「究極のリアリティ……現実的な正義であれ。そういう事ですか?」
セバスの言葉に男は苦笑で返した。
「リアリティを現実的と訳したのでしょうか? それは参考にした文献が間違っています。そうですね、五分ほどお時間を頂けないでしょうか?」
「構いません。その間に私はお茶の準備をしてきましょう」
「セバス様にそのようなことをしていただくわけには」
「なに、これこそ私の本業なのですよ」
セバスは朗らかに笑った。
現在はアインズ様の居城を預かる身であるが、本来の役割はナザリックのハウススチュワードである。茶の手配くらいは手慣れたもの。
固辞する男を部屋に留め、部屋の外に待機するメイドにお茶の用意を命じて自身も付き合ってしばし歩く。歩きながら、男から聞かされた話を反芻した。
正義とは自身を不快にさせた弱者を怒りに任せて処罰すること。
セバスが思っていた正義とは正反対だ。客観的に見れば、それは悪というのではないだろうか。出鱈目を言うなと怒鳴りたかったが、悔しいことに筋が通っている。
一方、正義にはジャスティスとしての正義もあると言う。人々の幸福と秩序を追求するというのは、セバスが思っていた正義に近い。
そして、普遍的な正義。いつでもどこでも誰にとっても正義。そんなものがあるとはとても思えない。彼はアインズ様の手にも余ると断言した。しかし、究極のリアリティがあるならば、ありうるのだとか。
「お待たせしました」
「セバス様にお茶の用意をしていただこうとは。我が誉れとなりましょう。ソリュシャンとルプスレギナに聞かせてやろうと思います」
今度はセバスが苦笑する。
セバスが茶を用意するのは、本来なら至高の御方々に振る舞う時だけだ。恐縮されすぎるのは困るが、彼が誉れと受け取るのは当然である。そうでなければナザリックのハウススチュワードの名が傷つくというもの。
だけれども、吹聴するほどのものではないだろう。
彼と腰を据えて言葉を交わすのは今日が初めてでも、中々いい性格をしているのがわかってきた。
「おや?」
テーブルの上に、さっきはなかったティーカップが二脚あった。彼が時間を使って用意したのはこれなのだろうか。ティーカップの下には紙が敷いてある。何のつもりかわからないが、茶器を広げるのに邪魔となる。
セバスは厳つい指先で繊細にティーカップの把手を摘み、テーブルの端に退ける。
もう一脚も移動させようとして、しかし把手を摘む事が出来なかった。それどころかティーカップに触れる事が出来ない。セバスの指先は把手に届かず、ティーカップの下に敷かれていた白い紙にぶつかった。
「これは……まさか絵なのですか?」
「はい。先程描いたものです。机の上から白紙を一枚お借りしたことをお詫び申し上げます」
「それは構いませんが……」
セバスは目を見開いてティーカップの絵を見た。
光の反射や落ちる影に立体感までが本物そのものだ。絵と気付かず手を伸ばしたくらいなのだ。触らなければ絵とわからない。言われても触らなければ信じなかったことだろう。
しかし、
「ふむ……、本当に絵のようですね」
立ち位置を少し変えると、本物そのものに見えた絵が形を変えた。
先程の位置からは精巧な絵に見えたが、横から見ると縦に長い歪な姿を現す。
「こちらが本物のカップ。こちらは絵です。この絵を指してリアリティがあると評価を頂けますでしょうか?」
「勿論です。本当に見事なものです。以前は絵筆を握ったことはないと言っていましたが練習されたのですか? これほどの腕前でしたら画家を名乗って良いように思えます」
「手慰みの範疇ではございますが、過分なお言葉をありがとうございます。それではリアリティの説明をしてもよろしいでしょうか?」
