「いやあ、参った! 俺の敗けだ」
「リュウセイ君……」
「クスハ、大丈夫。別に無理してるわけじゃねえよ」
改めてリュウセイと顔を会わせたのだが、彼は意外なくらい明るく笑っていた。試合が終わった後すぐ来た女性ーークスハ・ミズハも驚いている。
俺も、ゲームで知っていた展開と違うことに戸惑っていた。
俺の戦い方が『テンザン』と違ったからなのか、それとも別の何かがあったのか。今は分からないが、少なくとも悪い変化ではないと思った。
「えっと、リュウセイ・ダテさん?」
「さんって……リュウセイでいいぜ」
「じゃあ、リュウセイ。ちょっと聞きたいんだけど、最後のビーム、何で避けなかったんだ?」
戦っている最中は気持ちが昂って気付かなかったが、俺のシュッツバルトは足も腕も壊され、全く動けない上に残った武器も頭のバルカンと肩に取り付けられた二つのビーム砲。
つまり、リュウセイのゲシュペンストが突っ込まずに上へ飛んだり横へ回り込んだら完全に打つ手なし。そこからジェットマグナムを叩き込めばよかったハズだ。
「確かに、まだ動けたけど……そっちの方がカッコいいだろ?」
「カッコいい……?」
「クスハには分からないか? こう、ビームを突破してトドメを決めることのロマンが!」
「ああ、分かる気がする」
「だろ? あ~あ、あともう少しで劇的な勝ちになるハズだったんだけどな。……ま、優勝はできなかったけどこれはこれで楽しかったからな。悔いはないさ」
そう言って、リュウセイは笑った。
俺も笑い、握手を交わした。
「俺も、楽しかったよ。本当に楽しかった」
「ありがとよ、テンザン。……ん?」
「リュウセイ?」
「……テンザン。あんた、本当にテンザンなのか? どうも違うような気がするんだよな……」
「え!? いや、俺は間違いなくテンザン・ナカジマ……ですよ?」
突然のことに驚き、動揺する俺をリュウセイはじっと見ている。
(まさか、俺が『テンザン』じゃないって分かったのか? 何でだ、リュウセイは超能力者なのか!? ……超能力者だった)
「……」
「リュウセイ君? どうかしたの?」
「ん? ……いや、何でもねえ。変なこと聞いて悪かったな、テンザン」
「いや、別にーー」
気にしてないよ。そう言いたかったのだが、
ーードン……! ドガン!!
ゲームのスピーカーからではなく、上から響いてきた爆発音と、続けて天井を突き破って墜ちてきた『何か』によって言葉が遮られてしまった。
「危ない!!」
「きゃああ!」
誰かが叫び、悲鳴が上がる。
「あれは……」
「みんな、伏せろ!!」
リュウセイの声でクスハは直ぐに伏せたのだが、『何か』の正体を知っていた俺はそれを見るのに一瞬気をとられ、動くのが遅れてしまった。
「ぐぁ……っ」
「テンザン!?」
吹き飛んできた瓦礫が俺の顔にぶつかり、目の前が暗くなっていった……。
……。
◆ ◆ ◆
「テンザンさん、大丈夫ですか!?」
「う……」
クスハの声が聞こえ、目を開く。どうやら気を失っていたようだ。
会場は破壊され、あちこちから助けを求める声が上がっている。
「まだ動かないで下さい。すぐに担架を持ってきてもらいます」
「クスハさん……。リュウセイは?」
「リュウセイ君は……」
ーードン……!
爆発音が響き、クスハは外を不安そうに見つめた。
(そうか。もうパーソナルトルーパーに乗ったのか)
俺の記憶に残っているゲームの内容とこの世界で今起きていることが同じなら、リュウセイは本物のゲシュペンストに乗って『何か』ーーエアロゲイターの偵察機『メギロート』ーーと戦っているハズだ。
なら、早く『あそこ』へ行かないと。
立ち上がろうとすると、クスハが止めてきた。
「動いちゃだめです!」
「クスハさん、俺は大丈夫ですから」
「だめです! 絶対にそのままでいて下さい!」
「……すみません!」
「あっ!」
制止する声を振り切り起き上がり、脇目もふらず走った。
視界が揺れ、頭痛がする。泣き声、叫び声、様々な声が聞こえてくる。それらを無視して、ただひたすら足を動かす。
「行かないと……」
向かう先は、リュウセイが戦っているところから離れた、しかしその様子が見える場所。
そこに、俺が会いたい人がいる。
◆ ◆ ◆
「イングラム少佐。何者かがこちらに近付いてきているそうです」
「何? ……ふっ、まさか向こうから来るとはな。いいだろう、通してやれ」
「いいのですか?」
「構わん」
報告を受け、イングラムは怪しく笑った。
(テンザン・ナカジマ。お前が何者なのか、見極めさせてもらうぞ)
次回予告
戦う者、知る者、流れる者。イレギュラーな存在によって、世界の動きは徐々に変わっていく。
次回「密約と約束」
君は、生き延びることができるか