アタシは都ひなの。
南凪自由学園3年生。
花も恥じらう18歳のうら若き乙女…だった。
いや、そうなんだけど、そうじゃないっていうか…まぁいいか。
理系らしく率直に言えば、アタシはもう死んでる。
いや、導かれたって感じか。
そして今はこの世の因果から外れた場所、『円環の理』にいる。
何があってここに来る羽目になったとかは今はいい。よくはねぇけどな。
魔法少女としての戦いも終わって、友達とか家族とはもう会えないけど、この楽園で別の世界の自分を眺めたり気ままに生活したりしてる。
魔法少女の天国にいるってカンジかな。
理系のアタシが天国を認めるなんて非科学的な、ってのはよく生意気な後輩に言われる。
ああ、あいつもいるんだよな…これも複雑な気分だけど、独りぼっちじゃないってのは心強い。
まぁなんだかんだで、ここの世界はストレスとは無縁だ。
といっても退屈するわけでもない。
色々と好きなことが出来るし試せる。
なるほどな、大した理想郷だ。
この世界を創ったのは魔法少女の宿命を嘆いた女神様で、時々やってきては魔法少女の様子を見たり一緒に遊んだりしてる。
なんだかんだで、女神さまも子供って感じらしい。
全ては良かった。
順風満帆で時の概念も無いから自分が老けたとか、永劫の時に圧し潰されそうになって虚無感に浸るとかも無い。
ただ。
ただ一つだけ、気にかかる事がある。
円環の女神様が行った『模擬戦』。気分的には二日前くらいだけど、この世界は時の概念がほんっとに曖昧だからな…実質無意味か。
模擬戦はこれまでも何度か行われたけど、アタシが参加したのは初めてだ。
実体じゃなくてアバター的な感じだったけどな。
痛みも苦痛も無い、それでいて恐怖感もそんなにない。
ああ、そうだ。
それが問題なんだ。
あれを危険と思わない、というか安心感さえある。
これが洗脳じゃないってのは、間違いない。
この考えはアタシのもので、アタシの心と魂がそう認識してる。
だからこそ、アタシは自分の心で以て、あの存在について考えている。
マジンガーZERO。
白と黒の装甲、超合金Zって名前の未知の金属で身を固めたロボット、というか本人が言うにはスーパーロボットか。
王冠みたいな兜に騎士の面みたいな口元、それが牙みたいに開いて生き物みたいな形にもなる。
神が慄き、悪魔が泣いて命乞いをしそうな怖すぎる見た目の機械の神。
ああ、神様なんだよな。
正確には『魔神』か。マジンガーってのはそこから来てるんだろう。ガーってのは何だか分からないけど。
時の概念が無いというか曖昧とはいえ、そいつはアタシがここに来た後にこの世界に姿を顕した。
その間のコトは全く覚えてない。
記録としては残ってて閲覧可能らしいけど、今は見る気が起きねぇな。
でもとにかくヤバい事が起きて、色々とヤバくなって、その果てにアレが来たらしい。
そしてその後もここにいる。
ああ…あん時は色々あったな。
まぁそれは今度だ。
で、今に話を戻すか。
この前やった模擬戦。アタシはそれを記録映像で繰り返し確認した。
その結果、あの存在に関しては何も分からない事が分かった。
なんだよアレ。
あらゆる法則を無視してるじゃねぇか。
ロボットなんだろ?科学の力で生み出されたんだろ?
なのに何でその自分自身が科学の法則に当て嵌まらないんだ?
そもそもエネルギーが無尽蔵で使用に制約が無し、そして全身を構築する超合金Zは破壊不能?
なんだよそれ。
それが標準装備?
アタシの理解、どころか誰も理解できねぇよあんなの。
聞いた話だと、自己進化を繰り返していってああなった…のもあるけど無限のエネルギーと破壊不能の特性は元かららしい。
元はマジンガーZって言うらしいな。
顔写真を見せて貰ったけど、仏様みたいに優しそうな感じだったな。
外見は似てるけど、まるで仏と修羅だぞ。別物だ。
まるでアタシら魔法少女と魔女みたいな。
また少し脱線したな。
それでもって、装備した兵器の破壊力は……いや、あれは破壊のレベルなのか?
