「どうせ教えて貰うならアイリスさんが良いんだけど・・・」と口を滑らせた為一瞬此方に敵意が向いたらしい。結局、アイリスは一夏に対して異性としての興味が一ミリも無かったため三人も彼女を敵視する事を直にやめたようだ。因みに一夏への特訓は箒とセシリアが行う事が決まった。
こうしてクラス対抗戦までの日々は過ぎて行った。
オーバーフラッグ
元々フラッグが二次移行した姿をオーバーフラッグと呼称していたが、カスタマイズした通常のフラッグも総じてオーバーフラッグと呼称する様になった。