「教えを受ける私が水を差してはいけませんね。お願いします」
「かしこまりました。ご説明いたします」
セバスが用意した茶で喉を潤し、男は口を開いた。
▼ ▼
「こちらが本物のカップ。リアルなカップです
対するこちらはカップの絵です。リアリティのある絵です。いくらリアリティがあると言っても絵はどこまで行っても絵に過ぎません。絵を指して現実的なカップとはとても言えないでしょう。
『リアリティがある』を言い換えれば『真に迫っている』としても良いのではないでしょうか。気の利いた辞書でリアリティを引けば、現実性や迫真性と載っています。
他にも現実・実在と載っていますが、カップの絵を指して現実とは言えません。繰り返しになりますが、絵はやはり絵に過ぎないのです。
リアリティが幾ら高まろうとリアルにはなれない。真に迫ってもそのものではない。それがリアリティです。
ここでリアリティの性質が一つ出てきました。それは『真であろうとする』ことです。
続けます。
如何に真に迫ろうと、隣にあるリアルよりも善いものでなければ意味がありません。わざわざリアリティあるものを用意するのは、リアルよりも善いものだからです。
リアリティあるものがリアルに劣るなら、リアルそのものを扱えば良いのですから。
つまり、リアリティは『善いもの』なのです。
リアルに勝るからこそリアリティある偽物が尊ばれるのです。
ここまで来れば三つ目は自明の理。
『真であろうとする善いもの』。それが美しくないわけがないのです」
「真・善・美。それがリアリティだと言うのですか?」
「その通りでございます」
「究極のリアリティ。究極の真善美。それは、神ではないでしょうか?」
「リアリティに人格を与えればそうとも言えるかも知れませんね」
「人格? 神格ではないのですか?」
「神格ではありません。人格です。人々が理解できる性格あるいは行動原理です。神格とは神になってからの格の高さやら格式やらでしょう。
少し話が逸れますが、神についての認識を共有したく思います。
例えばセバス様。セバス様は私では到底及ばない絶大な力をお持ちです。もしも衆目の前で力を振るえばセバス様を神と崇める者が出てくるのではないしょうか?」
「まさか。私が神などと大それたことを……」
神を名乗っても許されるのは、至高の御方々のみ。
己が神を名乗ろうとは、不遜や不敬どころか荒唐無稽な笑い話の類だ。
「肯定されなくて助かりました。
シャルティア様は、ご自身をとっても可憐でとっても可愛くてとっても美しくてとっても残虐なとっても強い吸血鬼と仰りますが、間違っても神とは名乗りません。
シャルティア様もご自身を神とは思っておりません」
「…………………………そうですね」
セバスの創造主であるたっち・みーは、ギルドメンバーのウルベルト・アレイン・オードルと意見を違えることが多かった。
その影響で、ウルベルト・アレイン・オードルが創造したデミウルゴスは、セバスをぶつかり合うことが多い。
セバスがデミウルゴスから皮肉を飛ばされたことは一度や二度ではなかった。
そのデミウルゴスとて、
『君の頭はシャルティア並かね?』
と言ったことは一度もない。
そこまで言われてしまったら、如何に温厚でカルマが善であるセバスだって手が出ようというもの。アインズ様だってお許しになるに違いない。
この男はそこまで言ったわけではないが、近いところを掠めている。
「シャルティア様は吸血鬼です。セバス様は竜人であるとうかがっております。何方も神ではないことをご自身がよくよくご存知でありましょう。
ですが、他者がお二方を神と崇めるのは問題ありません。
片や吸血鬼。片や竜人。それを知ってなお神と崇めるのです。
何故か?