あれを表現するには新しい言葉とか概念が必要なんじゃねえのか。
魔神。
魔神か。
そうだよな、神なんだよな。
なんでもアリか。
アタシはそこに、危機感を覚えてる。
今、あの存在は円環の理の側の存在として立っている。
味方も味方で、守護神とさえ言っていい。
この宇宙の外には得体の知れない連中がウジャウジャいて、そいつらからこの世界を守ってる。
そういえば本人もそんな世界から来たらしいな。
つまりは同類か。
そうだ、同類だ。
だから、もしも、もしも敵に回ったらと思うとゾッとする。
あれは円環の理の総戦力、そして女神様に召集された無数の自分自身さえも撃破した。
本人曰く、自分の負けだってコトらしいが、アタシはこちらの負けだと思ってる。
その勝ち方についてのコメントは控える。
あの姿に関してはまだ心の整理がつかねぇ。
いや、整理しちゃというか納得しちゃダメなような……。
と に か く だ!
あの結果を鑑みて、アタシは決めたんだ。
アタシは創る。
あの存在を、マジンガーZEROを超えたスーパーロボットを建造する!
そして、来てほしくないけどもしもの時に備える!
外の世界の敵からこの愛しい世界、円環の理を守る力を創り出す!
それがアタシ、元南凪自由学園化学部部長、都ひなのの使命だ!!
そして今日も、時の概念とか無いけど今日もその製作に勤しむ。
となれば、助手を呼び出すとするか。
色々と思う事はあるが、優秀な助手を。
いや、ちと優秀すぎるし色々とモヤっとするけど、アタシの力には限界がある。
だから、どうしても必要なんだ。
少しの間葛藤してから、あたしは息を吸い込んだ。
言い忘れてたけど、アタシの目の前にはデカいプールがある。
そしてその近くには工房を兼ねたアタシのラボがある。
絵で簡略化した山みたいな、二つの突起を頂点にしてなだらかな弓を描いてる八の字型の姿って感じか。
その奥に聳える大山脈、富士山そっくりな形だ。真っ白な色も雪みたいだしな。
ああそうそう、円環の理の中には色々なものがある。
あの山みたいにな。全く凄い世界だよ、守りがいがありまくりだ。
そしてアタシは叫んだ。
ちょっと恥ずかしい気もするけど、そこはアレだ。
魔法少女らしく技名を叫ぶみたいに声高々に叫んださ。
「マジーーーーーーーーーーーーーーン!!ゴーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
プールの水が二つに割れて、二つの滝みたく下っていくその中から、見上げるほどの巨体がせり上がってくる。
超合金で身を固めた、筋肉質って感じの逞しい胴体。
デカすぎる刃が二枚も付いた太い腕、さっきも言った恐ろしい顔。
その背中には、数字のゼロと無限とZを示すデカくて赤い翼を背負ってる。
奇しくも円環って感じがする形だな。
いや、そもそも誕生経緯からして別の意味での円環なんだっけかな。
全長60メートル。
どこに入ってたんだって感じのデカすぎる翼を含めればその倍の120メートルくらいはありそうだ。
見上げてるアタシの前に、光で出来た文字が浮かぶ。
アタシのアシスタントなのか、それともアタシの師匠なのか。
多分どっちでもあるんだろうな。
円環の理にいるもう一体の神、マジンガーZEROにアタシは感謝を示す頷きを返した。
…すっげぇ複雑な気分で、罪悪感も湧いてくる。
にしてもこの人……っていうか魔神か。
自分を倒す存在を作ろうってヤツに、なんでこんなに協力的なんだ?
神様の考えってのは分からんね。ホントに。
…何してんだこの人ら…