アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
ドイツ軍IS基地 駐車場
駐車してある銀色のオープンカーから一人の少女が下りてくる。
「悪いが、そろそろ時間だ。この埋め合わせは今度な!」
助手席に座る金髪の青年にそう言いつつウインクする彼女こそ、EU空軍のエースであり、2000回以上のスクランブル発進をこなし模擬戦でも負けなし、更に過去7度のIS戦を通常兵器で生き抜いた通称「不死身のコーラサワー」パトリック・コーラサワー大尉と、EU軍IS部隊の作戦指揮官であり天才的な戦術家である通称「鉄の女」カティ・マネキン准将の娘、パトリシア・コーラサワーである。
彼女はドイツ軍IS特殊部隊”シュヴァルツェ・ハーゼ”への転属の為、ドイツ軍IS基地へ訪れていた。
「EUのエース、パトリシア・コーラサワー只今・・・ブッ!?」
パトリシアが部屋に入った途端いきなり顔をグーで殴られた。其処には小柄な少女を中心とした六人の女性が立っていた。
「遅刻だぞ、少尉」
「何だ小娘!?よくも女の顔を・・・ブッ!?」
自身を殴った少女に突っかかるも今度は逆の頬を殴られる。
「二度も打った・・・親父にも打たれた事無いのに・・・」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐、シュヴァルツェ・ハーゼの隊長だ。EUのエースだか知らないが此処はそんなに甘くないぞ」
彼女を殴った張本人であるラウラは地面に倒れるパトリシアに冷たく言い放った。しかし、当の本人は・・・
「あっ(良い女じゃないか・・・!)」
何故か一目惚れしていた。
パトリシアは直に起き上がると見事な敬礼をする。
「遅刻して申し訳ありません!少佐殿!(惚れたぜ~!)」
なお、現在付き合っていた彼氏とは話し合いの末、円満に別れる事となった。
日本 IS学園1年1組教室
「よう!IS学園の諸君!EUのエース、パトリシア・コーラサワーだ!皆遠慮せず、パティって呼んでくれよな!」
「なッ!?」
「あ!少佐ぁ!来ちゃいました~!」
パトリシアはラウラを見つけるとまるで子犬の様に近付こうとし・・・
「ブッ!?」
「馬鹿者、さっさと席に着かんか」
「も、申し訳ありません教官!」
千冬先生に殴って止められた。
「(EUのエース、まさかこんな所でもう一度出会う事になるとはな)」
パトリシアを見てアイリスは心の中で呟いた。
昼休み
「あ!少佐、またレーションで済ませようとしてる!ちゃんと食べないと大きくなれませんよ!」
「ええい!離せパトリシア!」
「駄目です!こうでもしないと少佐、食堂に来てくれないじゃないですか!」
「私は上官だぞ!」
「此処は軍じゃなくて学校なんですから今は関係無いです!」
パトリシアは昼食を軍用レーションで済ませようとするラウラを無理やり食堂へ連れて行こうとする。
身長が150㎝以下のラウラに対してパトリシアは160㎝以上な為、脇の下から持ち上げるようにして運ばれて行くラウラであった。
IS学園内食堂
「それで、どうしてお前が居るんだ。私は聞いて無いぞ」
「はい、少佐を驚かせようと秘密にしてました!」
「というか、どうやって入学したんだ。そもそもお前は歳が違うだろ」
そう、パトリシアはラウラより
「上層部へ私が直談判しに行きました!上層部からも「お前は一年からやり直して、その性格を治して貰ってこい!」と応援されました!」
「・・・それは貶されているだけだぞ・・・なぜ来たんだ」
「少佐を守りたいからであります」
「何々?禁断の恋?」
「キマシタワー?」
「あぁ・・・白百合のかほりが・・・」
二人の会話に盛り上がる一部の生徒達であった。
IS学園 第二グラウンド
アイリス達は以前と同様に二組と合同での実習授業をしていた。
「ウッ!クソッ!」
「どうした少年、間合いが遠いぞ?」
アイリスは一夏との模擬戦を行っていた。一夏は何度も彼女に対して攻撃を仕掛けるも、それ等は全て躱されお返しにリニアライフルを食らわされていた。
結局エネルギー切れにより一夏は負けてしまった。
「つまりね、一夏が勝てないのは単純に射撃武器の特徴を把握して無いからだよ」
「うーん、一応分かっていたつもりだったんだが」
模擬戦後、一夏は観戦していたシャルルからアドバイスを貰いつつ射撃の練習を始めた。
「あれ、ドイツの第3世代じゃない?」
「ん?」
クラスメイト達の声を聞いて一夏が振り向くと、其処にはISを纏ったラウラが居た。彼女の機体は黒を基本色とした、右肩の大型レールカノンが特徴的なドイツの第3世代機である”シュヴァルツェア・レーゲン”である。
「織斑一夏、私と戦え」
「嫌だ、理由がねぇよ」
「貴様に無くても私にはあ「少佐ァ!」・・・」
するとラウラの後ろからISを纏ったパトリシアが現れた。
「置いて行かないでくださいよ少佐!」
「五月蠅い!人が話している所に割り込むな!」
「なあシャルル、パトリシアが乗ってるあの機体ってなんだ?」
「あれはドイツの量産型第3世代IS”EUイナクト”だね」
二人が口論を始めてしまった為、一夏はパトリシアの機体についてシャルルに聞いた。
「何かフラッグに似てるな」
