ブートキャンプ
「疲れた……」
ベッドに寝転がり、今日も訓練が終わったことに安堵した。
メギロートとリュウセイの戦いから1ヶ月が経った。現在、俺はアイドネウス島にある居住地区の一番端、新しくEOTI機関に入った人たちが寝泊まりするための場所で生活している。
朝は体力作りのトレーニング、昼は座学と障害物を乗り越えたり匍匐前進したり丸太を担いで走ったりするトレーニング、そして夜も筋力トレーニング。
俺の身体能力が非常に低いこと、まだ『AM』が設計段階であることもあり、ずっと体を鍛え続ける日々が続いていた。
「お疲れ様です」
話しかけてきたのは、リョウト・ヒカワ。彼は海浜幕張のバーニングPT選手権の日、あのメギロートによる混乱の中、EOTI機関に拉致されたらしい。
マジメな人に説得されたのか、それとも脅されたのか。どちらかは知らないが、現在は俺と同じく訓練の毎日を送っている。
同じ部屋で寝泊まりしていること、同じ日本人ということもあり、彼とはよく話をしている。ちなみに、俺たちが寝泊まりしている部屋には他に八人、何もない元倉庫のような広い空間に簡素な造りの二段ベッドが並んでいるだけの場所で生活している。
「ああ。リョウトもお疲れ様。……って、あんまり疲れてるように見えねえな」
「えっと、まあ。昔から運動はしてましたから」
「そうなのか。……あ、そういえばリョウトって、何か格闘技とかやってなかった?」
「え? 空手をやってましたけど……何で知ってたんですか?」
「え、それは……あれだよあれ。勘?」
リョウトの実家が何かの道場だという『設定』をなんとなく覚えていた、とは当然言えなかった。
空手経験者ならどっかで名前を見たとか言えばいいかもしれないが、格闘技もスポーツも縁のなさそうな
「勘って……」
「さあ、もうこの話は終わりにしよっか。明日も早いし、もう寝ようぜ」
「あ、ちょっと」
「おやすみー」
強引に話を切り上げて、俺は目をつぶった。
……最近、自分だけ他人のプライベートな部分を知っているということに、罪悪感を感じている。ゲームのキャタクターの設定ではなく、今は実際に会って話ができる相手のことなのだ。
もし俺がそのことを知っていると分かったら、周りは俺のことをどうするのかと不安になってくる。相手次第では殺されるかもしれない。
とりあえず今は慎重に『テンザン』らしく振る舞おう。改めてそう思った。
次回第9話「模擬戦」につづく