異界転生譚短編集   作:長串望

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作者の人がTwitterで募集した、
#リプで指定されたCPとタイトルで出しもしない同人誌の冒頭を書く
という企画で、「CP:メザーガ・ブランクハーラとクナーボ・チャスィスト」でお送りいたします。


【ゴスリリ】少年弓士と白髪の魔法剣士

 メザーガという冒険屋は、業界ではそれなりに名の売れた男だった。

 故郷である南部ではまず知らないものはいないし、近ごろ事務所を据えている北部でも一目置かれている。事務所を立ち上げる前、流しの冒険屋としてやっていた頃の伝手も、まだ帝国各地に残っている。

 それはブランクハーラという偉大過ぎる先達の威光に足元を照らされてきたものではあったが、しかし確かに彼自身が自前の二本の足と剣一本、それによく回る口先で越えてきた道のりの結果だった。

 まあ、そのあたりのことを僕が知ったのは、おじさんと旅をして行く上で異様な顔の広さを思い知り、彼のパーティの面々に面白半分にいろいろと吹き込まれたのがきっかけで、それまでは全然全くこれっぽっちも耳に入らなかったので、多分場合によっては僕は生涯おじさんの名前ひとつ聞かないまま終わったかもしれない。

 まあ、冒険屋としていくら名を売ろうと、世の中そんなものだ。

 移り気な吟遊詩人たちが声高に冒険を謳おうと、地元の連中が何かと頼りにしようと、助けられた人々がありがたやありがたやと拝もうと、結局のところ冒険屋なんて言うものは金で雇える何でも屋だ。

 助けがいるときはありがたく拝みもするが、用がないときは邪魔にさえ思う、そんな存在なのだ。

 冒険屋自身だってそんなこと知っているし、わかっている。それでも仕事にあぶれた連中、正業に就けない連中、あるいは戦いしか知らない連中にとっては、それ以外にないのだ。

 お前は若いし、やろうと思えばなんだってできる。やりたいことがあったら、俺の伝手で仕事も紹介してやる。おじさんはそう言った。

 おじさんは僕を引き取ってくれたけど、最初から冒険屋として育てるつもりはなかった。あくまで僕がやりたいと、冒険屋になりたいのだと、そうお願いしたからしぶしぶ教えてくれているに過ぎない。

 冒険屋になりたいなんてのは、ろくでもない話だ。もそっとマシな人生もあるんだぜ。おじさんはそう言った。

 僕もそう思う。

 憧れとか理想とか、拾ってくれた恩とか、そう言うのを差っ引いてみれば、おじさんだってちょっとばかり名の売れたろくでなしに過ぎない。

 それでも僕が憧れたのは、おじさんの口癖のせいだった。

 おじさんはことあるごとに、ぼやくようにこう言った。

「仕方ねえなあ」

 至極面倒くさそうに頭を掻き、つま先のあたりを見下ろし、半端なため息をついて、それで、それから、いつだっておじさんは足を踏み出すのだった。

 世の中には山のように問題が積みあがっていて、きっと誰かがどうにかしてくれると、当事者たちでさえ他人事のように思っている。その誰かが冒険屋なんだと、その誰かこそが俺たちなんだと、おじさんは語った。

 僕の命も、仕方ねえなあと拾い上げてくれたその手を、僕は今も忘れない。

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