真マジンガーZERO 対 アルティメットまどか   作:凡庸

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特別編 世の果ての宴⑥

「相変わらず騒々しいなお前達は。少しは静かにできないのか?」

 

 

 大人びた女の声が鳴る。黒い長袖のシャツと白いスラックスを穿いた、赤い長髪の女がいた。

 

 

『え?』

 

 

 それを見ているコルボーの意識体は首を傾げた。この存在は今、実体としての自分の前にいるからだ。

 

 

『あ、気にしないでいいよ。私は何処にでもいるのだから』

 

 

 コルボーの元へと意思が届いた。ならそうか、と彼女は思い返した。

 この存在に不可能は無く、理不尽であることが通常であるからである。

 

 

「だから泣き叫ぶのを少しやめろと言っているだろう。言葉は分かる筈だが?」

 

 

 光で出来た機械の巨人たちを尻目に、赤髪の女は魔獣達に話しかけていた。

 四肢を切断され、肉体を破壊された魔獣達は抉られた喉を震わせて叫んでいた。

 極限の恐怖が苦痛を消し去り、魔獣達を叫ばせていた。女は溜息を吐いた。

 

 

「ディセプティコンの諸君、これは少々やり過ぎではないか?」

 

『…魔神殿』

 

 

 応じたのはターンであった。委縮しきっている部下たちに指揮官として示すものがあるのだろう。

 その背を推したのはオーバーロードであり、当の本人は二歩ほど後退していた。

 応じたはいいが、ターン本人も何を言っていいのか分からなかった。

 危害を加えてこないというのは分かっているのだが、相手が相手だけに対応に苦慮しているのだった。

 

 

「という訳で、私にいい考えがある」

 

 

 黙っていると、当の相手が話を進めてきた。

 これ幸いとターンは黙った。

 きっとロクでもないことになる、という共通認識だけがあった。

 

 

「たまには苦痛だけではなく、娯楽を与えようと思うのだ」

 

 

 言った瞬間、女の掲げた右手には古めかしい四角のテレビが、左手にはレトロな雰囲気のゲーム機が乗せられていた。

 無から有を生み出したというより、最初からその手にあったかのような自然さだった。

 ゲーム機からは電線が伸びてテレビに接続されている。

 それを見た瞬間、テレビから無数の触手が迸った。

 それは一瞬にして、全ての魔獣の頭部を貫いた。

 地面に散乱する魔獣に加え、こことはかなり離れた場所にある魔獣の拷問部屋の個体も同じ有様となっていた。

 何事だと一同が見る中、女は「スイッチオン」と言った。テレビが点滅した、と思った直後にはドット絵で描かれた世界が画面の中に展開されていた。

 

 峩々足る山脈に荒涼たる大地が広がるレトロ感あふれる世界には、横向きの人型がいた。

 それは右へと向かって歩き、そして爆発四散した。

 

 

『え?』

 

 

 コルボーが疑問の声を発した。

 その直後、『デーレレーレー、デン!』という軽妙な音楽が鳴った。

 黒一面の背後の中に人型のがおり、その隣には『×∞』という数字があった。残機と言う事らしい。

 再び画面が切り替わったが、またも直後に人型は砕け散った。

 その次も、その次も同様だった。

 その度に頭部を管で貫かれた魔獣達は痙攣した。

 そこで察しがついた。魔獣達は今、このゲームの世界に閉じ込められているのだと。

 何時の間にか、一つだけだった筈のテレビは所狭しと並んでいた。

 地平線の彼方まで、地面は各々の足場を除いてびっしりと。

 

 

『ふむ』

 

 

 オーバーロードは顎に右手を添えて呟いた。

 

 

『確認出来た限りで、五十八億九百二十万三十七の端末が見える』

 

『空中のも足したか?』

 

 

 ターンが続ける。テレビは地面だけでなく空一面にも広がっていた。

 そして一つの画面の中にも無数に同じ光景が広がっている。

 微細なドットの中にもゲームの画面があり、その中にも同じものがあった。

 サイバートロン人達が倍率を上げていくと、百層に渡ってゲームが繰り広げられているのが認識できた。

 認識できたのはそこだけであり、更に奥にも万華鏡や無限鏡のゲームの世界があることが察せられた。

 

