エクストラ・オーバー・テクノロジー、略してEOTという。
宇宙から来た人工の物体『メテオ3』を解析して得た技術やシステムのことをそう呼び、EOTを研究する組織として『EOTI機関』がある。
「時間がないので、手短かに話します」
EOTI機関の者だと名乗った男はさっきまでと違い、周囲を気にするようにボソボソと喋りだした。
「先日の件ですが、上はそちらの要求した条件で契約を行うことを承認しました」
「先日の……?」
「詳しくはこちらに。それでは」
「あ、ちょっと!」
「私は質問にお答えできません。それと、本日より監視を付けさせてもらいます」
「監視!?」
「くれぐれも、慎重な行動をお願いします」
男は封筒を渡すと、早足で去って行った。
追いかけたかったが、EOTI機関と名乗ったことと監視という言葉の動揺で動けなかった。とにかく、直ぐに帰って中身を確認することにした。
(テンザンとEOTI機関って、絶対『あれ』に関係することだよな。嫌な予感……)
自分の知らないところで何かが起きていることの不安と未来に起きるかもしれないことの恐怖、それが今この世界で生きていることを実感させた。
◆ ◆ ◆
場所は替わり、極東基地。
「数値が変化しただと?」
「ああ。それもあり得ない程にな」
イングラム・プリスケンはロバート・H・オオミヤに緊急の通信で呼び出された。
ちなみに、その頃外ではPT初の可変機『ビルトラプター』のテストが行われていた。
「まずはこれを見てくれ」
「テンザン・ナカジマ……PTの操縦センスは軍人並みかそれ以上。確か調査の結果『念動力』の素質は皆無だと判明し『計画』の候補から除外したはずだが?」
「そう。そして、これが今日彼がバーニングPTをプレイした時のデータだ」
「これは……」
「驚いただろう? この数値、昨日までとは別人だ」
「間違いないのか?」
「ああ。ゲームセンターのカメラでもテンザン・ナカジマ本人がプレイしていたところを撮ってある」
「そうか……。これは俺の方で原因を調べてみる」
「分かった。……イングラム、このことは『計画』に影響するのか?」
「いや、変更はない」
イングラムは画面に表示されたテンザンの顔写真を眺めた。
(まさか、俺と同じように……?)
◆ ◆ ◆
家に帰った俺は、直ぐに中身を見た。
そこには、数種類の契約書が入っていた。
「マズイ、マズイぞこの状況は……!」
書類に書かれていることをまとめると、
『テンザン・ナカジマはEOTI機関の一員になること』
『そこで何が起きても何をされても合意の上であり訴えることはできない』
『以上を守らなかった場合、テンザン・ナカジマおよび家族の安全は保証できない』
という内容だった。
EOTI機関、後にDC(ディバイン・クルセイダーズ)と名乗り連邦軍と戦争を始め、ゲームではテンザンはそのDCの兵士として主人公たちの前に現れたのだった。
つまり、これはDCの兵士として戦うことの同意書だ。しかも、もし途中で脱走したり連邦軍の味方になったらテンザンの家族に危害が加えられてしまう。
「逃げ場なし、か……」
最悪なことに、どの書類も同意した証明として『仲嶋天山』とサインされている。しかも、契約にはアードラー・コッホの名前もあった。
アードラーとはDCの副総帥であり、投薬などによる人体実験が専門らしい。
そんな人間の名前が載った書類に『何が起きても何をされても』なんて文がある。これは間違いなく実験動物コースだ。
正直、今すぐ逃げ出したい。だが、手持ちの金では逃亡資金としては足りないし、俺はテンザンの銀行口座の暗証番号すら知らない。金銭的に無理だ。その上、人質がいる。
「……家族、か」
連絡先はDコン(携帯電話のようなもの)に登録されていた。だが、俺はどう話をすればいい?『俺は』一度も会ったことがないのに!
分からないが、とにかくテンザンの家族の安全は確保しなければいけない。
「……警察……。いや、それよりも軍に頼る方が安全か……?」
連邦軍と交渉できるカードはある。問題は接触するタイミングだ。
EOTI機関の監視にバレない。もしくは向こうもそれどころではないところで軍の交渉に応じそうな人に話を持ちかける。
「そのためには……」
俺はカレンダーを見た。
今日からちょうど一ヶ月後、そこには『大会』と書かれていた。
次回予告
強者との戦い、突然の襲来。男は最初の賭けにでる。
次回「リュウセイ」
遊ばなければ、生き残れない!