『円環大投票』。
後にそう呼ばれるようになったイベント…でいいのかな…があった。
投票内容は……機械神、マジンガーZEROの処遇についてだ。
投票する項目は二つ。
円環の理に迎え入れるか、完全破壊・ないしは永久封印。
円環の理に訪れたっていう『異変』の後に開催された。
今でも覚えてるな。
円環の理の中は恐怖とは無縁だってのに、自然と手が震えちまった。
無理もねぇだろう。
神も仏も信じて無かったアタシでさえ(女神様は別だ)、あの存在は神だって事が否応なしに分かっちまう外見と存在感を出してやがるんだから。
それでだ。
あの行事について補足がある。
マジンガーZERO…長いな、ZEROでいこう。本人もそれでいいって言ってるし、衣美里に至っては「ぜろぜろ様」とか呼んでやがる。
あいつの胆力はやべぇな。流石に許可されると思ってなかったみたいで、最初に使った時は変な空気が漂ったんだが。
結果は快諾。そっちも予想外だっての。
ああ、それで補足だったな。
投票の前、アタシらはずらっと並んで椅子に座った。
パイプ椅子だったり革張りの良い感じのだったり、生きてた頃の勉強椅子だったりと様々だ。
思い思いの順番や場所に座って、ポップコーンとコーラ片手に鑑賞会をやった。
…ああ、そうだよ。
気付いたらそうなってたんだ。
その場のテンションっていうのかな。娯楽に飢えてたんだろうな。
でもあの時はもう少し考えとくべきだった気がする。
円環の女神様が全長60メートルの機械神に乗ってるのとか、座席の端っこに黒シャツとジーパンを穿いた16~7くらいのイケメンな男子がいた事とかな。
それと顔を黒い布で隠した、超絶ナイスバディでセクシーなボディスーツっぽいのを着たチャンネーが映写機を回し出したり、その合間にポップコーン作って配膳してたりとか。
黒い布で見えなかったけど、この人がイケメンに向けた憎悪の眼差しったら無かったな。
それを受ける男…まぁ、ZEROの化身、アバターは準備とかに感謝してるのか軽く頷いてた。見てるこっちが怖かったな。
あの外見のモチーフは『兜甲児』っていうらしい。それを知ったのも直後だった。
テレッテー
テレッテー
テテッテッテッテテレテレテテッテー
って感じの軽妙な音楽の後に、
と、デカいタイトルが画面いっぱいに広がった。
今でも鮮明に思い出すなぁ。
なんていうか、あの時は生きてた時のことを思い出してた気がする。
化学の実演実験で目を輝かせてた時みたいなな。
期待してたんだろうなぁ。こういうのは久々だし。
アタシは理系だ。
だから結論から言う。
あれは、地獄だった。
アタシらの今いる円環の理。
これもとある魔法少女が苛酷な時間遡行の末に誕生のきっかけを作ったらしい。
辛いよな、何度も何度も人が死んで世界が滅ぶのは。
そうだよな。
それが数千回も繰り返されるなんてな。
思い返しただけで頭が重くなる。
自分があの世界の登場人物だったなら、って思っちまう。
キッツい表現多かったな…確か年少者とか希望者には修正とか描写のカットが入ったらしい。
妙に凝ってやがるな。
まぁ、詳細はハブく。
最近愛蔵版が発売してるらしいし、電子書籍版もあるからそっちで確認しとくれ。
でもまぁ…悲劇に次ぐ悲劇と破滅に次ぐ破滅の果てに、漸く世界は救われた。
巨大…ってレベルを超えた超巨大で超強力な敵と、それを操る超絶ド外道を粉砕したマジンガーZと主人公の兜甲児が雲の切れ間から光と共に舞い降りて大勢の仲間に迎えられた時は……ああ、泣いちまったよ、アタシ。
ここからが本当の地獄だった。
平和になった世界が…生き残った人々が………いや、言葉にならない。
そして、遂に顕現した………マジンガーZERO。
これが…こいつがやらかした事は………。
必死の賭けの果てに誕生した超性能のロボットすら、因果を紡いで破壊しやがった。
因果を紡ぐ。
なんだこれ。
ほんとなんなんだ、こいつ……。
で、そんな破壊行為すら、おまけ程度に思えてしまうコトをやらかしやがった。
いや……あのさ……なんて言えばいいんだ、これ。
理解を超えてやがる。
今までのアレやそれが、全部仕組まれてた?
それすらも無意味になった?
時間や空間、全並行世界を手中に収めたから先も後も関係ない…と。
あー……マジでワケ分からねぇ。
ロボットって何だよ……。
それで、ロボットといえばだな。
閉塞した世界を打ち破った切っ掛けは……。
うん、分かった。
決めた。って感じでアタシは投票した。
結果は明らかだったな。
大多数が完全破壊・永久封印に投票した。
受け入れを支持した奴は、少なくはなかったけど多くはなかった。
大体がフランスやイタリアの連中だった気がする。
サヴァ…とか言ってる王妃様やその娘らはなんとなく分かるけど、聖女様も支持側に回ってたのは驚いたな。
それでだ。
投票権は、あたしらだけに与えられたものじゃなかった。
女神様は決定権しか持ってない。
足音が響いた。地面が揺れた。
そんな気がした。
全長60メートル、背中の翼を入れれば100メートルを超える巨体が歩けばそうなるだろうさ。
そいつは…話の渦中にいるマジンガーZEROは器用に体を屈めて、ゴツくてデカすぎる手で器用に小さな投票用紙に〇を書いて投票箱に入れた。
さっきまで残虐非道の限りを尽くしてた悪の中の悪、邪悪オブ邪悪のやる事かよって、多分みんなが思ってただろうさ。
紙が投票箱に入れられた。
さっきまであの地獄絵図を映してた画面に表示された投票結果が、紙を入れた瞬間にピコンと動いた。
票が増えた。
完全破壊・永久封印の方に。
え……あの……あのさぁ。
困惑してるアタシらの前に、光の文字が浮かんだ。
結構どころじゃないんだ。
抗議を言うでもなく、異界の神様はそう言った。
ZERO様何してるんスか…
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