アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ!   作:113(いちいちさん)

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第4話 決戦!クラス対抗戦

IS学園アリーナ

 

 クラス対抗戦当日、アイリスはレベッカと共に観客席にて試合を観戦していた。

 第一回戦は一夏と鈴の試合である。

 

「アレが白式、直接見るのは初めてだよ。相手は中国の第3世代機甲龍(シェンロン)か。今回の彼はどんな戦い方をするんだろうね?楽しみだよ」

「ああ」

 

 鈴の機体は、赤色がかった黒色で両肩の丸型のカスタム・ウイングが特徴的な中国の第3世代IS”甲龍”である。

 二人が見守る中、試合が始まった。

 開始と同時に白式が飛び出し甲龍もそれに合わせて動き出す。両機は激しい鍔迫り合いの後一旦離れ。何やら会話した後再び格闘戦を始めた。

 

「両機共近接格闘型。機体性能は勿論の事、操縦者の腕に左右されるね」

「ああ、見た所やはり甲龍のパイロットの方が力量は上だろう。彼と彼女では経験も練度も違いすぎる」

「なら、やはり勝つのは甲龍の方かい?」

「どうかな?彼はこれまでも圧倒的な力量の差を土壇場で覆している」

「そうだね、ホント君と同じで予測不能な人だよ彼は」

 

 その時、白式が謎の砲撃を受け地面に墜落した。

 

「今のは・・・」

衝撃砲だよ、空間自体に圧力をかけ砲弾として打ち出す兵器だ。()()()()()()()()()()()()()()()だから回避が難しい厄介な代物さ」

「近接武器しか持たない白式としては完全な射撃型であるブルーティアーズよりも厄介な相手だな・・・(さあ、どうする少年?)」

 

 白式は見えない砲撃に曝されながらも何とかそれを回避している。しかし、次第に白式の動きに変化が訪れた。

 

「おや?彼、何かしようとしてるみたいだね」

「恐らく瞬間加速(イグニッション・ブースト)を使用するつもりだろう。ただし、それが通用するのは恐らく一回限り。その瞬間に勝負が決まる」

 

 そして白式は甲龍の一瞬の隙を突いて急加速した。その時。

 

ドカアアァァァン!!!

 

 突然、何かがアリーナの遮断シールドを突き破り地面に衝突した。

 

「何だ!?」

「攻撃!?・・・あれは!?」

 

 燃え盛る炎と煙の中から一機のISが現れた。

 全身が黒く両腕が巨大な全身装甲型であり、既存のISには含まれない機体だった。

 

「IS!?何処の機体だ!?」

『試合中止!織斑!凰!直ちに退避しろ!』

 

 サイレンと共に観客席の隔壁が閉じ、生徒達はパニックになりながらも避難を開始する。

 

「アイリス、僕達も避難を・・・」

「いや、無理だな」

「何を言って・・・扉がロックされている!?」

 

 何故かアリーナの出入り口がロックされており生徒達は避難できないでいた。

 

「どうやらただの襲撃では無い様だな・・・カタギリ、離れていろ」

 

 そう言うとアイリスが首に掛けていたドッグタグが光り出し、一瞬でフラッグを纏ったアイリスが現れた。

 

「ミス・ブシドー」

《エーカーか》

「非常事態につき独自の判断でISを展開しました。アリーナの扉がロックされています」

《此方でも確認している。それで、どうするつもりだ?》

「今から私のISでアリーナの扉を破壊する許可を頂けないでしょうか」

《分かった。今は非常事態だ、仕方がない。破壊した施設の修理費は米軍に請求するから安心しろ》

「感謝します」

『皆さん離れてください!今からISでこの扉を破壊します!』

 

 千冬先生に許可を貰ったアイリスはスピーカーで生徒達に声を掛けながら扉の前に移動した。

 周りに誰も居なくなった事を確認すると、プラズマソードで扉を切り裂いた。

 

『皆さん!慌てず順番に避難してください!』

 

 アイリスの言葉に生徒達は何とか落ち着いて避難する事が出来た。そして客席にはアイリスとレベッカだけが残った。

 

「君はどうするんだい?」

「フッ・・・ミス・ブシドー、出撃許可を頂きたい」

《・・・本気か?》

「私が思うに、恐らく此処以外にもハッキングを受け、鎮圧部隊は到着に時間が掛かっている。違いますか?」

《ああ、その通りだ》

「今二人の救援に向かえるのは私だけです。それに、貴女は私の実力を知っている筈です」

《・・・ハア・・・分かった、出撃を許可する。その代わり、必ず無事に戻れよ》

「感謝します!・・・そう言う訳だカタギリ」

「全く、やはり君は予測不能な人だよ」

「誉め言葉と受け取ろう」

 

