世の中どんなことにも責任は伴う。
今回の事件、誰が悪いかといえばルディアが悪い。
いや、まあ、私が言わなければ何も起こらなかったのだけれど、それでもルディアが悪いと私は思っている。
これは、そんな私の不用意な発言から産まれた事件。
「そういえば、ホワイトデーのお返しは何にしたのかしら?」
昨日。というか先月のことだが。
私にとっては昨日のこと。
そんな先月、ルディアからチョコのようなものを貰った。
「ナナホシには微妙かもしれませんがアイシャが絶賛するのでちょっと味見してもらえませんか?」
そんな言葉通りに地球のチョコからしたら果てしなく微妙なそのお菓子はそれでも彼女が一生懸命作ったことがわかる。
なんとなく、そんな味がした気がした。
誰に渡すかもわかるそのチョコに素直に微妙と感想を返しながら、私達は笑いあった。
つまり、先月はバレンタイン。
彼女は愛しい旦那達にそのチョコを渡したことだろう。
ならば、今月は旦那達からのお返しがあるはずだ。
「……ホワイトデー?」
そう聞き返すフィッツの言葉に私は自らの失敗を悟った。
最近はルディアと話してばかりだったから感覚が地球によっていたのだろう。
この世界にバレンタインがあるわけがない。
何より、チョコが一般的に普及しているなら彼女のチョコはもっと美味しいものだったはずだ。
ならば、ホワイトデーなんてものは絶対にあるわけがない。
「ちょうど一月ぐらい前にルディアからチョコを貰わなかった?」
「チョコ?ああ、あの黒い媚薬のこと?貰ったよ」
……なんだ?何か、おかしな単語が混ざった気がする。
「び、媚薬?」
「え?うん。昔、アリエル様からそういう風に言われて食べたことがあったから覚えてる。あれ、媚薬でしょ?」
待って。
いや、ちょっと、本当に待って。
まさか、いや、絶対にそうだ。
「……もしかして、貰ったその晩に皆でいただいた感じ?」
「…………ん。まあ、そうだけど、ちょっと話題としては下品じゃない?」
「そのあと、彼女不機嫌にならなかった?」
「え?ああ、まあ、ちょっとやりすぎたかもしれないけど、エリオットが『媚薬なんて渡したルディアが悪い』って言い張ったらなんか納得してたよ?」
この天然ドS王子とあの駄犬をどうにかしろ。
私がどう説明しようか思案していると、フィッツも何かを間違えたことを悟ったのか少し困った顔をしだした。
「……あのね、まず、この時期に愛している人にチョコを渡すって風習がある地域があるのよ」
「えっ!?初めて聞いたんだけど!?」
そりゃそうだ。
この世界のどこにもそんな風習ないだろう。
「それで、それ事態は別に『愛しています』くらいの意味合いしかなくて、媚薬を渡すとかそういう意図はないのよ」
私の言葉にフィッツの顔がサッと青くなっていく。
そりゃそうだ。
別に出してもいないOKサインを勘違いして行為に及んだら、完全にやらかしだろう。
あのルディアが露骨に不機嫌になったならそれは間違いなくそれが原因だ。
媚薬云々に関しては地球にもそういう話があったはずなので、それを思い出して何とか納得しようとしただけの話だろう。
それはそれとして、フィッツ。
顔を青くするのはまだ早いわよ。
「チョコを貰った人はその一月後にお返しをするというところまでがこの風習なんだけど、お返しは用意しているのかしら?」
「……いや、してない」
知らなかったのだから仕方がない。
とはいえ、思い人のささやかな思いを勘違いしたあげく、謝罪もせず、お返しもしないというわけにはいかないだろう。
「その風習では何を返すのがいいとかあるの?」
「一応、物によって意味があったりすることもあるけど、ルディアとしては『好きな人に渡して、お返しをもらう』ってことがしたかっただけだと思うから何かプレゼントをあげればいいと思うわ」
あの子は妙なところでオトメチックというか、ロマンチストだからちょっと着飾って素敵なディナーでも用意してあげればいいんじゃないかしら。
ああ。そういえばーーー
「ーーーお返しは三倍なんて言葉もあったわね」
「なるほど!ありがとう!ナナホシ!」
「…………えっ?」
私が気がついた時にはすでにフィッツの姿はなかった。
それほどまでに焦っていたのだろう。
ただし、話は最後まで聞いてほしかった。
「……三倍返しは例えであって実際にされても大抵は困るのだけど」
ルディアの身に何が起こるかは想像がつかないが、彼らも悪い人間ではない。
誠意を持って、謝罪をして、感謝を伝えるならそう悪いことにはならないだろう。
問題はエリオットだが、まあ、あとの二人が何とか抑えてくれることを願う。
そう、願っていたのだ。
まさか、『3倍のチョコを食べさせて普段の3倍愛する』なんて暴挙にでるなんて私には想像がつかなかったのだ。
……その結果、アルスとクリスにものすごく文句を言われることになるのだが、全部ルディアが悪い。