デート・ア・ライブ 千早ゴースト   作:真夜中

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5話

校舎の外に出た千早はチラリと背後のボロボロになった教室で向かい合って話をしている十香と士道の二人に視線を向ける。

 

「なあ―――十香」

 

「なんだ」

 

「おまえって……結局はどういう存在なんだ?」

 

「む?」

 

士道の質問に、十香が眉を潜める。

 

「―――知らん」

 

「知らん、て……」

 

「事実なのだ。仕方ないだろう。―――どれくらい前だったか、私は急に()()に芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない」

 

「そ、そういうものか……?」

 

この二人の会話のやり取りを見てると懐かしくなる。

 

自分も十香のようにかけがえのない友人と色々と質疑応答したことを。

 

当時の千早にとって、短くも輝いていた時間だ。

 

その当時のことを鮮明に思い出そうとしたときに動きがあった。

 

学校を囲んでいるASTの一人である折紙が対精霊用の武装〈ノーペイン〉を装備して十香と士道のいる教室に向かって突っ込んで来たのだ。

 

【無粋なっ!】

 

千早にしては珍しく気合いの入った声で右腕を横に振るう。

 

それと同時に四十弱の弾丸が浮き上がり、折紙に襲いかかる。

 

「な……っ!?」

 

一瞬ぎょっとして動きが止まるもすぐさま後退する。

 

折紙が突っ込んで来た理由は士道の向かいに座り込んだ十香の姿が見えて、士道が危ないと思ったからなのだが千早はそんなことを知るよしもない。

 

むしろ、いい感じになってきているところに現れた邪魔者だと認識している。

 

千早はドラマが好きだが、いい場面で入ってくる無粋な輩や変なタイミングで鳴る電話が嫌いなので、まさしく今の折紙の行動がそれに当たってしまったのだ。

 

だが、今回の目的である時間稼ぎは達成出来た。

 

「―――っ! なんだ? これは……」

 

十香が空中に漂う弾丸を見て困惑した表情を浮かべているがすぐに士道が声をかけたからだ。

 

「あ、ああ―――それは……」

 

チラリと困った様子で千早のことを見る士道。

 

それに対して千早は、士道の好きなようにして構わないと、視線だけで伝える。

 

「デ、デートの時に答えるから……だから、デート……いや、一緒に遊びに行かないか……」

 

士道が気恥ずかしそうに視線を逸らし頬をかきながらしながら言った。

 

「……つまり、シドーは私と一緒に遊びに行きたいのか?」

 

そこは力強く肯定するんだと千早は視線で訴えながら、折紙に向かってポルターガイストで操ったガトリング砲の弾丸や小石をプロ顔負けの速度で投擲し続ける。

 

しかも、折紙がポルターガイストの効果範囲内に入って来た瞬間に、戦術顕現装置搭載(コンバット・リアライザ)ユニット。通称CR-ユニット。ASTが精霊に対抗するために使用する装置の内部機器を破壊しようとするも、勘がいいのかすぐに離脱される。

 

それでも、士道が十香と会話できる時間が伸びているので千早としては全く問題ない。

 

「っ、あ、ああ……そうだ!」

 

緊張しているの声が上擦っているがちゃんと力強く言っているのでよく言ったと千早は満足そうにうなずく。

 

「本当か?」

 

「本当だ」

 

「本当の本当か?」

 

「本当の本当だ」

 

「本当の本当の本当か」

 

「本当の本当の本当だ」

 

士道は間髪入れずに答えると、十香は一瞬だけ嬉しそうな顔をするも、すぐに仕方がないといったような表情を作る。

 

「どうしてもと言うなら付き合ってやらんでもないぞ」

 

士道から視線を逸らして言うものの、十香はチラチラと士道の方に視線を向けては逸らしてといった行動を繰り返している。

 

そんな十香の行動を見ている士道は困ったように笑いながら頬をかく。

 

「なら、どうしてもだ」

 

「そうか」

 

と、嬉しそうな声音が聞こえてきた。

 

それと同時に十香の姿が消失する。

 

「へ……」

 

そして今度は間抜けな声を漏らす士道が消失する。

 

【……今回はここまでか】

 

そう呟く千早はすごい勢いで上空へと引っ張られていくのであった。

 

それは士道が〈フラクシナス〉に回収されたことを意味している。

 

引っ張っられて移動している最中、千早は思った。若干自分のポジションが単なるとり憑いている幽霊でなく守護霊に近いポジションになっているような気がするが気のせいなのだろうか、と。

 

まあ、それよりも士道が地獄を見たあのギャルゲーと適当な対象に告白? する特訓だけで十香をデートに誘って、さらにはいい手応えのある反応まで出したのだから誉めていいだろう。

 

むしろ、あのギャルゲーでちゃんとデートに誘えた方が奇跡だ。

 

そんなことねーよっ!? 的展開ばっかしだったのだから。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「……士道。千早って誰かしら?」

 

〈フラクシナス〉に回収された士道は両隣に令音と神無月を立たせた琴里に尋問されていた。

 

「えっ……と……それは」

 