 そう言うとアイリスは格納庫へ向けて飛び立った。

 

 

IS学園アリーナ

 

 一夏と鈴は正体不明のISと戦闘を繰り広げていた。しかし、直前まで試合をしていた為二人共エネルギー残量が残り少なくなっていた。

 

「クッ・・・このままじゃあ・・・」

《織斑、凰、聞こえるか!》

「千冬姉ぇ!」

《良いかよく聞け、今其方にエーカーが向かっている》

「アイリスさんが!?」

《ああ、エーカーが到着次第、お前達は退避しろ》

「えっ!?でもアイリスさん一人じゃあ!」

《彼奴はそんなに簡単にやられる奴じゃない》

 

 その時、アリーナの格納庫から一機のISが高速で飛び出してきた。

 

「アイリスさん!」

「少年!凰!良く持ちこたえた。あとは私に任せてもらおう」

 

 アイリスは二人を守る様に前に立つとそう言った。

 

「アンタ一人でやる気!?」

「そうですよ!幾らアイリスさんが強くても一人でなんて・・・」

「君達にISでの実戦というものを見せてやろう」

 

 そう言ってアイリスは敵ISに向かって飛び出した。リニアライフルを撃ちつつ接近すると敵ISもアイリスを認識したようで後を追い始めた。

 

「先程からの単調な動き・・・もしや無人機か?」

 

 アイリスは敵ISの動きに人間らしさを感じない事に気付いた。敵ISは操縦者が完全に見えない全身装甲型で、動きも何所かプログラムされているような単調なものばかり。その為。アイリスは敵ISは無人機だと当たりを付けた。

 

「無人ISなど聞いた事も無いが、まあいい。パイロットが乗っていないという事なら手加減は要らないな!」

 

 アイリスは射撃を回避しつつ、追ってくる敵ISに目を向けた。

 

「ほう、追い付いてくるか。なら、コレはどうかな?トランスフォーメーション!!」

 

 彼女がそう言うと、フラッグの形状が変化し始めた。

 胸部装甲やカスタム・ウイングの向きが身体と平行になり、手に持っていたリニアライフルがウイングと一体化し真上から見るとまるで戦闘機のような形状になった。

 これこそが彼女の単一仕様能力”トランスフォーメーション”である。

 彼女は先程までの倍以上の速度で飛行を開始した。それに対して敵ISも必死に追い付こうと加速する。

 彼女はそのまま急旋回をすると、今度は彼女が敵ISを追いかける形となった。そのままリニアライフルを発射し、それらは全て敵ISに命中した。敵ISも旋回しビームを撃ちつつ近付いてくるがアイリスはそれらを全て回避し、すれ違い様に放たれたプラズマブレードをも回避する。

 

「正確な射撃だ。だが、それ故に避け易い!」

 

 両機共に急旋回を行いまたも向かい合う形となる。

 敵ISはこれまでマシンガンの様に撃っていたビームをチャージする事で太い一本のビームとして撃ち出してきた。

 アイリスはそのビームを人型に変形する事で回避する。

 

「名を借りて、アイリススペシャル!!」

 

 彼女はそのままライフルとミサイルを放つ。

 敵ISはそれらを全て腕でガードする。そこへプラズマソードを振り上げたアイリスが一気に近付いて来た。

 

「切り捨て、御免!!」

 

 アイリスはそのまま敵ISの右腕を切断した。その直後相手が放った左腕のパンチを躱すと敵ISの頭部を思い切り蹴り上げた。

 

「やはり無人機だったか」

 

 アイリスは切断した右腕から垂れた配線等を見て確信する。そしてそのままプラズマソードを敵ISの胸の中心に突き刺し、アリーナに高速で落下した。

 

 

IS学園 モニタールーム

 

「敵ISの沈黙を確認!」

「凄い・・・本当に一人で倒してしまいましたわ・・・」

「だから言っただろう、心配ないと」

 

 モニターには、地面にできたクレーターに横たわる敵ISとその上でプラズマソードを構えたアイリスの姿があった。そこに一夏と鈴が近付き何か話している。

 

「(しかしあの動き)」

 

 千冬は望遠カメラで捉えていたアイリスの戦闘を見てある事を思い出していた。

 そう、彼女が行っていた動きは約10年前に戦ったグラハムと全く同じ動きだったのだ。

 

「(全く・・・性格といい何もかもが似ている親子だ)」

 

 こうしてクラス対抗戦は乱入者により中止する事となった。


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