異世界に来てまず行くところと言えば冒険者ギルドと思い浮かべる人が多いと思う。俺もその一人だった。
だが俺はこの世界に来てその常識が覆った。
「役所ってパターンは見た事なかったわ」
時は少し遡る。
ギュイイインンン!!!
「そういう効果音で時を戻すんだっキャ」
「回想に割り込むなよ」
■■■■■■
〜十分ほど前〜
「なぁ、キャロ?やっぱ異世界っていったら冒険者ギルドだよな?スキル作れるって言ってたしよ?
俺たちは不時着した所から最も近い国。そして世界最大の自由国家。『クリーム』を目指した。そこがコレから俺が拠点とする場所だ。
幸い、不時着地点から二日ほどの距離だったのでそこまで時間は掛からなかった。逆を言えばテレポートしたのに二日もかかった。
道中、村などに立ち寄り、食料(タコス等)を補給しながらこの世界の説明をキャロから受けながら進んだ。
そんな暇な状況で出た話題が冒険者ギルドだった。
「っキャ↑っキャ↓っキャ!スキルを作りたがる気持ちはわかるっキャが、最初に行くのは冒険者ギルドじゃないっキャ!」
独特な笑い方をしながらキャロがそう告げた。…どっかで聞いたことあんだよな…。こう、ニンジンとシンパシーがありそうな………。
てゆうか冒険者ギルド行かないのかよ。
「マジで?ほら、よくあるじゃん。冒険者カードが身分証明書だったりとかさ。だから最初は冒険者ギルドじゃないのか?」
「そんなガバガバシステムで国に不審者が入って来たらどうするっキャ?第一、ルーベルトは夢を見過ぎっキャ!まぁヲタクだからしょうがないっキャ!」
ちっ、覚醒イベント来ないか期待してたのに。具体的には俺の隠れた才能が冒険者ギルドのライセンスに「???」で出るとかさ。俺TUUUUEEEEEとかないん?
あと俺のことヲタク扱いしたな?そうだよ。正解だ。
よく分かったな…(震え声)
まぁでもそうだよなぁ。現実はそんなに優しく無い。わかってたさ。
気を取り直してキャロに目的地を尋ねる。
「んじゃ何処行くんだ?」
「それは着いてからのお楽しみっキャ」
その後、俺がどんなに質問してもキャロは
「着いてからのお楽しみ」の一点張り。
質問するのを諦めた俺は取り敢えず、足を止めないようにということだけ意識しながら進み続けた。
にしても異世界に来てからあんまし異世界っぽいことして無いなぁ。
異世界転生じゃなくて異世界転移だからか?
まぁいいや。
■■■■■■
十分ほどが経過した。『クリーム』に近づくにつれて
色々な種族が見られるようになった。
エルフやドワーフ。巨人や小人。精霊や妖精。ここにはファンタジーに居そうな種族が大抵いる。あとちょっと和風な妖怪っぽい奴もチラホラいる。なんでもアリだな。
色々な種族が入り乱れている中何も争いが起きないのはこの都市の治安の良さを物語っている。たぶん。
ていうかここ来てから争い事や揉め事を一回も見ないんだけど治安良すぎんか?
みんな穏やかなんだなぁ。長い剣を持った彼の有名なセリフはこの国では言えなそうだな。
街も想像していた中世っぽいヤツかと勝手に思ってたけど意外にコンクリートなどで整備されていてかなり近代的だった。マジで近代だな。SFって程じゃなく、俺たちに近い感じだ。これならすぐに馴染めそうだ。
っと、キャロが遂に脚をとめた。
「ルーベルト、着いたっキャ!この世界に来てまず最初に行く所と言えばココ!っキャ!」
建物を見てみると扉に剣とか動物の骨とかは無く、有るのは判子と紙のマークだけ。
まさかコレは………!
