矛盾螺旋、相剋した螺旋、生と死の螺旋。
人間のDNAのように美しい二重螺旋構造。しかし、その塩基配列が変化することがある。
生と死が繰り返される中、産まれるズレ。
◇◇◇
「おい、ちょっと待て。その手に持っている物はなんだ?」
橙子が聞いてきた。
「何って、ほら」
手に持っている、正確には指と指の間に挟んでいるものを橙子に見せた。
「はぁ、何故そんなものを持っているんだ……」
そう、黒鍵だ。
「縁が出来てしまったから、貰ったのよ」
呆れた彼女は溜め息だけ残した。
わたし達は自動ドアを潜る。
「気持ち悪い」
思わず口に出した。
橙子の後についてロビーに向かう。
「驚いたな。急性なんだねぇ、キミは」
男性にしては高い声が響く。
吹き抜け構造の長方形の広いロビー。
二階に繋がっている階段の途中に真っ赤なコートを着た男が立っていた。
「だが、それは喜ばしい事でもある。ようこそ私のヘゲナに。歓迎するよ、最高位の人形使い」
魔術師コルネリウス・アルバは芝居がかった仕草で一礼した。
「ところで弟子を二人もとっているなんてどうしたんだい?」
「はぁ、二人? それは一体誰の事だ?」
呆れたように橙子は言う。
「ほら、あの黒いメガネの子と、キミの隣にいる子…………は!? リョウギシキだと!?」
どうやら、わたしを両儀式と勘違いしたらしい。
「くっ、残念ながらこいつは両儀式じゃないぞ。そして、そのメガネの方はただの従業員だ。魔術師の魔の字もない。そして正真正銘の弟子は、隣のこいつだ」
勘違いにツボったようで嗤う橙子。
「それで、
「ああ、そうとも。ここはヒンノムの谷にあった火の祭壇の再現だ・・・・・・・・・」
・ ・ ・
ずらずらと得意気に魔術について話す魔術師。嫌気が差してきて、小声で橙子に問うた。
「ねぇ、殺っちゃってもいい?」
「まあ待て。私がやる」
わたしに苦笑しながらトランクを足の爪先でつついた。
「━━━━━━━出ろ」
その言葉と共に開くトランク。
何も無い、伽藍の鞄。だが、その口が開いた途端わたしは
ぶわっと何かが溢れ出し、一瞬にしてロビーを走り回る。
建物の壁や床、天井から溢れ出たスライムを消した。
アルバは喚くが、その雑音は始紀には届かない。
◇◇◇
ふと、何故こんなにも
本能的な拒絶反応、
━━━━━
、
「………………はっ」
気が付けば、胸をぶち抜かれ鮮血を撒き散らした橙子が横たわっていた。ついでに頭もなかった。
「いつまでそうしているつもりだ、柊始紀」
深い、声だ。
「━━━━━荒耶、宗蓮」
目の前に立っている黒い魔術師。
「……………………………」
「……………………………」
無言で向かい合う。
手に持った刀を鞘から抜く。
「一つ問おう。━━━━━何故、ここに立っている?」
「……なんでだろうね。本当に」
「また答えをはぐらかすつもりか」
苛つきが感じられる。
「殺したくて殺したくて、うずうずしてるんだけどね、でもやっぱり無理だって、お前と今会ったら思った。わたしの役ではない」
わたしは知っている、識っている。
『
『
『
「……………貴様は一体何を知っている?
書物を読んでいるかのような俯瞰した在り方。
何を見ている、何が視えている!? 答えろ!」
「わたしは要らないのよ。いなくとも変わらない」
荒耶宗蓮を無視し、話は続く。
「あぁ、でも少しは愉しまなくちゃね」
俯いていた顔を上げる。
「
━━━━━━━これは永遠のような夢。
されど終わりはある」
無為識はただの造語です。
主人公の活躍が少ないのが気掛かりでしたが、やっとです。