真マジンガーZERO 対 アルティメットまどか   作:凡庸

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特別編 世の果ての宴①

 音と光、騒音に談笑。

 グラスが合わせられ、液体が飲み干される。

 大きなテーブルの上には大皿が並び、その上には色とりどりの料理が乗せられ、芳醇な香りを惜しみなく空気に漂わせる。

 居並ぶのは輝く瑞々しさを湛えた果物にも劣らない、色鮮やかな衣装を纏った少女達。

 

 ここは円環の理。

 魔法少女が行き着く安寧の地であり、ここでは今、地平線の果てまで続く一大パーティーが繰り広げられていた。

 

 

「てぇなわけでなァ…私の機械獣…ガラダの強さったらよォ……」

 

 

 所狭しと並ぶ白いテーブルの一つで、黒いフードを被った銀髪の少女が座席に座りつつくだを巻いていた。

 普段のカラス然とした仮面は外され、テーブルの上に置かれている。

 その周囲には空になった酒瓶が並び、或いは倒れてテーブルクロスの上に葡萄色の滴りを付けている。

 イングランド出身の王族魔法少女の一人、コルボーである。

 今彼女の周囲には誰もおらず、彼女の謎話を聞くものは誰もいない。

 椅子の並びやソースが付いた皿などの配置から、数分前にはいたのだろうが隙を見て逃げたものと思われる。

 よく見れば遠くで彼女の姉妹や従者、そして母親らしき連中が何やら騒いでいる様子が見えた。

 

 

「ふふっ、ま、愉しめばいいさぁ…」

 

 

 その様子を特に不満にも思わず、魔法少女一家の長女は酒杯を傾けた。

 芳醇な葡萄の香りと強いアルコールが嚥下され、胃が燃えるように熱くなる。

 そして酩酊感が意識に漂う。

 肉体的には毒物でもあるアルコールに対する不快感は殆どない。

 あったとしても任意で消したり感じたりできる。

 魔法少女は元々肉体という枷から外れた存在であったが、魂になって導かれてからは更に便利になっていた。

 

 

「おぉぉうい、そこのウェイターさん?お代わりをくれよぉぉぉ…」

 

 

 コルボーの視線は上に向いていた。 

 上昇は首が直角近くになるまで続いた。

 ウェイターと彼女は言った。

 彼女の視線の先にいるのは、光り輝く巨体。

 ええと、これなんて言ったっけ。

 アルコールで酔った脳でコルボーは知識を漁った。

 多分違うだろなと思いつつ、近い例を一つ挙げた。

 

 

「ドラゴン」

 

「ティラノサウルスだ」

 

「おぉっ!?」

 

 

 思わず仰け反り、変な声を上げるコルボー。

 その隣の席では、黒いシャツに青いジーンズを履いた、彼女よりも幾らか年上に見える一人の赤い髪の女が座っていた。

 外見のモチーフは佐倉杏子。

 然してその実態は。

 

 

「驚かすなよぉお…ヒトが悪いねぇえ、神サマァァァ…」

 

「魔神であるからな、偶には悪い事もするのだ。ああ、待たせて済まない」

 

 

 アバター姿となっている魔神も上を見上げた。

 ティラノサウルスと魔神は言った。

 その通りの存在がそこにいた。

 

 光り輝く曖昧な輪郭ではあったが、頑強な顎と強靭な胴体と尾。

 直立歩行をしていたが、太古の地球の覇者に相応しい威風堂々とした姿であった。

 ただ、その太い首から爪を生やした足までに至るまでの前面を、エプロンらしきもので覆って首にはネクタイが巻かれているところが奇妙だった。

 奇妙だったが、妙に似合っていた。

 だからコルボーもこの存在をウェイターと認識できたのだった。

 全体的な巨大さに似合わない、愛くるしいとさえ思える小さな腕と手の上には、酒瓶を並べたお盆が乗せられている。

 巨体に相応しいサイズのお盆の上には当然、多数の酒瓶が乗っている。

 少し迷って、

 

 

「それら一式をいただこう」

 

 

 と魔神は告げた。

 光で出来たティラノサウルスは口を開いて牙を見せ、数度口を開閉させた。

 

 

