Curry diary   作:ユウマ@

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運命的な出会いです、シエルさん

カレーとは、当然ながら国によってスタイルの変わる食べ物だ。その国独自の具材や作り方がある反面、他所の国に行ってしまえばそれを食べる機会は再びその国を訪れるまでは無いと言っていい。

 

そう思っていた私は、目の前のカレーショップに釘付けにされていた。

 

 

「コレは…やはりこの国独自のカレーではありませんね」

 

 

カレーショップ・メシアン。入り口に置かれているメニューを見る限り、此処は本場インドカレーを専門としている店のようだった。

 

……まさか、この国でも食べることが出来るとは。

この町に潜入して初めてのインドカレーに心を躍らせながら、私は意を決して扉を開けた。

 

 

内装はいかにもインドカレーの店、といった様相だった。無意識的に窓際の席を選んで腰かけ、メニューを開く。

 

 

「ふむ…メニューはほぼあちらの国と同じ、ですか。他にはこの国独自かこの店オリジナルか、トッピングがちらほら…」

 

 

手持ちのメモ帳に目についた特徴を書き込んでいく。カレー好きが高じた結果、こうして任務などで訪れた国ごとに色々なカレーの店を記すのはルーティンの様になってしまった気がする。その内のいくつを再び訪れるコトになるかは未知数だが、もしかしたら記録として残しておきたい本能でも備わっているのかも知れない。

 

 

 

───と。ふとひとつのメニューが目に留まった。

 

 

ランチセット。好きなカレーとサラダ、ナンにラッシーそして、

 

 

「スパイシーチキン、ですか…」

 

 

少しお得な値段で付加価値があるのがセットメニューだが、スパイシーチキンはこの店オリジナルだろうか。とは言え、この国はそこまで辛さを重視するカレーはあまり好まない様だし、あってもアクセント程度だろう。

 

そう思って、私は注文を済ませた。平たくいえば侮っていたと言ってもいい。程なくしてカレーが並んだ時、私は目を見張った。

 

頼んだバターチキンカレーやナンの美味しそうな見た目に惹かれなかった、と言えば間違いになる。だがそれよりも、スパイシーチキンの存在感…その辛さが本物だと一目で直感してのコトだった。

 

 

 

「…いただきます」

 

 

まずはバターチキンカレーから。初めてということもありそこまで辛くない定番をチョイスしたが、かなりクオリティが高い。コクを感じるまろやかなカレーに大ぶりの鶏肉。焼き立てのナンとの相性は抜群、しかもナンは2枚ついている大盤振る舞いぶりだ。

ラッシーも程よい酸味で口の切り替えが出来、サラダもそこに一役飼っている。かなり力の入った本場の空気を、ありありと肌で感じられる。

 

 

「まさか日本でここまでのカレーを食べられるとは…何があるか分からないものです。さて、それでは…」

 

 

本命、スパイシーチキンだ。そこまで辛味を連想させる色でも無いのに食べる前から予感がするのは、代行者としての経験のなせる直感か。

大きく噛みつくと、じわっと肉汁が溢れ出す。同時に、かなりの辛さが脳を叩いた。

 

 

 

 

「……!」

 

 

思わず、ラッシーをぐいっと吸い上げる。バターチキンと一緒では少し甘すぎるかとも心配していたが、それも一気に霧散した。確かにコレはセットで真価を発揮する…!

 

 

 

 

「……ごちそうさまでした」

 

 

 

ほぅ、とひと息つく。大抵のカレーを食べてきた私だが、ここまでの掘り出し物に会えるとは想定していなかった。何度も通いたいと思ったのは久しぶりだ。ソレは私の仕事が長引いているという、決して良くはないコトだと理解はしつつも、やはり魅力的だ。

 

 

「…うん。ささっと終わらせて、この街を出る前にもう一度来るコトにしましょう」

 

 

 

 

 

そう呟いて、席を立った。時間はまだ昼を少し過ぎた程度で、私の活動時間にはまだ早い。…私はあと何度、この街で昼を見るだろうか?そんなどうでもいい考えを頭でしながら、白昼の中を歩いてゆく。

 

 

 

任務の進み具合に関わらずとも、頻繁に足を運ぶコトになるとは───この時の私は、想像もしていなかったのです。

 




「…本当は1話に持ってくるべきか迷いました第2話、読了ですね。では、今回もやっていきましょう、“教えて、シエル先生!” もちろん私と、」
「…ネコは嫌だと泣きつかれた、エコアルクです。ある程度やったら、本当にネコがアシスタントになりますからね」
「ええ、もちろん分かっています!それで次はどうでしょう?やっぱりラブコメに戻しませんか?」
「カレーとのラブコメならご自由に。次回は貴女ともう1人、特大の爆弾が登場します」
「爆弾って…嫌な響きですね。で、では次回、またお会いしましょう!」

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