全長1兆5000億光年。
天も次元も突破し、更なる進化を遂げた螺旋の戦士。
それを上回るべく、更に変異を成した反螺旋の守護者。
先の数字は、その二体が繰り出した超超超巨大なドリルであった。
右回転と左回転。異なる向きに回るドリルは、一つの存在を目指していた。
最終にして原初の魔神。
マジンガーZEROと呼ばれる絶対者へと。
視界を埋め尽くすどころではないそれに応じ、魔神は五指を広げた両腕を伸ばした。
魔神はただそれだけを告げた。
直後か同時か、魔神の両手にドリルの切っ先が激突した。
宇宙全体が號と震えた。
ZEROの掌と二種のドリルの切っ先の間で、眩い光の火花が上がる。
そして、物体が砕け散った。
それは、漆黒の刃であった。
ZEROの伸ばした剛腕に付随する刃、アイアンカッターが砕けていた。
並ぶ両者の実力が拮抗している事を表すように、その破壊は同時だった。
その破壊は、刃の先端。僅かに歯が欠けた程度に留まっていた。
魔神は二体の前に光を送った。
それは嘲りなどでは無く、心からの称賛だった。
そして魔神は両手を軽く曲げた。
指先が触れた瞬間、二つのドリルは完全に停止した。急制動による摩擦すら一切発生しなかった。
まるで最初から止まっていたかのようだった。
握るのではなく、ただ添えられているだけの手によって、それは為されていた。
そして動きを止められたドリルの切っ先は、溶かした飴の様に歪んでいた。
対するZEROの掌は全くの無傷。理不尽に過ぎていた。
しかし理不尽さは更に続いた。
曲げられていた五指に力が入った。
薄氷を押したかのように、指先でドリルが爆ぜ割れた。
ドリルの罅は時の概念さえも無視して、二体の巨体の全身を覆った。
それでもなお倒れずに、戦士と守護者は残った腕をドリルに変えて魔神へと突き出した。
その全身を、真紅の光が叩いた。
二体の全長・直径さえも遥かに凌駕する熱線が放たれる。
全てを貪欲に飲み込み、真紅の光は何処までも伸びていく。
その光の大波濤がふっと消え失せた。まるで蝋燭の灯が絶えたかのように。
そしてその代わりに、果てしなく巨大な存在が顕現していた。
白と黒の装甲。禍々しい真紅の放熱板。背後に背負った異形の翼。
そして髑髏のような貌。
二体の螺旋の者どもを喰らった真紅の光は、そのサイズに等しい大きさのマジンガーZEROへと変わっていた。
大きさの比較は最早無意味だった。
宇宙よりも何よりも、比類しうる存在が何も無く、全てはZEROという存在だけの世界となっていた。
その中で魔神は問うた。
嘲りや恫喝でもなく、ただ尋ねとしての問いだった。
女神からは降参の意思は届いていない。
となれば何かをする気であると、魔神は確信していた。
よほど信頼があるらしい。
この存在が行ってきたことを鑑みれば、奇跡という言葉すら適用に値するかどうか。
それこそ、新しい言葉や概念が必要かもしれない。
そして今、それに値する一つの現象が起き始めた。
奇跡を超えた奇跡が。
並ぶもの無き絶対者と化したZEROの眼が、一面に広がる光の中で何かを見た。
その瞬間、地獄の如き黒渦の眼は収斂し、黒点と化した。
この魔神が、これほどの驚愕をしたのは何時以来だろうか。
恐らくは過去に一度だけ。
閉ざされた世界、自らの内から放たれた可能性の光に、自身の繰り出す全ての技が無効であると見たときか。
そして今、魔神が認識したその姿は。
巨大な刃を付けた剛腕。分厚い装甲で覆われた全身。
それでいてしなやかさを帯びた造形。背中で広がるZと無限、そしてゼロを意味する翼。
獰悪な顔付と、王冠のような頭部。
輝く光で出来ていたが、その姿は正に。
他の誰でもない、本人がそれを認めていた。
文字から発露する感情は怒りなどではなく、湧き上がる歓喜。
見開かれた眼が映していたのは、それだけではなかった。
そして風防を展開した頭部に立つ、神々しくも可憐で美しいその姿は、正に女神の威容。
凛々しき表情には、恐怖も絶望も浮かんでいない。
ただ救済の女神であろうとする、凛とした表情が浮かんでいた。
そして女神は右手を掲げた。
それが合図であった。
ZEROを取り囲み、光が顕れる。
その全ては、マジンガーZEROと同じ形をしていた。
形ではなく、完全な同一存在だった。
ZEROは個であり全てである。
魔法少女と対峙する、宇宙さえも軽々と上回る巨体となったZEROと魔法少女の側に立つZEROは同じ存在だった。
ただ立場が違うだけであると、ZEROはそれらを見た瞬間に認識した。
両者の意識に差異は無く、全てが等しい存在であった。
異なるのは、頭部に頂いた少女達の姿のみ。
花嫁衣裳のような姿の者。黒い暗殺者を思わせる者。
聖女の如き鎧を纏った者。軽装で、カッターナイフのような刃を携えた者。
小柄な体躯に猫の耳を思わせる髪留めをした、白衣の者。
長いツインテールの、小悪魔風の衣装の者。
チアガールを思わせる青い衣装の者。
薄い金髪のサイドツインの髪型をした、魔法少女という見本ともなり得そうな者、そして魔法使いと称するにぴったりの姿をした、ローブ風の衣装を持った銀髪の者。
その他無数の、数えきれないほどの数の、煌びやかな衣装を纏った少女達がいた。
当然その下には、光で出来た最終にして原初の魔神の姿があった。
無限に等しい大きさのZEROの周囲を埋め尽くすのに、時間はそう掛からなかった。
しかし無数のZEROは、そして魔法少女は更に次々と増えていく。
女神が搭乗するZEROの左手には、小さな欠片が置かれていた。
それは螺旋の戦士と守護者によって砕かれたZEROの刃、アイアンカッターの破片。
破片は、出現するZEROと同じ輝きを纏っていた。
その言葉に応える様に、女神は細い腕と繊手を前へと伸ばした。
動きに合わせ、魔法少女達もまた動いた。
美しい手に持つ様々な武具が、巨大な魔神へと向けられる。
そして一斉に、それらは光を放った。
召喚した魔神の力を乗せた無窮無限の
好き勝手には好き勝手で対抗である