真マジンガーZERO 対 アルティメットまどか   作:凡庸

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特別編 世の果ての宴④

『あれを見たまえ』

 

 

 光で出来た重戦車が意思の声を発する。

 その声を、重戦車の操縦室に座す緑髪の魔法少女が聞いていた。

 巨大な盾で前面を覆ってはいたが、盾の隙間からは緑色の眼が見えた。

 その眼は、興味に輝いているように見えた。

 

 

『有機生命体と異なり数百万年…他種族から見れば実質無限に生きられる我々だが、正直その精神性は年齢に見合っていないと思っている』

 

 

 声は嘆きを帯びているようだった。

 

 

『その一例があれだ。ホモサピエンスの言葉で言えば『ダメな大人』というのだろうな』

 

 

 操縦席の画面が拡大され、言葉の対象が映し出される。

 緑髪の少女の背後で、コルボーもそれを見ていた。

 今の彼女は意識体であり、物理的な制約を受けずにいた。

 

 

「………あー………これは、また」

 

 

 意識体のコルボーが声を出した。誰もそれを感知せず、これは彼女の独り言だった。

 見た光景に付いて、一言言わなければ気が済まなかったのだ。

 

 

「ひっでぇなぁ………」

 

 

 無数の世界線で陰惨な戦争を経験し、その全てを楽しんできたコルボーであったが、映し出されている光景の感想は苦々しい響きとなっていた。

 荒涼とした大地には、無数の手足が転がっている。

 巨大だが、骨と皮だけで構成されたそれは考えるまでも無く魔獣のものである。

 当の魔獣はといえば、率直に言えば酷い目に遭っていた。

 例えば。

 

 

「…溶鉱炉に……破砕機か」

 

 

 二体の巨大な人型が見えた。

 小柄な個体でも三メートルはあるサイバートロン人の中でも、群を抜いてその二体は大きかった。

 可能性の光として異世界から召喚されたその二体が備えている機能は、コルボーが告げた通りである。

 それぞれが、胴体にそれを備えていた。

 溶鉱炉と、破砕機。

 

 液状化した何かが飛沫を上げる光のガラスの中で、何かが蠢く。

 内側から外側へと逃げようとするが、ガラスによって阻まれる。それは、絶叫を上げる亡者の貌。魔獣である。

 内部に閉じ込められた魔獣は一体や二体ではなく、一体の激突に続いて後から後から大量に続いた。

 ガラスの一面は、絶叫を上げる魔獣の顔で埋め尽くされた。

 手足を捥がれた魔獣は胴体で跳ねて、他者を押し退けて必死になって溶鉱炉の中からの逃避を図る。

 

 だが障壁はビクともせず、容赦ない熱が魔獣を襲う。

 開いた口内の舌や歯、歯茎に唇、そして外皮が溶解していく。

 魔獣に備わった再生能力が、喪失した部分を治していくがそれを高熱が打ち消し肉体を破壊する。

 だがそのバランスは再生能力を破壊が僅かに上回る程度であった。

 決して殺さないように、そして苦痛を出来るだけ長く苦しくさせるための火加減が保たれている。

 

 それと並行し、溶鉱炉を胴体に持つその個体は繊細な作業を行っていた。

 巨大な腕から伸びた巨大な手、それに備わった指は平均的なサイバートロン人の胴体ほどの太さがあった。

 そんな太く巨大な指を用いて、その個体は魔獣の頭部を潰さないように外皮と骨を取り外して脳に当る部分を露出させ、柔らかい脳を壊さぬように親指と人差し指でそっと摘む。

 神経を切らないように細心の注意を払って脳を引き摺り出すと、魔獣の口の中へと脳を押し込んだ。

 殺さずにこの作業を完遂できたことに満足しつつ、溶鉱炉の個体は次の者へと取り掛かった。

 彼の足元には、上半身だけを残して破壊された、魔獣達が大量に転がっている。

 

 その生産元は溶鉱炉に匹敵する巨体の持ち主、胴体に破砕機を持つ個体であった。

 車輪が変形したと思しき逞しい肩からは、マジックハンド然とした腕が伸びている。

 それが魔獣を捕獲し、胴体へと導いていく。

 轟音を上げて回転する光の破砕機へと、魔獣の足が吸い込まれる。

 上がる絶叫を意に介さずに、腰まで一気に押し込まれた。

 破壊された部分は、巨体の背後から排出されて破片が放射状に飛び散っていく。

 胸に入ったあたりで引き抜かれ、マジックハンドが開いて魔獣を投げ落とした。

 

