いつも通りに目覚めたその日は、いつもと違ってルディアがすでに私の部屋にいて、いつもよりちょっと豪華な朝御飯を用意していた。
「……何?何かの記念日だったかしら?」
「いや、別に?ここ数日ちょっと暇で」
私が訝しげに訪ねると、困ったようにルディアはそう答えた。
足下を見るとレオがそばにいる。
なるほど。
私は改めてルディアの身体をよく見る。
身体のラインが分かりにくいゆったりとしたワンピース。
また、この少女ーーーいや、見ようによっては幼女に見える彼女はあの大好きな旦那達との子供を妊娠しているのだろう。
そして、そのタイミングとオルステッドからの依頼が重なったか何かで旦那達が忙しく、妊娠をしているために大きく動くこともできず、家事はアイシャかリーリャさんが担当しているのだろう。
じっとしていればいいものを、それが苦手だからと私のご飯を作ることでそれを紛らわしているのだろう。
だろうばかりの推測だが、おそらくそう間違えていない。
何故ならすでに何度もこのパターンを経験しているからだ。
「私はありがたいけど、またアイシャに怒られるわよ?」
「この間母さんにも怒られたよ」
まあ、特にやめるつもりもないけど。と笑う彼女はとても元気そうだ。
そういえば、今回は誰の子供なのだろうか?
私がふと思ったその疑問を口にしたのが間違いだった。
今まで妊娠中の彼女とあったことは何度もあったが、あまり興味もなかったこともあり産まれたあとに誰が親かを聞いていたのでその質問がどんな答えを言わせるのか考えもしなかったのだ。
「うーん。誰だろ?」
そんなことを真顔でのたまう彼女は愛おしそうに自分のお腹を撫でながら語った。
「タイミング的にはフィッツな気もするけど、同じ頃にロキシーともしてたし、少し時期はずれるけどお腹をよく蹴るしエリオットかもしれない。誰の子でも幸せになってくれればそれでいいよ」
私は唖然としてしまった。
少なくとも、地球の日本出身の私には理解できない感性だ。
彼もそうだったのではないのか?
いや、そうだ。
根本的に彼女の中身は男である。
それが、ここまでなるなんて。
「…………ねぇ、ルディア。朝っぱらから何言っているんだって思うかもしれないけど聞いていい?」
「そりゃ、ナナホシに夜しか話せないことがあったら時間が足らないだろうし問題ないけど、そんなに改まってどうしたの?」
「…………えっと、その、やっぱりさ、アレって、気持ちいいの?」
おそらく私の顔は真っ赤になっているだろう。
朝っぱらから何を聞いているんだ。
でも、改めてこんな話ができる友人なんて彼女しかいないし。
将来的にいずれ行うそれは、きっと不馴れになってしまうだろう。
ならば知識だけでもほしいと考えてしまったのだ。
彼女はそういったことを明け透けに話してくるし、聞けば教えてくれるだろうというハードルの低さもある。
かくして、お互いに黙ること数秒。
ゆっくりと、彼女は言った。
「……うーん。人によるんじゃないかな?」
「………………いや、もういいわ」
聞いた私がバカだった。
そんな気の使った言葉を聞きたかったわけじゃなかった。
なんていうか、もっと下ネタ混じりのガールズトークみたいなことがしたかった。
私が早々に切り上げてご飯を食べようとすると、ルディアは慌てたように言葉を続けた。
「あ、いや、たぶん、勘違いしてる。受け手じゃなくて攻め手の話」
「…………???」
彼女の言うことがわからないのは私がまだ子供だからなのだろうか?
ルディアは色々と思い出すように、言葉を厳選するように、視線をそこらじゅうに向けたのちに口を開いた。
「痴漢に触られても気持ち悪いけど、好きな人に触られたら嬉しいじゃん?そういう感じの話」
あー、人によるってそういう。
私が納得をしたのがわかると、ルディアは語りだした。
「たとえば、フィッツは色んなことに気をつかってくれてるし、全体的にメチャクチャ甘やかしてくれてとても気分がいい。焦らすこともあるけど適度にこっちが興奮するのを待ってくれてるだけで過度にいじめてきたりはしないし、そこら辺はやっぱり一番付き合いが長いことが少し関係あるのかもなって思うこともあるかな。こっちから攻めるときもキチンと口にだしてくれるから喜んでくれてるのがわかって攻めてて楽しいし、コミュニケーションって感じが一番するかな。ロキシーはその点ちょっと不器用かな。気をつかってくれるんだけど気をつかいすぎてるというか。なのに、盛り上がってくるとやりたい放題してくるところとかスゴく子供っぽくて可愛いなって思う。こっちから攻めてる時なんか一生懸命声を我慢してるからこっちも意地になってメチャクチャにしちゃう。お互いにやりたい放題やっても不快にならないのはやっぱり愛してるからだと思うよ。エリオットは、なんだろう。正直、私の初めての時はあんなに素敵だったのになぁってのはちょっと思うくらいには荒いかな。この学校にもいるけど、獣人の発情期って感じのリミッターが外れてる感じ。色んな跡をつけてくるのもエリオットが一番多いよ。ただ、まあ、そうやって、メチャクチャにされるのも嫌じゃないし、むしろ、エリオットに求められているのはなんか安心するんだよね。まだ昔のことがちょっとトラウマなのかもしれないけど、それでお互いに幸せならいいかなって思える。そんな感じで人によるとしか言いようがないかな?」
…………この間およそ一息。
いや、厳密には呼吸をしているのだけれど、私が割り込む隙間なく言い切られてしまった。
動揺するこちらを気にするでもなく、旦那の自慢をニコニコと言い切ったその奥さまはとても機嫌がよさそうだ。
ここまで来たならば、いっそ全部聞きたい。
毒を食らわば皿までってやつだ。
「ねぇ、今日は旦那さんとのこと色々教えてくれない?改めて聞いたことなかったし」
私の言葉にニッコニコで頷いた彼女はとても幸せそうで、それを見た私は何故かとても安心したのだった。
…………数時間後に後悔することになるのはまた別の話。