ゼニスからは一冊の本をもらった。
ロキシーからはロッドをもらった。
パウロからは、まだもらっていない。
なにか小さな包みを持っているのだが、まだ渡されていないのだ。
隣にいるゼニスが急かすことでようやく決心がついたのかパウロはその包みをこちらに渡した。
「開けてみても?」
「……ああ」
まるで今から何かと戦うような緊張感のパウロに動揺しつつも、俺は包みを開いた。
中には一つの髪飾りが入っていた。
見た目はシンプルだが、素材にはいいものが使われていることがわかる真っ白な髪留めだった。
「……これは?」
「あー、なんていうか、お前さ、えー」
「はっきりしてください。父様らしくない」
俺の言葉にパウロは少し困ったようにゼニスを見てからこちらに顔を近づけてきた。
なんだなんだ。
男のキスはいらないぞ。
「……お前、あんまり女子っぽい格好が好きじゃないだろ」
「…………え?急に何を言っているんですか?」
俺は慌てて取り繕うも遅かった。
確かに、スカートにはまだ抵抗があるし、髪留めもゼニスかリーリャがつけてくれる時しかつけていない。
とはいえ、それは隠せていると思っていた。
俺の表情から自分の予想があっていたと確信したパウロは言葉を続ける。
「とはいえ、ゼニスはお前が生まれる前から娘だったら可愛い格好をさせたいと言っていてな。親からの誕生日プレゼントなら自分から付けるかなぁと」
「……そういうことは本人に言わない方がよくないですか?」
「お前なら言った方が効果的だろ?」
できる限りのシンプルなやつを選んだから使ってくれ。なんてパウロはそう言って締めくくった。
まあ、確かに母様からもらったピンクやフリルのついたものよりはシンプルな白色の髪留めの方が使いやすい。
とはいえ、とはいえ、だ。
「髪留めは母様から結構もらってるんですが……。父様はそんなだから父様なんですよ」
「……なんだよそれ。いらないならなんか別のー」
「いえ、絶対に返しません。これはもう貰ったものですから私のものです」
パウロに見透かされた事が妙に嬉しいような気恥ずかしいような。
ぶっちゃけ少しムカついた。
俺は今使っているピンクのリボンを外して、今もらったシンプルな髪留めでまとめ直した。
そして、パウロの前で一回りくるっと回った。
「似合ってますか?」
「……ああ。似合ってる」
そう言って二人で笑っていると仲間はずれにされていたゼニスがやって来たのでかけよってくるくると回る。
「母様。似合ってますか?」
「ええ!似合ってるわ!」
なんだか楽しくなってきた俺はロキシーの前まで行って再度回った。
ロキシーも似合ってると笑ってくれた。
この時の俺はきっと年頃の女の子のように笑っていたような気がする。
///
そんな誕生日の次の日。
俺は魔術の授業中にロキシーに聞いていた。
「物を保護する魔法ですか?結界魔術ならそういったこともできるかと思いますが、よく知らないんですよね」
「師匠でも知らないことがあるんですね」
「……まあ、結界魔術はちょっと」
ロキシーは何て言おうか考えるように視線を動かして、こちらを見て止まった。
そして、何故かニッコニコに笑いながらこう言った。
「急にそんなことを聞くのはその髪留めのためですか?」
「べ、別に、そんなんじゃないですよ!」
真っ赤になってそう言う俺の頭には真っ白な髪留めが留まったいた。