アイリス・エーカー、ISの存在に心奪われた女だ! 作:113(いちいちさん)
IS学園外 ショッピングモール
シャルロットと一夏は臨海学校用の水着を買いに来ていた。
事の発端はパトリシアの
「恋の手ほどきなら、このオレ様に任せな!」
という言葉だった。
彼女はシャルロットの恋心に早々に気付き、同じEU仲間として色々とアドバイスをしてきたのだ。
実際、ラウラと出会う前は普通に男性と付き合っていたパトリシアのアドバイスは的確で、今回は一夏が水着を所持していないという情報から買い物に付き合ってもらうという体で二人きりのデートを画策したのである。
因みにパトリシアはラウラとの関係を既に両親に報告しており、父のパトリックからは「惚れた女は死んでも離すな!この俺のようにな!」と言われ、母のカティからは「お前はどこまで馬鹿なのだ!全く、そこまで来たら最後まで責任を取れ!」と言われた。因みにパトリシアには弟がおり、カティは既に娘の事は色々と諦めて息子に託している。
結局一夏とのデートは色々あったが無事に終わった。
臨海学校当日 AM11:00
一夏達は夕方まで自由行動という事で浜辺で遊んでいた。
何時もの如く一夏が女子達に揉みくちゃにされている中、アイリスはパラソルの下でノートPCを操作しているレベッカの隣に座っていた。
「おや良いのかい?皆に混ざらなくて」
「そう言うカタギリはどうなんだ?」
「僕は皆と違ってインドア派だからね。」
レベッカはホルターネック型の白いビキニ姿で長身の彼女にマッチしていた。
それに対してアイリスは何故か旧型のスクール水着でありご丁寧に名前付きである。
こうなった経緯としては、水着に対して全く興味が無いアイリスに対してレベッカと簪のオタクコンビが色々と悪乗りした結果こうなったのである。
「む?あそこにいるのはボーデヴィッヒ少佐とコーラサワー少尉か」
「本当だね」
ふと砂浜を見渡すとラウラとパトリシアがかき氷を食べさせ合っていた。二人共お揃いの黒い水着を着ており、身長差もあって年の離れた姉妹に見えないこともない。
「ああいうのを日本ではバカップルと言うんだったか?」
「そうだよ。全く見事なバカップルぶりだねぇ、コレは真っ先にサメに襲われるヤツだよ」
「そうなのか?なら二人に泳ぐ際は注意するよう伝えなければ」
「伝えなくていいよ、あくまで例え話だから」
レベッカの話を真に受けるアイリスであった。
そんなこんなで合宿初日は過ぎて行ったのである。
翌日
「おはようございますアイリスさん。早起きですね」
「おはよう、早く目が覚めてしまったので外の空気を吸おうと思ってな」
一夏とアイリスが廊下を歩いていると、座り込んでいる箒を見つけた。
近付いてみると、「ひっぱってください♡」と書かれた看板と謎の装置が突き刺さっていた。
「なあ、これってもしかして・・・」
「知らん。私に聞くな」
一夏と箒は心当たりがあるようだが、箒はそのまま放って行ってしまった。
「どうするのだ少年?」
「まあ、このままにしておくのも悪いので」
そう言って一夏は装置を掴んで思い切り引っ張った。
するとそれは簡単に引っこ抜け、空から何かが降って来た。
ドカアアン!!!
「うわあ!?」
「クッ!?」
アイリスは咄嗟にISを展開して一夏を守る。土煙が晴れると其処には巨大な人参が突き刺さっていた。
「何だこれは?」
『キャハハハ八ッ!』
人参から突然笑い声が聞こえたかと思うと、それが縦に割れ中からうさ耳の様な物を付けたピンク色の髪をした女性が現れた。
「引っ掛かったねいっ君!ブイブイ!」
「お、お久しぶりです束さん」
「まさか、篠ノ之博士!」
アイリスはISを解除すると彼女を見た。彼女こそISの開発者にして数年前から行方不明になっていた篠ノ之束である。
「うんうんお久だねぇ!所でいっ君、箒ちゃんは何処かな?」
「えっとぉ・・・」
「まあ私が開発したこの箒ちゃん探知機で直見つかるよ!じゃあねー」
「お待ちください、篠ノ之博士」
言うだけ言って走り出そうとする束をアイリスが引き留める。
「・・・何?」
彼女は振り向く事も無く今までとは違う冷たい声で答えた。
「一年前のISWAD本部襲撃事件、あれは貴女の仕業ではありませんよね?」
「うんそうだよ」
「本当ですか?」
「私が襲撃する理由がないじゃん」
「エイフマン教授はISコアの真実に近づいていた。だから貴女は口封じに教授を抹殺したのではないですか?」
