真マジンガーZERO 対 アルティメットまどか   作:凡庸

16 / 20
特別編 世の果ての宴②

 無数の魔法少女が談笑し合い、飲食を共にする広大な宴会場には音楽も満ちていた。

 厳かなクラシック音楽と、それと相反する激しい熱量を持ったロックな曲。

 相反する二つの曲調であったが、音同士は互いに曲の邪魔をせずに場には調和がもたらされていた。

 だがその反面、二つの音はどこか争っているような雰囲気があった。

 それらの発生源は光り輝く物体だった。

 例によって曖昧な輪郭だが、共にラジオカセットの形をしていた。

 

 音が流れる会場を横切る影。

 その影もまた光であった。

 数は三つ。

 魔法少女達がいない場所を選んで着地したのは、三機の戦闘機。

 形状は同じだが光の濃淡が異なっており、それによって見分けが付いていた。

 三機は滑らかな動きで形を変えた。

 

 機首が前に畳まれ、機種の断面から兜を被った人間のような頭部が顕れ、機尾が脚へと変形する。

 三機の戦闘機は三体の巨人の姿へと瞬く間に形を変えていた。

 三体の内の一体は他二体よりも前に出ていた。指揮官ということなのだろう。

 背後の二機は黒と青であり、指揮官に相当する存在は白い光で出来ていた。

 戦闘機の翼を背にした巨人は手に大きな銀盆を乗せていた。

 嗅覚に鋭い魔法少女の何人かは、そこに乗せられているのが焼きたてのクッキーであると気付いていただろう。

 

 

「何故だ」

 

 

 その様子を酒を飲みながら、離れた卓に座るコルボーは疑問を呟いた。当然だろう。

 しかし彼女の考えに反して、巨人たちは身を屈めて魔法少女達が席を囲むテーブルへとクッキーが満載された皿を置いた。

 白い個体は妙にフレンドリーな様子で、黒の個体はその様子を訝しんでいる様子を見せ、青の個体は淡々としていた。地味とも言う。

 

 

「なァ神様ァ…あの連中は何度か見てるけど、なんて連中だっけ?」

 

「ジェットロン達だ。白いのがスタスク、黒いのがスカワ、青がサンクラという」

 

 

 略称だな、とコルボーは思った。

 観察していると、どうやらスタスクと呼ばれた個体が演説らしきものをしているように見えた。

 音は聞こえないが、何かを熱心に語っている。

 

 

「神サマ。通訳頼めるかい?」

 

「『あの老いぼれのメガトロンは口先ばっかで何もしねぇが、俺様はこうやって焼き菓子も作れるんだぜ!こうしてこのお嬢さんらに俺様の優秀さをアピールすりゃあ、あの魔神の覚えもいいってもんだ!そして準備が整ったらこの俺様がニューリーダーになってやるのさ!ハーッハッハッハッハッハ!』」

 

「造反を企ててるのは分かるが…それを大声で言うって愚か者にも程があるんじゃねえかなァ」

 

「私もそう思う」

 

 

 コルボーは呆れ、魔神も同意した。

 そういえばスタスクとは愚か者を意味する言葉でもあると、以前何処かで聞いた覚えがあった。

 酒杯を傾けて飲み干し、再び見ると演説を続けるスタスクの背後の一体、スカワと呼ばれた存在が消えていた。サンクラは相変わらず特に無関心そうに立っている。

 何処に行ったと軽く見渡す。巨体故にすぐ見つかった。

 その状況にコルボーは思わず首を傾げた。

 

 優雅なクラシック音楽を流す光のカセットプレイヤー、そこの近くにスカワが立っているのである。

 よく見ればカセットプレイヤーに話し掛けているように見える。

 一体何が、と思っていると異変が生じた。

 カセットプレイヤーもまた変形し、人型へと変容したのだった。

 元の大きさは人間が手で持ち運べる大きさだったが、一気に他の個体と変わらないサイズに巨大化していた。

 

 

「大きさの概念が捨て去られてるな」

 

「全くだ。物理法則もあったものではない」

 

「あんたが言うなよォ」

 

 

 突っ込みつつコルボーはプレイヤーが変形した個体を観察した。

 重装甲風の外見で、元はカセットの収納場所を担当していた胸部には鉄仮面のような紋章が見えた。

 その形はどことなく、この存在の顔に似ている。モチーフとしたのかもしれない。

 

 

「偉そうだな」

 

「実際偉い。彼の役職は情報参謀だ」

 

