では、本編。
『起動せよ、起動せよ。溶鉱炉を司る九柱。我ら九柱、音を知るもの。我ら九柱、歌を編むもの。』
「まぁ今更慣れたものだよね。…この怖さは慣れないけど。」
つい、本音が出てしまう琴葉。
「まったくだ。オレは直に見るのは初めてだが、こんなものと戦ってきたとは恐れ入る。そして敬意を表さずにはいられない。」
「本当にね。だけど、それが出来たからこそ今まで残ってこれたのさ。」
「ええ。その口調とは違い、怯えてるのに、それを鼓舞するかのように…だからそれ相応の実力も付いている。」
「ちょっと!?なんでそれ知ってんの!?って、妖精眼…!」
アーサー・ペンドラゴン、そしてアルトリア・キャスターが苦笑混じりに話す。もちろん誰にも言っていなかったことを自分のサーヴァントにバラされた琴葉は頭を抱えた。
「…コホン、とにかくこの宙域は我々が抑えます。他の皆さんは先に。」
『起動せよ。起動せよ。情報室を司る九柱。即ち、』
「はいはい、うるさいっての。今までに何回聞いてると思ってるんだよ。ソロモン七十二柱さんよ。足止めをしてたのは俺だぜ?飽きるほど聞いたよ、それ。」
「ほう、七十二柱の魔神か…ならばこちらはローマの七丘が貴様たちを阻んでみせよう!…待たせたな、藤丸。皇帝ネロ・クラウディウス、待望の再演である!…ただ、細部までの事情は知り得ていない。」
「まぁその辺は色々事情があるからな。言わなくてもいいだろう。そういうわけで、だ。行け、藤丸立香。鍵はお前だ。だが、そう背負うなよ?お前はお前の出来ることをやれ。ここは俺、時村創真とローマの特異点と面々が請け負った。」
『起動せよ。起動せよ。観測所を司る九柱。即ち、グラシャ=ラボラス。ブネ。ロノウェ。ベリト。アスタロス。フォラス。アスモダイ。ガープ。我ら九柱、時間を嗅ぐもの。我ら九柱、事象を追うもの。七十二柱の魔神の名にかけて、我ら、この集成を止む事認めず…!』
その時砲弾が飛んでくる。
「待ちな。ここから未来、現在から過去まで洗いざらいアタシたちのモノでね。要するにアタシたちの縄張りって事。命含めて置いていってもらわないとなぁ?やってきたばかりで図々しい?それで結構。だって仕方ないだろ?アタシら海賊なんだから!」
「そうだなぁ…そこのババアの言う通り…うひゃるっほぅい!?ちょっとアナタ!」
突如攻撃された黒髭が魔神柱に対して人として何かを説いている。
「流石に魔神柱に対してはねぇ…」
「ある意味、平等主義と解釈すべきなのかしら…」
「…まぁいいか。船からの戦力だけでは少しキツイでしょ。遊撃として私も残るよ。」
「桃瀬さん…」
「藤丸。君と楓がどのような関係なのかは少し分かってるつもり。だから君が悪いわけではない、私はそう思う…ただ、環境が悪かっただけ。それでも…いつかキッチリ、話し合いなよ?」
「分かってる。これが終わったら話し合うつもりだよ。」
「なら良いかな。…普通な言葉だけど一応言っておくよ。…頑張れ。」
『起動せよ。起動せよ。管制塔を司る九柱。即ち、』
「えーと、僕の担当は第四特異点…バルバトスだね。」
『…パイモン。ブエル。グシオン。シトリー。ベレト。レラジェ。エリゴス。カイム。我ら九柱、統括を補佐するもの。我ら九柱、末端を維持するもの。七十二柱の魔神の名にかけて、我ら、この統合を止む事認めず…!」
「はぁ…統合、か。そんな事させると思うかい?」
光、闇、氷の三属性のビームと、赤雷が魔神柱を襲う。
「ハッ、残念だな魔神ども。整理するのがテメェら九匹の役割だってんなら…バラバラにすんのはオレの領分だ!栄光の円卓だろうとまぁ、この手でぶち割ったしな!」
「それ、胸張れることなの…?」
絵留の召喚したパンドラが呆れる。
「…何にだって終わりは来る。オレはそのキッカケとなっただけ。それはアンタらがよく知ってんだろ?図書館とやら。」
「知ってるの?」
「ちょっとだけだ。詳しくは知らん。」
「…あぁ、円卓はきっかけはなんであれ、あの時代であれば周辺国との戦争、民の飢饉によっていつかは滅んでいただろう。」
「………そうだな。世界だって終わりかけるんだ。円卓が終わっても不思議じゃねぇ。だが、終わるのはお前たちじゃない。」
そう言って、再生していく魔神柱に剣を向ける。
「むしろ終わるのはお前たちだ。もう充分好き勝手に焼き尽くしただろ?なら終わっとけ。オレが引導を渡してやるよ!」
赤雷が魔神柱を襲う。
