再起ッ!諦めの悪い二人   作:マスターBT

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こんな話が読みたい!って欲望が抑えきれず、遂に自給自足開始した作品です。
トレーナーの口が悪いので、苦手な人はお帰りを。


始まりの日

 キングヘイローのトレーナーは口が悪い。中央のトレセン学園に関わる者なら、必ず知っている事だ。多感な年頃のウマ娘と接するには難ありと言われるが、どのトレーナーよりも観察眼に優れ、不調を隠そうとするウマ娘がいれば一目見ただけで怪我が見抜かれ、その場で応急処置すら出来てしまう。また、育てる気が無くてもトレーニングしているウマ娘に対して、独り言を溢しそれを聞いたウマ娘がそれ通りにトレーニングしたところ、ベストタイムを2秒更新したという。

 

「コース取りが悪い。何度言えば分かるんだこのポンコツ頭は?対抗する奴に意識を割きすぎだ間抜け、ペースが崩れてる事に言われる前に気付け。それと、スタートの瞬間に何考えた?コンマ2秒もっと早く反応できるだろ。それと、今回は中距離だ。疲れようがなんだろうが脚を動かせ、スタミナが切れて息が苦しい?何当たり前の事言ってんだポンコツ。本来の適性以上の走りがしたいと言ったのはお前だろうが。苦しいのに慣れろ、嫌ならそういう道を選んだ変態気質の自分を恨むんだな。あと、柔軟はしっかりやれ。同期相手に気取るのは結構だが、その為に時間を削っただろ見栄っ張り。走りに出てんだよ。で、何か質問はあるか?キングヘイロー」

 

 だが、口が見事に悪い。注意をするのに相手を馬鹿にしなければならない呪いでも患っているのだろうか、この男は。しかも、自分が担当するウマ娘に対して見事なまでに絶対零度の視線だ。はっきり言ってめちゃくちゃ怖い。キングヘイローの同期達も、その圧倒的なオーラを前に怯んでいる。

 

「えぇ、あるわよ!」

 

 そんなトレーナーに全く引かず、逆に睨み返すキングヘイロー。そこにこのトレーナーに対する恐怖心は一ミリも存在していない。

 

「先ずは、忠告感謝致します。ですが、事前に貴方から渡された同期達のデータとその予測。実際にレースをしたところ、ズレがあると思うのだけれどその辺はどうお考えかしら?さぞ自信のある態度だったから期待してみたら、それとは違う動きをされた私の気分は分かるでしょう。寧ろ、その穴を埋めてここまでの走りを見せたのを褒めてほしいぐらいだわ。あと、私の為にデータを纏めるのは良いですけど、しっかり寝なさいな。また目に隈を作って……ちゃんと寝ないからそんなに不機嫌になるのよ。怖い目つきのトレーナーのせいで、びびって走れませんでしたなんて文句、私は言われたくないわ。お返事は?トレーナー」

 

 これは才能はあるが致命的に口が悪いトレーナーと、へっぽこキングヘイローの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞ」

 

 ノックもなく、扉が開かれ中央トレセン学園。そのトップの理事長がいる部屋に男が入ってくる。黒一色のスーツに身を包み、上から二つのボタンは止められておらず、下に着ているこれまた黒いシャツと、鍛えられた肌が顔覗かせており、何処ぞのヤクザかという風貌だ。更に、乱雑に伸ばされた黒い髪をワックスでかき上げるように固めており、目つきは野生動物の如く、鋭い。明らかに堅気の人間ではない。

 

「歓迎ッ!よく来た、中村トレーナー!」

 

「相変わらずウルセェな……で、わざわざ俺の様な無名トレーナー呼び出してなんの様だ秋川?」

 

 ソファに偉そうに座る中村と呼ばれた男。何処からどう見ても無名のトレーナーが中央トレセンの理事長を前にしてする態度ではない。その証拠に秋川理事長のすぐ後ろにいる秘書の駿川たづなは、無言で青筋を浮かべている。とは言え、そんなものは見慣れた風景なので秋川理事長は特に触れる事なく話を続ける。

 

「不変ッ!相変わらずの態度で何よりだ。君を呼んだのは他でもない、此処でトレーナーとして未来あるウマ娘を育てて欲しいからだ」

 

「……本気で言ってんのか?俺はその未来あるウマ娘を潰しかねない男だぞ?」

 

「無論ッ!私は、君の才覚をよく知っている。その才覚をただの酒飲みのして消してしまうのは、余りにも惜しい!ウマ娘界における損失と言っても良いだろう。それにな」

 

 そこで一度、秋川理事長は言葉を切り、中村と視線を合わせる。これから告げる内容が嘘偽りの無いものと告げる為に。

 

「そう返事をした時点で、君はもう二度と同じ過ちを犯さないと理解した。であるなら、私はその才覚を存分に此処で活かしてほしいと思っている。なに心配する必要はない。君がトレーナーをする事で起きる問題はこちらで引き受けるし、此処にいるウマ娘達は皆、才能があり何より夢を叶えようという強い意志がある!なにも心配する必要はない!!」

 

 秋川理事長の言葉を聞き、目を丸くする中村。やがて、呆気に取られている自分が可笑しくなったのか、沈黙している間自信満々のドヤ顔を浮かべ続ける理事長が面白いのか、顔に手を当てて笑い出す。一通り、大きな声で笑った後立ち上がり秋川理事長の前まで移動する中村。

 

「ふぅ……そこまで言うなら、引き受けましょう秋川理事長。けど、担当するウマ娘は自分で決めさせて貰いますからね」

 

 さっきまでの態度が嘘の様に畏まった態度になる中村。一度落ちぶれた自分をここまで買ってくれた秋川理事長に対する筋を通すつもりらしい。そんな中村にニヤリと笑みを浮かべる秋川理事長。

 

「歓迎ッ!中村トレーナー、ようこそ中央トレセン学園へ!」

 




自給自足なので不定期更新です。
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