デート・ア・ライブ 千早ゴースト   作:真夜中

16 / 36
16話

捨てられた子犬のように士道がトボトボと帰路についている頃。

 

千早はトコトコ歩いている四糸乃の姿を発見。そして、突撃した。

 

「ヒャッホー!」

 

そんな奇声を上げながら四糸乃に飛びつこうとするが、

 

「…………っ!?」

 

四糸乃が突然の奇声にビックリして、道路の端の方に移動する。

 

そうなると当然に四糸乃に飛びつこうとしていた千早は―――スザザァァァァァ。

 

と、水しぶきを上げながらアスファルトの上を滑ることになった。

 

そのまま動かぬ千早に四糸乃が恐る恐るゆっくりと一歩一歩ちかづいていく。

 

そして声をかけた。

 

「だ……大……丈夫……ですか」

 

その瞬間、ガバッと千早は起き上がると四糸乃を抱きしめた。

 

「捕獲成功!」

 

「ひっ……!」

 

四糸乃がビクッと震える。それと同時に降っていた雨が凶器となり千早に降り注ぐ。

 

四糸乃は目の前の少年が自分のせいで傷つけられてしまうと思い目をぎゅっと閉じるが、相変わらず抱きしめられたままでなんともなかった。

 

不思議に思い自分のことを抱きしめている人物の顔を見る。

 

「やっほー! 亡霊のお兄さんですよ」

 

と、悪戯っ子のような笑みを浮かべた千早の姿が四糸乃のの目に映った。

 

『んもぉー! ビィーックリしたゃったじゃないのさー! おにーさんじゃなかったら今頃スプラッタアーだぁったよ』

 

「いや~、ついついやってみたくなるってあるじゃん」

 

プンスカするよしのんに千早はヘラヘラと笑う。

 

『そぉーだけどさー! よしのんとしては四糸乃が怯えちゃうから止めて欲しいんだよね』

 

「その姿が余計に可愛いんじゃん」

 

恍惚とした危うげな笑みを浮かべながら千早はふわふわと宙に浮かぶ。

 

浮かぶといっても地面からほんの数センチほど浮き上がるだけだ。

 

『きゃー、おにーさんは変態だぁ。四糸乃のピンチだよ』

 

「……っ! 変……な……こと……しないでください」

 

プルプルと震えながら目をうるませる四糸乃。

 

「……食べちゃいたい」

 

と、そんな四糸乃の姿を見て千早は呟いた。

 

『だぁーめだよ。おにーさん。いくら四糸乃が可愛くてもそんなこと言っちゃあ』

 

「おおと……つい本音が」

 

いや~、失敬失敬と千早は笑うが笑って済ますことではない。完全に通報されてもおかしくはなかった。

 

『いや、余計に駄目だからね! もう、おにーさんはよしのんたちにメロメロだね』

 

「ボクの好みは美人よりも可愛いだからね!」

 

『おおう! まさかのストライク!』

 

「だってさ……可愛いと癒されるじゃん」

 

見ているだけで安らげる。それが重要なのだ。

 

「おっと……忘れるところだった。これどう?」

 

千早はビニール袋に入れていた紙袋を取り出して、その中身を出す。

 

「あ……」

 

『おー!』

 

四糸乃の視線が千早の取り出したものに移る。

 

それは……よしのんの形をしたパンであった。

 

「どう? よしのんパンは……中々似てるでしょ」

 

『いやー本当にそっくりだけど……よしのんには勝てないね』

 

千早自身何処か納得のいっていない部分があるのでその言葉を素直に受け止める。

 

「あ、やっぱり……よしのんの可愛さを再現するにはボクの腕もまだまだだからね。そこは我慢してほしいな」

 

「……そんな、こと……ないです。……そっくりです」

 

小さく今にも消え入りそうな声だったが確かに聞こえた。

 

「お、ありがとねー。そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

千早は四糸乃の元によしのんパンを差し出す。

 

「これは……?」

 

よしのんパンに視線を向けたあと四糸乃が千早に問う。

 

「せっかくだから食べて感想を聞かせて欲しいなって」

 

「……いいんですか?」

 

「うん」

 

『食べちゃいなよ四糸乃。おにーさんが食べてってお願いしてるんだし』

 

『よしのん』にも後押しされると意を決したように四糸乃がよしのんパンをがぶりと食べた。

 

「…………!」

 

すると四糸乃はカッと目を見開いて、勢いよく耳から順によしのんパンを食べていった。

 

そして、全てを食べ終わると恥ずかしそうにしながらも口を開く。

 

「お、おいしかった……です……」

 

『ふふっ、よく言えました。頑張ったねー』

 

「それはよかった」

 

ほっと息を吐き出す。

 

これでも不味かったらどうしようかと不安だったのだ。

 

「それじゃ目的も達成したことだし……ボクはそろそろ帰るよ」

 

『そうなの? ぅんじゃね。おにーさん』

 

「……さよう、なら」

 

「またね……また会いにくるよ」

 

千早はそう言うや否や実体化を解いて霊体化して、一気に士道の十メートル圏内に戻るのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

【ただいま~っと】

 

霊体化したまま家の中に入る。

 

すると、

 

「無茶言うんじゃねぇぇぇぇ」

 