 地面を転がり、溶鉱炉の元へと辿り着く。

 溶鉱炉はそれを新たな材料とし、また脳髄を抉り出して本人の口に押し込む残忍なオブジェを作っていく。

 破砕機はと言えば、バツの字を描いた装飾が施された顔の下の口を開いて欠伸をしていた。

 欠伸が終わり、投げ捨てられた魔獣は腰から下が、次の個体は膝から下が破壊されている。

 観察をすれば、破壊作業中に行った欠伸の時点で破壊が中断されているのが分かるだろう。

 いい加減、というより飽きっぽい性格なのだろうか。

 

 足だけを破壊された魔獣が、傷口を大地に擦り付け肉片と瘴気の血糊を垂らしながら逃げようとして地を這う。進んだ先に、細身の人型が立っていた。

 体格は、先の二体が巨体であっただけに殊更に細身で小柄に見えた。

 手の先端は鋭い爪となっており、頭部にも二本の角が。背中からは細長い柱が生え、天を向いて垂直に伸びている。

 細身な体格や鋭い目つきと相俟って、全体的に刺々しい印象を与える個体だった。

 倒れた魔獣の首根っこを掴んで引き上げ、直後に落とす。

 

 膝が半ばから折れ、強制的に正座を強要される魔獣。

 苦痛の叫びを上げるが、細身の個体は気にもせずに両手を己の顔に添えた。

 眼のすぐ隣を人差し指が推すと、カチリという音が鳴った。

 手を添えたままに手が前に動く。

 仮面のように顔が外れた、と見えた時に

 

 

『我がァ』

 

 

 そんな声をコルボーは聞いた。

 覚えたての言葉を喋る幼子。そんな声に思えた。

 

 

「…全く…便利だなぁ……金属生命体って連中は……」

 

 

 外れた顔が裏返しにされるのを見て、彼女は呟いた。

 

 

『我がァ、顔ヲ、被れェ』

 

 

 外された顔の裏側には、無数の針が生えていた。

 大小様々で、螺旋が描かれた針と棘。

 たどたどしい発音が放たれた直後、それが魔獣の顔に押し付けられた。

 顔の淵に沿って魔獣の体液である瘴気が噴き出し、当然のように魔獣は暴れた。

 だが頭を掴まれて身じろぎしかできず、棘だらけの顔がぐりぐりと押し付けられる。

 しばらくすると、魔獣は抵抗をやめた。

 顔を外し、眼のあった位置に丸い窪みが出来ているだけの無貌の顔を傾げると、魔獣から棘付きの顔を外し魔獣を放り投げた。

 魔獣の顔は、言うまでも無く原型を全く残さないほどに破壊されていた。

 そしてすぐさま別の個体にも同じ処置を繰り返していく。

 

 

『連中は俺と同軍の懲罰部隊の連中だが、別の場所に来ても真面目に過ぎる』

 

 

 魔獣への拷問を繰り返す三体を、魔法少女が乗る重戦車はそう評した。

 

 

『自分達を拾ってくれた女神と魔神へ忠誠心を示すためと恩義なのは分かるが、魔獣共の拷問はもっと楽しく健康的に、そして遊び心を持って創意工夫しながら行うべきだ。それが出来ないとは、仕事とプライベートを切り離せない憐れな連中だ』

 

 

 声には憐れみさえあった。それを聞く緑髪少女の視線も寂寥感を帯びていた。

 なんか違くね、とコルボーは思った。

 

 

『その最たる例があれだ。反面教師としてよく見ておくと今後の人生が豊かになれるかもしれない』

 

 

 声が告げ、対象の映像を映す。

 画面に映った瞬間、映像と共に音が拾われた。

 それは美しい音に聞こえた。

 神韻縹渺たる、美しい二つの笛の音に。

 














魔獣の拷問に勤しむDJD=ディセプティコン司法局の面々(ヘレックス、テサルス、ヴォス)
自分でも忘れかけてましたが、この一連の話は鹿目まどかさん生誕に合わせてのお話であります(それがどうしてこうなるんスかね
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