吾輩は猫である。真名はまだない。   作:生生生

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 はじめまして、生生生です。

 相変わらず思いつきで書いているので設定やら口調やらが滅茶苦茶になっているとか思います。

 それでも良い方はどうぞご覧ください。


吾輩は高貴である

 吾輩は猫である。名前はまだない。何処からやってきたのか、とんと見当がつかぬ。なんでも、頭にニ本の尻尾を生やし、『めがね』とかいうよくわからない骨のようなものをかけた人間に抱えられて来たことだけは記憶している。

 

 吾輩はそこで、黄金色やカラフルにも劣らない程に珍妙なものを見た。細長い棒の先端に、吾輩の尻尾のような毛がついたものである。後に聞くと、それは『ねこじゃらし』とかいう吾輩専用の娯楽品であるそうな。『ねこ』と名前に入っているからには、さぞ高貴な嗜好品なのであろう。

 

 ねこじゃらし、これが中々曲者であったのは言うまでもない。めがねがチョコチョコとそれを動かせば、吾輩に眠る本能がそれを捕らえようとする。めがねはそれを見て、その口元を歪ませた。その人間、さぞかし悪いものなのだろう。吾輩の知りうる『ますたぁ』の中でも指折りの獰悪に違いない。吾輩はここで死ぬかもしれない。

 そんな事を考えながらも、吾輩の体は獲物を捕らえようと止まらない。体がねこじゃらしを求めているのだ。これはまずい。吾輩の尊厳に関わる問題である。

 

 不意にめがねの手が止まった。それと同時にねこじゃらしも動き止める。吾輩はねこじゃらしの呪縛から逃れられた事に安堵し、獲物を捕えた達成感から渾身のドヤ顔をめがねに向ける。吾輩のドヤ顔に、めがねも恐れをなしたに違いない。吾輩の勝利である。

 

「……かわいい。」

 

 めがねがそう呟くと同時に、めがねから手が伸びてくる。此奴の正体を思い出した吾輩は、咄嗟にその手を避けようとするが、吾輩体はねこじゃらしによる運動によって疲れ切っていたためにそれは叶わなかった。まさか運動直後を狙うとは。めがねは獰悪にして狡猾であったのだ。

 

 吾輩に迫る魔の手は、やがて吾輩の頭に届く。吾輩は死を覚悟した。どのように惨殺されるのであろうか。首をねじ切られるかもしれない。四肢をもがれ、惨めに殺されるのかもしれない。なんまいだーなんまいだー。思えば吾輩、二日の間に二度も命の危機に晒されているではないか。まさかこの世がこれ程までに修羅であったとは。

 

「……♪」

 

 痛みなどやってこないではないか。めがねは吾輩の首をねじ切るでもなく、ただ撫でている。なるほど、中々心地良い。黄金色程ではないにしろ、此奴も猫の扱いを分かっているではないか。及第点といったところであろうか。

 これでにぼしが出たのであれば、文句無しで満点であったのだが。流石にそこまで求めるのは図々しいというものであろう。

 

 さて、このままここにいても良いのだが、生憎と吾輩は多忙である。それこそ、『ぶらっくきぎょう』とやらも真っ青な程である。

 当然のことながら、吾輩はぶらっくきぎょうなるものを見たことも無いのであるが。……『ぶらっく』中々カッコいい響きである。吾輩もいよいよ『ぶらっくな吾輩』を名乗りたいものである。

 

 吾輩がめがねの手を離れると、めがねは何かを呟いたようであるが、吾輩はそれが何を表すのか分からないのである。そのまま扉へ歩いて行くも、一つ問題があった。この扉は人間専用なのである。むしろ、ここにある扉全てが人間用であることを吾輩は知っているのである。その証拠に、人間が前に立つだけで開く扉も、吾輩が立ってもびくともしないのである。

 

 なんとも酷いものだと悲観していると、不意に扉が開いた。後ろを見れば、めがねが立っているではないか。もしや、吾輩のために扉を開けてくれたのだろうか。であるならば、めがねは獰悪で狡猾で気遣いのできるめがねということになる。

 

 伝わらないことは十分に理解しているが、吾輩は一言礼を言ってこの場を後にするのであった。




めがね:ヒナコ
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