凶骨周回が楽しすぎて投稿が遅れました(白目)
吾輩は猫である。名前はまだない。どうしてこうなったのか、とんと見当がつかぬ。なんでも、白い鬣を生やした人間に捕らえられ、この見窄らしい檻に放り込まれた事だけは記憶している。
吾輩はそこで、初めて人間の狂気を見た。吾輩の眼前に広がる、にぼしとねこじゃらしの山がそれである。にぼしは吾輩の好物であるが、あれだけあると流石にドン引きである。
それはそれとして、吾輩を捕えた悪党は、何やら慌ただしく出払っていった。最近の人間共は揃って忙しなく駆け回っているのであるから、悪党といえども例外ではないのであろうか。吾輩のように余裕を持って生きることを勧めたいものである。
しかし腹が減ったのである。
つい先程ドン引きしたと述べたが、やはりあのにぼしの山はご馳走なのである。腹が減った吾輩の眼前に広がるにぼしの山は、無慈悲にも吾輩の腹の虫を鳴かせてくれる。
なんとも酷い拷問なのである。
吾輩が己の無力さを悔いていると、表現し難い不快な音が吾輩の耳を襲う。ここに来てからというもの、毎日のように聞く音であるのだが、どうにも慣れないものである。
音がした方を見てみれば、吾輩を攫った白い悪党が、その手に何か良からぬ物を拵え、佇んでいるではないか。何やら、指先を不気味に蠢かせて近づいてくる。
ジリジリと躙り寄る悪党から逃げようと模索する吾輩であるが、生憎ながら吾輩は囚われの身。阻む術など無いのである。
この世の何たる非情なことか。
やがて悪党との距離がゼロになると、悪党の持つ良からぬものが吾輩の首に取り付けられる。吾輩の首に取り付けられたソレは、吾輩の首を強く圧迫する。
……正直、かなり辛いのである。呼吸を阻害するほどの強さで締め付けられているわけではないのであるが、なんとも不快である。取り外そうにも、吾輩の指は人間のそれのように器用に動くものではないのだ。ここはひとつ、切り裂いてみようとも考えたのであるが、我輩自慢の爪が痛みそうだからやめておくのである。
しかし、この悪党も我輩をくらおうとする質ではないようである。それというのも、吾輩から自由を奪い取ったこの悪党は、現在我輩を膝に抱え、執拗に撫で回しているからである。
ふむ、それはそうとにぼしは美味いのである。
先述した通り、吾輩の眼前にはにぼしの山が出来上がっているのであるが、これを全て平らげるとなるといったい何年かかるのであろうか。
などと考えるのであるが、ここはひとまず置いておこう。例え好物であろうと、毎日食えば嫌いになろうというもの。そもそも、到底吾輩の寿命で食い切れる量ではないのだ。過ぎたるは猶及ばざるが如し、である。
さて、好物をたらふく喰らい、丸くなる我輩であるが、口から自然と欠伸が出る程度には眠いのである。食べてすぐに寝ると牛になるとかいう迷信もあるが、どうせいつものことである。
吾輩の背中を撫でる悪党の手を感じながら、襲いくる睡魔に身を任せるのであった。
───直後、大砲の如き爆発音と燃え盛る炎に襲われることを、吾輩は知る由もないのである。
悪党:オルガマリー