『神』とは単に大きな力を指すことがあるからです。
『正義』と同じように『神』の文字を分解しましょう。
『神』とは『ネ』と『申』からなります。
元々は『申』だけで神を意味したそうです。『申』とは天から落ちる稲妻の形を簡略化した象形文字です。
大きなお力を持つセバス様には分かり難いかも知れませんが、人間にとって天駆ける雷光は絶対のものでした。
全天を覆う暗雲。天高くに雷光が走り、気ままに地上が焼かれるのです。
私はナザリックの最古図書館で様々な神話を読みました。それらでは雷神を最高神とするものが少なくありませんでした。
雷とは人の手が及ばない絶大な神なのです。
ご存知の通り、『申』の字は『申す(もうす)』の意味で使います。神としての『申』と『申す』を区別するために、祭壇を意味する『示』をつけて『神』の字とし、これを簡易にしたものが『神』となります。
『神』にはこのような経緯があるのです。
字源から考えますと、大きな力に人格を与えれば神となるわけです。
セバス様やシャルティア様が神と崇められるのもこのためです」
「……大きな力が人格を持てば神と崇められることもある。そう理解すればいいでしょうか?」
「大変結構です。
それではリアリティの究極を探る前に一つ思考実験をいたしましょう。
セバス様はリアリティに人格を与えて神ではないかと仰りました。
リアリティを神とするなら、数学の神がいてもおかしくありません。数学を司る神を作ります。
数学神は全ての数式を知る神です。それでは数学神にこよなく愛された者、あるいは数学神自身でも良いでしょう。
彼が『10+10』を計算したら結果は幾つか。
数学神に愛された者です。あるいは神そのもの。結果が100や1000に、または0や1になると思いますか?」
「馬鹿な。誰が計算しても10+10は20でしょう」
「その通りでございます。
彼らは計算が早かったり様々な数式を知っているのでしょうが、10+10はいつだって20です。
加算定理が覆ることはありません」
「………………」
セバスは、もしかしたら馬鹿にされているのだろうか、と思い始めた。デミウルゴスと馬が合う男だ。皮肉が好きなのかも知れない。
しかし、シャルティアに気に入られているとも聞いている。この調子でシャルティアをからかったら間違いなく酷い目に遭わされる。
そうなってない以上、本人に皮肉のつもりはなく、丁寧に説明しているだけかも知れなかった。
「今の話を最後に思い出してください。いよいよ究極のリアリティです。究極とは、極に窮まっている事を意味します。それ以上はありません」
「北極の更に北がないように、ですか?」
彼はにやりと笑った。
「覚えていてくださって光栄です」
おもむろにティーカップを持ち上げた。
「これは陶器製のカップです。粘土から出来ているわけですが、世界中の隅から隅まで掘り起こしても、カップがこの形で発掘されることは絶対にありません。
粘土の形を整えてカップの形にしなければなりません。
その前に粘土を選ぶ必要もあります。泥を水に晒して石を洗い流したり、色々と混ざり合ってる泥と必要となる粘土を分離するわけです。
そうして粘土をカップの形に整えても、このようなティーカップにはなりません。釉薬を塗って適切な温度で適切な時間を焼かなければならないのです。
ではどうして粘土を加工するとカップになるのでしょうか?」
「それは…………そういうものだからではありませんか?」
具体的には、粘土に含まれる長石が溶けて固まり接着剤の役割を果たすからだ。
セバスはそこまで知らなかったが、仮に知っていて正しく答えても、どうして長石は溶けて固めるのか、と再度の問が襲うことになる。
「仰る通り、実はそのようなものだからです。
粘土を焼くと固まる。そんな法則が隠れていました。人々は隠れていた法則を暴き、ティーカップを作れるようになったのです。
普遍的な正義も同じなのですよ。
究極のリアリティがあるとするならば、普遍的な正義もどこかにあるはずです。我々はそれを知らない。正義は隠れているのです。
隠れていようと、粘土を焼いたら固まる法則があったように、どこかに存在する可能性はあります。我々が知らないだけで、今この瞬間も普遍的な正義は存在している、と言えなくもないのです」
「知らないだけで存在している。……それは本当に存在しているのですか?」
「ですから、究極のリアリティの想定が必要になるのです。
窮まった真善美があるならば、普遍的な正義があってもいいでしょう。
このように申しますと願望や妄言の類に聞こえてしまうと思いますが、それは私が信じていないからです」
「信じてない……。ないということですか?」
「そう言ってしまうのは短絡です。
存在を証明するのは簡単です。それを見つければ良いのですから。
ですが、存在しないことを証明するのは不可能です。証明が非常に困難、あるいは不可能であることから、悪魔の証明と呼ぶようですね。
始めに申し上げた通り、究極のリアリティを想定するのなら普遍的な正義はありえます。
但し、見つけるのは非常に困難、不可能かも知れません。無明の荒野に降り立ち、手探りで探さなければなりません。
ですが、ないとは言えない。無謀に思えますが、探し続けることを否定することは出来ません。
ではどうしてそんな事が出来るのか?
