「………」
アタシは考えていた。
どうすればこの現状を打破できるのかなと。
実質的な時間経過は皆無、というか定義が無意味とは言え感覚的には50年が過ぎた。
その結果出来たのは…ああ、ここは分かりやすく(でいいのか?)あの映画、『真マジンガーZERO』及び『VS暗黒大将軍』基準で行こう。
古代ミケーネ帝国で使役されてた、それ自体が集積回路でもある石巨人程度の巨大メカ。
二足歩行が可能とは言えまだ重機的な動作しか出来ない、初期の初期の代物。
機械獣どころか(一体で一国を侵略できるとか作中で言われてたな。多分三体くらいいればワルプルギスでも倒せそうだ、ヤバくね?)、ボスボロットに蹴られても崩壊するだろう。
50年。生きてた頃のアタシは18だったからその時から開発を開始したとして、単純計算で68歳。
人間なら孫が生まれてそうな歳だな。意中のオトコを掴めたかどうかは…いや、やめとこう。
とにかくそれだけの時間を費やして完成したのがこの程度だ。
常に進歩する最新の機材、優秀なアドバイザーに助手を付けてこの有様だ。
比較対象とするなら現代から一万年前にタイムスリップした(あのラストからこうなるなんて誰が予測できんだよ…)Dr.ヘルだけど、あれは肉体がアストラル化して実作業が不可能且つ現地の科学の黎明も黎明の学者たちを使ってたからな。
本人もマジックハンドで作業してるみたいで歯がゆいとか叫んでたし。
それでも3500年を掛けて戦闘獣(機械獣の発展型というか元祖というか、ややこしいな)プラントを建造してた。
…あのくす玉やらテープカットは演出なのか?
「祝工場完成」、なんて垂れ幕下がってたし市民達が万歳三唱に拍手の嵐までやってたな。
なんだあの場面、今思い出しても変な雰囲気が漂ってたぞ。
あの映画というか記録映像、本編はシリアスだってのにたまにああいうワケの分からないシーンが入るんだよな…。
何時の間にか現状打破の構想からZERO本編の回想になってるな。
あの作品、ていうか世界は色々と衝撃的過ぎる。
「ううむ」
衝撃的って言えばだな…。
「日本防衛に精を出し過ぎ、留年する兜甲児…差異次元の侵略者チップカモイ…やはりあの世界は興味深い」
アタシの前に座るこの存在は好き放題し過ぎだな。
いや、別に誰にも迷惑を掛けてないんだけどさ。
現状説明といくか。
今はアタシのラボの中にあるレストランの中にいる。
中にあるってのとは少し違うか。
空間が湾曲してるっていうか何処にでも出られる場所があるっていうか。
まぁそもそも円環の理自体がそんな場所なんだけどな。
落ち着いた店内、格式はあるけど嫌味はない洋風の内装。
店内を漂うのは焦がした小麦の良い香り。
時間の概念は例によってないけど、昼時なのか食事に来てる連中が多い。
此処にいる時は飯を食わなくてもいいし生き物としての機能も別に要らないけど、やっぱり生きてた時と同じ行動してた方が楽しいからな。
普通の学生みたいに笑い合って会話してら。
で、アタシの前にも人がいる。
長い赤髪に黒いシャツに青ジーンズ。
顕現するときは基本的にこの格好だからすぐ分かる。
佐倉杏子って魔法少女を二十代半ばくらいに成長させた姿を良くとってるな。
前の座席に座って漫画を読んでる。漫画って言っても、世界線の記録が書物の形をとったやつか。
たしかその宇宙の開闢から終焉までが乗ってたはずだ。
終焉…ねぇ。
まぁいい。済んだ事だ。
他人と一緒の時に、ってのにとは思わない。
アタシも大机の前に資料をずらっと並べてる。
イカンな。これじゃ休憩にならねぇ。
休むとしよう。
そう思うと資料は消えた。
ロボットの図面やらエネルギーの構造式が描かれた紙がパッと消えて、机の上にスペースが出来る。
その上にずらっと料理が並べられた。
顔に黒布を掛けたボディスーツみたいなのを着たナイスバディなお姉ちゃんが、テキパキとアタシらの前に飲み物や料理を並べてく。
「ミネルバX、いつも感謝する」
何時の間にか漫画をどっかにしまって、佐倉杏子って奴の外見をコピった異界の神、マジンガーZEROは頭を下げた。
特にリアクションをしないで、ミネルバXはスタスタと席を後にしていった。
にしてもいいケツしてんな、羨ましいわ。
あと嫌われてるのがすんげー分かる。
そりゃ、そうだと思うけどさ…見てるだけでもあれは辛いな…。
「研究は順調か、都ひなの。私にできる事なら言ってもらえば可能な限り応えよう」
名物のオムライスを食べながら、魔神がアタシに尋ねた。
自分を倒す兵器の開発だってこと、分かってるのかね。
「いや。今のところはねぇかな。強いて言えば、採掘作業で人員が足りないってところか」
「了解した。では量産機を二体ほど派遣しよう」
量産機…てぇと、アレだよなぁ。
最近女神様の護衛でもしてるんだか、その上空を旋回してるウナギみてぇな顔をしたやつら。
背負った羽根は鳩に似てて天使みたいだけど、外見は…うん。
妙に人間らしい生々しさがあってだな……ああ、そもそも人造人間だったっけか。
というか神というか。
「あの大剣はスコップとしても使えそうだから、採掘に役立つだろう。それと連中は複雑なコマンドはどうも苦手だが、単純作業では右に出る者はいない」
それは褒めてるんだろうかな。褒めてるんだろうな。
「ハァ」
アタシは溜息を吐いた。
「どうした、都ひなの。私でよければ話を聞こう」
どうすっかなとアタシは思った。直ぐ決めた。
「なんか、虚しくなってきた」
「ほう」
「どんだけ頑張っても、アンタに、マジンガーZEROに届かない」
分かってたさ。最初から。
戦いを挑むどころか越えようなんて。
最初から無理。
無謀。
不可能。
言語道断。
目的を為す為のどんな努力も徒労に終わる。
達成の可能性はそれこそ…ゼロだ。
「それはどうかな」
事も無げにこの神様は言う。
挑発にでも使えそうなセリフだけど、力の差があり過ぎるせいか不快には感じない。
そのせいか、この存在は最初はとっつきにくいけど話せば色々話せるもんなんだよな。
過去の所業やら元の性格はどうしようもない…どころか邪悪の中の邪悪、この世の全ての悪を無限に濃縮したブラックホールだろうが、それはそれだ。
「…なんでそう思うのさ」
「簡単な道ではない、というのは私が保証する。だが」
言葉の途中で、ズシリと来た。
振動はない、けどそう感じたんだ。
その感覚はレストランの…ウォールナッツの窓の外から来た。
みんながそっちに眼をやった。
アタシも見た。
眼が見開かれるのを感じた。
「一つの形が、既に出来ている」
焼き林檎を齧りながら、化身の姿になったZEROは言った。
本編(きょうこ☆マギカ)が不健全過ぎるので、こちらを書く事は自分にとって癒しであります