と、士道の叫びが聞こえてきた。

 

何かと思い琴里の部屋まで行くと廊下には不安げな十香の姿が見える。

 

その事から出かける前に話した例のことで琴里と士道が揉めているのだと判断した。

 

なので千早はリビングで話が終わるのを待つことにしたのだ。どうせ士道の首が縦に振られることは確定しているのだから。

 

軽く人数分のお菓子を用意して待っていると案の定、疲れた様子の士道を先頭に上機嫌な十香、不敵な笑みを浮かべた琴里の三人がリビングにやって来た。

 

琴里は千早のことを見つけるとすぐにニヤリと某ノートの主人公のような計画通りといった笑みを作る。

 

「おやつとか用意してたからみんなで食べない?」

 

千早は琴里にアイコンタクトで了承の意を伝えながらテーブルの椅子を人数分引く。

 

「おお! ちゃんときな粉パンまで用意してあるじゃないか!」

 

きな粉パンを見つけた十香が真っ先に椅子に座る。

 

その瞳はキラキラと輝きを放っていた。

 

そんな十香を士道が微笑ましいものを見ているように優しく見ている。

 

全員が椅子に座るのを待って千早が口を開く。

 

「しばらく十香ちゃんも一緒に暮らすんでしょ」

 

「何で千早が知ってんだよ?」

 

琴里と話している場所に千早の姿がなかったので士道の疑問は当然だろう。

 

「だってさ……ボクは出かける前に琴里ちゃんに話を聞いてたし」

 

「な!? ど、どういうことだよそれは!」

 

「一々そんな反応しないで、頭が悪く見えるわ」

 

琴里の暴言にズーンと沈む士道。

 

まあ、頑張れと心の中で声援を送りつつ千早はそそくさとお茶の準備をする。

 

その場から動かなくてもポルターガイストで行えるので全く動いているようには見えないのだが確かに準備は進んでいた。

 

「そんなことより……琴里ちゃんは今日も〈フラクシナス〉に泊まるの?」

 

「いいえ、家にいるわ。とりあえず〈フラクシナス〉に泊まってまでやることは現状全てを終えたから」

 

「なるほどね……」

 

琴里が裏で何をやっているかはわからないが、何をやっていようと千早にはどうでもよかった。

 

何をやっていようと千早にとっては辿り着く場所は同じなのだから。

 

ハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうが千早の行き着く先は定まっている。

 

幽霊になる前は破滅を約束された存在であったのだから。

 

「最近千早は士道についていって学校には行ってないが普段は何をしているのだ?」

 

十香がそんなことを千早に聞いた。

 

十香が知っている千早は士道から聞いたのと実体化して家事をしているぐらいなのだから気になるのも不思議ではない。

 

「普通に料理作ったり、ドラマ見たり、映画を見たり、散歩に行ったりだけど」

 

「そうか……それでドラマというのは面白いのか?」

 

「見る人の好みによるね。ホラーだったり、ミステリーだったり、ファンタジーだったり。まあ、存在自体がファンタジーなボクはファンタジーものを楽しく見てるけどね……粗捜しをしながら」

 

意外とそのドラマの力の入っていない部分を探すのが面白いのだ。

 

何処に力を入れてあるかでその話で一番重要なことがわかる。たまに外れるが……。

 

「何か……歪んだ楽しみ方だな」

ひきつった顔で士道が呟く。

 

「ほうほう……そうやってドラマは楽しむのだな」

 

十香は千早の言ったことを真に受けてなるほどとうなずいている。

 

「いや、それはごく一部のやつの楽しみ方だから十香は真似しなくていいわ」

 

「む……そうか」

 

琴里に諌められ十香は千早の楽しみ方をやめることにした。

 

「そうだよ。自分の好きなように楽しまなくちゃ」

 

お茶の入ったコップに口をつけて中身を飲み干す。

 

味も何もしないがこうして周りと同じような行動をすることで変に気を使わせないようにするためだ。

 

千早だって意外と考えて行動しているのだ。

 

「ところでだ……あのパンはどうしたんだ?」

 

士道は朝起きてリビングに来ると見つけたよしのんパンが全てなくなっている理由を訪ねた。

 

「ああ、それは―――」

 

と、千早が言葉を続けようとしたときに千早の言葉を遮って琴里が言った。

 

「それなら〈フラクシナス〉のクルーが持っていったわよ。ただ……神無月が世界一臭い缶詰入りにあたってね……」

 

「そ、それって……シュールストレミングか?」

 

頬をピクピクとひきつらせながら士道が聞く。

 

嘘であってくれと祈っていたがそれは叶えられることがなかった。

 

「……その通りよ」

 

沈痛な面持ちでそう告げる琴里に士道の表情が曇る。

 

「マジかよ……」

 

「ええ……それで〈フラクシナス〉の中は阿鼻叫喚になったわ……ただ、神無月は悦んでたけどね」

 

なら、問題ないかと千早は切って捨てた。

 

元々、社会的に死んでいる変態がさらに社会的に殺されても問題ないと判断したからだ。

 

これが別の人であれば対応もまた違ったのだが、本人が悦んでいるからまた作るかと考えていた。

 

後日、またシュールストレミングinよしのんパンを作ろうとして周りから様々な妨害があったのは言うまでもない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。