言いにくそうに口ごもる士道の視線の先には某ホラー映画の貞○よろしく〈フラクシナス〉に設置してあるモニター画面から腕を出している千早の姿があった。

 

【言ってもいいけど……罵倒されると思うよ。でも、後になって教えても文句を言われそうだけどね】

 

千早の言う通り士道は琴里に絶対罵倒されると予測出来てしまう。

 

「はあ? なに言ってんのよ。ついに頭がおかしくなっ……いいえ、もとからおかしかったわね」的な感じで士道の精神を削りに来るだろう。そのことが予想できてしまうゆえに中々言い出せないのだ。

 

千早は言うか言わないかは士道に任せると言っているので後は士道次第なのだが、中々言い出せない。

 

【……仕方がないな】

 

困り果てて助けを求める士道の視線に耐えられなくなった、千早が士道の傍による。

 

【適当な紙とペンを用意してもらってくれない】

 

「……琴里。紙とペンを借りたいんだけど」

 

「……何に使うつもりなんだか知らないけど……令音」

 

「わかった」

 

琴里に促された令音が士道にボールペンを渡す。

 

「では、こちらをどうぞ」

 

そして今度は神無月から紙を渡される。

 

【じゃあそれを、上に向かって投げて】

 

千早の言葉に従い士道が紙とペンを上に向かって投げる。

 

「はあ!? なにやって―――っ!?」

 

話している途中で琴里の言葉は驚きに変わった。

 

令音は何を考えているのかわからないような目で、神無月は侵入者がいるのかと周囲を警戒する。

 

紙とペンがあり得ないほどゆっくりと落ちてくる。そして、その紙だけが琴里の前に行く。

 

ペンは滞空したまま。

 

琴里の元に行った紙にはこう書いてあった。

 

『ヤッホー! 千早だよ☆ミ』

 

この時点で琴里の額に青筋が出るが、破くわけにはいかないので深呼吸を数回して耐える。

 

『士道がボクの名前を言っちゃったからそろそろバレると思ったよ。琴里ちゃんは知らないと思うけど士道にとり憑いたのは琴里ちゃんもよく知ってる五年前のあの日だよ』

 

五年前という記述を見て琴里が固まる。だが、それもほんの数瞬のことであり、周囲の誰も気がついた様子はない。

 

ただ一人を除いて。

 

『多分、近いうちに直接会うことになるからしばらくはボクの姿をキミの妄想だけで想像しててね♪ お兄さんとのお約束だぞ!』

 

ブチッ! と琴里の堪忍袋の緒が切れた。

 

ビリビリに紙を破くとそれを、ダン! ダン! と踏みつける。

 

踏みつけられている紙を見て是非自分もと神無月が琴里に近づき、

 

「グヘェス」

 

男の大事な部分を蹴りつけられて床に沈んだ。

 

そして、琴里がビリビリに破いて踏みつけていた紙が文字の形に並べられていた。

 

もちろん犯人は千早である。

 

そこには、

 

『資源の無駄使いは駄目だぞ、琴里ちゃん』

 

と並べられていた。

 

「千早……なんか絶好調だな」

 

【ん~、まあね。ボクもたまには遊びたくなるものなんだよ】

 

呆れながら言う士道に千早はいたずらっ子のような笑みを浮かべて答えた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

夜。千早のせいでご機嫌ななめになった琴里のご機嫌とりを終わらせた士道が自分の部屋の布団に倒れる。

 

ボフッとおとを立てながら士道の体の形に沈む。

 

「あ~、疲れた」

 

本当に疲れたように覇気のない声である。

 

【お疲れ。でも、十香ちゃんとのデートは何処に行くのか決めたのかい?】

 

「……決めてない。でも、すぐに会うことにはならないだろ」

 

【さあ? どうだろうね】

 

「……思わせ振りな言い方だな」

 

【ふふふ、まあね。こんな見た目だけど歳上だからね】

 

見た目が小学校高学年の少年である千早だが、ちゃんと士道よりも歳上だ。

 

「……だったら、アドバイスか何かないか?」

 

期待しているような素振りは全く見せず、とりあえず聞いてみたような感じの士道に千早は普通に答えた。

 

【今日聞いた十香ちゃんの話から考えれば何処に行くといいのかわかるよ】

 

「それだけ?」

 

【うん、それだけ。なにも難しく考える必要なんてないでしょ。目的はデートしてこの世界を好きになってもらうことなんだからさ】

 

「……確かにそうだよな」

 

【後は楽しむことだよ】

 

「楽しむか……」

 

千早はニコニコと笑みを浮かべながら言う。

 

【楽しそうにしてない相手と一緒にいたって楽しくないでしょ】

 

「だな」

 

うんうん。お兄さんは理解してくれて嬉しいぞ、と千早は士道の頭を撫でる仕草をする。

 

だが、透けているので単なる仕草でしかない。

 

【だから、相手と自分が楽しめるようにね】

 

「ちゃんとわかってるよ」

 

士道も軽く笑いながらそう返すが内心は驚きに満ちていた。

 

思ってたよりもずっとまともな回答が返ってきたからだ。

 

その事を正直に言うと千早が拗ねるので士道は言わないと心の片隅にその事をしまい込んだのだった。

 

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