「まさか、私が教授を殺す訳ないじゃん?寧ろ、一体何時此処まで辿り着いてくれるか楽しみだったんだよ?有象無象共の中で唯一私を理解してくれた人だったんだから」
「・・・・・・」
二人は暫くの間見つめ合う。先に口を開いたのはアイリスだった。
「・・・フッ、嘘は言っていない様で安心しました。疑って申し訳ありません博士」
「良いって良いって、それじゃあね~」
そう言って束は走って行った。
「あの、アイリスさん。今の話・・・」
「すまない少年、軍事機密だ」
「あ、はい。すみません・・・」
「それでは私は用事が出来たのでな」
そう言ってアイリスは歩き出した。
彼女はそのまま整備・開発科が泊っている部屋に行きレベッカを呼び出した。
「そう言う訳で、私の見立てでは篠ノ之博士はシロだ」
「そうかい・・・それを聞いて安心したよ・・・」
「カタギリ?」
「篠ノ之博士は僕の目標でもある人だからね・・・」
そう言ってレベッカは額に手を置いた。そこには前髪に隠れて薄らと縫い跡があった。
一年前 アメリカ合衆国 ISWAD本部
基地のシンボルである三つのタワーの一つ、その中にある部屋に車椅子に乗った一人の老人がパソコンを操作していた。
彼こそ米軍のIS開発主任レイフ・エイフマン教授である。彼はISのコアについての資料を作成中、発信者不明のメッセージが届いた。
「ん?」
《お前は知り過ぎた》
その直後、基地の警報が鳴りだした。
「司令!レーダー、通信、共に途絶!強力なジャミングのようです!」
「カメラで追え!館内放送で各隊員へ通達しろ!」
『全部隊へ通達、現在所属不明のISが三機当基地へ接近中。繰り返す・・・』
警報を聞いたビリーとレベッカは格納庫から外へ出て空を見上げた。そこには三機のISが此方へ迫って来ていた。
三機のISの内、黒色のISに赤色のISが何かのケーブルを繋げると、黒いISの右肩に装備された大型のビームキャノンがチャージされ、滑走路へ向けて放たれた。
ビームはそのまま滑走路から格納庫、本体施設と順番に破壊していった。
「「「「うわああああ!!!」」」」
格納庫の外に出ていたカタギリ親子や整備士達はビームの衝撃波と爆風で吹き飛ばされる。
ビリーは飛ばされる直前、咄嗟にレベッカを強く抱きしめた。
格納庫で出撃準備をしていたGセイバーやリアルドのパイロットや整備士達、本部職員、そしてエイフマン教授は一瞬にして蒸発した。
「ぃやっほう!すっげぇ!流石姉貴!やることがえげつねぇぜ!」
三機の内のオレンジ色をしたISのパイロットミハエル・トリニティは崩れ去る基地を見ながらそう言った。
「お?来たぜ来たぜ・・・雑魚がわんさか!」
そう言って振り返ると15機のGセイバー部隊が接近してくる。
『隊長!ISが三機です!』
「見ればわかる!ISWAD本部が・・・」
部隊長であるグラハム・エーカーは基地の惨状に顔を顰める。
《グラハム!》
「カタギリ!?」
その時、グラハム機にビリーからの通信が入る。モニターには自身の傷もお構い無しに気絶したレベッカの額に血濡れのハンカチを押さえつける彼の姿が映った。
《教授が・・・エイフマン教授が!!》
「何だと!?・・・クッ、堪忍袋の緒が切れた!!許さんぞIS!!」
彼の言葉に激怒したグラハムはISへ向かい突撃する。
『撤収するぞ』
「何でだよ?少しくらい遊ばせてくれよ姉貴!」
ミハエルは黒いISのパイロットヨハン・トリニティの言葉を無視して動き出す。
「なぁに直済むさ。破壊して蹂躙して殲滅してやる!行けよファング!!」
掛け声と共にISから六本のビットが撃ち出される。
「それがどうした!!」
グラハムはそれを全て避けるとミサイルを発射する。
「何!?」
彼女は避けられる事を想定していなかったのか避ける事無くミサイルに命中する。
それに続いて三機編隊によるミサイル攻撃が次々と命中していく。
その中で背後から一機のGセイバーが突貫して来る。副隊長であるハワード・メイスン中尉の機体である。
「これが
「ハワード!?」
ハワード機はバルカン砲を撃ちながら接近して行く。
「このままではやられる・・・訳ねぇだろ!!」
その時撃ち出されたビットがプラズマソードを展開しハワードの機体に突き刺さった。
「グアアアッ!!」
「ハワード!?」
「ハワード・メイスン!!」
「隊長・・・娘を・・・」
機体はそのまま地面へ墜落し爆散した。
「ファングなんだよォ!!」
『気が済んだか?撤収する』
「姉貴ィ?」
撤収を始めようとする彼女達、しかし。
「お?姉貴ィ、奴さんまだやるつもりだぜ?」
