大きさにして、1兆5000憶の1兆5000憶乗光年。
他は、ただそれを内包する空間のみといった、常識などとうに超えて理不尽さえも匙を投げたであろう超巨大となった機械の神。
嘗て無数のセカイを滅ぼし、そしてそれを遥かに上回る世界を開闢した最終にして原初の魔神。
巨大な意思の集合体。
マジンガーZEROという名の、並ぶもの無き絶対的な神。
真紅の翼を背負い、漆黒に輝く巨体の周囲には光が満ちていた。
それは無数に、無限無窮の数で存在していた。
大きさにして、いや、大きさは既に無意味だろう。
仮に定義するとして、約60メートル。
輝く光によって構築されたのは、最終にして原初の魔神。
同じ、全く同じ存在であった。
超巨大なマジンガーZEROの周囲を、光で構成された身体を持つ無数のマジンガーZEROが十重二十重に包囲していた。
無数の輝くZEROの頭部には、例外なく煌びやかな衣装の少女達がいた。
座席に立つか、或いは席に座り操縦桿を握っている。
そして無数のZEROの中で一際強く輝き、ZEROを見る存在があった。
桃色の髪に純白の衣装。輝く瞳には強い意思。
円環の理の名を持つ女神。
嘗ての名は鹿目まどか。
今の名前はアルティメットまどか。
魔神の記憶の中に存在する無数の意思、個であり世界。
過去も現在の如く、記憶の中に存在するZEROの意思に呼びかけ、彼女はこの奇跡を発現させていた。
全身にみなぎるのは、魔神の力。
嘗ての様に魔神は搭乗者を侵食しなかった。
ただ彼女らに、自身の力を与え操り方を伝えていた。
もう何も怖くない。
嘗てどこかの世界で生じた言葉を、女神は想った。
それは魔法少女達へと伝わり、次の行動を促した。
女神は細い腕と繊手を前へと伸ばした。
魔神の頭部に座す魔法少女達。
その美しい手に持つ様々な武具が、巨大な魔神へと向けられる。
そして一斉に、それらは光を放った。
召喚した魔神の力を乗せた無窮無限の
魔法少女達の願いと魂の色が、それぞれが背負った色が放たれる。
一つとして同じ色の無い眩い光を浴びながら、ZEROは光の文字で呟いた。
獰悪な顔はそのままだが、どこか微笑んでいるように見えた。
嘗て自分を打ち破ったその光景の、同種にして別物の光景に満足しているかのように。
その姿を、着弾した無数の光が塗り潰した。
サイズ差など無いかのように、一筋の光の炸裂は広大且つ巨大であった。
光は形状を伴っているものもあった。
闇色の拷問具の刃がZEROの体表を掠め、青い光が変じた赤黒い無数の斧がZEROを刻む。
輝く光球。信託者の宝球が巨体を殴打し、白銀の輝きを放つ。
その光を縫うように、連結された無数の斧。吸血鬼の牙が黒鉄の装甲の上を駆け巡る。
その他無数。
薬品が入れられたビーカー、魔法少女が手に持った可愛らしいコンパクトから発せられる赤の光、重ねられた扇から発せられる炎の乱舞。
海神のそれを思わせる槍の投擲、杖から発せられる緑光がZEROを絡めとり光の炸裂を見舞う。
そこに流星の如き速度で垂直落下していく巨体。ZEROの頭部に立つ少女の手には湾曲した大剣。
無限に等しい距離である魔神の体表を一薙ぎし、炎の斬撃を見舞う。
炎を覆い隠すように、白い雷撃が放たれた。それは、九つの緑色の箱から生じていた。
それを放った者の嬌声が、破壊の最中に鳴り響いた。
そして炸裂するのは魔法少女の光だけではなかった。
数え切れぬ数の、飛翔する鉄拳。ロケットパンチ、またはアイアンカッター。
無数に重ねられた大渦、ルストハリケーン。
鋭い両眼から放たれる熱線と光弾、光子力ビーム。
胸の装甲板から放たれるブレストファイヤー。
それらも無数に放たれていた。
光の中、それらを受けるZEROは身を大きく仰け反らせていた。
その姿に異変が生じていた。
極僅かな、腕の刃の先端の欠落だけで全てを受け切っていたZEROの体表の装甲が、僅かに剥離しているのが見えた。
勝機。
その瞬間、魔法少女を頂く全てのZEROが輝いた。
あらゆる可能性を見出し、勝利への活路を開く超超超級の状況シュミレーション。
それは未来を予知する事と同義。
その力に、白銀の魔法少女は己の力を乗せた。
開いていた眼が開かれ、深緑の瞳がきらめく。
そして彼女はそのビジョンを女神へ托した。
嘗てどこかの世界で、自分が殺さざるを得なかった相手へと、そして自分を殺した相手から。
託された力に、女神は力強く頷いた。怨恨など既にそこには無い。ただ今があるだけだ。
