メイデーア転生物語 ~二人の紅の魔女の物語~ 作:メイデーアアニメ化して下さい
デリアフィールドのヒース荒野の綺麗な朝焼けを見ながら、私は机に手を付く。
この日、私は早朝から魔法の勉強をしていた......という訳でも無く、昨日の夜にお姉ちゃんと少し夜ふかしをしてしまったせいか、珍しく魔術書をほったらかしにして、窓辺からぼんやりと外を眺めていた。
──昨日、妙な世界の夢を見た。
仲の良い女の子に配慮して、好きな男の子に告白すらできなかった、意気地なしで冴えない女の子の夢。
そして、ついぞ自分の思いを伝えられずに終わった、可哀想な女の子の夢。
「バカな子。好きな男には惚れ薬でも盛って、ライバルから奪ってやりゃよかったのに。私だったらそうするわね」
夢の中の "知らない誰か" だけどね。本当に御愁傷様。
最後は突然出てきた謎の男にみんな殺されるバッドエンド超展開だし、何かもう、いかにも夢って感じ。
「おっはよー!! マキア、起きてるー?」
「あ、お姉ちゃん!」
私の部屋のドアをこれほど心地良い音色でコンコン、と三回ノックしてくるのは、私の知る限りでは一人しかいない。
予想通り、扉から元気よく顔を覗かせたのは、私と同じ綺麗な薔薇色の髪だけれど、髪型は整ったショートにしていて私よりもいっそう元気の有り余ってそうな人。
私の姉、アリア・オディリールである。
「今日は私とマキアの記念すべき十一歳の誕生日! もっちろん私はしっかりと脳内に焼き付けていたけどね? なんせ愛する私の可愛いかわいい妹のことだからね! ......えっと、今日、お父様がちょうど市場に行くみたいだから、プレゼントも一緒にどうかなーって」
「わーい! もっちろん! そのために早起きしていたようなものだよ、お姉ちゃん!」
私は窓辺の出っ張りから飛び降りて、ふふんと手を腰にやり何故か誇らしげそうなお姉ちゃんを横目に、壁に立てかけた鏡の前に立つと、それなりにワクワクしながら支度を始める。
私の名前は、マキア・オディリール。今日で十一歳の、小さな魔女だ。
目尻のつったアーモンド型の目元は、一族特有の "海色" の瞳を大事そうに抱いている。
リボンで飾った薔薇色の長い髪。お姉ちゃんと同じように、揺れると艶が綺麗に波打ち、お母様はこの髪をベルベットのようだと言う。
我ながらとんでもない美少女だけど、真顔だと
「ニッ」
なのでわざと微笑んで見せると、途端に悪巧みしてそうなニヒルな笑顔になる。お姉ちゃんだとこうはならないのに、何で私だけ......
口の端を指で
毎日お
そのおかげで、誰もがこう言う。
これは将来、オディリール家らしい極悪の魔女になるぞって。
「よし、準備完了......お姉ちゃん、終わったよ」
「よっしゃ、じゃあ早速行こうか! どっち先に早くお父様の所へたどり着けるか競争だー!」
「あっ、ちょっとお姉ちゃーん!」
そして部屋を飛び出し、ばたばた走る危なっかしいお姉ちゃんを追いかけて、屋敷の螺旋階段を駆け降りる。
降りた先の玄関には、お母様がいた。
「アリア、マキア、忘れ物はない? 迷子になったらフレディを呼ぶのよ。二人とも可愛すぎて誘拐されそうになったら、思い切りつねってやりなさい」
「はい。火傷するまでつねってやります!」
「はいはい。皮膚が溶けて爛れるまでつねってやります!」
「お姉ちゃんそれはちょっと怖いよ!?」
お母様は懐からチェリー色のリップを取り出し、私とお姉ちゃんの小さな唇にしっかり塗る。これはいつもお母様が私たちにしてくれる、外出時の大事なおまじない。
そして頬にキスをして、耳元で囁いた。
「いいこと、お誕生日だからって、お父様に無茶を言ってはいけません。だけど本当に欲しいものがあるなら、しっかり交渉なさい。良い魔女とは欲しいものを必ず手に入れる女のことよ。それで私もお父様を手に入れたの」
「いーなー。私もお父様が欲しいです」
「ダメよ。お父様はお母様の旦那様だもの。でもね、今朝のカード占いでは、アリアとマキアが欲しいものを見つけると出たから、あなた達が何を持って帰るのか楽しみに待っているわ」
欲しいもの、か......