「イナクトはフラッグを参考に作られてるから似てるのは当然だね。イナクトは第2世代機である”EUへリオン”の後継機として開発されたんだ。元々はフラッグと同時期に開発が始まったんだけど、フラッグの完成が早過ぎた事もあって途中からフラッグの機体構造を一部取り入れたんだ。武装も腹部機銃が無いとこ以外はフラッグと大体一緒だね。これだけ聞くとただのフラッグのコピーに聞こえるけど、フラッグより後に完成しただけあって機体の完成度はフラッグより上だし、量産計画も同時進行させていたお陰で発表からまだ半年しか経ってないのに既に8割以上のへリオンがイナクトへの機体変更を完了しているんだよ」
シャルルの説明が終わったタイミングでパトリシアが一夏に近付いて来た。
「お前が織斑一夏だな!」
「そうだけど」
「単刀直入に言う、今日の放課後、第三アリーナでオレと勝負しろ!」
「何でだよ!?」
「お前が少佐を誑かしてんのは分かってるんだぞ!」
「いや、何でだよ!?大体、俺ラウラに嫌われてるし」
「お前に勝って少佐を取り返してやる!」
「聞けよ!全く、分かったよ」
「よし、決まりだな!」
パトリシアの勢いに負け、一夏は試合を了承してしまった。その言葉を聞いてパトリシアは振り返り歩き出そうとして、アイリスに気付いた。
「お、あんたフラッグファイターだろ?」
「ああ」
「今度のトーナメントでフラッグとイナクトどっちが上か白黒はっきり付けてやるからな、覚悟しろよ!」
「フッ、望む所だと言わせてもらおう」
実はアイリスと一度会った事があるパトリシアだが、その事は忘れてしまっている様だ。一夏の件とはまた別で勝負を申し込むパトリシアであった。
「一夏、コーラサワーはああ見えてIS部隊のエースでもあるベテラン操縦者だ。気を抜くなよ」
「はい、分かりました!」
放課後 第三アリーナ
其処では一夏とパトリシアの模擬戦が行われようとしていた。
「(そうさ、彼奴を倒せば少佐の気持ちだって!)」
「全く、どうしてこうなった」
やたら張り切っているパトリシアを見てため息をつくラウラであった。
試合開始の合図が鳴り、二人は同時に飛び出した。
「ハッ、刀一本で挑もうってか?貴様、オレが誰だか分かってんのか?EUのパトリシア・コーラサワーだ!模擬戦でも負け知らずのスペシャル様なんだよ!!」
「クッ!速い!」
一夏はイナクトに切りかかるも簡単に避けられてしまう。
「此奴はラッキー!」
「グッ!?アッ!?」
避けられて体勢が崩れた所に連続で攻撃を食らう一夏、それによりシールドエネルギーがどんどん削られていく。
「うおおおおお!!」
「鈍いんだよォ!」
一夏は瞬間加速で飛び出すも、あっさり躱され更に背中にタックルを食らわされる。
「グアッ!?」
そのまま一夏は蹴りを食らい地面へと落下する。
「クソッ・・・」
「何だこの程度か?ええ?おい!」
パトリシアは地面に膝をつく一夏の前に降り立ち、左手でソニックブレイドを構える。
「少佐のキッスはいただきだァ!!」
パトリシアはそのまま白式へ向けて突進する。そして。
「うおおおお!!」
スパァン!!
「へえ?」
ソニックブレイドを持ったイナクトの左手首が切断され宙を舞う。更に殆ど満タンだった筈のシールドエネルギーが一撃で3分の1減った。
「は・・・てめぇ、分かってねぇだろ!」
パトリシアはリニアライフルを撃つが一夏はそれを躱し剣を振るう。
「オレは!」
ディフェンスロッドでガードするもそれごと左腕が切断される。
「スペシャルで!」
右腕でガードするも切断される。
「2000回で!!」
体を仰け反る事で胴体への直撃を避けるもバイザーを切断される。
「模擬戦なんだよォ!!!」
シールドエネルギーが0になりそのまま後ろへ倒れ込む。
彼女の名誉の為説明するが、彼女は決して弱くはない。寧ろ、幾度となく実戦に参加し、模擬戦を大小合わせて2000回以上勝利している事から「無敵のコーラサワー」の異名を持つEU屈指のエースパイロットなのである。
(なお、現在は千冬とラウラの二人に負けている為無敵では無くなってしまったが、彼女の事を良く思わない一部の人間から皮肉を込めて未だにそう呼ばれ続けている。しかし、本人は「(教官と少佐以外には)無敵のコーラサワー」と勝手に解釈して自称している)
これだけの実力でありながらIS適正はA止まりである。一説ではパトリシアの割と自分本位な性格にISコアの方が付いて行けていないのではと考えられている。(アイリスは逆にISに心奪われている為適性が高いのではと考えられている)
彼女の敗因は大きく三つある。
一つはラウラの気を引こうと功を焦った事。
二つ目は一夏の単一仕様能力を知らなかった事。
最後に調子に乗って態々リーチの短いソニックブレイドで止めを刺そうとした事。
である。
IS学園 学生寮
「フフッ、何とも彼女らしい負け方だね」
「しかし、彼女の慢心があったからこそ今回は勝てたが、あの実力は本物だ。二度目は通用しないだろう」
「彼女も君と同じで相当規格外だからね。そうだアイリス」
「何だ」
「実はISWAD本部から荷物が届いてね、アイリス社が開発していた新型のリニアライフルが完成したんだ」
「ほう?」
「”トライデントストライカー”、単射用30㎜砲一門と連射用12.7㎜砲二門が一体となった新型のハイブリッド・リニアライフルだよ」
「ますますトーナメントが楽しみになって来たな。所で今回のトーナメント、簪は出場するのか?」
「いや、今回は参加しないよ」
「そうか、期待していたのだがな」
「機体の方は9割方完成してるけど新装備の完成に手間取っていてね、次のトーナメントまでには完成する予定だよ。その時はまたテストに付き合ってくれよ?」
「分かっているさ」
こうして学年別トーナメントまでの日々は過ぎて行った。