「相変わらず好感の持てる態度である」

 

 

 何を言っているのか、魔神には分かっているようだ。

 音としても聞こえているに違いない。

 

 

「神サマ、通訳希望」

 

 

 早速新しい酒を口に含んでコルボーは尋ねる。

 神を相手に不遜な言い方をするのに、酒の力が欲しくなったのだった。

 

 

「名乗りの後に、『おれ、おさけおく。めがみさまのおたんじょうびかい、そのおまつりてつだえるのたのしい』」

 

「随分と可愛らしい言葉遣いだなァ」

 

「しかし彼は強いぞ。客観的な視点だが、数体の機械獣相手でも互角以上に立ち回れる」

 

「へぇ…いつかお手合わせ願いたいもんだ」

 

 

 ウェイターに励む機械のティラノサウルスの背を見てコルボーは言った。

 眼には闘志の炎が揺らめいたがすぐ消えた。酒や飲料水が虚空から出現して即座に補充され、彼はまた別の場所へと歩いていった。

 ユーモラスな様子にコルボーの闘志も和らぎ、

 

 

「頑張りなァ」

 

 

 というエールを自然に口が紡いでいた。

 甘くなったもんだと思いながら新しい酒を飲む。

 飲みながら周囲を確認する。

 飲食をしつつ歓談する魔法少女達に混じって、光で出来た者達が会場の給仕を行っていた。

 大体は等身大であり、先程のティラノサウルスは例外だった。

 数でみると、トダーと呼ばれる存在がかなりの数を占めている。

 説明は何度か聞いたが、どうにも不可解な存在に思えてならない光の存在だった。

 その中、トダーとは異なる数体にコルボーの眼が吸い付いた。

 

 

「ありゃなんだい?神サマ」

 

「ああ、あれらか」

 

 

 イングランド魔法少女の視線の先には、四体の光があった。

 蛇のような胴体をしたもの、横長の口らしきものをもったもの、逆に縦長のもの、その二つを合わせたような造形のもの。

 それらが如何にもメカっぽい形の手を用いて料理や飲み物の補充をしている。

 よく観察してみると、この連中もまた周囲の魔法少女の様子を見ているようだった。

 

 

「見て、触れて、探し、集める。それが彼らの役目だ。新しい外見と新しい言葉をもっと知りたいのだろう」

 

「勤勉なこった。どこから来たやつらだい?」

 

「深淵、アビスと呼ばれる大穴だ」

 

「ああ、あの地獄か」

 

 

 呟いたコルボーは僅かに首筋を伸ばした。

 聞いていた話を思い出し、微かだが怖気を覚えたのだ。

 深淵、または地獄を意味するその場所は、魔法少女をして異常な環境としか思えなかった。

 そこでふと疑問を感じた。

 

 

「そういえば、そこから来てるって言うのが一体いたな。あの可愛らしいのは来てないのか?」

 

「彼は性能が高すぎて、これだけの数の魔法少女を見ると刺激に耐えられないのだ」

 

「なるほどねぇ。そいつにとっては、ここは天国過ぎて地獄になるのか」

 

 

 ケラケラと笑いながら早速一本の酒瓶を空にし、コルボーは二本目を探した。

 

 

「注ごう」

 

 

 その前に酒瓶が向けられていた。

 コルボーの呼吸が途絶する。

 心臓が高鳴る。

 こんな高揚は、戦場でも中々味わったことが無い。

 

 

「神が」

 

 

 ごく短い言葉を、彼女はかなりの時間を掛けて呟いた。

 唇は震えていた。

 

 

「私に、酒を、注ぐと」

 

「うむ」

 

 

 魔神の口調は平然としている。

 畏敬か畏怖か、硬直しているコルボーを他所に魔神は彼女が握る杯を酒で満たした。

 

 

「まだまだ宴は終わらず、先は長い。我らが神の生誕を祝おうではないか」

 

 

 魔神はそう言い、手に持った酒杯をコルボーのそれと合わせてかちんと鳴らせた。

 世の果てで繰り広げられる生誕の宴は、魔神が告げた通り終わりの兆しをまだ微塵も見せてはいない。









鹿目まどかさん、誕生日おめでとうございます!(この話で出て無いけど)
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