 

「ようやく少し進め始めたな。学習は大事だ」

 

 

 女は満足げに告げる。よく見れば、人型が爆散したのは前方から飛翔してきた戦闘機から放たれた弾丸であることが分かった。

 弾丸は背景の色に同化している上に非常に小さく、いわゆる初見殺しというものだった。

 そこを突破しても戦闘機の突撃によって人型は爆散する。

 それもまた幾つも幾つも、無限に近い数で続いていく。

 戦闘機は主人好機である人型の弾丸を受けると、今度は戦車へと形を変えて突撃。

 激突した人型は粉砕された。

 

 

『今、気付いたのだが…』

 

『貴様もか…』

 

 

 他者の死と苦痛を楽しむ残虐な精神を持つ二体のトランスフォーマーが、畏怖の声を出していた。

 その原因とは。

 

 

『おいお前ら!!俺と同じデストロン軍団だろ!?頼むから助けてくれええええええええ!!!!』

 

 

 意識を研ぎ澄ませると、画面からはそんな叫びが聞こえてくるのであった。

 

 

『…何をしているんだ、スタースクリーム』

 

 

 ターンはテレビの一つを指先で摘まみ、画面内の人型を眺めながらそう言った。

 人型にはドット絵で再現された翼があった。

 

 

「うむ、このゲームは素晴らしい」

 

 

 赤髪の女が語る。画面の中では相変わらず、理不尽な難易度に晒されて爆散する自機…スタースクリームの様子が描かれていた。

 

 

「この愚か者はつい先ほど逮捕した。優木沙々と結託し、通算十一万四千五百十四回目の叛逆行為を企てたからだ」

 

『魔神様!そいつは誤解でさぁ!俺はメガトロンを倒してニューリーダーになれれば十分なんだ!この世界は相棒の好きにして良いって言っただけで』

 

『判決。叛逆罪にて死刑』

 

 

 冷たく告げたターンの指先でテレビが潰され、実体としてもスタスクは砕け散った。

 凄まじい絶叫と共に、地面に転がっていた魔獣の一体の顔が弾け飛んだ。

 後ろではオーバーロードが哄笑している。だが哄笑は不意に停止し、虚無の表情が浮かんだ。

 

 

『愉快だが、悍ましい世界だ』

 

 

 視線の先では、ゲームの世界に閉じ込められているとされるスタスクが死に続ける光景が広がり続ける。

 無限ループの回廊に取り込まれて何処にも行けなくなった者、海老のような謎のメカに接触し爆散するスタスク、見覚えのない球体と戦うスタスク、自軍のエンブレムと戦うスタスク…。

 難易度に加えて、異常に過ぎる光景が続いていく。

 ここは、死と苦痛に満ちたゲームの世界だった。

 魔獣達は自機であるスタスクを通して、このゲームの世界に拘束されていた。

 

 

「これはとても素晴らしい。このゲームは遊戯としても優秀で、私もよく遊んでいる。女神も時折寝食を忘れて遊び続けているのだ」

 

 

 その場の全員が絶句し、女を見る。

 客観的に見て、このゲームは面白いとは思えないからだ。

 

 

「この神ゲーを遊ばせることで魔獣達の精神を癒し、加えて数多の世界を見てきた私でさえも度し難さを覚えるこの愚か者にも罰を与えられる」

 

 

 満足そうに女は言う。演技ではなく、一辺の疑いも無く本心で言っているのであった。

 

 

「さぁ魔獣達!この愚者の遊戯で存分に遊んで英気を養うがいい!」

 

 

 女が叫んだ瞬間、魔獣達は一斉に叫びを上げた。絶望を超えた絶望の叫びだった。

 叫びを上げる口からは濛々とした瘴気が溢れた。

 

 

『うああああああああ!!!!メガトロン様ぁああああああ!!!助けてくれぇぇえええええええ!!!!!!』

 

 

 名前の如く、星の金切り声を上げてスタースクリームは叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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