ばんえいレース。それは世界広しと言えど日本にしか存在しないマイナーなレース。
「いくぞぉぉ!どりゃあああああぁぁぁ!!!!」
ガチャガチャと耳障りな金属音を響かせ、乙女に似つかわしくない野太い叫び声を上げながら、人が歩くのとあまり変わらない速度で走る。
「ぜぇ、ぜぇ、ふぅぅぅ……」
唯一レース中に立ち止まり息を整えるシーンがみられるのもばんえいだけだ。ここで耳障りな金属音の正体について触れてみよう。金属音の正体はずばり、そりだ。それも大きな重りの乗っかった1トン前後の重いそり。それを人力車の要領で体に着けたハーネスも使いつつ引っ張る。距離は200m。短いことで有名な中山の直線よりもまだ短い。
「ぬおりゃああああ!!!」
ズズズと重い音を立てて進むそり。中には途中の坂を登りきれず力尽きて競走を止めてしまう者もいる。完走しただけで拍手が生まれるのもばんえいの魅力の一つだ。知らない人が見れば虐待にも思えるこのレースだがちゃんとした歴史が存在する。
★★★
世界には古来よりウマ娘という人間と似て非なる生物が存在した。人間より遥かに上回る身体能力を有したその種族にも当然細かい区分けが存在する。足の早さに秀でたもの。持久力に秀でたもの。そしてばんえいウマ娘に代表される力に特化したもの。特に農作業や運送において彼女らの果たす役割は絶大だった。あるものはエンジンがまだ無い頃に人を大勢乗せた車を引っ張り、またあるものはトラクターが普及するまでの間、田畑を耕す鍬を引っ張った。しかし機械化の波が押し寄せれば彼女らの行き先は無くなった。機械は燃料さえあれば疲れ知らずで常に一定のコンディションを維持する。そして行き場を失った力自慢の中でも最も秀でた力を誇ったばんえいウマ娘が生き残る道として作られたのがばんえいレースなのだ。
★★★
「フゥゥゥゥ………」
短く長い200mを走破したばんえいウマ娘。季節が冬ということもあり全身から湯気が立ち上ぼり、口や鼻からは蒸気機関車のごとく白い息が大量に漏れる。普通の芝を走るウマ娘の2回りほど大きな体は見るものを圧倒する存在感があった。
「応援、ありがとね」
力を使い果たしたばんえいウマ娘は感謝の言葉もそこそこに立ち去る。ウイニングライブのようなレース後のイベントはない。しかし集まったファンから不満の声はない。それだけゆったりとしたレースに入れ込んでいるのだ。
★★★
ばんえいウマ娘には普通のウマ娘と異なる点がもうひとつある。それは総じて非常に気性が大人しく、フレンドリーな点だ。持ち前の体格と力を生かして片手でファンを持ち上げての記念撮影はばんえいの風物詩でもある。
「また見てね?」
「はい!」(腕もゴツいなぁ…)
レースの時の迫力満点な姿とは正反対の普段のおっとりとした様子。そのギャップがたまらない。また服装がハーネスなどの都合上武骨な飾りっ毛の無いシンプルな体操服な反面、自由度のある髪型を凝るのも特徴だ。華やかなリボンをあしらったり、複雑な編み込みを披露する者もいる。芝のレースよりは劣るが、それでもばんえいにしかない魅力がそこにはあった。
あのでかいボーノが見下ろされる、それがばんえいウマ娘。体重は100kg超えで身長も2m超えが普通だと思ってます。一回ばんえいを見に行きたいけど遠いのよ北海道。帯広とか十勝とか気軽に行ける所じゃない。どうせ行くなら湯気の目立つ冬に行きたいけど北海道の冬は地獄だしなぁ。