その光景を女神は伝える。無数の魔法少女と無数のZEROへと。
それに魔法少女達は魔力の解放で以て、魔神は更なる力の発動で応えた。
垣間見た勝利の光景。
巨大なマジンガーZEROが砕け崩壊するビジョンを、因果の力が紡ぐ。
それを為す力が女神に与えられ、そして全ての魔法少女達も女神に全ての力を託した。
未来(勝利)に向け、女神は弓矢を放った。
飛翔する桃色の輝きが、魔神の前面に展開された広大な魔法陣へと激突する。
魔神さえも覆い尽くす光が生じ、全てが光に包まれる。
そしてそれは、果てしなく続いた。
その果てに、美しい白い手が見えた。
女神が広げた両手の間には、桃色の光球があった。
その中は光で満ちていた。光の中央には、浄化の光に曝されるZEROの姿があった。
光はZEROの装甲さえ破壊し、全身を傷で覆わせていた。
女神の、そして無数の魔法少女とZEROの前からは巨大なZEROの姿が消えていた。
少女と魔神達が巨大化したわけではない。ただ、奇跡が起きたのだった。
奇跡も魔法もある。女神の持つ光球の中に閉ざされた魔神の姿、つまりは魔法少女達の勝利がそれを顕していた。
女神が手に持つ光の中に閉ざされた、身を砕かれて無力化されたZERO。
予知魔法と高次予測、そして因果律兵器を用いて現出させた勝利。
ここに、勝敗は決したのだった。
光の文字が浮かぶ。
光を手に持つ女神の前で。
女神は光球の中を見た。
破壊されてゆくZEROがいた。
装甲が割れ、腕は砕けて無惨な姿に……いや、違う。
女神はそう判断した。
割れてはいるが、質量が変化していない。
女神は理解した。この変貌は、魔神自らが行っていると。
そして女神は、魔神の割れた装甲の内へ。女神と魔法少女の、そしてZEROが放った破壊の力が吸い込まれていくのを見た。
異常な事態に、魔法少女も女神も、そして魔神すらも動けない。
これは完全に予測の外、自分たちが勝利した後の光景であった。
まるで完結した物語が、勝手に動き出したかのようだった。
その現象を、魔神は自らそう伝えた。
瞬間、光は弾けた。
光は弾けて何処までも拡散した。
そして山から流れる水の流れが河となりやがて大海へと変わる様に、複数の光は流れ流れて交わると、一つへと変わった。
眩い光は、一気に形を濃縮させて凝固した。
この場の全ての力を集約させ、形を成していく。
細い腕が見えた。
美しいドレスが見えた。そこから伸びた脚も見えた。
そして可憐な顔と、無限に伸びた美麗な髪を。
形成された姿を前に、全ての魔法少女は息を呑んだ。
この姿は、見覚えにあり過ぎていた。
特に、女神に至っては絶句していた。
それは魔法少女にとっての究極の姿。
女神。
白と桃色を基調とし、煌びやかな衣装を纏った姿は、正に女神…だが。
詳細が少し、少しだけだが異なっていた。
しかしそれは、決定的な違いであった。
顕現したその女神は、美しいが、全体的にデフォルメが施された姿をしていた。
「この手に」
それは声を放った。
それは確かに女神の声…だった。
但し、魅惑的なだみ声だった。
「希望を挟み取る」
言葉と共に、それは手を掲げた。
繊手の先で光が生じ、それは黒い鋏となった。
切断のための鋏ではなく、デフォルメされた蟹の鋏だった。
異常すぎる光景、そして予測を超えた事象に誰もが動けない。
だが、誰もがその正体を感じていた。
魔法少女の力を受け、それを吸収して変異したものが、この姿を取っているのだと。
「いやぁ…ぜろぜろ様はルール無用すぎるっしょー」
無数の魔法少女の中の一人、小悪魔風の衣装をした金髪少女は呆れつつも笑いながらそう呟いた。忌憚のない意見だった。
そして正体を示すように、いや、そもそも隠してすらいないのだろう。
その存在の背には、巨大な真紅の翼があった。Zと無限、最終と原初を意味する魔神の翼。
一度聴いたら因果の果てでも忘れ無さそうな、魅惑的なだみ声が無音の筈の宇宙空間に木霊する。
前を向いた蟹の鋏の中には、煌々とした輝きが秘められていた。
それはこれまでに受けた、如何なる攻撃よりも苛烈な破壊の光。
「あっつ、ってあっつ、あっづー!!」というだみ声の叫びと共に放たれた真紅の破壊光は全方位へと拡散し、無数の魔法少女とZEROを包む。
その最中で、女神は弓矢を放った。
二体の女神が放った二種の破壊の激突は、更なる炸裂を生んだ。
そして全てが、その中へと飲み込まれていく。
書き手としても予想外
次回、最終回