ーードン……!!
虫型のロボットは小さな爆発をしながら墜ちて行き、最後に一際大きな爆発を起こして消え去った。
「よし!」
パーソナルトルーパー『ゲシュペンストMk-Ⅱ・タイプTT』のコックピットの中で、リュウセイ・ダテは残る敵機へと意識を向けつつも街に被害を及ぼさなかったことに安堵する。
遡ること数分前、突如現れた謎の機械が会場を破壊し、彼と一緒にいたテンザンが怪我をし、気を失ってしまった。
その直後に連邦軍の戦闘機が現れたが、何故かロボットを破壊せずに撤退してしまう。動揺するリュウセイの目の前にゲシュペンストが一機、無人の状態で置かれていた。
パーソナルトルーパーの操縦なら自分にもできると思い、リュウセイはテンザンのことをクスハに任せゲシュペンストに乗った。彼は街を壊させないため、避難している人たちを守るために、連邦軍が来るのを待たずに敵を全機破壊することを選んだのだった。
(残ってるのはヤツだけか)
最後の一機は、先程まで他の虫型ロボットと違い積極的に攻撃せず、まるで観察するような動きをしていた。
今も近付いてくる様子はなく、動き回りながらレーザー兵器を撃ってくるだけだった。この程度なら楽に避けられるが、避ける度に背後にあった建物などが破壊されてしまうので、リュウセイは早めに倒したいと思っていた。
(まだ遠くにいるな。マシンガンは射程距離外だし、かといってスプリットミサイルじゃあ、まだ無傷のヤツを落とせる気はしねえ……)
TC-OSに回避モーションを任せ、武器を変更。画面にゲシュペンストMk-Ⅱ・タイプTTの内蔵、携行している武器が表示された。
「遠距離戦用の武器で、あいつを一発で倒せそうな物は……『T-LINKリッパー』? どんなのか分かんねえけど、使ってみるか!」
選択した瞬間、ゲシュペンストの背部から何かが二つ飛び出した。
それはまるで手裏剣のような、回転して飛ぶ刃だった。T-LINKリッパーはゲシュペンストの周りを飛び回った後、虫型に襲いかかった。
ーーガガガガガガ!!
「これなら、どうだ!」
刃と装甲のぶつかり合う音がゲシュペンストのマイクを通さなくても聞こえてくる。リッパーはリュウセイの気合に応えるかのように加速していき、虫型を上へと押し上げていく。
「行けええええ!!」
ーードン……!
そして、ついにリッパーが貫通し虫型は上空で爆発した。
花火のように消えていく姿を見ながら、リュウセイは戦いが終わったことを感じたのだった。
◆ ◆ ◆
「戦闘開始から2分か……。なかなかのものだな」
リュウセイが虫型ロボットーーメギロートを倒したことは、 その現場から離れた場所に停められている81式PTキャリアの外でもよく見えていた。
俺ーーテンザンは会場を出た後、ゲームをしていた時の記憶を必死に思い出しつつここへ向かっていたのだった。
そして、PTキャリアにたどり着いた俺を待っていたのは、予想通りイングラム・プリスケンだった。
「さて……テンザン・ナカジマ。お前は何故ここに来た?」
イングラムは俺を値踏みするように見ている……ような気がした。例の『枷』のせいだろうか? それとも、俺が『枷』のことを知っているからそう感じただけかもしれない。
とにかく、余計なことを言わず、決して気圧されないように。俺はそう決意し、話し始めた。
「ここに来た理由の前に、まず言わせて下さい。俺は『テンザン』ではありません」
俺は、一ヶ月前に起きたことーー目が覚めたらテンザンになっていて、どうやら『俺』の意識が『テンザン』に乗り移って今の俺、テンザン・ナカジマになったことーーを話した。
俺と『似たような状態の人』と出会ったことのあるイングラムなら、たとえ出会ったことを思い出せなくても話を理解してくれると信じ、賭けた。
「……ふっ。普通なら信じることなどできないが、そう考えると色々と辻褄が合うな」
イングラムはそう言い、リュウセイがメギロートと戦っていた場所の方に歩き出した。
「着いてこい、テンザン・ナカジマ。話の続きは移動しながら聞く」
「えっ……」
「安心しろ。この区域は全面閉鎖した。EOTI機関の目も届かないだろう」
「っ!? ……知ってたんですか」
「監視していたからな」
さらりと告げられた事実に動揺した俺に、イングラムは俺の心を見透かしたかのようにこう言った。
「お前は『テンザン』の家族に危険が及ばないよう、軍に保護して欲しかった。だからここへ来た。そうだな?」
「は、はい」
「その要求を呑もう。だが、俺の要求も呑んでもらおうか」
そう話すイングラムの真意は、今の俺には全く分からなかった……。
次回予告
イングラム・プリスケンとの接触に成功したテンザンだったが、それは彼の運命から逃げ場をなくしていく。一方、リュウセイも逃れられない環境へと進んでいた。
次回「戦い終わって」
目覚めろ、その魂(きおく)