一機のGセイバーが接近してくる。
『隊長!』
「・・・撤退だ」
『しかし!』
「命令だ!撤退しろ!!」
『・・・ハッ!』
「・・・プロフェッサー・・・ハワード・・・」
僚機の撤退を確認し自身も撤退を開始しようとする。しかし。彼の脳裏に娘達の姿が浮かぶ。
「・・・やはり許しておけん!!」
グラハムは機体を180度回頭させる。
『隊長!?無茶です!』
「そんな道理、私の無理でこじ開ける!!」
ISWAD本部から数キロ離れた上空。アイリスを隊長としたフラッグ三機とリアルド二機の部隊は基地に向かって高速で飛行していた。
「味方信号ロスト!?」
「そんな・・・お父さん・・・嫌、いやあああ!!!」
「ハンナ!?」
父の死により錯乱するハンナをダリアが支える。幾ら軍人と言えど、まだ十四歳の少女に父の死は大きすぎる事である。
「教授だけでなくメイスン中尉までも・・・クッ!許さんぞ!!」
自身の恩師と友人の父の死に怒るアイリス。その時、突如フラッグが光に包まれた。
「隊長、その姿は!?」
「これは、二次移行!?」
光が収まるとアイリスのフラッグは形を変えていた。バックパック等の各部パーツが大型化し、非対称だった頭部のブレードアンテナが大型化し左右対称になった。
バイザーには二次移行完了と単一仕様能力解放の文字が浮かび上がった。
更に単一仕様能力であるトランスフォーメーションの機体データによる最適化という表示を見てアイリスはある事を思い出す。
ISWAD本部 格納庫
「教授、アイリスのフラッグですが、どうしてGセイバーの飛行データがプログラムに組み込まれているのですか?」
「ああ、それかね。何時か必ず必要になると思ってのう」
アイリスはビリーとエイフマン教授の会話を偶然耳にした。
「何時かとは?」
「それはその時になってからのお楽しみじゃな」
トランスフォーメーションは通常時の飛行と動きが異なる為、本来はパイロットが慣れるまで時間を有する事になる。しかし、エイフマン教授が組み込んでいたGセイバーの飛行データをISが読み込むことで飛行時の姿勢制御等をIS側が自動で行ってくれるのだ。
更に、組み込まれたデータはグラハム機のものな為本来行わないようなトリッキーな動きにも対応してくれる。
エイフマン教授は単一仕様能力が操縦者のイメージ・インターフェイスを用いる事から、アイリスが戦闘機を操る父の姿に強い憧れを持ち、そのイメージが何らかの形でISに現れる事を読んでいたのだ。
「教授・・・感謝します!」
「隊長!」
「アキ!お前はハンナを頼む!」
「了解!」
「私が先行する!ダリア!イェーガン!援護を頼む!」
「「了解!」」
アイリスは飛行形態に変形し、高速で飛行する。
ISWAD本部上空ではグラハムとミハエルの激しい空中戦が繰り広げられていた。
「クッ!この!」
『ミハエル、いつまで遊んでいるつもりだ』
「此奴すばしっこい!」
するとヨハンのレーダーにISの影が映った。
「接近する機体、フラッグか。このスピードは?」
「見つけたぞIS!!」
アイリスは高速で接近しつつリニアライフルによる攻撃を行う。そしてすれ違った後通常モードに変形しプラズマソードを構える。
「クッ!」
『来てくれたかアイリス!』
「父さん!」
グラハムは彼女の動きに合わせてヨハンにミサイルを撃つ。ヨハンはそれを回避するも、回り込んだアイリスの攻撃を食らう。
「グッ!?」
「姉貴!グアッ!?」
ヨハンに気を取られたミハイルにダリアとイェーガンが攻撃を与える。
「クッ!ファング!」
「そんなもの!!」
ミハエルはファングにより攻撃するもダリアはそれをプラズマソードで全て切り捨て鍔迫り合いになる。
「素人が!機体性能に頼りきりなんだよ!!」
「グッ!てめぇ!」
「ビットさえ無けりゃ、貴様程度にメイスン中尉がやられる筈無かったんだ!」
「押される!?」
『ミハ姉!ヨハ姉!』
「ネーナ!お前は撤退しろ!」
戦闘に参加していなかった赤いISのパイロットネーナ・トリニティは二人に声を掛けるもヨハンの指示で撤退を開始する。
「イェーガン、奴を逃がすな!」
『了解!』
逃げ出したネーナをイェーガンのリアルドが追う。
「人の心配をしている場合か?」
「グッ!」
アイリスは肩のビームキャノンをプラズマソードで破壊する。更に上空からグラハムがバルカン砲で援護する。
度重なる攻撃でヨハンのISのシールドエネルギーはどんどん削られて行く。
「姉貴!」
「貴様の相手はこの私だ!」
