あたしは呪詛師の家系   作:兵頭アキラ

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一人称小説って書くのすごい面倒

三人称で書きたい



弐話

「あ、忘れてた」

 

 屋敷を木っ端みじんにしたはいいが、絶対に忘れちゃいけないものが二つあったことを思い出した。

 

 あたしはかついでいたどこかの社長を近くの塀にもたれさせ、境界を失って何が何だか分からなくなった屋敷の中に足を踏み入れる。

 

「確か蔵の中に……あ、あったあった」

 

 まずは一つ目。境界を失なっても存在し続けるあたり、流石は特級呪具だ。もっとも、屑であることが判明したひいおじい様の持ち物だから手放しには喜べないが。

 

 特級呪具の名を『孫兼(そんけん)』。かつてひいおじい様が使っていた刀剣だ。かなり愛用していたのか、ひいおじい様の術式が深く刻まれているのだとか。

 

 曰く、呪力さえ通せば素人であっても術式が使えるようになるのだとか。そしてその引き換えに、魂を乗っ取られるのだとも。

 

 まあ、境界呪術が上手く使えれば全く問題はない。

 

「あとはアレだ。えーとあたしの部屋はーと」

 

 孫兼を腰に差し、あたしの部屋の合った場所まで移動する。

 

 そこには、竹筒が数十本丁寧に並べられていた。無事なのは無意識的に避けていたかららしい。

 

 中身が無事かを確認する。

 

 蓋を取って中身を出すと、一センチほどの透明な黄色の粒が転がり出てきた。一つ一つ確認してく。如何やらすべて無事のようだ。

 

 竹筒を全て裾の中に突っ込み、眠ったままの社長をほったらかして、あたしは夜のとばりの中を風の流れるままに歩いて行った。

 

 

○○○

 

 呪術高専京都校の学長を務める儂、楽巌寺嘉伸は五十件目になる奇妙な手紙に頭を悩ませていた。

 

 手紙の内容は『奈良県○○ホテル632号室 呪詛師・米村花袋 1.斬首 2.捻転 3.圧壊 4.火達磨』。

 

 これと似たような内容の手紙が何度も送られてくる。

 

 呪力も何も込められていない何の変哲もない手紙だ。

 

 当初はただの悪戯だと思い、適当な数字に丸を付けてみれば、次の日には書かれていた場所に、書かれていた呪詛師が、儂の付けた丸のやり方で殺害されているのが発見されたのだ。

 

 これが今の今まで続けられている。五十人の呪詛師が暗殺された。

 

 それだけならまだいい。

 

 呪詛師の潜伏先を捉え、誰にも見られていないはずの儂の丸を正確に認識し、残穢すら残さずに殺害し、高専には自らの存在を悟らせない。

 

 手紙の送り主は何が目的なのか? 考えていると、誰かが扉を勢いよく開けた。

 

「楽巌寺学長! その、また手紙が!」

 

「なに? 一日に二通とは初めてのことだの」

 

 儂は内心の驚きをおくびにも出さず、手紙を持ってきた生徒の庵歌姫から手紙を受け取る。

 

 内容は『目方屑拿 呪詛師五十人の首を手土産に、呪術高専京都校に入学したく』。と、住所付きで書かれていた。

 

 目方と言うと、呪詛師の一大家系のはずだ。そして、二か月ほど前、屋敷ごと全滅したと聞いている。

 

 この手紙の主が、一族を滅ぼしたという事か。

 

 どちらにせよ、野放しにしておくわけにはいかない。

 

「歌姫」

 

「はい」

 

「行くぞ」

 

 指定された住所に儂と歌姫は向うことにした。

 

 

 

 指定された場所は、小さな公園だった。そこにあるジャングルジムのてっぺんに、着物姿の少女が座っていた。

 周囲に人はいない。

 

「目方屑拿というのはお前か?」

 

「お初にお目にかかります。楽巌寺嘉伸学長。もちろん、あたしが目方屑拿です。五十人の首、満足していただけましたか?」

 

 やわらかい笑みだ。だからこそ、恐怖がやってくる。

 

 呪詛師とは言え人間だ。それを五十人も殺してなお、普通の少女の様に笑えるとは。

 

 その上に目を引くのが奴の右目。

 

 青と緑の入り混じった不思議な目だ。そして、似たような目を儂は知っている。

 

 それは――

 

「五条悟の六眼……でしょ」

 

「ッ! ……何故、考えてることがわかった」

 

「見えてるもの。だってこの目、千里眼だし」

 

「千里眼……」

 

 歌姫のつぶやきが聞こえた。

 

 なるほど、千里眼。

 

 千里眼で呪詛師の居場所と儂の丸を捉える。なるほど、良く分かった。

 

「だが、どうやって残穢を残さずに殺害した? 千里眼だけでは説明がつかぬぞ。それに貴様の呪力量、三級にも届かぬほどしかないはずじゃ」

 

「それはまあ、術式の応用ですよ。……ところでその、入学は認めてもらえますかね?」

 

 頼みごとが通るか不安な少女のような態度。

 

 いたってその通りなのだが、得体の知れなさの方が勝る。

 

 しかし、儂の人生経験が、『あの少女は問題ない』と答えていた。そして呪術規定において考えてみても、全く問題は見られない。

 

「……条件がある」

 

「……! はい! 死ぬこと以外ならなんだって!」

 

「儂とお前の間でいくつかの縛りを結ぶ」

 

「それだけでいいならいくらでも!」

 

 ぶんぶんと首を縦に振っている。

 

 他者との縛りは基本的にマイナス要素の方が大きい。対等な条件下であれば全く問題ないが、この場合は儂が一方的に縛りを結べてしまう。

 

 それでも、簡単に首を縦に振るか。

 

「まずその千里眼は、特級以外の呪霊との戦闘及び儂の許可なしで使うことは許さぬ。そして非術者を傷つけることを禁ずる」

 

「……あの、一つ目は分かるんですけど、二つ目は?」

 

 目方屑拿は無条件で受け入れているが、二つ目の縛りに歌姫が疑問を持った。

 

 まあ、分からなくないが。

 

「奴がどう思うか知らぬが、呪詛師の家系であることに変わりはないからの。念を入れておいて損はない」

 

 目方の方に視線をやれば、すでに縛りを守ろうとしているのか、右目の瞼を下ろし、千里眼を使えないようにしていた。

 

「この二つの縛りじゃ。よいな?」

 

「もちろんですとも」

 

「破った場合は貴様の死とする」

 

「ありがとうございます。……ところで、五十人目の呪詛師に丸、まだ付けてないですよね」

 

「では、1番じゃ」

 

「では……千里眼、使っていいですよね」

 

 頷くと屑拿は右目を開け、指をパチンと鳴らした。

 

「これで完了です」

 

 儂の顔を見てにっこりとほほ笑んだ。背筋の凍る笑顔だ。

 

「目方屑拿よ。貴様は呪術高専にはいって何がしたい」

 

「誰かのために戦える、笑顔を守れる人になる事です!」

 

 

 ――目片屑拿 呪術高専京都校 入学

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