「役所ってパターンは見た事なかったわ」
俺がそう呟くとキャロが、
「ルーベルトの異世界のイメージは凝り固まり過ぎているっキャ!大方、ルーベルトの世界『ハードワールド』での中世辺りのを想像しているんだと思うっキャけど、そうじゃないっキャ!そっちとほぼ同じっキャ!」
「やっぱりそうか。でもこの世界ってファンタジーじゃ無いの?」
そう言いながら扉を開けようとしたら勝手に開いた。自動ドアか。
俺たちはひとまず、役所の列に並び、それから話し始めた。
「多分ルーベルトはこの世界には不思議な物があまり無いと考えていると思うっキャ!でもそれは半分正解で半分不正解っキャ!正しくは「剣も魔法もあるけど電話も銃もある」っキャ!」
「マジか!寧ろテンションが上がって来たぜ!最高じゃねぇか!!!」
だってオサレやん。魔法と科学が混ざるの。
いやー!早く魔法使えるようになりてぇー!
「まぁ、ルーベルトが魔法使えるかわからないけど」
「え?」
ちょっと待って!?今、聞き捨てならないこと呟いたんだけど!この幼女!!
あっ!順番来ちゃった。めっちゃ気になる!!!
「お待たせしました。今回はどのようなご用件でしょうか?」
役員さんがそう言うとキャロがコッチを向いてニヤつきながら「まぁ任せろっキャ!」とアイコンタクトをしてきたので俺は取り敢えず黙って見守ることにした。
「あー。今回はそこに居る、ルーベルトって言う奴の戸籍を登録したいっキャ?」
成る程。戸籍を最初に作りたかったのか。当然といえば当然か。
でもそれだけなら勿体ぶらず、さっさと言えばいいものを。
「ハードワールドから来た方?ですね。登録には未成年なので保護者が必要です。誰か責任を取れる大人は居ませんか?居ない場合は施設で親を探しながら過ごしてもらいます」
役員さんは微笑みながら、我が子を見るような優しい目でキャロに優しく告げた。しかし、その内容は驚愕どころでは済まないモノだった。
「ワシが保護者っキャ!!!」
「「ん?」」
役員さんとシンクロした。
放心状態だった役員さんは言葉を理解したようで、
「お嬢さん?貴方、何ならそこの彼よりも幼いですよね?貴方では流石に責任を持つのはちょっと……」
うむ。全くの正論である。
……何か役所にいる人の視線が此方に一点集中し始めた。(ざわざわ)(あんな小さな子が頑張ってるのに隣の男は黙りかよ)
視線が痛い。
俺が「どうするんだ」と視線を送るとキャロからは「まぁ見てろ」としかアイコンタクトが帰ってこない。
「しょうがない。ワシの名前を言うっキャ。ワシの名前は『キャロ・クリーム』っキャ!」
キャロが本名を言った瞬間、役所にいた全員が此方を向いた。目が血走ってる。控えめに言ってホラー。
「なぁ?キャロ。お前なにかヤバいことしたか?めっちゃ見られんだけど。てかお前国王かよ」
「しょうがないっキャ」
名前を聞いてからずっとプルプル震えていた役員が遂に喋り出した。
「ほ、本当に……キャロ様…ですか?」
周りの人達も「まさか」と言うような顔をして、
「そうっキャ!」
キャロのたった一言でひっくり返った。みんなでんぐり返りを5回くらいしてから立ち上がった。
「まさか、あの王女!キャロ様が帰ってきただなんて!国でパレードですよ!」
え?この幼女。そんな顔知られてなかったの?
なんで?いつも引き篭もってたの?
頭が回らなくなった(思考を放棄したとも言う)俺は取り敢えず天を仰いだ。
あるのは無機質な天井だけだった。
「取り敢えずこのルーベルトをワシの養子に登録しておいてくれっキャ!」
「わかりました!他の者が王城に連絡しました。馬車が来ております。キャロ様とルーベルト様はどうぞ外へ!」
俺たちは役員さんに一礼し、外へ出て行った。
何か途中養子とか言ってたけどそれ以上にキャロが敬われている事の方が理解し難い。
ぱっと見、人の上に立つ様には見えない。外見的にも性格的にも。
「ヨイショっキャ!」
俺たちは馬車に乗った。
王城に向かうらしい。
■■■■■■
ルーベルトは後にこう語った。
「何が起きているかわからないと人って喋れなくなるんですね。俺、河童ですけど」
と。
青いタコス。白いタコス。今日はいい天気だ。
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