「ほら見て、マキア。あんな所にマンドラゴラが生えているわ!」
「そうだねお姉ちゃん、でもちょっと窓から身を乗り出しすぎじゃない?」
いつも通る道なのに、お姉ちゃんは楽しそうに咲いたような笑顔を浮かべて外をみやる。
そんなお姉ちゃんを眺めながら、馬車に乗り、どこまでも続く広大な荒野を見渡しながら、私はそれが何なのかを考えていた。
オディリール家はデリアフィールドを任されている男爵家であり、由緒正しき魔術師の家柄だ。私はその姉妹の妹。
父も母も、魔術師であり魔女である。
私もまた、十六歳になる年に魔法学校に入学し、卒業したらしばらく王宮魔術師として王宮で働く。本来ならお姉ちゃんがお父様の後を継いで "
「アリア、マキア。お前たちは、何が欲しいかな」
「新しいマンドラゴラの苗が欲しいです、お父様。あと、上質な朝焼けの
足をブラブラさせ指折り数えるのは、ここ最近練習している魔法薬の材料と、大好きな甘いお菓子。お父様は困ったように笑い、首を傾げた。
「そんなものは誕生日でなくとも買ってあげよう。マキアは本当に魔法の勉強が好きだね。私がマキアの年の頃は、魔法の勉強なんて嫌で仕方がなかったと言うのに......今朝も早起きして勉強してたろう?」
「う、今朝はそうでもなかったけど、魔法のお勉強はやればやるだけ、できるようになるんだもの。魔法学校にも絶対落ちたくないから、今頑張ってるんです」
「あっはっは。なぜ今から受験の心配をしているのだろうね。マキアほどの才能があったら、心配しなくとも一発で合格できる」
「うーん。わからないけど不安なんです」
なぜだろう。幼い頃から、私は魔法学校の受験に対し、妙な不安を抱いていた。
昨日の夢で見た冴えない女の子も、どこかの学校の受験を心配していたしね。
あれ、多分私の深層心理を表しているわ。
「アリアもマキアも、特別な才能が備わっている。我が家はかの有名な <
「本当に欲しいもの......うーん」
「あ、お父様! 私はチョコレートを大量に買って欲しいわ!」
「はっはっは、アリア、お前ももっと、贅沢に悩んでいいんだよ。でも、今日は二人の誕生日だ。とりあえず、勉強熱心なマキアの欲しい物から探しに行こうじゃないか」
「うんっ、分かったわ! 私、マキアに似合いそうな可愛いドレスを売ってるお店、知ってるの!」
「アリアは本当にマキアが好きだね......仲睦まじいのはいいことさ」
「うんっ! だって私、将来はマキアと結婚するんだから!」
外の景色に夢中になっていたお姉ちゃんが、お父様に欲しいものをねだっている。そして目にも止まらぬ早さでこちらにガバっと抱き付いてきた。
羨ましいくらいにさらさらとした髪を晒して私に抱きついてくるお姉ちゃんの姿は、はっきり言って物凄く可愛い。
つい、優しく頭を撫でてみると、くすぐったそうに顔をほころばせる。
これじゃあ、どっちが姉かわからないな。
にしても私に似合うドレスか、私でいいなら絶対お姉ちゃんの方がよく似合うな、可愛いし。
......でも、お父様はこう言うけれど、今の私は魔法に夢中だし、お人形も、ドレスも靴も、もう十分に持っている。
だけど、本当は一つだけ、願いごとがある。
物心ついた頃から、抱いていた "誰かに会いたい" という謎の渇望。
その人がどこにいるのか、誰なのか、なぜ会いたいのかもわからない。
もしかしたら、ど田舎どころではない
でも......この溢れるもどかしい気持ちは、一体何なんだろう?
わりと本気の求婚を、軽くあしらわれるアリアさん。