信じているからです。
根拠はありません。だけれども信じるのです。この姿勢を、信仰と呼びます。
究極のリアリティ、そして普遍的な正義とは、信仰の上にあるのです。
仰りたいことはわかります。
それでは正義を実践出来ないではないか、とお思いでしょう。
その通りです。普遍的正義は実践するものではありません。信仰の上に存在すると信じて探求するものなのです。
しかしそれでは何にもならない。
それでは困ることもありますから、自分たちの為す事は正義に適うと信じて正義を行うのです。
まあ、そうして捻り出した正義は所詮は人の行いに過ぎません。人が作ったもの、つまりは偶像ですね。信仰者としては褒められた態度ではありません。
ここで先程の数学神の話を思い出してください。
数学神に愛されようと10+10は20です。
究極のリアリティに人格を与えて作った究極の神に愛されていようと、その者が為す行為が正義に適うわけではないのです。
定義からして、誰であろうと普遍的な正義を謳うものがいるとすれば、それは騙りに過ぎません」
もしも聞き手がセバスではなくアインズであったら、普遍的は神聖語の一つであるギリシャ語だと「カトリコス*1」であると言及したかも知れない。
カトリコスは英語でカトリック。アインズは普遍的を名乗る世界宗教を知っている。カトリックに辿り着けば、究極のリアリティに人格を与えると何になるかを察したことだろう。それは神ではなく天主であり造物主でありデウスであり、ゴッドである。
「普遍的な正義とは、行うものではなく求道するもの。安易にこれであると言えるものではないのです」
「存在すると信じて求めるもの、ですか」
「さようでございます」
▼ ▼
長い話が終わった。
男は涼しい顔で冷めた茶をすするが、セバスの顔は難しい。
ある疑問は晴れ、ある疑問は深まった。一周回って再びわからなくなった。
デミウルゴスが認めるのもよくわかる。
言葉と言葉が有機的に結び付き、精緻な理論を容易く紡ぐ。二人の対話に口を挟めるのは、アインズ様かアルベド様くらいだろう。
パンドラズ・アクターも優れた頭脳を持つと聞くが、ずっと宝物殿を守っていたらしくセバスはほとんど面識がない。
但し、デミウルゴスとは決定的に違う点がある。
デミウルゴスなら所々に落とし穴を掘るが、彼は穴を埋めて山を崩し目的地までの道を整えてくれる。
聞いてばかりなのを恥ずかしく思う心があったが、彼ならばもう一歩連れて行ってくれると信じた。
「それでは……私はどうすれば良いのでしょうか?」
正義を聞いた、神を聞いた、究極なるものを初めて知った。
「どう、とは?」
「私はどのように正義を為せば良いのでしょうか?」
セバスの創造主であるたっち・みーは正義を掲げて困っている人を助けてきた。セバスはそれこそが正義と思い、創造主に倣ってきた。
しかし彼の話を聞いた後では単純にそうだと思えなくなった。まるで呪いを掛けられたかのようだ。デミウルゴスと親しい彼ならば、魔法の力を伴わずに呪言でもって呪いを掛けられるのかも知れない。
「それは簡単です。少し話をまとめましょう。
普遍的な正義は信仰をもって探求するもの。
実践する正義は偶像を崇め、正義の名を借りて力を振るうこと。
ではお聞きしましょう。セバス様はどうしてここにいらっしゃるのですか? ああ、深く考えないでください。エ・ランテルの城を管理してる理由で結構です」
「アインズ様のご命令だからです」
「ご命令だから従うのですか? ではお願いだとしたら如何です?」
「アインズ様にお願いをされようとは……。アインズ様のお考えを先取りすることが出来ず、余計なご負担をお掛けしてしまったことを悔やむでしょう」