「うん。それに賛成。それに…こんなところで終わってはいけない。世界を滅ぼしかけた私だから言える。」
パンドラは過去を振り返るように言う。
かつてパンドラ…正確にはその父親が物語の世界を終わらせようとしていた。パンドラはそれに加担していた。それをエル達、『図書館』の者たちが阻止していた。その後、紆余曲折ありパンドラは『雪の女王』の力を得て復活するが…余談である。
「だから…君らには消えてもらうよ!」
先ほどよりもさらに数を増やし、ビームだけでなく魔力弾を撃ち込んでいく。
「はぁ…パンドラ、全力出しすぎて息切れしないように。」
「セイバー、魔力の残量には気を付けてくれよ。」
絵留とジキルはお互い顔を見合わせ苦笑する。
「でも、僕も見てるだけじゃない。」
「…そうか、あなたはジキル博士。つまり…」
「きた、きた…来た来た来た来たキタキタキタァ!俺様ちゃん参上!」
「…ハイドもいるんだったね。」
絵留は苦笑しながらも自らの武器…『空白の書』を取り出す。
「…あぁ、来たのかい藤丸立香。残念ながらここには君の出番はないよ。」
「…なぁにこれぇ。」
「見よ!神鳴る雷霆は此処にあり!」
「天下無双、黄金衝撃だ!」
「うるせえテメェらちょっとは静かに出来ねえのかよ!」
「見ての通りさ。ここは抑えておくからさっさとビーストIを倒してきなよ。」
『起動せよ。起動せよ。兵装舎を司る九柱。即ち、』
「マスタースパーク!!!」
極光が襲いかかる。
「なんか言ってるけど聞く気なんざ全くない!どうせお前らなんかに言われずとも分かってんだからな!」
「ええ。戦火を悲しみ、損害を尊ぶのは人として当然の情動。ですが、人間はその先へ進まねばなりません。ええ、そう。ただ立ちて待つのみを良しとせず、煙る戦火を消すために。家族を、友を、愛する者を失った者がそれ以上失う事のないように…!我らは此処に立ち、あなたがたと対峙するのです!」
「いかにもその通り。お前たちは悲しみ、尊ぶ。だが、それだけだ。」
「難しい話してんなぁ…ただまぁ、私にも言わせてもらうぜ。」
「…さっさとくたばれ!」
「それで良いのかよ、金髪女。…まぁ良い。ただ、鏖殺するだけだ。」
ケルト最強とも言われる戦士が槍を構えた。
「起動せよ。起動せよ。覗覚星を司る九柱。即ち、バアル。アガレス。ウァサゴ。ガミジン。マルバス。マレファル。アロケル。オロバス。我ら九柱、論理を組むもの。我ら九柱、人理を食むもの。七十二柱の名にかけて、我ら、この憤怒を却す事、断じて許さず…!』
「はいそこ暫く暫く〜!間に合った!?あたし間に合ってる!?ピンチと聞いてキン斗雲に乗って駆けつけたわ!金色に光るヤツ以外ならたぶんすっごく有利とれる…あれ金色に光ってるヤツじゃない!?」
「ええい落ち着け三蔵。ひとりでそう先走るな。色は同じでもアレは型落ち、以前ほどの力はあるまい。そこの御仁が何かの気まぐれであちらに付かぬ限りはな?」
「ハ、気まぐれでも有り得ぬわ!余はたまたま通りかかった至高のファラオ!即ち、これ漫遊である!魔神どもを罰する道理もなければカルデアに手を貸す義理もないわ!」
「漫遊でここに来るのがそもそもすごいんだよな…つーかせめて手伝ってくれませんかね!」
「だが………うむ、だが。珍しい神殿がある、どうしても見たいとニトクリスにせがまれてな。天空の女がかように欲を出す事は稀だ。であればこそ、余も酔狂に付き合ったのだが…まったく害獣駆除がなっていないではないか!これでは玉座とやらが見えぬ!」
「もしかして珍しい神殿ってここのことかよ!と、おっと危ない。」
危ないと言いながらも涼しい顔をして魔神柱の攻撃を受け流す。
「お、藤丸じゃねえか。もうここまで来たのか。よっ、と。残念ながら気に掛けられる余裕はない。…あ、そうだ。これやるよ。」
と、何か入った瓶を投げられる。
「…これは?」
「妖精入り瓶。致命傷を負っても一度だけ回復する。命綱ってやつだ。じゃ先に行ってろ。余裕できたらそっち手伝うからさ。」
『起動せよ。起動せよ。生命院を司る九柱。即ち、シャックス。ヴィネ。ビフロンス。ウヴァル。ハーゲンティ。クロケル。フルカス。バラム。我ら九柱、誕生を祝うもの。我ら九柱、接合を讃えるもの。七十二柱の名にかけて、我ら、この賛美を蔑む事能わず…!』
その時、大規模掃射が魔神柱たちを襲う。
『威嚇目的ではない、斬滅の為の一斉掃射…!なんという外道、名を名乗れ…!』