ヨハンは援護に向かおうとするもダリアに阻まれる。そして。
「グッ!?」
遅れてやって来たハンナとアキからの銃撃を食らう。ハンナはそのままプラズマソードを構えミハエルに突撃する。
「お父さんの仇ィ!!」
「ぐあああっ!!」
ハンナのプラズマソードが機体の胸に突き刺さる。ミハエル本人はISの絶対防御により無事だったが機体はエネルギー切れにより地面に落下する。
「ミハエル!?グッ!」
ミハエルが撃墜された事に気を取られた隙にアイリスはもう一本のプラズマソードを取り出し相手のプラズマソードを弾き飛ばす。アイリスはそのままプラズマソードを振り上げる。
『どれほどの性能差であろうと!』
上空からグラハムのGセイバーが迫る。
「「今日の私は、阿修羅すら凌駕する存在だ!!」」
アイリスが機体の右腕を切断し、グラハムが撃ったミサイルが命中しシールドエネルギーがゼロになった。
「ば、馬鹿な・・・」
ヨハンのISはそのまま地面へ落下した。
『隊長!』
「イェーガン、逃げたISはどうなった」
『すみません、逃がしました。ジャミングと機体性能の差で・・・』
相手の強力なジャミング能力と、第3世代機と推定される機体に対して第2世代機であるリアルドでは追い切れなかったのである。
「分かった、帰投してくれ」
『了解!』
その後、鹵獲した機体とパイロット達の話から、おおよその情報が掴めた。先ず彼女達が使っていた機体は、数か月前、輸送中に謎の勢力に強奪された某国が開発していた試作装備の実験機である”スローネアイン”と”スローネツヴァイ”であることが分かった。
スローネアインは別のISと接続する事で高出力のビームが撃てる試作大型ビームキャノン。スローネツヴァイはBT兵器であるファング。取り逃がした”スローネドライ”にはISのセンサーすら妨害できるジャミング能力が備わっているが、鹵獲した機体は本来より大幅に改造されている事が分かった。これらの機体は徹底的な調査がされた後、本来の持ち主である研究機関に返還された。
彼女たちについては調査がされたものの、経歴などは一切不明だった。彼女たちは三姉妹で長女がヨハン、次女がミハエル、三女がネーナと言う名前で、遺伝子調査により実姉妹である事は確認された。
彼女達は自分達が何処の所属でどういう命令を受けたか等は話したが、取り逃がした末妹に関してだけは絶対に口を割らなかった。
彼女達の所属先はある要注意団体である事が分かった。その団体は異常なまでの女尊男卑主義で過去に幾つかのテロに加担した疑いがある組織だった。
直に強制捜査が入りメンバーは全員拘束された。メンバーのリーダーは「エイフマン教授がISのコアを解明する事で女尊男卑のバランスが崩れる事を危惧したので抹殺を図った」と犯行を認め、彼女に情報を流していた軍の内通者も無事拘束された。
しかし、今回の事件には不可解な点が数多く存在する。先ずこの団体だが、確かにテロに加担したりと過激な集団ではあるが、そこまで規模は大きくなくISを強奪し改修する様な設備も人材も持っていないのである。そもそも極秘に開発されていたISの輸送計画をどうやって知りえたのか。また、軍の内部にスパイを送り込むのは容易ではなく只の一団体が行える事では無いのである。また、組織の資金や人材の動きに不明な点が多く、調査するも手掛かりは何一つ残されていなかったりと、証拠は無いがバックに更に大きな組織の影がある事は明確である。
今回の事件は国や軍にとって大きな汚点になる出来事だった。その為世間には全てを発表するのではなく、ISによるテロ活動を米軍が鎮圧したという内容で公表した。また、グラハムが通常兵器でISを撃墜したという事実は事件の詳細を隠す良い隠れ蓑となった。
今回の襲撃により、ISWAD本部長並びにIS開発主任レイフ・エイフマン教授、ハワード・メイスン中尉他、ランディ少佐、ステュアート大尉等の優秀なパイロットを含む数十名が亡くなった。
また、今回の活躍によりアイリスの部隊は対IS部隊として再編成され、新たにフラッグ二機が配備された。それによりフラッグのみで構成された精鋭部隊として、アイリスの二次移行したフラッグにちなんで「オーバーフラッグス」と名付けられた。
これにより多くの謎を残しつつも今回の事件の幕は閉じたのである。
※ハンナはアイリスより一歳年下であり、ダリアは一歳年上です。
※今回登場したトリニティ姉妹は今までの娘設定では無く性別の違う同一人物です。
偶にこういう性転換したキャラも居るのでご了承ください。