「情報は大事だからなァ。私達が戦争してた時も、もっと活用しときゃよかったよ」

 

 

 感慨深げにごちるコルボー。

 視線の先では、報告を終えたスカワの姿が霞んでいた。

 そして次の瞬間にはスタスクの背後に移動していた。

 

 

「瞬間移動、要はワープが彼の特技だ」

 

「なんとなく元の名前が分かったなァ。で、サンクラってのの特技は?」

 

 

 コルボーはスタスクの事を聞かなかった。愚か者というのが特技だと思っているようだ。

 

 

「腕からの火炎放射、また音響兵器を備えている」

 

「地味だな」

 

「それが個性だ」

 

 

 魔神とコルボがーがやり取りをする中、情報参謀とされた存在は左腕を上げて自身の右肩を人差し指で突いた。そこにスイッチがあったらしく、胸部装甲が前に向けて傾き開いた。

 

 

「『コンドル、射出(イジェークト)』」

 

 

 コンドルとは即ち猛禽類である。

 胸から射出されたのは元がカセットプレイヤーであるように、当然の如くカセットテープだった。

 それが空中で変形。

 雄々しい翼と鋭利な嘴(レーザービーク)を備えたコンドルへと姿を変えた。

 大きさは主の腕に乗るぐらいであり、決して大きくはない。人間とさほど変わらないサイズである。

 だがコルボーはその存在を侮る気にはならなかった。

 

 

「あれは………強いな」

 

「流石、慧眼である」

 

 

 コルボーは呻き、魔神は彼女の勘の鋭さに敬意を表した。

 主からの命を受け、コンドルと呼ばれた存在は飛翔した。

 相も変わらずスタスクは演説を続けている。

 話術は巧みなのか、周囲の魔法少女達へのウケは良かった。

 いつも人形然としていて、何を考えているか分からない銀髪魔法少女も、ボディスーツ風の衣装を纏った相棒を隣にしつつ話に聞き入っている。スタスクのファンなのだろうか。

 

 

「『カガミとか言ったな!少しは人生をエンジョイしてるか?俺様は向上心の塊だからな、何事も一番じゃねえと気が済まねぇのさ!だから退屈だってんならいつでも呼びな。この俺様の人生観をご教授してやるぜ!』」

 

 

 魔神の通訳はそれであったが、言われた本人はスタスクの言葉が理解できているらしく小さく頷いていた。

 滅茶苦茶な言い様であったが、案外少女としてはこの存在の生き方を参考にしようとしているのかもしれない。確かに刺激のある人生を送れそうだなと。

 スタスクの性格は問題だらけだが、自分のファンは大事にするのだろう。

 と、このあたりで背後にコンドルが到着していた。

 

 次の事態を察し、魔法少女達は後退し始めた。

 便利な事に、椅子やテーブルも無振動で安全圏へと下がっていく。

 スタスクが振り返った瞬間、コンドルの眼が輝いた。照射された光が胴体に着弾し、光の巨人が転倒。

 仰向けに倒れて動かなくなったスタスクの足を両脚の爪で掴み、コンドルは飛翔していった。

 

 その後を追うように、三体の機械の巨人たちが飛んでいく。

人型でも問題なく飛行が可能らしい。

 その様子を魔法少女達が手を振って見送っていた。

 巨人たちも振り返って手を振っていた。サービス精神に溢れた連中である。

 

 恐らくまたこいつが反乱を企てていると、自分達を束ねる長の元へと連れて行くのだろう。

 記憶を辿ると、トップの役職は『破壊大帝』であると思い出せた。

 実に強そうだと、コルボーはその役職名を気に入った。

 

 

「そういやぁ、なんであの連中はクッキー持ってきたんだ?」

 

 

 コルボーは尤もな事を口にした。

 

 

「スタスクは日常的に反乱を起こすが、何故処刑されないのかについて『こいつが作るクッキーがとても美味しいから』という冗談があってな」

 

「うん。突っ込みどころしかねぇ」

 

「それを本人に言ったら何かに火が付いたらしく菓子作りに夢中になってしまった。元は科学者だから、そういうのも得意なのだろう」

 

「ふぅん」

 

 

 気のない返事であったが、言い終えるとコルボーは一気に酒を煽った。

 頭の中の情報を整理することを諦め、アルコールの酩酊感で打ち消そうとしたのだった。

 結果は、この非現実じみた現実のカオスさの勝利となった。

 そして彼女は揺れる視界の中、更に奇妙なものを見た。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。