「あーはっはっはっは!いま美って言ったの?魔神もどきが賛美って!でもざーんねん、口は災いの元ってね!賛美と聞いたら黙ってはいられないわ!」
「ちょっとイシュタル!?俺にも当たりかけてたんだが!?」
「あら、気がつかなかったわ?…改めて。我こそは美と戦い、豊穣と金星の化身!天翔る女神イシュタル、魔術王とやらに借りを返しに降臨したわ!って!」
別方向からも掃射される。
「危ないじゃないエルキドゥ!アンタ、私がいるって分かったのに撃ったでしょ今!」
「ああ。ごめん、手が滑ってしまった。もろとも串刺しにするつもりが、紙一重で避けられるなんて。」
「…あっぶねぇ。今度こそ当たりかけた。何か一言言うべきか…?でも流石に…」
「好きにさせておけ。その二人は神話時代からの犬猿の仲。どんな状況であろうと手を取り合う事はない。」
「はぁ…それもそうか。」
長く黒い髪を纏め、ポニーテールにすると、出流は準備を始める。
「さて、『模倣』なら誰にも負けないんだ。ケツァル・コアトルの技とかジャガーマンの槍捌きとか色々学ばせてもらいますよ、っと。」
「やっと来たね。」
「…楓ちゃん。」
『起動せよ。起動せよ。廃棄孔を司る九柱。即ち、ムルムル。グラモリー。オセ。アミー。ベリアル。デカラビア。セーレ。ダンタリオン。我ら九柱、欠落を埋めるもの。我ら九柱、不和を起こすもの。無念なりや、無常なりや。我ら七十二柱の魔神を以てして、この構造を閉じる事叶わず…!』
「ムルムルって前理玖たちがやってたカードゲームにいたね。」
「デュエマかな?」
『ーそんな事より八つ目の拠点だって!?なんて事だ、ここの存在は予想外だ!』
「…今までが九柱ずつだから少しくらい予想できてもいいんじゃないの?」
『加勢に来てくれた英霊たちは七つの聖杯、七つの特異点で因果を結んだものだが、ここにはその縁がない!我々だけでここの九柱を制圧しなくてはならない…!』
「それは、玉座攻略を残したこの状況でマスターにこれ以上の負担は…!」
『そうだ。滅びるがいい最後のマスターよ。貴様が玉座に辿り着く事はない。ここには何もない。我らには何もない。未来も。過去も。因果も。希望も。人が神と名付けた奇蹟すらも。あらゆるものがここでは無価値となった。あらゆるものが不要だと廃棄された。それがこの領域だ。誰一人として人間を助けない死の島だ。膝を折るがいい。顔を伏せるがいい。絶望すらする必要はない。ここは誰もが諦観し、投げ捨てる意志の終わり。誰一人としてお前の名を呼ぶ者のいない…』
「…アンタら、七つしか特異点行ってないの?」
鋭い声で楓が続ける。
「そうじゃないでしょ。いつか行ったポップスターの特異点みたく、小さい特異点…微小特異点があるでしょ。その縁がさ!」
「ハ。ハハハ。クハハハハハハハハハハ!」
超高速でその場に降り立つ復讐者。
「笑わせるな、廃棄の末に絶望すら忘れた魔神どもよ。貴様らの同類になぞ、その娘がなるとでも!」
「この声は…!」
「そうだ!この世の果てとも言うべき末世、祈るべき神さえいない事象の地平!確かに此処は何人も希望を求めな流刑の地。人々より忘れ去られた人理の外だ。だが…だが!俺を呼んだな、藤丸立香!ならば俺は虎の如く時空を駆けるのみ!我が名は復讐者、巌窟王エドモン・ダンテス!恩讐の彼方よりわが共犯者を笑いに来たぞ!」
「巌窟王…!」
「…なにその嬉しそうな顔。やって来たのはそいつだけじゃないわよ?そいつが出るっていうなら私が出ない訳にはいかないでしょう。名乗りあげとか馬鹿らしいからしたくないけど、竜の魔女ジャンヌ・ダルクよ。退屈しのぎに暴れに来たわ。…正直私に水をかけたあの転生者たちの味方をするのは複雑な気分だけど。」
「そして引率役のルーラーです。問題児二人を放ってはおけませんので。」
「ワシらもいるぞ!」
「「「わにゃ!!!」」」
「みんな…!」
小さくも縁を繋いだ英霊が現れる。
「…へぇ、良かったじゃん。人望があって。ああ言って誰も来てくれなかったらどうしようかと思った。さて……よし、覚悟決めろ私。」
顔を叩く楓。
「藤丸立香!本当にアンタには言いたい事がたくさんある!悪い方のね!だけど!これはアンタにしか出来ないから…。行け!立香お姉ちゃん!」
「…!!!分かった。楓ちゃん!行くよ、マシュ!」
「…はい!」
そして、人類最後のマスターとそのファースト・サーヴァントは玉座へと歩みを進んでいった。
今更なんですけど原作コピーにあたりますかねこれ?程度がわからん...