「ではアインズ様のお願いには応えないのですか? アインズ様はセバス様を頼りにお願いすると言うのに」
「まさか! 光栄の至りです!」
「アインズ様のお喜びがセバス様のお喜びなのではありませんか?」
「その通りです」
「デミウルゴス様はそう仰っているのですよ」
「……何ですと?」
脈絡なく出てきた名前に、セバスは面喰った。デミウルゴスの話はしていなかった。それが何故最後に挙げられるのか。正義からは程遠い悪魔がデミウルゴスだ。
ナザリックの仲間であるため決定的な亀裂があるわけではないが、意見が異なる事が多い。意見のみならず、デミウルゴスの趣味もセバスから見たら眉目を顰めるものばかり。
「デミウルゴス様のお喜びもセバス様と同じ、アインズ様にお喜びいただく事でしょう」
「それは……その通りです。ナザリックのシモベであれば当然の事です。……つまり、こういう事ですか? デミウルゴスは、私はアインズ様のお喜びを願っていないと?」
だからデミウルゴスは、自分の喜びはアインズ様の喜びであると強調するのか。なのにあなたは違うのかと問うたのだろうか。
ツアレを助けた事を思い出す。アインズ様の慈悲でツアレの命は助かったが、あの時の自分はアインズ様の喜びを最優先にしたわけではなかった。報告もせずに自分勝手な行動を取り、混乱を招いてしまった。
デミウルゴスは今になってもそれを突き付けているのだろうか。
「全く違います。デミウルゴス様もセバス様がアインズ様のお喜びを喜び尊ぶと知っておいでです。端的にまとめてしまえば、アインズ様がお喜びになるよう行動せよ。そう仰っているのですよ」
「それは当然のことではありませんか?」
「その通り。当然です。ですから、セバス様はそのままで良いと仰っているのです」
「……は?」
「正義の追及は信仰者に任せれば良いのです。実践者であるセバス様は、アインズ様のお喜びを願い、尊び、ご自身が善いと思う事を為せば良いのです。
デミウルゴス様はセバス様が悩み、立ち止まることを歯がゆく思っておられるのでしょう。
言葉を弄ぶのがお好きな方でございますから時に迂遠な物言いを為さいます。ですが、デミウルゴス様もアインズ様のお喜びを尊ぶとセバス様も認めたばかりではありませんか」
デミウルゴスがそんな事を思っているとは信じがたい。しかし、共にアインズ様のお力になりたいと思うのはその通り。ツアレの件でたっぷりと皮肉を飛ばされたが強行はしなかった。
彼の言葉を全て信じることは出来ないが、アインズ様のために行動し、自分が善いと思う事を為すのは望むところである。
セバスはしばし瞑目し、大きく頷いて男を見た。
口元が少しだけ綻んだ。
「……あなたは人間です。しかもナザリックの出身ではない。ですが、あなたならソリュシャンを任せても問題ないでしょう」
「ソリュシャンを……?」
「ソリュシャンから考えを聞き、少しずつ進めてはいたのですが時間が掛かってしまいました。すぐにでも残りを終え、アインズ様に上申します」
「それは、確か……」
「ソリュシャンは私とツアレを先にと考えていたようですが、あなたとソリュシャンが先でも全く問題ありません」
「……ありがとうございます」
アインズから、少なくとも一年は熟慮せよと言われた男である。セバスの上申は、その一年後までに間に合いそうであった。
その場合、ソリュシャンが第一なのだろうか。第六まで決まっているらしいが、どのような順番になるかは全く関与してない男である。
出来るならば血を見ずに済ませたい。
流れるのは、きっと自分の血に違いないのだから。
本編149話へ続く